37 / 64
計画を練る
しおりを挟む
「未来を告げるケット・シーは権力者や魔女たちがこぞって欲しがる魔物なんだよ。その僕を連れて魔女の巣窟に行くのはむしろ危険だと思う。アメリアを殺して僕を奪おうとする奴だっているかもしれない」
確かに、ケット・シーは伝承や歴史書にも時々載っているような有名な魔物である。魔女がそれを使い魔にできたのなら、力を使って一気に成り上がることもできるだろう。
「そうだな。じゃあ俺が行こう。何かあれば火炎で全員焼き尽くして脱出すればいい」
元の姿になるだけで簡単に屋敷くらいぶっ壊せるとサラマンダーは胸を張るが、最初からぶっ壊す前提で来るような使い魔では危なくて連れていけない。全員一致でサラマンダーは却下となった。
「じゃあアタシかヘルハウンドだけど……」
ピクシーが言いかけた時、ヘルハウンドが『自分に行かせてほしい』と手(前足)を上げた。
「あの死臭が何処から来るのか、なにが原因なのか俺が行けば少しは分かることがあるかもしれないです。俺は影に入ることもできますし、危険な時はアメリアさんを背負ってにげることもできます」
なるほど、と全員が納得する。死臭をかぎ分けられるのがヘルハウンドだけなのだから、屋敷内につきそうのは彼が適任であろう。
「じゃあ、ヘルハウンドはただの犬に擬態してついて行ってね。アタシたちも魔女集落の結界外で待機して待ちましょう。当日までにまだ時間があるし、皆で手分けしてできるだけ情報収集してみましょう」
チューベローズ家の噂とか最近の様子など聞き込みしようとピクシーが言ったところでひとまず話し合いは終わった。
***
ケット・シーやピクシーは市井に詳しく、他の魔物にも多少交流があるため、聞き込みはこの二人がメインでおこなったが、目立った成果はあげられなかった。
そもそも魔女は独自のコミュニティで生活しており、只人は魔女の村に立ち入ることが難しい。秘密主義の魔女の噂を知っている者はほとんどいなかった。
だが、魔女たちの同行を警戒している魔物たちからは、アメリアの兄姉たちの家督争いが激化していることや、家長のメディオラが最近はほとんど姿を見せないことなどの話を聞くことができた。
兄姉間の諍いやメディオラの体調不良も本当の話のようだと分かっただけでも収穫だっただろう。母の見舞いに来いと言う兄の言葉も嘘ではないようだ。
「メディオラ様が具合悪いってのは本当だとしても、それで私に会いたがるっていうのはどうも納得できないんだよね。私、屋敷にいた頃メディオラ様とは数えるほどしか話したことないくらいだし……これまで全く興味がなかった私に会いたい理由が見つからない」
訪問日が迫る中、聞き込んだ情報をアメリアに報告したが、やっぱり見舞いに呼ばれるのが不自然に感じると言った。母と呼びかける機会は終ぞなく、屋敷にいた頃は、メディオラを『様』と敬称をつけるように言われていたというから、そのエピソードだけでも母子の絆などなかったのだろうと推察できる。
確かに、ケット・シーは伝承や歴史書にも時々載っているような有名な魔物である。魔女がそれを使い魔にできたのなら、力を使って一気に成り上がることもできるだろう。
「そうだな。じゃあ俺が行こう。何かあれば火炎で全員焼き尽くして脱出すればいい」
元の姿になるだけで簡単に屋敷くらいぶっ壊せるとサラマンダーは胸を張るが、最初からぶっ壊す前提で来るような使い魔では危なくて連れていけない。全員一致でサラマンダーは却下となった。
「じゃあアタシかヘルハウンドだけど……」
ピクシーが言いかけた時、ヘルハウンドが『自分に行かせてほしい』と手(前足)を上げた。
「あの死臭が何処から来るのか、なにが原因なのか俺が行けば少しは分かることがあるかもしれないです。俺は影に入ることもできますし、危険な時はアメリアさんを背負ってにげることもできます」
なるほど、と全員が納得する。死臭をかぎ分けられるのがヘルハウンドだけなのだから、屋敷内につきそうのは彼が適任であろう。
「じゃあ、ヘルハウンドはただの犬に擬態してついて行ってね。アタシたちも魔女集落の結界外で待機して待ちましょう。当日までにまだ時間があるし、皆で手分けしてできるだけ情報収集してみましょう」
チューベローズ家の噂とか最近の様子など聞き込みしようとピクシーが言ったところでひとまず話し合いは終わった。
***
ケット・シーやピクシーは市井に詳しく、他の魔物にも多少交流があるため、聞き込みはこの二人がメインでおこなったが、目立った成果はあげられなかった。
そもそも魔女は独自のコミュニティで生活しており、只人は魔女の村に立ち入ることが難しい。秘密主義の魔女の噂を知っている者はほとんどいなかった。
だが、魔女たちの同行を警戒している魔物たちからは、アメリアの兄姉たちの家督争いが激化していることや、家長のメディオラが最近はほとんど姿を見せないことなどの話を聞くことができた。
兄姉間の諍いやメディオラの体調不良も本当の話のようだと分かっただけでも収穫だっただろう。母の見舞いに来いと言う兄の言葉も嘘ではないようだ。
「メディオラ様が具合悪いってのは本当だとしても、それで私に会いたがるっていうのはどうも納得できないんだよね。私、屋敷にいた頃メディオラ様とは数えるほどしか話したことないくらいだし……これまで全く興味がなかった私に会いたい理由が見つからない」
訪問日が迫る中、聞き込んだ情報をアメリアに報告したが、やっぱり見舞いに呼ばれるのが不自然に感じると言った。母と呼びかける機会は終ぞなく、屋敷にいた頃は、メディオラを『様』と敬称をつけるように言われていたというから、そのエピソードだけでも母子の絆などなかったのだろうと推察できる。
54
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです
gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる