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私が生まれてきた理由
Ⅱ
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ホームルームが終わり、運動部の子たちが颯爽と教室を出ていく。私は活動日数の少ない軽音部。だってバイトしなきゃだし。帰宅部の予定満々だったけれど、一、二年生は部活動必須ということを入学後に知った。ヘンな高校だ。
置き勉のおかげで空っぽのリュックを片手に教室を出ようとした、ときだった。
「あの、千里さん」
私の机にやってきたのは、今宮だった。蒸し暑くなってきたというのに、第一ボタンまでキッチリしめネクタイまでしている。暑くないのだろうか。
「な、何かついてる?」
あまりにもくだらないことを考え返事をするのを忘れたせいか、今宮が重たい前髪をいじり始めた。なんか鼻につく。
「や、何?」
「今日月曜日なんだけど……」
「月曜日?」
なんかあったけ?
「図書室の当番……」
あー、あったわ。
結局2ヶ月、当番をすっぽかしていた。我ながらなんてダメ人間だろうとも思うし、委員会に出るたび先生からも注意されていたけれど、鋼のメンタルでフル無視していた。てか、今宮いるから良くない? クビでも良いんだけど。私、いる意味ないし。
「俺も注意されてて……」
「てきとーに体調不良とか言っといてよ」
「もう5回くらい使っちゃって」
マジか。でも今日バイト入れちゃったしなあ。何の罪もない今宮にまで被害が及んでいると思うと、こんな私でも少し申し訳なくなった。まさか、かばってくれているとは。ごめんよ、今宮。
「わかった。来週は絶対出る。これは本当に約束する。だから今日は見逃して! お願い!」
目の前で両手を合わせる。ちらっと片目を開けると、今宮が困ったような顔をして頷いた。前髪のせいで、ぶっちゃけ表情はほぼわからないけれど。
こんなことを言ってしまったから、月曜日は必ず図書室に行かざるをえなくなった。一週間も経つとめんどくさい気持ちの方がかなり大きくなり、再びバックレる方法を探していた。が、今宮を見るとやはり良心が痛む。まあ放課後だし、そんなに利用する人いないよね? すぐ帰れるよね? 頑張れ私、明日は当落なんだから、少しでも徳を積まなきゃ。と思いつつも、やはり朝から気が重かった。相手が和泉君だったら、毎日でも当番やるのに。
「えっと、まず新刊のカード作りと、返却された本のチェック、それから掃除と、二週間後に予定されてるホラー特集の紹介カード作り」
ナニコレ忙しいじゃん。いつもならすぐに駐輪場に向かっている時間、私は重い腰を上げ図書室へと来ていた。カウンターのパイプ椅子はさびれていて、動くたびに不快な音を鳴らす。隣に座る今宮は早速本を自分の前に置き、パラパラとめくり始めた。埃っぽくて、ツンと来るような独特な匂い。正直クサイ。
「ホラー特集の本は、もう終わってるから」
「ありがと。私本全然読まないからわからないや」
思った通り、放課後の図書室は利用者が少ない。それも3年生であろう、必死に机に向かっている人がぽつぽつと見えるだけだ。シャーペンが走る音、ページをめくる音、それしか聞こえず、居心地が悪い。何て言うの、こういう空間苦手なんだよね。真面目ムードが、伝染しそうで。
「てか、私もやるよ。今までアンタに押し付けてたから」
足を組み、今宮から数冊本を奪う。乱丁がないか確かめる作業だから、私でも出来ると思った。
「じゃあ、カード作っちゃうね。もし終わったら、声かけて」
教室では存在感ゼロの覇気のない今宮が、生き生きとして見える。私は気の抜けた返事をすると、作業に取り掛かり始めた。
置き勉のおかげで空っぽのリュックを片手に教室を出ようとした、ときだった。
「あの、千里さん」
私の机にやってきたのは、今宮だった。蒸し暑くなってきたというのに、第一ボタンまでキッチリしめネクタイまでしている。暑くないのだろうか。
「な、何かついてる?」
あまりにもくだらないことを考え返事をするのを忘れたせいか、今宮が重たい前髪をいじり始めた。なんか鼻につく。
「や、何?」
「今日月曜日なんだけど……」
「月曜日?」
なんかあったけ?
「図書室の当番……」
あー、あったわ。
結局2ヶ月、当番をすっぽかしていた。我ながらなんてダメ人間だろうとも思うし、委員会に出るたび先生からも注意されていたけれど、鋼のメンタルでフル無視していた。てか、今宮いるから良くない? クビでも良いんだけど。私、いる意味ないし。
「俺も注意されてて……」
「てきとーに体調不良とか言っといてよ」
「もう5回くらい使っちゃって」
マジか。でも今日バイト入れちゃったしなあ。何の罪もない今宮にまで被害が及んでいると思うと、こんな私でも少し申し訳なくなった。まさか、かばってくれているとは。ごめんよ、今宮。
「わかった。来週は絶対出る。これは本当に約束する。だから今日は見逃して! お願い!」
目の前で両手を合わせる。ちらっと片目を開けると、今宮が困ったような顔をして頷いた。前髪のせいで、ぶっちゃけ表情はほぼわからないけれど。
こんなことを言ってしまったから、月曜日は必ず図書室に行かざるをえなくなった。一週間も経つとめんどくさい気持ちの方がかなり大きくなり、再びバックレる方法を探していた。が、今宮を見るとやはり良心が痛む。まあ放課後だし、そんなに利用する人いないよね? すぐ帰れるよね? 頑張れ私、明日は当落なんだから、少しでも徳を積まなきゃ。と思いつつも、やはり朝から気が重かった。相手が和泉君だったら、毎日でも当番やるのに。
「えっと、まず新刊のカード作りと、返却された本のチェック、それから掃除と、二週間後に予定されてるホラー特集の紹介カード作り」
ナニコレ忙しいじゃん。いつもならすぐに駐輪場に向かっている時間、私は重い腰を上げ図書室へと来ていた。カウンターのパイプ椅子はさびれていて、動くたびに不快な音を鳴らす。隣に座る今宮は早速本を自分の前に置き、パラパラとめくり始めた。埃っぽくて、ツンと来るような独特な匂い。正直クサイ。
「ホラー特集の本は、もう終わってるから」
「ありがと。私本全然読まないからわからないや」
思った通り、放課後の図書室は利用者が少ない。それも3年生であろう、必死に机に向かっている人がぽつぽつと見えるだけだ。シャーペンが走る音、ページをめくる音、それしか聞こえず、居心地が悪い。何て言うの、こういう空間苦手なんだよね。真面目ムードが、伝染しそうで。
「てか、私もやるよ。今までアンタに押し付けてたから」
足を組み、今宮から数冊本を奪う。乱丁がないか確かめる作業だから、私でも出来ると思った。
「じゃあ、カード作っちゃうね。もし終わったら、声かけて」
教室では存在感ゼロの覇気のない今宮が、生き生きとして見える。私は気の抜けた返事をすると、作業に取り掛かり始めた。
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