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もしも、赤い糸が見えたなら

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「何で・・・・・・」

 昨夜、変な夢を見たと思っていた。だが、小指には未だにあの赤い糸が巻き付いていた。
 残念ながら、それは夢でも何でもなく、現実だという事を示していた。

「もう、こうなったら運命の相手とやらの正体を見てやろうじゃないの」

 私は諦めて学校へ行く準備をした。
 糸が視界にチラチラと見えるのは煩わしかったが、不思議と服を着た際に糸が服の内側に隠れたり体に絡まったりする事はなかった。
 学校への道すがら、私は糸を辿った。一見、非現実的な存在であるその糸は触れる事すら出来そうにない見た目だが、ある事に気が付いた。

「凄い、誰も糸に足を引っ掛けないし、見えてないみたい」

 糸は自分にだけ見えているという事、そして他の人には触れられないという事だった。
 私はひたすらに糸をたぐり寄せながら歩いた。途中、通学路のルートから糸がそれたらどうしようかとも考えたが、糸は学校へとのびていると分かり安心した。
 学校の教室へと進んでいくと、段々と緊張してきた。
 糸は教室へと向かっている。よって、運命の相手が教室に居る可能性が高かった。

「この教室の中に運命の人が? 一体誰なんだろう」

 教室の扉を開け席に着くと、私は辺りを見回した。
 すると、視界の端に赤い糸が目に入った。

「本当に居た」

 その糸をドキドキしながらも目で追いかける。
 そして、赤い糸の先、小指にしっかりと結ばれていた糸の主を見て私は目を見張った。

「げっ!」

 北条 大地
 清潔感があって好感の持てる黒髪の短髪、整った目鼻立ち、切れ長で鋭い目、クラスでも中心に良く居る人物で女子からも人気が高い。
 だが、私は大地の事を男子の中で一番苦手に思っていた。
 座ったばかりの椅子から立ち上がると教室を出た。廊下を大股で闊歩し、人気のない屋上へと向かった。

「ちょっと! 自称神様! よりによって何であいつなのよ!」

「何でって、運命だから?」

「呼んだらほんとに返事した。じゃなくって、チェンジよ! あんな奴が運命の相手だとかまっぴらごめんよ」

「残念じゃが、チェンジのシステムは無いぞ。どこのホストクラブなんだか。そもそも、運命の相手がホイホイ変えられたら運命と言えんじゃろ。どうしてあの者を嫌う?」

 大地は小学校、中学校、そして高校とずっと同じ学校だった。実の所、小学校では一番仲の良い男子生徒だった。
 だが、中学校へ進学し、小学生の時と同じ様に接していると周りが好奇の目で見てきた。

『二人は付き合ってるの?』

 当然聞かれるこの質問に大地はこう答えた。

『そんな訳ないだろ。あいつと付き合うとか絶対ないから』

 私の居る目の前で冷たくハッキリと言ったのを今でも覚えている。
 そんな事があってから、私は大地を避けるようになった。
 向こうも気まずいと思っているのか避けているし、お互い様だ。

「何でって、あいつは私の事なんか好きじゃない」

 だって、あいつはとまで言ったんだから。
 私は、最低でも友達だと思ってたのに。

「とにかく、運命は変えられん、精々頑張るんじゃな」

 そう言って神の声はそこで途切れた。
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