ずっとあのままでいられたら

初めての書き出し小説風

文字の大きさ
上 下
16 / 40

第16話 初めての本音1

しおりを挟む


「…ごめんね、きょう姉」

「気にしないの!私は大丈夫だから!」



多分、初めて人の前で泣いてしまった。
しかも号泣。。
幸いなことはお店に人が少なかったこと。

でも、泣いた時はそんな事も気にせずに涙が溢れていた。
とまらなかった。
…勝手に溢れ出ていて、鼻水も出ていたと思う。

男だからとか、長男だからとか、支える立場にいなきゃとか…
些細なプライドだったのかもしれない。
それでもこれまで何があっても人の前で泣く事をしなかった。

だけど…
問いかけてくれた言葉。仕草。話を聞いてくれていた表情。
きょう姉だったから我慢できなかったのかもしれない。



「ゆうまが受け止めていた事は1人じゃ誰だってキツイし、無理なことよ」
「昔から我慢しちゃうし、強がっちゃうし、人に相談とかもしないで平気な顔してたの知ってる」
「それは、ゆうまの良いところでもあるよ!」
「でも、悪いところもあるかな」

「…うん、、」
「そうだよね…」

「うん」
「はるかさんもゆうまに甘えすぎていたり、考えなさすぎていたと思ったよ」
「けど、ゆうまもはるかさんの事を子供とか、極端な言い方すると下に見ていたんじゃないかな?」

「…下??」

「うん、僕がいないと何も出来ない子とか、見ていないとダメな子とかね」
「…もちろん、これまで色々あって!ってのもあると思うけどさ」

「…うん」

「…同棲とか結婚とかってさ、きっと2人は同じ位置に居て役割とか会話とかが出来ているのが一番良いと思うんだー」
「あっでも、男性が支えないと!って思う事は大事だと思うよ!
「でも、それは女性を下に見るとかの意味じゃなくてね」

「…うん」

「って、離婚した私が言うのも変な話だけどね(笑)」
「まぁ離婚経験者からの意見ってことで!」

「あははっ」
「でも、きょう姉の言うとおりだと思った…」
「いつからか分からないけど、いつの間にかはるかの事、彼女とかパートナーとかって思わなくなってたと思うから」

「あっ!でもね」
「今私はゆうまの話しか一方的に聞いていないからってのもあるけど…」
「聞いた限りそれはそうなっちゃうよ…って思ったかな」

「…うん、、」

「だから、あまり自分のせいとかダメだったとか思いすぎなくていいと思ったよ」

「…うん、きょう姉ありがとね」

「私は何もしてないよー!」
「大事なゆうまが悲しくて辛いのを感じたから話を聞いただけ!(笑)」

「あははっ!さすがきょう姉だ!」
「ずっと憧れのお姉ちゃんです!」

「うふふ」
「って、もう外真っ暗だ!」
「帰ろうか!」

「あっ…だね(笑)」

「そうだ、ゆうまの連絡先教えてよ!」
「ずっと知らないままだし(笑)」

「ごめんね!これだよ!」




どれくらい話しただろうか。
辺りは真っ暗になっていて、お客さんも僕らしかいなくなっていた。
その日は人生で1番自分の気持ちや本音を話したと思う。
気持ちがスッキリした訳でも、モヤモヤがとれた訳でも、はるかとのことが解決した訳でもない。
だけど、少し前向きになれた気がした。


それから実家での暮らしが始まった。
仕事はリモートワークで出来たから問題なく仕事をしている。

はるかからはちょびちょび連絡が来ていて、僕の事を気にかけてくれているような内容だ。
また、僕がこれまで家の事をやっていた事を自分でやらないといけない事がたくさんあって大変そうなのをやり取りの端々に感じた。
その度に例えば洗濯機の使い方とかを教えてあげた。
だけど、昔にはるかとやり取りして楽しかったような感情とかは感じなかった。

一方で、きょう姉とやり取りをすることが増えた。
今日何を食べたとか、こんな上司で最悪だったとか、何気ないやり取り。
隣に住んでいるのにスマホでやり取りするなんておかしいね!なんてどうでもいいようなことも。

そんなやり取りが楽しくて。
1週間、2週間。
時間が経っても変わらないやりとりが嬉しいかった。

実家に来て3週間が経った金曜日の夜。

「ねぇゆうま」
「明日ちょっとお出かけしよ!」

きょう姉からの突然の連絡がきた。

------------------------
お読みくださいましてありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?
ぜひお気に入り登録、評価などをしていただけたら今後の参考と活力にさせていただきます!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ
恋愛
彼とは長年付き合っていた。もうすぐ薬指に指輪をはめると思っていたけれど、久しぶりに呼び出された寒い日、思いもしないことを言われ、季節外れの寒波の中、帰途につく。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...