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本編

11 ほだされた…

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ようやく涙もおさまり、厚みのある胸元から顔を上げると眉を下げてしゅんとしているヴィジスタと目が合う。
今のおれの顔は酷いことになってるだろうな。
泣きすぎて目は腫れぼったいし鼻も赤くなっているだろうし、涙に濡れた顔はぐちゃぐちゃだ。

ヴィジスタは赤くなった目元を慰撫するように、すり…と指先でさすり、そろそろとテンの髪を梳きながら額や目元、赤くなった鼻にもちゅっと口付ける。

その優しい振る舞いに荒んだ感情も少し落ち着いた。

「ごめんね…テン…この馬車、外から中は絶対に見えないようになってるから安心して……テンが可愛すぎてつい意地悪しちゃった」
「……」

マジか。まさかのマジックミラー方式とか……せめて言ってくれよ。

「なんでそんな事したの…っていうか言ってよ…」

ぶすっと頬をふくらませて説明をするよう促すと、少し詰まりながらもヴィジスタが白状した。

「今日、初めてテンと2人きりで出掛けられると思うと昨日からずっとそわそわしてたんだ。テンのはしゃぐ姿とかテンが嬉しそうに笑うのを想像してたら我慢できなくて………怒ってもいいけど嫌わないで聞いてくれるかな………正直に言うと、馬車を用意した時点でテンを可愛がる事しか考えてなかったんだよ。窓の大きな馬車にしたのは周りに見られるんじゃないかってビクビクして僕にすがりつくテンを見たかったし、見られてる羞恥に染まりながらも感じちゃうテンを見れるのかと想像したら…」
「ちょっ、待って、ヴィー何言っちゃってんの!?」

羞恥ぷれい!?それ羞恥ぷれい!?

「テンの色んなところが見たくて…まだまだ僕の知らないテンがいっぱいあると思う。ひとつひとつ拾い上げていつかは全部僕のものに出来たら嬉しいなって…」
「……」

な、なんか凄いこと言われてる気がする。
でもさっきの行為もそれに含まれるって事だよね?
ってことは色んな行為をするって宣言でオケ?

それはどうなのか…。

若干ジト目になってヴィジスタを見遣ると、目の前には子犬がいた。

え、ちょっ、キラキラしい子犬。図体のデカい子犬。
子犬のような濡れた瞳でくぅんくぅんと鳴いているような錯覚が見える。

どうするーあー〇ーふー〇ー。

…っ、いや、でもっ…あんな恥ずかしいこと…!


きゅーん。


う、……なんちゅー顔してるんだよぉ…。


くぅーん。

……………………っ……くっ………しょ、しょうがねーなぁ…。

……絆された……ガクッ。

「………絶対に他の人に見せない?」
「テン?テンを他の男に見せるとか絶対にするわけないよ!そんな勿体ないこと僕の命にかけて無いと誓うから!最悪テンの痴態を見たやつはきちんと始末するからね!」

お、おう。始末はしなくてもいいけど記憶くらいは消して欲しいなぁ。

「絶対ヴィーとディー以外におれの恥ずかしい姿を見せない?」
「絶対に見せないよ!」
「……おれだって…2人が好きなんだ。だから……」

う、言い難い…。

「だから…」
「テン?」
「…………誰にも見せないなら…何してもいいよ……」

あうう…言っちゃった…。
でもおれが頑張るだけでこいつらは幸せそうにするんだから、それくらいは頑張るもん。だって男の子だもん!

おれの発言に目を見開いたヴィジスタの顔が徐々に赤くなる。
白い肌は綺麗にピンク色に染まった。

この言葉だけでこんなに喜んでくれるなら、少しくらい羞恥ぷれい?やってやろうじゃん!って気になる。
たまにはおれから欲しがってやろうじゃん。いつも流されるだけのおれだと思うなよー!

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