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番外編 穴を掘る
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「ふんふんふふーん♪」
ザク。ぽい。
ザク。ぽい。
「よいしょ。よいしょ」
ザク。ぽい。
ザク。ぽい。
小さなスコップを地面に差し込み、土を掘って脇に捨てること約30分。
およそ30センチの深さと直径40センチの穴が出来た。
「…………疲れた………」
テンの予想では1メートルくらいは掘れている予定だったのに、全く作業が進まない。
「うーん……土が固い……のか?」
手に握れるくらいの大きさのスコップでは中々作業が進まず、疲労感の方が勝る。
テンは一旦休憩した。
穴の横にレジャーシートのような敷物を敷き、オレンジジュースとクッキーを用意する。
穴の大きさを眺めながらクピクピとジュースを飲み、サクッとクッキーを齧ってこの後の予定を考えていると、ガサガサと草をかき分けてひょっこり顔を出したのはたまだった。
「にゃん?」
「あれ、たま?どうしたの?」
「にゃにゃん?」
たまが穴を見て首を傾げていた。
「ああ、それはね─」
「にゃあ」
説明しようとすると、たまが穴の中に入ってくるくると位置を確かめたと思ったらすぽりとはまった。
こっこれは!
「ふおおおぉ…ねこ…鍋…!!」
もふもふの被毛が穴の縁から溢れ、みっちり感が最高です!!
普通の猫なら大きい穴だけど、たまはサイズを変幻自在に変えられるからか理想のみっちり感を実現している。
「たっ、たましゃん…っ」
はわわっとテンは瞳をキラキラと輝かせて、そろそろと両手をたまの被毛に埋める。
もっふぁ…。
「しゅ、しゅてき…っ」
感動で呂律も回らない。
ひとしきりもふもふと撫で回していたが、テンの目的はねこ鍋を作ることではない。
むしろ、たまが来ることなんて想定外だし。
「たましゃん。おくつろぎの所申し訳ないんだけど…」
「にゃん?」
テンに気持ち良さそうにモフられていたたまは、上目遣いでこてりと首を傾げる。
「あぁぁ~可愛いぃ~」
誘惑に負けてまたモフり始める。これでは堂々巡りだ。
もうこのままたまをモフり続けても良いのでは?と思い始めていたら、空からハクがふわりと降りてきた。
「わふん!」
「あれ、ハクだ。ディーは一緒じゃないの?珍しいね」
「くぅん…」
ハクは空を駆ける時は大きくなって、地上に降りる時は小さくなる事で目立たなくすることを覚えた。
もちろん人が乗っていない時に。
今は柴犬サイズで、穴に入っているたまを不思議そうに眺めていた。
「わふ?」
「ん?たまはねぇ、ねこ鍋になってるんだよ。ハクが穴に入ったら犬鍋だね!」
「きゅーん?」
なべ?みたいな疑問が顔に出ているハクに、元の世界でのねこ鍋ブームを語ってみた。
「まあ犬なら穴に入るより穴を掘るけどね………あっ!」
ここほれワンワン!!
「ハク!この穴大きくできる?」
まったりしているたまをみょーんと持ち上げて、ハクに穴を見せると、ハクが元気よく返事をして掘り始めた。
ゴシャシャシャッ!!
「おおーー。なんたるスピード…」
たまを抱えながら呆気に取られていると、わずか数分で1メートル程の深さになった。
「もういいよ~。ありがとうハク」
「きゅふ」
あんなに土を掘ったのに全く汚れていないハクの頬をもしゃもしゃかき混ぜながら労う。
さて、やりますか。
たまとハクがテンの作業を不思議そうに眺めながら静かに待機している横で、さっきまで座っていたレジャーシートを穴に被せ、その上に土をせっせと戻す。
皆様もうお気づきでしょう。
「見て!落とし穴の完成だよ!」
不自然に土がモコモコしているが、レジャーシートの部分は全て隠し、ちょっと草や葉っぱを散らしてカムフラージュ。
全然カムフラージュされていないのがテンクオリティ。
たまとハクは揃って同じ方向に首を傾げる。
言葉がわかれば、「テンは何をしているのだろう?」と言ったところか。
「んっふっふっ。これはねぇ悪戯の王道?かどうかはわからないけど、落とし穴と言って、気付かずにこの上を歩くと落ちちゃう!っていう仕組みなんだよ」
「……?」
「……?」
この時のたまとハクは、「これって狩りの時の罠に似てる…?でも悪戯…?」と不思議がっていた。
「いやー落とし穴なんて作った事無かったから、一度は作ってみたかったんだよねー。感無量」
うんうんと頷いて、落とし穴の周りをくるくると周りながら確認して、またうんうん頷く。
テン的に大満足だ。
「たま!」
「ハク!」
落とし穴完成と同時にヴィジスタとディオーレンがたまとハクを探しにやって来た。
「ヴィー、ディー、ハクとたまはここにいるよ~」
とテンが声を掛けると、2人は何やら怒った様子でこちらへと走ってくる。
「どうしたの?」
「くぅーん…」
「にゃ」
ちょっと気まずそうに鳴くハクと、我関せずと鳴くたま。
そんなハクにディオーレンは仕方なさそうに溜息をつき、反省?何それ美味しいの?みたいな雰囲気のたまにヴィジスタはイラッとしている。
話を聞くと、テンに会いに行こうとしてハクとたまを探していたが何処にも居ないので、もしかしたら勝手にテンの所に行ってるのでは?と急いでポルタ家に来たらしい。
「僕がテンに会えない時でもたまは勝手に会いに来てるの知ってるんだよ。ねぇたま?」
「んにゃん」
「ハクは何でここに?」
「きゅーん…」
「………テンに会いたくて来ちゃった?だと?」
「きゅふ…」
うーん、ハクとたまは正反対だねぇ。
さすがお猫様とお犬様。
と、主従で会話をしているので、テンは後始末することにした。
ヴィジスタとディオーレンは互いの相棒に気を取られていると、視界の端でテンがぴょんっと飛び跳ねるのが見えた。
ズボ!!
「「は?」」
「にゃ?」
「わふ?」
土まみれになって穴の中にいるテン。
それに2人と2匹は目を丸くする。
「あ、こっちのことは気にしないでー」
自ら落とし穴に落ちたのだ。
「「テン!?」」
「ん?どうしたの?」
慌ててテンに手を差し伸べるヴィジスタとディオーレンに、「汚れるよー」と断って自分でよいしょ。と出てきた。
「何してるの!?」
「落とし穴!?何でこんな所に!?」
経緯を知らない2人が驚くのも無理はない。
まさかポルタ家の庭に落とし穴があるなんて思わないし、テンがそれに落ちる?というか自ら落ちたのも意味がわからないから。
テンは笑いながら1回作りたかったんだー、と説明し、自分で落ちたのも片付けるためだと説明した。
「だって他の人が落ちたら危ないでしょー?でもせっかく作った落とし穴だからハマってあげないとね!」
土まみれのテンはやり切ったぜ!と大・大・大満足の落とし穴作りだった。
********
落とし穴は一度は作ってみたいよね。
作って落ちる経緯は実話でした~。そのままにしておくと危ないからね(笑)
ザク。ぽい。
ザク。ぽい。
「よいしょ。よいしょ」
ザク。ぽい。
ザク。ぽい。
小さなスコップを地面に差し込み、土を掘って脇に捨てること約30分。
およそ30センチの深さと直径40センチの穴が出来た。
「…………疲れた………」
テンの予想では1メートルくらいは掘れている予定だったのに、全く作業が進まない。
「うーん……土が固い……のか?」
手に握れるくらいの大きさのスコップでは中々作業が進まず、疲労感の方が勝る。
テンは一旦休憩した。
穴の横にレジャーシートのような敷物を敷き、オレンジジュースとクッキーを用意する。
穴の大きさを眺めながらクピクピとジュースを飲み、サクッとクッキーを齧ってこの後の予定を考えていると、ガサガサと草をかき分けてひょっこり顔を出したのはたまだった。
「にゃん?」
「あれ、たま?どうしたの?」
「にゃにゃん?」
たまが穴を見て首を傾げていた。
「ああ、それはね─」
「にゃあ」
説明しようとすると、たまが穴の中に入ってくるくると位置を確かめたと思ったらすぽりとはまった。
こっこれは!
「ふおおおぉ…ねこ…鍋…!!」
もふもふの被毛が穴の縁から溢れ、みっちり感が最高です!!
普通の猫なら大きい穴だけど、たまはサイズを変幻自在に変えられるからか理想のみっちり感を実現している。
「たっ、たましゃん…っ」
はわわっとテンは瞳をキラキラと輝かせて、そろそろと両手をたまの被毛に埋める。
もっふぁ…。
「しゅ、しゅてき…っ」
感動で呂律も回らない。
ひとしきりもふもふと撫で回していたが、テンの目的はねこ鍋を作ることではない。
むしろ、たまが来ることなんて想定外だし。
「たましゃん。おくつろぎの所申し訳ないんだけど…」
「にゃん?」
テンに気持ち良さそうにモフられていたたまは、上目遣いでこてりと首を傾げる。
「あぁぁ~可愛いぃ~」
誘惑に負けてまたモフり始める。これでは堂々巡りだ。
もうこのままたまをモフり続けても良いのでは?と思い始めていたら、空からハクがふわりと降りてきた。
「わふん!」
「あれ、ハクだ。ディーは一緒じゃないの?珍しいね」
「くぅん…」
ハクは空を駆ける時は大きくなって、地上に降りる時は小さくなる事で目立たなくすることを覚えた。
もちろん人が乗っていない時に。
今は柴犬サイズで、穴に入っているたまを不思議そうに眺めていた。
「わふ?」
「ん?たまはねぇ、ねこ鍋になってるんだよ。ハクが穴に入ったら犬鍋だね!」
「きゅーん?」
なべ?みたいな疑問が顔に出ているハクに、元の世界でのねこ鍋ブームを語ってみた。
「まあ犬なら穴に入るより穴を掘るけどね………あっ!」
ここほれワンワン!!
「ハク!この穴大きくできる?」
まったりしているたまをみょーんと持ち上げて、ハクに穴を見せると、ハクが元気よく返事をして掘り始めた。
ゴシャシャシャッ!!
「おおーー。なんたるスピード…」
たまを抱えながら呆気に取られていると、わずか数分で1メートル程の深さになった。
「もういいよ~。ありがとうハク」
「きゅふ」
あんなに土を掘ったのに全く汚れていないハクの頬をもしゃもしゃかき混ぜながら労う。
さて、やりますか。
たまとハクがテンの作業を不思議そうに眺めながら静かに待機している横で、さっきまで座っていたレジャーシートを穴に被せ、その上に土をせっせと戻す。
皆様もうお気づきでしょう。
「見て!落とし穴の完成だよ!」
不自然に土がモコモコしているが、レジャーシートの部分は全て隠し、ちょっと草や葉っぱを散らしてカムフラージュ。
全然カムフラージュされていないのがテンクオリティ。
たまとハクは揃って同じ方向に首を傾げる。
言葉がわかれば、「テンは何をしているのだろう?」と言ったところか。
「んっふっふっ。これはねぇ悪戯の王道?かどうかはわからないけど、落とし穴と言って、気付かずにこの上を歩くと落ちちゃう!っていう仕組みなんだよ」
「……?」
「……?」
この時のたまとハクは、「これって狩りの時の罠に似てる…?でも悪戯…?」と不思議がっていた。
「いやー落とし穴なんて作った事無かったから、一度は作ってみたかったんだよねー。感無量」
うんうんと頷いて、落とし穴の周りをくるくると周りながら確認して、またうんうん頷く。
テン的に大満足だ。
「たま!」
「ハク!」
落とし穴完成と同時にヴィジスタとディオーレンがたまとハクを探しにやって来た。
「ヴィー、ディー、ハクとたまはここにいるよ~」
とテンが声を掛けると、2人は何やら怒った様子でこちらへと走ってくる。
「どうしたの?」
「くぅーん…」
「にゃ」
ちょっと気まずそうに鳴くハクと、我関せずと鳴くたま。
そんなハクにディオーレンは仕方なさそうに溜息をつき、反省?何それ美味しいの?みたいな雰囲気のたまにヴィジスタはイラッとしている。
話を聞くと、テンに会いに行こうとしてハクとたまを探していたが何処にも居ないので、もしかしたら勝手にテンの所に行ってるのでは?と急いでポルタ家に来たらしい。
「僕がテンに会えない時でもたまは勝手に会いに来てるの知ってるんだよ。ねぇたま?」
「んにゃん」
「ハクは何でここに?」
「きゅーん…」
「………テンに会いたくて来ちゃった?だと?」
「きゅふ…」
うーん、ハクとたまは正反対だねぇ。
さすがお猫様とお犬様。
と、主従で会話をしているので、テンは後始末することにした。
ヴィジスタとディオーレンは互いの相棒に気を取られていると、視界の端でテンがぴょんっと飛び跳ねるのが見えた。
ズボ!!
「「は?」」
「にゃ?」
「わふ?」
土まみれになって穴の中にいるテン。
それに2人と2匹は目を丸くする。
「あ、こっちのことは気にしないでー」
自ら落とし穴に落ちたのだ。
「「テン!?」」
「ん?どうしたの?」
慌ててテンに手を差し伸べるヴィジスタとディオーレンに、「汚れるよー」と断って自分でよいしょ。と出てきた。
「何してるの!?」
「落とし穴!?何でこんな所に!?」
経緯を知らない2人が驚くのも無理はない。
まさかポルタ家の庭に落とし穴があるなんて思わないし、テンがそれに落ちる?というか自ら落ちたのも意味がわからないから。
テンは笑いながら1回作りたかったんだー、と説明し、自分で落ちたのも片付けるためだと説明した。
「だって他の人が落ちたら危ないでしょー?でもせっかく作った落とし穴だからハマってあげないとね!」
土まみれのテンはやり切ったぜ!と大・大・大満足の落とし穴作りだった。
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