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2 こんなやりとり

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白い空間にポツンと立ちすくむ。

ここ、どこ?








ああっ!仕事!仕事に行かなきゃ!!今何時!?

今日は大事な会議が!








………………って、慌てても夢から醒めない。

どうせもう少しで覚醒するでしょ。
久しぶりに明晰夢を見たな。

どうせなら会議のシミュレーションでもしとこうかしら。


「こほん……さて、本日の議題である有給休暇取得の為の…」
「小町瀬良さん」
「取得率向上のための特別な名称を…」
「すみません、聞こえてますか?」
「資料をお配り致しますので、少々お待ちくだ」
「あの!!小町さん!!小町瀬良さーん!!」
「………何でしょうか?」

昔の病院の受付みたいな呼び方はやめてください。

いい感じにノってきた所に水を差されるとやる気なくすタイプなので。

渋々声の方を振り向くと、黒髪ウェーブの巫女服を着た女性が立っていた。

はて?

こんなキャラクターいたかな?

美〇女戦士の火星の方によく似ておられますね。でもあっちはストレートヘアですが。

「何か私に用でしょうか?レイちゃん」
「え、レイちゃん??」
「あ、すみません、なんでもないです」

少し猫目の美人さんは、キョトリと首を傾げて不思議そうな顔をしている。

「ええ、と、貴女はどちら様ですか?」
「あっごめんなさい!私は地球の女神をやっているガイアと申します」
「はぁ…」

私疲れてるな。変な夢見るほど。

「すみません、これ夢では無いんです…」

申し訳なさそうに謝る自称女神。

「小町瀬良さん。享年35歳。死因は過労による目眩によって車道への飛び出し。そこにトラックが」
「テンプレ!?トラックに轢かれたのですね!」
「いえ、トラックはぶつかる寸前で止まりました」
「武田〇矢か」
「?」
「すみません、続けてください」
「は、はい。そのトラックから降りてきた運転手さんと和解した後、振り返った時に電柱に頭をぶつけて転倒し、後頭部を強く打って亡くなられました」
「………とりあえず、トラックの運ちゃんに迷惑かけてなくて良かったわ」

死因がアホすぎる。携帯小説で異世界転生ものを読み漁ってたけど、いざ体験してみると微妙すぎる。

「で、まさかとは思うけど異世界に転生するとか言わないよね?」
「スゴい!何故わかったんです!?最近の日本人は冴えてますね!迎えに来ると皆さんそう言うんです!それでしたら話は簡単ですね。私の部下が管理する世界に転生して世界を救ってください!」
「は?嫌ですけど」
「……え?」
「嫌です」
「あれ?」
「い・や・で・す」

喜色満面の自称女神が私の発言で固まった。なんで快く引き受けると思ったのか。普通に考えて無理でしょ。

「なんで夢でも仕事しなきゃいけないんだ。そりゃ会議のシミュレーションはしてたけどさぁ、世界を救うとかアホなの?どんなハリウッドだよ」
「あのぉ、もしかしてまだ夢だと思ってます?」
「夢じゃん。いや、これが夢だとすると私の頭の中身ヤバいから夢じゃない方がいいのか?」

う~ん?と悩んでいると自称女神が慌てだした。

「小町瀬良さん!貴女は本当に亡くなったのです!まずこの前提をしっかり理解してください!」
「ええー」
「最悪の場合、小町瀬良さんの同意なしで転生してもらうことになります。むしろ転生する事は決定事項なのです」
「…………わかりました。でも転生するにしても世界を救うとか無理です。報酬も無いのに仕事するなんてホント無理。魔王とか倒すなんて、魚すら捌きたくないのに無理。異世界転生って今の日本人に不向きじゃない?」
「おかしいわね…皆さんすんなり同意してくれたのに…」
「厨二病発症してたのね。さすがにアラサーでそれは無い」

真顔で吐き捨てたら怯えられた。解せぬ。

「そうだ!皆さんチートが欲しいって言ってました!もちろん手厚い加護はつけさせていただきます。小町さんは何か欲しいものはありますか?」
「そうですね、まずは使い切れないほどの金ですね。仕事はもうしたくないでこざる。遊んで暮らしたいでござる。インベントリもしくはアイテムボックスもしくは無限収納もください」
「それ全部同じ意味では」
「あと全属性の魔法使いたいです。器用貧乏でもいい、色んな魔法を試したい。あともふもふ」
「もふもふ」
「もふもふは大事。もふもふに愛されたい。猫、狼、狐、熊も良い、可愛ければ何でもOK」
「それなら良く言われます!」
「完全言語理解も付けて。勉強したくない」
「はあ、まあ大丈夫ですよ」

私の言う条件をサラサラと透明な液晶に綴っている自称女神に、一応聞いてみた。やるとは言ってないからね。これ大事。

「で、貴女の部下の世界は何で困ってるの?」

ぱあっと花が開いたかのような笑顔と言うのはこういう事か、という満面の笑顔で嬉しそうに説明を自称女神がし始めた。

「ありがとうございます!実はですね、私の部下の一神であるアフロディーテが趣味で作った世界なのですが」
「すでに聞く気が失せた」
「え?何か言いました?」
「いえ、どうぞ続きを」
「あの子ってばとっても優しい子で世界は愛に溢れてる!って言いながら作ったせいなのか、悪意に鈍い生き物が産まれてしまったんです。地球で言うところのアホウドリですね。警戒心が無いせいで簡単に捕まってしまう所がとても似ているわ…なので貴女には悪意という感情は怖いのだという事を世界に広めて欲しいのです!」
「何だろう、私は悪役転生させられる気しかしない」
「何を言うのです!立派な救世主です!」
「世界にとってはね」
「このままだとアフロディーテの世界の生き物はどんどん絶滅してしまうのです!どうか助けてください!」
「いや、ガイアさん?がやればいいじゃないですか」
「神は誰しも世界に干渉出来ないのです…」
「ポンコツやん」

しゅんと悲しそうに俯いた自称女神には私のツッコミは届かなかった。無念。




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