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第三話

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 リサは、廊下のつき当たりにあったドアを開く。そこには、天井が四メートルほどだろうか。とにかく広く高い空間があった。奥に段差があり、ひな壇のような空間を形成している。そのひな壇の上には、いかにも玉座というような椅子が配置してあり、そこにひげを蓄えた四十くらいのおっさんが座っていた。どれほど玉座化と言うと、背もたれが赤の絨毯のような素材でできており、その絨毯のような素材を金の骨組みが包み込んでいた。しかも、椅子の足も金である。正直、まぶしいからやめてくれないかな。

「サカキワ陛下。リプリの記述通りに異国から人間が現れたので連れて参りました」

 リサが、そう仰々しく言い、玉座の前でひざまずく。いや、きみさっきまでそんなキャラじゃなかったよね。私偉いからとか言ってたよね。もしかして、利根川みたいな中間管理職なの?きみ。そうなると、あいつが兵頭会長か……。もっとこう兵頭会長って威厳あるよね。兵頭会長より威厳のない国王ってのも不安なんだけど……。大丈夫かなこの国……。

「ほう。そこの男がか」

 そう言って、国王―確か、サカキワとかいう名前だった―は、俺のことを見ながらそう言う。

「謁見出来て光栄と言わないな。本当に異国から来たようだ」

 む、こいつ、王だからって俺に対して失礼なことを言うな。この王にしてこの姫ありって感じだ。リサもさっきそんな感じだったし。しかし、一応こいつは王様だから、変には向かうと殺されてしまうかもしれない。とりあえず、挨拶だけでもしておこう。

「国王陛下。私は日本という異国から来た本郷渡です。以後お見知りおきを」
「ほう。ホンゴウか。まあ、よい。お前はリプリにあるデウス神の神託でこの王国の危機を救うために来た救世主だ。楽にしてよい」

 いや、楽にしてよいって言うけど、立ってるんですよ。俺。座っていいの? これ。もしかして、地べたに座れとか言わないよね? ってか、さっきからみんなリプリって言ってるけど、なんだよリプリって。逆から読んでもリプリかよ。まあ、そうなんだけど。

「それは、座ってもよろしいということでしょうか」
「うむ。そうだ。いま椅子を持ってこさせる。おい、椅子を持ってこい」
「はっ」

 王が、椅子を用意するように言うと、部下らしき男がささっと椅子を持って、俺の後ろに置く。俺はその部下の人に礼を言って椅子に着席した。おお、思ったよりもフカフカしててこの椅子座り心地いいぞ。

「ホンゴウ。お前にリプリの神託の救世主として」
「すいません。ずっと我慢してたんですけど、リプリって何ですか」

 その瞬間、場の空気が凍った。リサなんかは、俺の顔を信じられないという風に見ている。え、なんか俺失言でもしたかな?
 そう思った瞬間、王がものすごい勢いで綿い始めた。え、なに。怖いんだけど。心臓に悪いからいきなり笑うのやめてくれよ。

「そうか。異国から来ると、リプリの伝説も知らんか。リプリって言うのはな、我々の国教プレケス教の教典だ。そこに、百年に一度、神の生誕の地で国を挙げて祈れば異国から救世主が現れると書いてあるんだ。それで、今年がその祈祷式が行われたんだ。その祈祷式の後にきみが来たってわけだ」
 つまり、俺はこの世界で救世主として生きていかなきゃならないわけだ。いや、それは荷が重すぎるんだが。ただの高校生が、一気に王国の救世主とか、冗談にもほどがあると思うぞ。
「そして、救世主の君にお願いしたいことがある」
「……なんでしょうか」

 どんな無理難題を押し付けられるのだろうか。俺はそれを恐れながらびくびくしていた。だって、魔王討伐とかこのタイミングで言われたら、困るからね。前の世界だと、運動神経もさほどよくなかった高校生だったから。体育の成績、五段階評価で、三とかざらだったからね。ってか、三をつけた体育教師の芝、絶対許さないからな。出来ない奴にやり方を教えるのが教育なのに、教えることを放棄してたからなあいつ。そりゃテストとかやってもできるわけないだろ。

「おい、ホンゴウ。聞いているのか?」

 そんなことを考えていたら、どうやら王はそのうちに俺の任務を言い終えていたらしい。

「もう一回お願いします」
「仕方ない。もう一回だけだ。次はないと思え」
 そう言うと、王は少し間を持たせてこう言った。

「首都庁特命公安局、局長補佐に任ずる!」
「はい?」

 今なんて言った? 首都庁特命公安局? つまり、お役所か? どうやら、異世界転生先で俺は公務員をやらされるらしい。いや、なんで? 公務員だったらほかにもなる人いるでしょ。

「そ、そこで何をすればいいんですか」

 俺は、仕事の中身が想像つかないので、王に仕事内容を聞く。なんだよ特命公安局って。特命係かよ。上司は杉下右京とか、ないよね? 大丈夫だよね? 

「今、この首都ナコヤでは奴隷の反乱がおきている。その鎮圧を担当するのが特命公安局だ」

 え、今反乱って言った? そんな物騒なこと起きてるの? しかも、王都で? それやばくないか?

「……それ、拒否とかできますかね」
「拒否権はない。すぐさま仕事にかかってくれ。成功した暁には、執政官補佐の職につけて、この国の貴族の序列のトップであるプリームムの地位を約束しよう」
「光栄に思いなさい。私の部下になれるのよ」

 そう言って、リサがなぜか無い胸を張って言う。いや、別に俺、リサの部下になりたいとか思わないし。逆になりたくないまでもある。

「……失敗したら」
「死罪だ」

 あっ、これ失敗できない奴ですわ。失敗したら死刑とか、きつすぎないっすかね……?

「じょ、冗談ですよね?」
「いや、本気だ。これは元老院会議でも決まっている」
「げ、元老院?」
「国王陛下に政治の助言をする機関よ」

 俺の疑問に対して、リサが答える。なんか、きみ王の前で俺に対して無い胸張ってるから虎の威を借りる狐みたいになってるけど、いいの?
 とにかく、とんでもないことになった。それだけはわかった。
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