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第2話
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さてさて、それじゃあ早く顔を洗って着替えちゃいますか。
私が井戸の中の水を桶に移し、顔を洗おうとしたその瞬間。
もの凄い勢いで走って来た馬が、私の目の前で急ブレーキをかけて止まった。
それと同時に、水の入った桶が馬の足にあたって吹っ飛んでしまった。
「 ………………えっっ?? ちょ、桶……、ええ?? 」
一瞬、何が起きたのか分からなくなって、頭がフリーズしてしまう。
そんな私に、馬に乗っていた彼が声をかける。
「 す、すまない、大丈夫か? 私としたことが……、水はかかっていないか? 」
「 あ……、ええ、まあ大丈夫ですけど……、一体、どうなさったんですか、ルイスお兄様? 」
この、急に急に馬に乗って現れた青年は、同じく森に住むルイスというエルフで、比較的私と歳が近くて、
昔からお世話になっていたりするので、敬愛をもってお兄様と呼ばせてもらっている。
どうやら凄く焦ってるみたいだけど、どうしたんだろう。
「 あ、ああ、そうだ、早く逃げるんだ!!じゃないと、追っ手がすぐに来てしまう!! 」
「 え?追っ手って一体なんの…… 」
「 エルフ狩りだ!!!エルリア国の人間がこの森に侵入して来たんだ!! 」
「 そ、そんな、なんで急に…… 」
エルフ狩り。
それは、精霊と語り合うことができ、強力な魔法が放つことができて、極めて長い寿命と、優れた身体能力を持つエルフを恐れた人間達が行い始めた行為。
この行為のせいでエルフの民の人口は半分以下まで減ってしまったらしい。
最近ではもうほとんどエルフ狩りが行われなくなったってお父さんは言っていたけど……。
なんでここに来てまた……。
「 理由は分からない。エルリアの国王だって、昔からこの森にはエルフがいることを知っていたはずだし、
それを知った上で、エルフ狩りを行なっていなかったはずだ。それなのに…… 」
「 そんな…… 」
「 とりあえず、今はひたすら逃げるんだ!!捕まってしまったら、元も子もない。さあ、早く!!
君のお母さんには私から伝えておこう 」
「 で、でも、お父さんが…… 」
「 君のお父さんなら、きっと大丈夫さ。この森一番の剣士なんだから 」
「 そ、そうですよね……、きっと、大丈夫…… 」
「 ああ、とりあえず今は森の外まで逃げるんだ。君のお母さんに事情を伝えたら、すぐ追いつくよ。
……ああ、そうだ、森の外に出ても、エルフってバレたら意味がないからね、これ、貸しておくよ 」
そう言ってルイスお兄様は私に、ローブを羽織らせてくれた。
「 ありがとう、お兄様…… 」
私はそれだけいうと、森の外を目指して駆け出した。
少し、嫌な予感がしたけど、私はきっと大丈夫、気のせいだろう、と思うことにした。
私が井戸の中の水を桶に移し、顔を洗おうとしたその瞬間。
もの凄い勢いで走って来た馬が、私の目の前で急ブレーキをかけて止まった。
それと同時に、水の入った桶が馬の足にあたって吹っ飛んでしまった。
「 ………………えっっ?? ちょ、桶……、ええ?? 」
一瞬、何が起きたのか分からなくなって、頭がフリーズしてしまう。
そんな私に、馬に乗っていた彼が声をかける。
「 す、すまない、大丈夫か? 私としたことが……、水はかかっていないか? 」
「 あ……、ええ、まあ大丈夫ですけど……、一体、どうなさったんですか、ルイスお兄様? 」
この、急に急に馬に乗って現れた青年は、同じく森に住むルイスというエルフで、比較的私と歳が近くて、
昔からお世話になっていたりするので、敬愛をもってお兄様と呼ばせてもらっている。
どうやら凄く焦ってるみたいだけど、どうしたんだろう。
「 あ、ああ、そうだ、早く逃げるんだ!!じゃないと、追っ手がすぐに来てしまう!! 」
「 え?追っ手って一体なんの…… 」
「 エルフ狩りだ!!!エルリア国の人間がこの森に侵入して来たんだ!! 」
「 そ、そんな、なんで急に…… 」
エルフ狩り。
それは、精霊と語り合うことができ、強力な魔法が放つことができて、極めて長い寿命と、優れた身体能力を持つエルフを恐れた人間達が行い始めた行為。
この行為のせいでエルフの民の人口は半分以下まで減ってしまったらしい。
最近ではもうほとんどエルフ狩りが行われなくなったってお父さんは言っていたけど……。
なんでここに来てまた……。
「 理由は分からない。エルリアの国王だって、昔からこの森にはエルフがいることを知っていたはずだし、
それを知った上で、エルフ狩りを行なっていなかったはずだ。それなのに…… 」
「 そんな…… 」
「 とりあえず、今はひたすら逃げるんだ!!捕まってしまったら、元も子もない。さあ、早く!!
君のお母さんには私から伝えておこう 」
「 で、でも、お父さんが…… 」
「 君のお父さんなら、きっと大丈夫さ。この森一番の剣士なんだから 」
「 そ、そうですよね……、きっと、大丈夫…… 」
「 ああ、とりあえず今は森の外まで逃げるんだ。君のお母さんに事情を伝えたら、すぐ追いつくよ。
……ああ、そうだ、森の外に出ても、エルフってバレたら意味がないからね、これ、貸しておくよ 」
そう言ってルイスお兄様は私に、ローブを羽織らせてくれた。
「 ありがとう、お兄様…… 」
私はそれだけいうと、森の外を目指して駆け出した。
少し、嫌な予感がしたけど、私はきっと大丈夫、気のせいだろう、と思うことにした。
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