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本編
13 平均値ってイケメンだよね
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ヴィジスタとはぐれないように手をつなぎながら屋台へと向かっていると、色々な匂いが鼻をくすぐる。
甘い匂いにスパイシーな匂い、前世で馴染みのある匂いもしてきた。
おおっこれは期待できるのでは!?
わくわくドキドキしながら歩を速める。
瞳をキラキラと輝かせて飛び跳ねるように歩くおれは、完全にリードに繋がれた散歩大好きお犬様のようだったに違いない。
その様子をヴィーが蕩けるような眼差しで見ていたなんておれは知らない。知らないったら知らない。
商店街のように屋台が並んでいるところに来ると、一気に人混みが激しくなる。丁度お昼時だしね。
さすがにおれの身長だと人に流されてしまいそうなので、ヴィーに抱っこされた。たまは一緒に歩いてたけど、今は空中に浮いている。おー羨ましい…。
「手前の屋台から見ていこうか」
「うん。お腹すいちゃったからメインが食べたいなー」
パッと見ただけでも串料理や煮込み料理がある。
ジュウジュウ焼ける音と香ばしい匂いにヨダレが出そうだ。
ぺろっと唇をヴィジスタに舐められる。
え、なに?
「くすっヨダレ零れそうだったよ」
「………おうふ」
ハードル高すぎですよ。ヨダレを舐めるとかぁー。
そして本当にヨダレ垂らすアホがいるのかと。ええ、おれですよ。
羞恥心と濡れた唇をぐしぐしと袖で拭い、気持ちを切り替える。
「テンは肉と魚どっちが食べたい?すぐそこの串焼きは牛の股肉を甘辛いタレで味付けされたもので、煮込みは魚のあっさりスープだよ。もう少し奥に行くと僕オススメのチーズを使ったトマト料理があるんだけど」
「うーん、悩む…たくさん色んなもの食べたいけどお腹の容量が足りないし…」
あー今だけ大食いになりたいー。
「じゃあ色んなものを少量ずつ食べようか。僕も一緒に食べるし、残りはインベントリに入れておけば時間の経過も無いからね」
「ふおおおーナイス!それいい!そうしよう!」
サンキュー異世界!これぞ求めてた魔法!
おれもインベントリ使えるようになりたい!
「ねえねえ、インベントリって誰でも使えるようになるの?」
「うーん、難しいかな。一定以上の魔力とセンスがないと会得出来ないからね」
「そっかぁ…おれも欲しいなぁそういうの」
「それならマジックボックスをあげるよ。インベントリより全然容量は少ないけど、マジックバッグとは違って時間停止機能があるからね」
「うん?マジックボックス?マジックバッグより上の箱?」
「マジックボックスは色々な形をしているから一概には言えないけど、箱型のもあるよ。持ってる人は少ないからね。言いふらすと盗まれちゃう可能性が高いから皆秘密にしてるんだよ。だからテンも秘密にね?」
「そんな高価そうなものくれるの?」
「ふふっテンだからね。あとでこの話をしようか。気になったもの片っ端から買っても僕の懐はいたまないから好きなだけ言ってね」
いやいや、そんなATM扱いはしませんよ?
「大丈夫!お小遣い貰ってきたから!だからお金の使い方教えて欲しいなぁ。それとお金の価値?もわからないんだよね」
「もちろん。テンが知りたいこと何でも教えてあげるよ」
じゃあまずは牛の串焼きから。
初めてのお使い…ではないけど、初めてお金を使うのでちょっとドキドキ。
「おじちゃん、串焼き1本くださいなー」
「ん?おう、坊主が食べるのか?この串焼きは大きいから兄ちゃんと一緒に食えよー」
抱っこされたおれを見てから視線をヴィーに向けて言う。
そういえばおれ達ってどういう風に見えてるんだろう?
お金を払っておじちゃんから渡された串焼きはひとつ5センチくらいの大きさで、厚みも2センチくらいありそうだ。それが5つ刺さっているから片手では持てない。
めっちゃ重いわー。両手で持ってるとこういう剣っぽい。そういえば昔、団子の刺さった剣を持ったアニメあったなぁ。あれ好きだった。
ほかほかの串焼きにパクリと食いつく。
硬そうな肉は思いのほか柔らかく、すぐに噛み切れた。
んんっ……美味い。甘辛いタレが肉汁と合わさって丁度いい…。この肉自体も品質がいいのかな?肉が美味い。あー白米と一緒にたーべーたーいー。
夢中で二口三口と食べるとヴィジスタに止められた。
「これ以上食べると他の物が食べられなくなるよ?」
「あ…そうだった。美味しすぎて止まらなかった」
「ぶははっ、嬉しいこと言ってくれんじゃねーの。坊主にサービスだ。もう1本持っていけ」
「え?でも」
「いーからいーから。兄ちゃん、持てるだろ?次に来る時もここに来てくれりゃ十分だ」
「ありがとう!絶対にまた来るよ!だって凄い美味しいもん!」
「ありがとうよ坊主!」
幸先いいわぁー。
おじちゃんにバイバイした後は色んな屋台のものを買い漁った。食べ物だけじゃなく、食材専門の店や生活雑貨系の店など、様々なジャンルがあって見るだけでも楽しい。そして何故か店員さん受けのいいおれ達。
「……ねぇ、おれ達って他の人にどう見えてるの?」
ヴィジスタの幻惑魔法で容姿が変わってるって言ってたけど、異様に受けが良いのが怖い。
「仲のいい兄弟に見えるようにしただけだよ。ちょっと顔の良い」
「それだ」
ヴィジスタの素顔はエルフで神々しすぎるけど、本人は自分の容姿にあまり興味が無い。これはディオーレンもそうなんだけど。
「ちなみにどれを基準に変化を?」
「んー……一応平民の平均値で設定したけど、少しだけ整えただけだね」
知ってるか?平均値って結果、顔がいいんだぞ?
それを整えるって、ただのイケメンぞ?
まあ平均値ってことは印象に残りにくいってメリットもあるからね。これでいいか。
「あ、そろそろオススメの店が見えてくるよ」
「おおっどれどれ?」
赤い布が暖簾のように掛かっていて、他の屋台よりオシャレな店構えの屋台があった。
あれかな?
結構お客も集まってるから、今流行ってる感じかな。
よく見ると皆皿っぽい葉っぱにトマトとチーズをのせたものを持っている。葉っぱの皿は使い捨てで、木の棒で刺して食べてるな。
「あれは?」
「あれがトマトとチーズのはさみ焼きっていうんだけど、トマトの酸味がチーズの濃厚な旨味と合わさって絶妙なんだ」
あれってつまみ系だよね。確かに美味い。
けど、ちょっともったいないなぁ。
周りを見渡すと、丁度近くにパン屋さんがあった。
皆様もうお気付きでしょうが、おれの好きな物にしようと思います。
甘い匂いにスパイシーな匂い、前世で馴染みのある匂いもしてきた。
おおっこれは期待できるのでは!?
わくわくドキドキしながら歩を速める。
瞳をキラキラと輝かせて飛び跳ねるように歩くおれは、完全にリードに繋がれた散歩大好きお犬様のようだったに違いない。
その様子をヴィーが蕩けるような眼差しで見ていたなんておれは知らない。知らないったら知らない。
商店街のように屋台が並んでいるところに来ると、一気に人混みが激しくなる。丁度お昼時だしね。
さすがにおれの身長だと人に流されてしまいそうなので、ヴィーに抱っこされた。たまは一緒に歩いてたけど、今は空中に浮いている。おー羨ましい…。
「手前の屋台から見ていこうか」
「うん。お腹すいちゃったからメインが食べたいなー」
パッと見ただけでも串料理や煮込み料理がある。
ジュウジュウ焼ける音と香ばしい匂いにヨダレが出そうだ。
ぺろっと唇をヴィジスタに舐められる。
え、なに?
「くすっヨダレ零れそうだったよ」
「………おうふ」
ハードル高すぎですよ。ヨダレを舐めるとかぁー。
そして本当にヨダレ垂らすアホがいるのかと。ええ、おれですよ。
羞恥心と濡れた唇をぐしぐしと袖で拭い、気持ちを切り替える。
「テンは肉と魚どっちが食べたい?すぐそこの串焼きは牛の股肉を甘辛いタレで味付けされたもので、煮込みは魚のあっさりスープだよ。もう少し奥に行くと僕オススメのチーズを使ったトマト料理があるんだけど」
「うーん、悩む…たくさん色んなもの食べたいけどお腹の容量が足りないし…」
あー今だけ大食いになりたいー。
「じゃあ色んなものを少量ずつ食べようか。僕も一緒に食べるし、残りはインベントリに入れておけば時間の経過も無いからね」
「ふおおおーナイス!それいい!そうしよう!」
サンキュー異世界!これぞ求めてた魔法!
おれもインベントリ使えるようになりたい!
「ねえねえ、インベントリって誰でも使えるようになるの?」
「うーん、難しいかな。一定以上の魔力とセンスがないと会得出来ないからね」
「そっかぁ…おれも欲しいなぁそういうの」
「それならマジックボックスをあげるよ。インベントリより全然容量は少ないけど、マジックバッグとは違って時間停止機能があるからね」
「うん?マジックボックス?マジックバッグより上の箱?」
「マジックボックスは色々な形をしているから一概には言えないけど、箱型のもあるよ。持ってる人は少ないからね。言いふらすと盗まれちゃう可能性が高いから皆秘密にしてるんだよ。だからテンも秘密にね?」
「そんな高価そうなものくれるの?」
「ふふっテンだからね。あとでこの話をしようか。気になったもの片っ端から買っても僕の懐はいたまないから好きなだけ言ってね」
いやいや、そんなATM扱いはしませんよ?
「大丈夫!お小遣い貰ってきたから!だからお金の使い方教えて欲しいなぁ。それとお金の価値?もわからないんだよね」
「もちろん。テンが知りたいこと何でも教えてあげるよ」
じゃあまずは牛の串焼きから。
初めてのお使い…ではないけど、初めてお金を使うのでちょっとドキドキ。
「おじちゃん、串焼き1本くださいなー」
「ん?おう、坊主が食べるのか?この串焼きは大きいから兄ちゃんと一緒に食えよー」
抱っこされたおれを見てから視線をヴィーに向けて言う。
そういえばおれ達ってどういう風に見えてるんだろう?
お金を払っておじちゃんから渡された串焼きはひとつ5センチくらいの大きさで、厚みも2センチくらいありそうだ。それが5つ刺さっているから片手では持てない。
めっちゃ重いわー。両手で持ってるとこういう剣っぽい。そういえば昔、団子の刺さった剣を持ったアニメあったなぁ。あれ好きだった。
ほかほかの串焼きにパクリと食いつく。
硬そうな肉は思いのほか柔らかく、すぐに噛み切れた。
んんっ……美味い。甘辛いタレが肉汁と合わさって丁度いい…。この肉自体も品質がいいのかな?肉が美味い。あー白米と一緒にたーべーたーいー。
夢中で二口三口と食べるとヴィジスタに止められた。
「これ以上食べると他の物が食べられなくなるよ?」
「あ…そうだった。美味しすぎて止まらなかった」
「ぶははっ、嬉しいこと言ってくれんじゃねーの。坊主にサービスだ。もう1本持っていけ」
「え?でも」
「いーからいーから。兄ちゃん、持てるだろ?次に来る時もここに来てくれりゃ十分だ」
「ありがとう!絶対にまた来るよ!だって凄い美味しいもん!」
「ありがとうよ坊主!」
幸先いいわぁー。
おじちゃんにバイバイした後は色んな屋台のものを買い漁った。食べ物だけじゃなく、食材専門の店や生活雑貨系の店など、様々なジャンルがあって見るだけでも楽しい。そして何故か店員さん受けのいいおれ達。
「……ねぇ、おれ達って他の人にどう見えてるの?」
ヴィジスタの幻惑魔法で容姿が変わってるって言ってたけど、異様に受けが良いのが怖い。
「仲のいい兄弟に見えるようにしただけだよ。ちょっと顔の良い」
「それだ」
ヴィジスタの素顔はエルフで神々しすぎるけど、本人は自分の容姿にあまり興味が無い。これはディオーレンもそうなんだけど。
「ちなみにどれを基準に変化を?」
「んー……一応平民の平均値で設定したけど、少しだけ整えただけだね」
知ってるか?平均値って結果、顔がいいんだぞ?
それを整えるって、ただのイケメンぞ?
まあ平均値ってことは印象に残りにくいってメリットもあるからね。これでいいか。
「あ、そろそろオススメの店が見えてくるよ」
「おおっどれどれ?」
赤い布が暖簾のように掛かっていて、他の屋台よりオシャレな店構えの屋台があった。
あれかな?
結構お客も集まってるから、今流行ってる感じかな。
よく見ると皆皿っぽい葉っぱにトマトとチーズをのせたものを持っている。葉っぱの皿は使い捨てで、木の棒で刺して食べてるな。
「あれは?」
「あれがトマトとチーズのはさみ焼きっていうんだけど、トマトの酸味がチーズの濃厚な旨味と合わさって絶妙なんだ」
あれってつまみ系だよね。確かに美味い。
けど、ちょっともったいないなぁ。
周りを見渡すと、丁度近くにパン屋さんがあった。
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