上 下
2 / 31

2 こんなやりとり

しおりを挟む
白い空間にポツンと立ちすくむ。

ここ、どこ?








ああっ!仕事!仕事に行かなきゃ!!今何時!?

今日は大事な会議が!








………………って、慌てても夢から醒めない。

どうせもう少しで覚醒するでしょ。
久しぶりに明晰夢を見たな。

どうせなら会議のシミュレーションでもしとこうかしら。


「こほん……さて、本日の議題である有給休暇取得の為の…」
「小町瀬良さん」
「取得率向上のための特別な名称を…」
「すみません、聞こえてますか?」
「資料をお配り致しますので、少々お待ちくだ」
「あの!!小町さん!!小町瀬良さーん!!」
「………何でしょうか?」

昔の病院の受付みたいな呼び方はやめてください。

いい感じにノってきた所に水を差されるとやる気なくすタイプなので。

渋々声の方を振り向くと、黒髪ウェーブの巫女服を着た女性が立っていた。

はて?

こんなキャラクターいたかな?

美〇女戦士の火星の方によく似ておられますね。でもあっちはストレートヘアですが。

「何か私に用でしょうか?レイちゃん」
「え、レイちゃん??」
「あ、すみません、なんでもないです」

少し猫目の美人さんは、キョトリと首を傾げて不思議そうな顔をしている。

「ええ、と、貴女はどちら様ですか?」
「あっごめんなさい!私は地球の女神をやっているガイアと申します」
「はぁ…」

私疲れてるな。変な夢見るほど。

「すみません、これ夢では無いんです…」

申し訳なさそうに謝る自称女神。

「小町瀬良さん。享年35歳。死因は過労による目眩によって車道への飛び出し。そこにトラックが」
「テンプレ!?トラックに轢かれたのですね!」
「いえ、トラックはぶつかる寸前で止まりました」
「武田〇矢か」
「?」
「すみません、続けてください」
「は、はい。そのトラックから降りてきた運転手さんと和解した後、振り返った時に電柱に頭をぶつけて転倒し、後頭部を強く打って亡くなられました」
「………とりあえず、トラックの運ちゃんに迷惑かけてなくて良かったわ」

死因がアホすぎる。携帯小説で異世界転生ものを読み漁ってたけど、いざ体験してみると微妙すぎる。

「で、まさかとは思うけど異世界に転生するとか言わないよね?」
「スゴい!何故わかったんです!?最近の日本人は冴えてますね!迎えに来ると皆さんそう言うんです!それでしたら話は簡単ですね。私の部下が管理する世界に転生して世界を救ってください!」
「は?嫌ですけど」
「……え?」
「嫌です」
「あれ?」
「い・や・で・す」

喜色満面の自称女神が私の発言で固まった。なんで快く引き受けると思ったのか。普通に考えて無理でしょ。

「なんで夢でも仕事しなきゃいけないんだ。そりゃ会議のシミュレーションはしてたけどさぁ、世界を救うとかアホなの?どんなハリウッドだよ」
「あのぉ、もしかしてまだ夢だと思ってます?」
「夢じゃん。いや、これが夢だとすると私の頭の中身ヤバいから夢じゃない方がいいのか?」

う~ん?と悩んでいると自称女神が慌てだした。

「小町瀬良さん!貴女は本当に亡くなったのです!まずこの前提をしっかり理解してください!」
「ええー」
「最悪の場合、小町瀬良さんの同意なしで転生してもらうことになります。むしろ転生する事は決定事項なのです」
「…………わかりました。でも転生するにしても世界を救うとか無理です。報酬も無いのに仕事するなんてホント無理。魔王とか倒すなんて、魚すら捌きたくないのに無理。異世界転生って今の日本人に不向きじゃない?」
「おかしいわね…皆さんすんなり同意してくれたのに…」
「厨二病発症してたのね。さすがにアラサーでそれは無い」

真顔で吐き捨てたら怯えられた。解せぬ。

「そうだ!皆さんチートが欲しいって言ってました!もちろん手厚い加護はつけさせていただきます。小町さんは何か欲しいものはありますか?」
「そうですね、まずは使い切れないほどの金ですね。仕事はもうしたくないでこざる。遊んで暮らしたいでござる。インベントリもしくはアイテムボックスもしくは無限収納もください」
「それ全部同じ意味では」
「あと全属性の魔法使いたいです。器用貧乏でもいい、色んな魔法を試したい。あともふもふ」
「もふもふ」
「もふもふは大事。もふもふに愛されたい。猫、狼、狐、熊も良い、可愛ければ何でもOK」
「それなら良く言われます!」
「完全言語理解も付けて。勉強したくない」
「はあ、まあ大丈夫ですよ」

私の言う条件をサラサラと透明な液晶に綴っている自称女神に、一応聞いてみた。やるとは言ってないからね。これ大事。

「で、貴女の部下の世界は何で困ってるの?」

ぱあっと花が開いたかのような笑顔と言うのはこういう事か、という満面の笑顔で嬉しそうに説明を自称女神がし始めた。

「ありがとうございます!実はですね、私の部下の一神であるアフロディーテが趣味で作った世界なのですが」
「すでに聞く気が失せた」
「え?何か言いました?」
「いえ、どうぞ続きを」
「あの子ってばとっても優しい子で世界は愛に溢れてる!って言いながら作ったせいなのか、悪意に鈍い生き物が産まれてしまったんです。地球で言うところのアホウドリですね。警戒心が無いせいで簡単に捕まってしまう所がとても似ているわ…なので貴女には悪意という感情は怖いのだという事を世界に広めて欲しいのです!」
「何だろう、私は悪役転生させられる気しかしない」
「何を言うのです!立派な救世主です!」
「世界にとってはね」
「このままだとアフロディーテの世界の生き物はどんどん絶滅してしまうのです!どうか助けてください!」
「いや、ガイアさん?がやればいいじゃないですか」
「神は誰しも世界に干渉出来ないのです…」
「ポンコツやん」

しゅんと悲しそうに俯いた自称女神には私のツッコミは届かなかった。無念。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい

海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。 その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。 赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。 だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。 私のHPは限界です!! なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。 しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ! でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!! そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような? ♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟ 皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います! この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

処理中です...