安易に異世界を選んだ結果、食われました。

野鳥

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本編

5 お家はポルタ商会です

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まだ小さい子供だと言うことで、両親の仕事が何をしているのか知らされていなかった。
街の中心地に建っている家は周りの民家よりは大きいし、使用人も数人いる。
執事とまではいかないが、両親だけでは手が回らない家の中の事をしてくれる秘書のような男性もいるくらいには、お金持ちの平民なんだなーとテンは思っていた。
つい先日、テンは6歳になった。
この世界では6歳になると働きに出ても良いらしく、お手伝いだと思っていた近所の男の子は立派に給金を貰っていたと知って驚いたのも無理はない。
だって6歳なんて小学生じゃんか。
新聞配達でさえ中学生からなのに…と、自分がこの世界のことを何も知らないことを知った。

そして本日、両親に自分の家の仕事を教えて貰う許可がおりたのだ。

というか、閨事のほうが先に知るってどんな世界だよ……。(白目)


昨夜から楽しみでそわそわとしっぱなしで、少し寝不足気味だけど元気いっぱいだ。
気もそぞろにトーストを頬張っていると、朝食を一緒に摂っていた長兄のミューロが微笑ましげに「落ち着いて食べなさい」とやんわりたしなめ、次兄のワングは「わかる。オレもそんな感じだった」と頷いていた。
ごめんなさいと謝ってから朝食に集中し、食後の紅茶を飲んでいる時に長兄と次兄に聞いてみた。

「ミュー兄ちゃんは普段どんな事してるの?」
「私かい?私は商会のお金の管理とか父の商談の補佐とかだよ」
「ミューロ兄は几帳面だから準備とか管理するのが得意だよな。オレはまだ母さんの補佐の補佐みたいな事しか出来ないしなー」
「ワン兄ちゃん、お母さんの仕事手伝ってたの?」
「おー、学校内で流行のリサーチしたり、近所のお店巡って目新しいもの探したりしてるくらいだけどなー」
「すごい」

学生だから学業に専念していると思っていた次兄ですらめちゃくちゃ仕事してた!

確かに忙しく走り回っている両親が家でゆっくりしている所をあまり見たことがない。夕食は出来るだけ家族みんなで食べるというルールはあるものの、10回に1回全員が揃えば良い方だ。
寂しく思っていたのも3歳まで。記憶が戻ってからはお仕事って大変だよね…と、周りから見たら聞き分けのいい全く手の掛からないお子様が出来上がった。
それはそれで心配されたのは良い思い出だ。

それに3歳からの婚約者達の猛攻が凄すぎて、寂しいとか思う暇もなかったというのもある。


9時頃になると兄弟全員でポルタ商会へと出勤した。
ろくに外に出ない生活のせいで、お家の数百メートル先に商会があり、堂々と【ポルタ商会】の看板が掛かっているお店がある事にすらこの歳まで気が付かなかった。どんだけー。

営業時間はAM10時~PM6時まで。
まだ子供のおれとワン兄ちゃんは店内のお掃除をしながら棚にある商品の確認を指示された。
確認はワン兄ちゃんの作業で、主におれは見学兼清掃員だ。
ざっと棚を見るかぎり、様々な生活必需品から嗜好品まで幅広く取り揃えてある。
日本のドラッグストアみたいな感じかな。

パタパタとハタキのような掃除道具で商品の上のホコリを落とす。

石鹸、洗濯石鹸、シャンプーにリンス、ふむふむ家で使ってるやつだね。
こっちはポップに冒険者用の便利グッズ?って書いてあるけど……冒険者?藤〇弘、みたいなものかな?石みたいなのがゴロゴロ置いてあるけど…えーと火魔石、風魔石……って何これ?

「ワン兄ちゃーん」
「んー?どしたー」

紙に商品個数を記入していたワングはテンの呼び掛けに顔を上げて振り向いた。

「この魔石ってなに?何するものなの?」
「ああ、これは魔力を込めると誰でもその属性の魔法が使用できる石だ。魔力は持ってるけど、魔法として使用できない人もいるからなー」

待って。
え?この世界魔法使えるの?

「ワン兄ちゃん…この冒険者って…なに…?」
「ん?冒険者ギルドに加入してる人達のことを冒険者って言うんだけど……あれ?知らないのか?」
「知らないよ!え?常識!?」
「一般常識だな。テンの年齢だとまだ知らないもんだっけ?」

ワングも首を傾げる。ワングの場合は兄のミューロと一緒に勉強をしてきたので、何かと知識を得るのが早かった。

「ちょっとミューロ兄に聞いてみるか」

うんうんと必死に頷く弟の様子に、ワングは苦笑した。


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