安易に異世界を選んだ結果、食われました。

野鳥

文字の大きさ
上 下
19 / 42
本編

14 ピザパンさいこー……

しおりを挟む
この世界のパンは少し硬い。
日本みたいな柔らかい食パンを見たことないのがちょっと残念。
でもバゲットくらいの硬さだからピザパンなら最高に合うだろう。

「ね、ヴィー。あそこのパン買ってからにしよ。いいもの食べさせてあげる」
「いいもの?」

不思議そうにしていたヴィジスタだが、テンの要望通りにパンを1本買ってからまた店の前に戻って来た。
ついでにパンはスライスして貰ったので、そのままのせるだけで完成!……になるけどもう少しトッピングが欲しいな。

あ、あっちに肉そぼろっぽいのがある。麺の上にトッピングするやつみたいだけど、あれだけ買えないかな?

「ごめんヴィー、あっちのお肉も買っていい?」
「うん。大丈夫だよ」

何度もすんません。
でも絶対に美味しいから!トッピング用の肉そぼろも買えましたー。

「よし、準備万端だよ!」

買ってきたバゲットの断面に肉そぼろをのせる。

「すみませーん。このトマトとチーズのやつくださいなー」
「はーい。毎度ありー」
「あ、皿じゃなくてこの上にのせてください」
「へ?」

店員さんが皿にのせようとしたのを止め、そぼろののったバゲットを差し出す。
ぱちぱちと瞬いて、「この上って…パンの上かい?」と不思議そうに首を傾げる。

「うん。出来れば熱々でお願いします」
「まあ、いいけど…はいよ」

とろりと蕩けるチーズに厚切りトマト。その下の肉そぼろにまでチーズが垂れて美味しそうだ。

「はい、ヴィー。出来たよ。これ絶対に美味しいから!」
「へぇ……これはいいね」

ヴィジスタは少し間をあけて、食べるのかと思いきやサッと鞄にしまうフリしてインベントリにしまった。

「ん?ヴィー食べないの?」
「うーん、少し離れようか。ここだと目立つからね」

え?と周りを見てみると店員さんがガン見していた。怖い。

「ここで目立っちゃったら変化してる意味無くなるから」
「わ、わかった…?」

とにかくその場を速やかに離れ、路地の方に隠れた。
人の気配が無いことを確認し、ヴィジスタはテンから渡されたパンを取り出す。

「びっくりしたー。どうしたの?こんな所に入って」

路地が珍しいのかテンはキョロキョロと周りを眺める。人目が無いからか浮いていたたまもテンの腕の中に戻ってきた。

「そういえば店員さん、凄い見てきたね。何でだろ?」
「はぁー、テンが何気なくやって見せたこのパンだけど」
「あっ食べて食べて!」
「…うん。じゃあまずは頂くね」

まだチーズが冷めていないので、とろりと溢れそうになった場所をヴィジスタはパクリと頬張る。
口に広がるのは肉そぼろの甘辛い味付けが瑞々しいトマトの酸味でさっぱりとし、濃厚なチーズでまろやかにパンとトマトと肉そぼろを一体化させていた。

「っ、おいしい…」
「でしょ!?おれもこのピザパンが大好きなんだ~」
「……ピザパン?」

あ。

「テンはどこでこの様なパンの食べ方を?ポルタ家ではパンをこんな形にして出していないよね?」
「あーー……うん。…………アングロさんが…ね」
「アングロさんとは、テンの家庭教師のアングローリア様の事だよね?」
「アングローリア様…?うん、そのアングロさんだけど…」

ごめーん!アングロさん!でもどうやって説明したらいいのかわかんなかったんだもん!

「1度内緒で食べさせてくれて…すごくおいしかったから……そしたら屋台に材料があって……ヴィーにも食べさせてあげたくなったんだ……」

どんな状況で食べさせて貰うんだっちゅーの!くっ、言い訳が苦しい…。

「ふぅん…」

ばっくんばっくんと心臓がうるさい。
ひぃえぇ~ごめんなさい~めっちゃ考え込んでるぅ。
前世の記憶があるなんて頭おかしい子だと思われるかもしれないし…。
まだ打ち明けるには勇気がいるからもう少し待ってください…。

心の中で何度も土下座した。

「ねえテン、アングローリア様は次にいつ来るの?」
「ふえ?」
「家庭教師の日程だよ。このピザパンは素晴らしいよ。出来れば直接聞きたいことがあるから。教えてくれるかな?」
「え、え、あ、5日後…来る…けど…」
「じゃあ5日後、ポルタ家に行けるよう予定を調整するね」
「えぅ、あ、うん…」

ど、どうしよう…!アングロさーーん!

蒼白になるおれの顔を、たまが慰めるようにぺろりと舐めた。






********


くっ、エロが…っ、エロが入れられないっ!

ってかずっと抱っこって凄いなこいつ。腕死ぬわー。

そしてたま様ごめんなさい。もふもふを生かしきれないぃ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...