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閑話 その時彼は
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カールはドがつくシスコンだ。
もちろん自分でも分かっている。が、あえて治そうとは思わない。何故なら、何も問題がないからだ。
ああ…今日もセラが可愛い…。
朝、カールは寝ぼけながらフラフラ歩いているセラの姿を見つけると、驚かさないように声をかけてからそっと抱き上げる。
もちろん、ダイニングテーブルに行くまでに転ばないように。
「おはよう、寝坊助さん。フラフラしてると転んでしまうからね。一緒に行こう」
「…はょ…ぅ…るぅにぃ……ぅにゃ…」
まだまだ眠いのか、目をぐしぐしと小さなお手手で擦っているのを優しくおろし、少し赤くなった目尻にちゅっとキスをする。
「目は擦ったらダメだよ。ほら、赤くなってる」
ん~…という間延びした返事をするセラに何度か頬にキスをし、最後に赤くなった目尻にもう一度キスを落とす。少し長めに唇を付けながら回復魔法を使い、目尻の赤みを治しておく。
「寝ぼけてるセラも愛おしいけど、お目目がパッチリと開いているセラが見たいな。顔を洗ってスッキリしようか」
またしても、ん~という生返事にカールは微笑む。
あぁ、ホントに俺のセラは天使だ。こんなに可愛くては外になんて出せないな。まだ幼いから家から出ないけれど、大きくなったらあっという間に飛んでいってしまう…この天使を捕まえておくにはまだまだ沢山勉強しないとな。
それだけの為に学校へと行っているカールである。
最も、授業という点では受けているが受けていない様なもので、専ら学校内の図書室や村立の図書館等の本がカールの目的である。
村なので最低限の書物しかないが、それでも己の知識を広げ、深めていった。これがカールの天才たる所以である。
全ては最愛のセラのために。
「ねぇカール様、今日こそ私と一緒に帰りましょう。馬車は手配しておりますの。カール様のご自宅は少し遠いでしょう?」
「あら、抜け駆けはダメですわ。何を勝手なことをしているのよ」
「そうですわ!」
カールの周りには何を勘違いしているのか、派手な化粧をした女子生徒が集まっている。自分の見目に自信があるもの達だ。
キャンキャンと喚く女達はさぞや煩い事だろうと思うが、そこはカール。音が聞こえないように結界を張っているので、周りから見れば姦しい女達の中、黙々と読書をしているようにしか見えない。
そろそろ休憩時間も終わり、次の授業が始まろうとしていた、その時。
ビーーーッビーーーッ!!
カールにしか聞こえない警告音が鳴った。
「──セラッッ!?」
ガタンッ!と立ち上がった勢いで椅子が倒れるが、カールは構っていられなかった。
自宅の周囲に張り巡らせた結界をセラが越えたのだ。脳が判断するよりも体が動く。
普段顔色ひとつ変えないカールが顔面蒼白になり、突然教室の窓から飛び出して行った。
周りにいた女達はもちろんの事、クラスメイト全員がカールの様子に唖然呆然とした後、天変地異の前触れかと思うほどの大騒ぎになり、1人の女が慌ててカールを追って教室から出ていった事など誰も気が付かなかった。
「セラーーッ!」
クソッ!まさかこんな直ぐに出ていくなんて!まだ間に合うか!?
走るより飛ぶ方が速いと、フライ魔法で自宅の方へとセラを探しながら飛ぶ。微かに反応するセラの気配を探しながら飛ぶので、あまりスピードが出せない。
こんな時に自身の未熟さを痛感する。
もっともっと魔法の精度を高めなければと。
そして自宅へと続く大きい道で、セラとスヌーを見つける。
キョトンとした顔に安堵し、小さな体を抱き締めてその存在を確認すると漸く息をつけた。
愛しい愛しいセラが自分の腕の中にいる。まだ大丈夫だ。早くセラの腕輪を完成させなければ。こんな心臓が止まる経験を二度としたくない。
その後、不快な人間が俺を追って来たが無視していると、セラがチラチラとその人間を気にしている。そんなもの見ないで俺だけを見ていればいいのに。
……うるさいなぁ。
……こいつは俺のセラに何を言っているんだ。
……セラが震えている。こいつのせいか、よし、吹き飛ばそう。
「……いい加減にしろよ……」
「ひょっ!?」
「ッッ…カール様…?」
カールはガン無視していた女に向かって殺気を放つ。
セラとの時間を邪魔した挙句、セラを怖がらせた。
この女、許すまじ。
手の平に魔法陣を構築し、風魔法を発動させるために呪文を唱えていると、何故かブラックベアーを背負った父親が森から出てきた。
緊迫した空気をぶち抜いた父親に、カールも女に興味を失って手を下ろす。
チッ、タイミング悪いな。
「セラー、これも収納してくれ」
「へーい」
「……収納?」
今なんて言った?収納?……それ空間魔法だよね?
「セラ?俺達に言ってないこと、まだまだ沢山あるみたいだね?」
「ひぇっ」
全部吐くまで許さない。
「セラ、後でね?」
ふふっ強ばった顔も可愛いな。
結局、セラの可愛さに絆されてしまう自分に苦笑しながら、必死に話をそらそうとしているセラに免じて今は聞かないでおいてあげる。
今はね。
××××××××
書いているとヤンデレか?という疑惑のカールさん。ヤンデレ風だけどヤンデレじゃないのよ( ´・ω・`)
あっ小屋制作で色々やらかしてるのに今更空間魔法に突っ込んじゃった(笑)小屋制作忘れてたー。
もちろん自分でも分かっている。が、あえて治そうとは思わない。何故なら、何も問題がないからだ。
ああ…今日もセラが可愛い…。
朝、カールは寝ぼけながらフラフラ歩いているセラの姿を見つけると、驚かさないように声をかけてからそっと抱き上げる。
もちろん、ダイニングテーブルに行くまでに転ばないように。
「おはよう、寝坊助さん。フラフラしてると転んでしまうからね。一緒に行こう」
「…はょ…ぅ…るぅにぃ……ぅにゃ…」
まだまだ眠いのか、目をぐしぐしと小さなお手手で擦っているのを優しくおろし、少し赤くなった目尻にちゅっとキスをする。
「目は擦ったらダメだよ。ほら、赤くなってる」
ん~…という間延びした返事をするセラに何度か頬にキスをし、最後に赤くなった目尻にもう一度キスを落とす。少し長めに唇を付けながら回復魔法を使い、目尻の赤みを治しておく。
「寝ぼけてるセラも愛おしいけど、お目目がパッチリと開いているセラが見たいな。顔を洗ってスッキリしようか」
またしても、ん~という生返事にカールは微笑む。
あぁ、ホントに俺のセラは天使だ。こんなに可愛くては外になんて出せないな。まだ幼いから家から出ないけれど、大きくなったらあっという間に飛んでいってしまう…この天使を捕まえておくにはまだまだ沢山勉強しないとな。
それだけの為に学校へと行っているカールである。
最も、授業という点では受けているが受けていない様なもので、専ら学校内の図書室や村立の図書館等の本がカールの目的である。
村なので最低限の書物しかないが、それでも己の知識を広げ、深めていった。これがカールの天才たる所以である。
全ては最愛のセラのために。
「ねぇカール様、今日こそ私と一緒に帰りましょう。馬車は手配しておりますの。カール様のご自宅は少し遠いでしょう?」
「あら、抜け駆けはダメですわ。何を勝手なことをしているのよ」
「そうですわ!」
カールの周りには何を勘違いしているのか、派手な化粧をした女子生徒が集まっている。自分の見目に自信があるもの達だ。
キャンキャンと喚く女達はさぞや煩い事だろうと思うが、そこはカール。音が聞こえないように結界を張っているので、周りから見れば姦しい女達の中、黙々と読書をしているようにしか見えない。
そろそろ休憩時間も終わり、次の授業が始まろうとしていた、その時。
ビーーーッビーーーッ!!
カールにしか聞こえない警告音が鳴った。
「──セラッッ!?」
ガタンッ!と立ち上がった勢いで椅子が倒れるが、カールは構っていられなかった。
自宅の周囲に張り巡らせた結界をセラが越えたのだ。脳が判断するよりも体が動く。
普段顔色ひとつ変えないカールが顔面蒼白になり、突然教室の窓から飛び出して行った。
周りにいた女達はもちろんの事、クラスメイト全員がカールの様子に唖然呆然とした後、天変地異の前触れかと思うほどの大騒ぎになり、1人の女が慌ててカールを追って教室から出ていった事など誰も気が付かなかった。
「セラーーッ!」
クソッ!まさかこんな直ぐに出ていくなんて!まだ間に合うか!?
走るより飛ぶ方が速いと、フライ魔法で自宅の方へとセラを探しながら飛ぶ。微かに反応するセラの気配を探しながら飛ぶので、あまりスピードが出せない。
こんな時に自身の未熟さを痛感する。
もっともっと魔法の精度を高めなければと。
そして自宅へと続く大きい道で、セラとスヌーを見つける。
キョトンとした顔に安堵し、小さな体を抱き締めてその存在を確認すると漸く息をつけた。
愛しい愛しいセラが自分の腕の中にいる。まだ大丈夫だ。早くセラの腕輪を完成させなければ。こんな心臓が止まる経験を二度としたくない。
その後、不快な人間が俺を追って来たが無視していると、セラがチラチラとその人間を気にしている。そんなもの見ないで俺だけを見ていればいいのに。
……うるさいなぁ。
……こいつは俺のセラに何を言っているんだ。
……セラが震えている。こいつのせいか、よし、吹き飛ばそう。
「……いい加減にしろよ……」
「ひょっ!?」
「ッッ…カール様…?」
カールはガン無視していた女に向かって殺気を放つ。
セラとの時間を邪魔した挙句、セラを怖がらせた。
この女、許すまじ。
手の平に魔法陣を構築し、風魔法を発動させるために呪文を唱えていると、何故かブラックベアーを背負った父親が森から出てきた。
緊迫した空気をぶち抜いた父親に、カールも女に興味を失って手を下ろす。
チッ、タイミング悪いな。
「セラー、これも収納してくれ」
「へーい」
「……収納?」
今なんて言った?収納?……それ空間魔法だよね?
「セラ?俺達に言ってないこと、まだまだ沢山あるみたいだね?」
「ひぇっ」
全部吐くまで許さない。
「セラ、後でね?」
ふふっ強ばった顔も可愛いな。
結局、セラの可愛さに絆されてしまう自分に苦笑しながら、必死に話をそらそうとしているセラに免じて今は聞かないでおいてあげる。
今はね。
××××××××
書いているとヤンデレか?という疑惑のカールさん。ヤンデレ風だけどヤンデレじゃないのよ( ´・ω・`)
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