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最終章
3.俺と倫
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「あっんんっ、やだぁっ……、大和さん、もういいっ、もういれてぇっ」
「そんなに焦らないでよ。んっ……、もうちょっと味わったら、入れてあげるね?」
「んぅ、はぁっ、ああっ!」
ぐちょぐちょに濡れきった陰部に顔を埋めて、慰めるように舌で舐る。
舌を動かすたびに跳ねるような敏感な体にしたのは他でもない自分なのだと思うと、それだけで自身に熱が籠もっていった。
「ああっ、や、はぁんっ……、あ、ひゃうぅっ!」
「あ、イった……可愛い、倫」
ぎゅっと体を強張らせて達したのを見届けて、陰部から顔を上げる。
泣きながら喘ぐ妻を見下ろしながら、その感じやすい体に笑う。しかし内心では、自分の軽率な行動を猛省していた。
俺が目を覚ましたとき、倫はまだ隣で静かに寝息を立てていた。
しばらくその寝顔を堪能して、この上なく幸せな気持ちになる。
しかも今日は久しぶりに二人揃っての休日ときた。お互い不規則な勤務の職業だから、こうしてのんびりできる朝は珍しいのだ。
気持ち良さそうに眠っている倫を起こさない程度に、限りなく優しく髪を撫でる。
艶のある黒髪は、出会った頃と同じで美しい。本人は嫌がっているけれど、つり上がった目元も、少しハスキーな落ち着きのある声も俺にとっては愛しくて仕方ない。
それにこの一見気が強そうに見える彼女を、ベッドの中で蕩けさせていく過程がこの上なく好きなのだ。他の男はおろか、家族でさえこの表情を見たことはない。その事実が一層、俺の狂おしいほどの愛情を深いものにしていくような気がしていた。
「……あ。そういえばあれ、もう無いかも……」
想像だけで昂ぶり始めた自分自身に笑ってから、ふと彼女との行為で使っている避妊具を切らしていたことを思い出す。音を立てないようにそっとベッドサイドの引き出しを確認すると、やっぱりそこにはいつもの箱が無い。
どうしよう。今日は休日だし、ここ最近忙しくてあまり彼女を抱いていなかったから、思い切り愛し合おうと思っていたのに。
しかも、もうすでに体は臨戦態勢だ。今はまだ彼女が眠っているから抑えるにしても、夜までなんてとても待てない。というより、待ちたくない。
そんな俺のやましい思考を眠っている彼女が知るはずもなく、すうすうと穏やかな寝息を立てている。よく眠っているから、この隙に近所のコンビニに行って買ってきても大丈夫だろう。そして、彼女が起きたらすぐ抱いてしまえばいい。
そう思い至って、慎重にベッドを抜け出して適当な服に着替える。コンビニはすぐ近くだから、きっと十分もせずに帰ってこられるはずだ。
もし俺がいない間に彼女が起きたらどうなってしまうかなんて、浮かれていた俺は全く考えていなかったのだ。
「はぁっ、も、やまとさん、おねがいっ……、もういれてぇっ」
「もうちょっと待ってってば。もう少し倫を気持ちよくしたら、入れてあげる」
「やだぁっ! はやく、はやくほしいの、もういいからぁっ……!」
指で丁寧に膣内を掻きまわしている間にも、彼女は涙を流しながら催促する。
きっと今の彼女は身体的な欲求というよりも、精神的に満たしてほしくて俺を急かしているのだろう。
何も言わずに彼女の前から消えて、一年以上連絡もしなかった。そのことが、彼女の繊細な心にどれだけの傷を負わせたのかは想像に難くない。
あれからもう何年も経ったけれど、一度味わった恐怖は一生消えない。俺より小さなこの体で、彼女は必死にその恐怖を抱えて生きてきたのだ。
彼女を傷つけたことを忘れてはいけないと口では言っていても、俺は何も分かっていなかった。大切に想っていた人が何も告げずに消えた経験は、こんな些細なことでも彼女を錯乱させてしまうほど、とてつもなく深い傷を負わせていたのだ。
「ん、大和さんっ……いれて、もういれてくださいっ」
「もう一回、イかせたらね?」
「やだぁっ、や、やまとさんの、大和さんのがいいのっ……!」
こんな風に彼女から求められることはほぼないから、それだけですでに自身ははち切れそうなほど膨れ上がっている。
でも、それだけで彼女を抱くのは嫌だった。寂しさを埋めるだけではなく、心も体も俺を欲しがった状態の彼女を抱きたい。身勝手なのは百も承知だが、その方が彼女にも負担がかからないだろうと勝手に判断した。
「ああ、はぁっ、あんっ……、やぁ、い、いくっ……またいっちゃうぅっ」
「うん、イっていいよ。ほら、俺に見られながらイってっ……!」
「あっうああっ、ひぃんっ、あ──っ!!」
きゅっと彼女の体内が俺の指を締め付けて、派手に果てたようだった。
目をつぶって息をつく彼女の唇を貪ると、たどたどしく舌を絡めてくる。それだけで俺自身も達してしまいそうだ。
「は、はぁ、も、大和さぁんっ……おねがい、もう入れてっ……」
「……倫、すごいやらしいこと言ってるの分かってる?」
「わ、わかってる、けどっ……でも、ほしいの、大和さんがほしいよぉっ……!」
「っ……、分かった、もう入れてあげる」
愛しい妻の痴態を見せられて、もう俺も限界だった。
入れてあげるだなんて言いながら、俺の方が入れさせてほしいと懇願したいくらいだ。でも彼女には毛ほどもそんな素振りは見せずに、さも余裕があるように装って、買ってきたばかりの避妊具に手を伸ばした。
「あ、やだっ、それつけないで……」
「え?」
「このままいれて……おねがい、大和さんっ……」
「なっ……」
そう言って倫が、震える両足でぐっと俺の腰を自分の方に引き寄せた。
その拍子に自身の先端が彼女の濡れた入り口に触れて、それだけで快感が襲ってくる。
「っ、倫……どういう意味か分かってる?」
「わ、わかってますっ……でも、大和さんのぜんぶ、ほしいから……」
「まだ子どもできたら困るって言ってたの、倫だけど」
「だってそれは、こわくて……でも、ほしいんです……大和さんとの、赤ちゃん」
早く子どもが欲しいと、出会った頃から言い続けていた。そのせいでまだ高校生だった彼女は俺の気持ちをしばらく誤解していたらしいが、それも今となっては笑い話だ。
でも、いざこうして倫に許可をもらってみたら、情けないくらい動揺してしまう。
本当にいいのだろうか。子どもができたら、きっと今以上に倫を縛り付けることになる。自分の願いを叶えたいと言ってくれる彼女を、本当に俺のような男に縛り付けていいのだろうか。
「……倫、やっぱりまだ駄目だ。一回落ち着いて、それから考えて……」
「私、ずっと考えてました。大和さんが子ども欲しいって言ってくれるたびに考えて、でも自分が親になるなんて、怖くて……」
「それなら、今日はまだ」
「……でも、私一人で親になるんじゃないから。大和さんと一緒だったら……大和さんがいてくれたら、何も怖くありません」
「り、ん……」
俺が少しいなくなっただけで泣いてしまうような倫が、涙目のままはっきりそう言った。
しっかりしているように見えて、本当はとても寂しがりで怖がりなことを俺は知っている。
怖くないはずがないのに、俺の腕にすがりつきながらもしっかりと俺の目を見る倫。出会ったばかりの頃は自分に自信がなくて、自虐的なことばかり言っていた倫。意地っ張りで、なかなか素直になれない子どものような倫。
そんな倫が、俺の知らないうちにいつの間にか親になる決意をしていた。家族が欲しいという俺の願いを、真剣に叶えようとしてくれていたのだ。
「やまと、さん……? 泣いてるんですか……?」
「……え?」
「涙、出てます」
そう言って、倫が俺の目尻を優しく拭った。確かにそこは濡れていて、目を見開くとぽたぽたとさらに涙が溢れた。
「ご、ごめん……何でかな、なんか……っ、嬉しくて」
「ふふっ、よかったぁ。泣くほど嫌なのかなって、思っちゃいました」
「そんなわけないよ。でも、どうしてだろう……倫の成長を目の当たりにして、感動したのかな」
「もう、そんなお父さんみたいなこと言わないでください」
倫はもう、落ち着きを取り戻しているようだった。
さっきまで俺の手で乱れながら必死に先をねだっていたのに、もう正気に戻って俺の目を見つめている。
ということはさっきの発言も、混乱した末に思わず言ってしまったわけではないらしい。
「……いい、の? 子どもできるかもよ?」
「はい。ちゃんと分かってます」
「もう、参ったなぁ……いつの間にそんな大人になっちゃったんだろうね」
「ずっと前から、大人です。だから……」
すっと、倫が俺の頬に手を添える。
その手が温かくて、でも小さくて、俺がしっかり守らなければいけないのだと改めて思う。
そして穏やかに微笑みながら、倫は口を開いた。
「……私と、子ども作りましょう? 大和さん」
いつか俺が言った言葉を、倫はちゃんと覚えていた。
八年越しのその答えに、俺はもう何も言えなくて、静かに頷く。
今はただ、この溢れる想いを倫に知ってほしかった。
「……入れるよ。倫」
「は、い……っ、あ、んっ、んんっ……!」
「くっ……、倫、倫っ……!」
何度も抱いてきたはずなのに、まるで初めて抱いたときのように緊張していた。
あの時倫は、なんでそんな余裕なのかと不思議そうにしていたけれど、余裕なんて無かった。ただ倫が欲しくて、本能のままに倫を犯したのだ。こんな狂暴な感情が自分の中にあったのかと、恐怖を覚えるほどに。
でも今は、何か神聖な儀式でも行うような気分でゆっくりと静かに倫の中に入って行った。
いつもより摩擦が少なくて、熱い倫の体内に迎え入れられたのが嬉しくて体が震える。
そして根本まで倫の中に収めてから、小さな体に覆いかぶさって倫を抱き締めた。
「……倫、分かる? 全部入ったよ」
「はぁ、はいっ……うれし、です……」
「もう、可愛いなぁ。すごい、いつもより熱い……すぐ出ちゃいそう」
「ん……いい、ですよ。今日は、何回出しても……」
圧迫感に顔を歪めながらそう言う倫の口をキスで塞ぐ。
そんなことを言われたら、本当に空っぽになるまで抱きつぶしてしまいそうだ。それで何度も痛い目を見ているというのに、この妻はちっとも分かっていない。
一瞬理性を失って、ひくひくと収縮する倫の中を思い切り抉った。
「あ──っ! ああっ! や、やまと、さんっ……!」
「もうっ、本当にっ……! 倫、もっと自覚持ってよねっ……!」
「はあぁっ、え、じ、かくっ? あ、ひぁっ、んんぅっ」
「自分が、どれだけ可愛いこと言ってるかっ……、もう、可愛すぎて殺されそうっ」
「な、なんで、ああっ! や、ああ、それ、きもちぃっ!」
最奥を強く突くと、倫は一際大きな声を上げた。いつもだったら痛がりそうなところだが、今日はこれでもかというほど解したし、体内が濡れきっているせいか痛みはないようだ。それどころか、快感が強すぎたのか数回突いただけで簡単に達してしまった。
「はぁ、んくっ……、い、いっちゃ……」
「うん、イっちゃったね。そんなに気持ちよかった?」
「は、いっ……大和さんの、きもちいっ……、だいすきぃ……っ」
「……もう、やばい。倫、もう何も言わないでっ……」
倫の紡ぐ言葉を聞いただけで達してしまいそうだ。
そんなことになったらさすがに情けなさ過ぎるので、再び唇を塞いだ。そしてそのまま腰を動かすと、苦しそうな喘ぎ声が俺の口内に響く。
「んうっ、ん、んんっ!!」
「はぁっ、倫っ……! 好き、大好きっ……、倫、倫っ!」
「あああっ! やぁ、んんっ、す、きぃっ、わたしも、すきっ、やまとさんっ……!」
「ぐっ……、ごめん、もう出るっ、倫、出すよっ……!」
「はいっ、あ、んんっ、くださいっ、わたしの、なかにっ、ああっ、あっ!」
「うん、倫の、一番奥に出すからっ、全部飲んで、倫っ……!」
「あっ……ん、うぅ、あっああ──っ!!」
倫の体をかき抱いて、強く腰を打ち付けた。
その瞬間にびゅるびゅると熱い白濁が飛び出して、倫の体内に飲み込まれていく。荒い吐息を耳元で聞きながら、最後の一滴まで倫の中に注ぎ込んだ。
「はっ、はぁ、んんっ……やまと、さん、あつい……」
「ん……ごめん。もうちょっと、このまま……」
中に自身を埋め込んだまま、ばたりと倫の上に倒れ込んだ。倫が苦しそうにうめいたけれど、気にせず抱きしめる。諦めたのか、汗だくになった俺の背中をそっと撫でてくれた。
「……子ども、できたかな?」
「さ、さあ……でも、そんな簡単にはできないんじゃ……」
「でもなんか、すぐに出来ちゃいそうだよ。俺の執念が籠もってるから」
「ふふ、確かに」
倫の顔中にキスを落とすと、くすぐったそうに身を捩った。その仕草すら可愛くて、出したばかりだというのにまた体の中心が固さを取り戻していく。
彼女もそれに気付いたのか、慌てて体を離そうと腕を突っ張った。
「あっ……や、大和さん? あの、も、もう抜いて……」
「どうして? 倫、今日は何回出してもいいって言ったよね?」
「いや、そ、それはつい言っちゃっただけで、本当にするなんてっ……ひゃんっ!」
「ふふっ、駄目だよ。大人なら、自分の言ったことに責任持たなくちゃ。ね?」
「あんっ! で、でもっ……あの、中、もういっぱいでっ」
「大丈夫、まだ入るよ。倫のお腹、いっぱいになるまで注いであげる」
少し腰を揺らすと、先ほど自分が出した液体と倫の愛液が混ざって泡立った。
その光景が妙に卑猥で、すぐに興奮が高まっていく。倫は今さら自分の発言を後悔しているようだけど、本当に今さらだ。
すでにカーテンの隙間からは明るい朝陽が差し込んでいる。
今日は買い物に行こうと言っていたけれど、それはまた今度になりそうだ。そんな無責任なことを思いながら、もう一度愛しい妻を抱き締めた。
「そんなに焦らないでよ。んっ……、もうちょっと味わったら、入れてあげるね?」
「んぅ、はぁっ、ああっ!」
ぐちょぐちょに濡れきった陰部に顔を埋めて、慰めるように舌で舐る。
舌を動かすたびに跳ねるような敏感な体にしたのは他でもない自分なのだと思うと、それだけで自身に熱が籠もっていった。
「ああっ、や、はぁんっ……、あ、ひゃうぅっ!」
「あ、イった……可愛い、倫」
ぎゅっと体を強張らせて達したのを見届けて、陰部から顔を上げる。
泣きながら喘ぐ妻を見下ろしながら、その感じやすい体に笑う。しかし内心では、自分の軽率な行動を猛省していた。
俺が目を覚ましたとき、倫はまだ隣で静かに寝息を立てていた。
しばらくその寝顔を堪能して、この上なく幸せな気持ちになる。
しかも今日は久しぶりに二人揃っての休日ときた。お互い不規則な勤務の職業だから、こうしてのんびりできる朝は珍しいのだ。
気持ち良さそうに眠っている倫を起こさない程度に、限りなく優しく髪を撫でる。
艶のある黒髪は、出会った頃と同じで美しい。本人は嫌がっているけれど、つり上がった目元も、少しハスキーな落ち着きのある声も俺にとっては愛しくて仕方ない。
それにこの一見気が強そうに見える彼女を、ベッドの中で蕩けさせていく過程がこの上なく好きなのだ。他の男はおろか、家族でさえこの表情を見たことはない。その事実が一層、俺の狂おしいほどの愛情を深いものにしていくような気がしていた。
「……あ。そういえばあれ、もう無いかも……」
想像だけで昂ぶり始めた自分自身に笑ってから、ふと彼女との行為で使っている避妊具を切らしていたことを思い出す。音を立てないようにそっとベッドサイドの引き出しを確認すると、やっぱりそこにはいつもの箱が無い。
どうしよう。今日は休日だし、ここ最近忙しくてあまり彼女を抱いていなかったから、思い切り愛し合おうと思っていたのに。
しかも、もうすでに体は臨戦態勢だ。今はまだ彼女が眠っているから抑えるにしても、夜までなんてとても待てない。というより、待ちたくない。
そんな俺のやましい思考を眠っている彼女が知るはずもなく、すうすうと穏やかな寝息を立てている。よく眠っているから、この隙に近所のコンビニに行って買ってきても大丈夫だろう。そして、彼女が起きたらすぐ抱いてしまえばいい。
そう思い至って、慎重にベッドを抜け出して適当な服に着替える。コンビニはすぐ近くだから、きっと十分もせずに帰ってこられるはずだ。
もし俺がいない間に彼女が起きたらどうなってしまうかなんて、浮かれていた俺は全く考えていなかったのだ。
「はぁっ、も、やまとさん、おねがいっ……、もういれてぇっ」
「もうちょっと待ってってば。もう少し倫を気持ちよくしたら、入れてあげる」
「やだぁっ! はやく、はやくほしいの、もういいからぁっ……!」
指で丁寧に膣内を掻きまわしている間にも、彼女は涙を流しながら催促する。
きっと今の彼女は身体的な欲求というよりも、精神的に満たしてほしくて俺を急かしているのだろう。
何も言わずに彼女の前から消えて、一年以上連絡もしなかった。そのことが、彼女の繊細な心にどれだけの傷を負わせたのかは想像に難くない。
あれからもう何年も経ったけれど、一度味わった恐怖は一生消えない。俺より小さなこの体で、彼女は必死にその恐怖を抱えて生きてきたのだ。
彼女を傷つけたことを忘れてはいけないと口では言っていても、俺は何も分かっていなかった。大切に想っていた人が何も告げずに消えた経験は、こんな些細なことでも彼女を錯乱させてしまうほど、とてつもなく深い傷を負わせていたのだ。
「ん、大和さんっ……いれて、もういれてくださいっ」
「もう一回、イかせたらね?」
「やだぁっ、や、やまとさんの、大和さんのがいいのっ……!」
こんな風に彼女から求められることはほぼないから、それだけですでに自身ははち切れそうなほど膨れ上がっている。
でも、それだけで彼女を抱くのは嫌だった。寂しさを埋めるだけではなく、心も体も俺を欲しがった状態の彼女を抱きたい。身勝手なのは百も承知だが、その方が彼女にも負担がかからないだろうと勝手に判断した。
「ああ、はぁっ、あんっ……、やぁ、い、いくっ……またいっちゃうぅっ」
「うん、イっていいよ。ほら、俺に見られながらイってっ……!」
「あっうああっ、ひぃんっ、あ──っ!!」
きゅっと彼女の体内が俺の指を締め付けて、派手に果てたようだった。
目をつぶって息をつく彼女の唇を貪ると、たどたどしく舌を絡めてくる。それだけで俺自身も達してしまいそうだ。
「は、はぁ、も、大和さぁんっ……おねがい、もう入れてっ……」
「……倫、すごいやらしいこと言ってるの分かってる?」
「わ、わかってる、けどっ……でも、ほしいの、大和さんがほしいよぉっ……!」
「っ……、分かった、もう入れてあげる」
愛しい妻の痴態を見せられて、もう俺も限界だった。
入れてあげるだなんて言いながら、俺の方が入れさせてほしいと懇願したいくらいだ。でも彼女には毛ほどもそんな素振りは見せずに、さも余裕があるように装って、買ってきたばかりの避妊具に手を伸ばした。
「あ、やだっ、それつけないで……」
「え?」
「このままいれて……おねがい、大和さんっ……」
「なっ……」
そう言って倫が、震える両足でぐっと俺の腰を自分の方に引き寄せた。
その拍子に自身の先端が彼女の濡れた入り口に触れて、それだけで快感が襲ってくる。
「っ、倫……どういう意味か分かってる?」
「わ、わかってますっ……でも、大和さんのぜんぶ、ほしいから……」
「まだ子どもできたら困るって言ってたの、倫だけど」
「だってそれは、こわくて……でも、ほしいんです……大和さんとの、赤ちゃん」
早く子どもが欲しいと、出会った頃から言い続けていた。そのせいでまだ高校生だった彼女は俺の気持ちをしばらく誤解していたらしいが、それも今となっては笑い話だ。
でも、いざこうして倫に許可をもらってみたら、情けないくらい動揺してしまう。
本当にいいのだろうか。子どもができたら、きっと今以上に倫を縛り付けることになる。自分の願いを叶えたいと言ってくれる彼女を、本当に俺のような男に縛り付けていいのだろうか。
「……倫、やっぱりまだ駄目だ。一回落ち着いて、それから考えて……」
「私、ずっと考えてました。大和さんが子ども欲しいって言ってくれるたびに考えて、でも自分が親になるなんて、怖くて……」
「それなら、今日はまだ」
「……でも、私一人で親になるんじゃないから。大和さんと一緒だったら……大和さんがいてくれたら、何も怖くありません」
「り、ん……」
俺が少しいなくなっただけで泣いてしまうような倫が、涙目のままはっきりそう言った。
しっかりしているように見えて、本当はとても寂しがりで怖がりなことを俺は知っている。
怖くないはずがないのに、俺の腕にすがりつきながらもしっかりと俺の目を見る倫。出会ったばかりの頃は自分に自信がなくて、自虐的なことばかり言っていた倫。意地っ張りで、なかなか素直になれない子どものような倫。
そんな倫が、俺の知らないうちにいつの間にか親になる決意をしていた。家族が欲しいという俺の願いを、真剣に叶えようとしてくれていたのだ。
「やまと、さん……? 泣いてるんですか……?」
「……え?」
「涙、出てます」
そう言って、倫が俺の目尻を優しく拭った。確かにそこは濡れていて、目を見開くとぽたぽたとさらに涙が溢れた。
「ご、ごめん……何でかな、なんか……っ、嬉しくて」
「ふふっ、よかったぁ。泣くほど嫌なのかなって、思っちゃいました」
「そんなわけないよ。でも、どうしてだろう……倫の成長を目の当たりにして、感動したのかな」
「もう、そんなお父さんみたいなこと言わないでください」
倫はもう、落ち着きを取り戻しているようだった。
さっきまで俺の手で乱れながら必死に先をねだっていたのに、もう正気に戻って俺の目を見つめている。
ということはさっきの発言も、混乱した末に思わず言ってしまったわけではないらしい。
「……いい、の? 子どもできるかもよ?」
「はい。ちゃんと分かってます」
「もう、参ったなぁ……いつの間にそんな大人になっちゃったんだろうね」
「ずっと前から、大人です。だから……」
すっと、倫が俺の頬に手を添える。
その手が温かくて、でも小さくて、俺がしっかり守らなければいけないのだと改めて思う。
そして穏やかに微笑みながら、倫は口を開いた。
「……私と、子ども作りましょう? 大和さん」
いつか俺が言った言葉を、倫はちゃんと覚えていた。
八年越しのその答えに、俺はもう何も言えなくて、静かに頷く。
今はただ、この溢れる想いを倫に知ってほしかった。
「……入れるよ。倫」
「は、い……っ、あ、んっ、んんっ……!」
「くっ……、倫、倫っ……!」
何度も抱いてきたはずなのに、まるで初めて抱いたときのように緊張していた。
あの時倫は、なんでそんな余裕なのかと不思議そうにしていたけれど、余裕なんて無かった。ただ倫が欲しくて、本能のままに倫を犯したのだ。こんな狂暴な感情が自分の中にあったのかと、恐怖を覚えるほどに。
でも今は、何か神聖な儀式でも行うような気分でゆっくりと静かに倫の中に入って行った。
いつもより摩擦が少なくて、熱い倫の体内に迎え入れられたのが嬉しくて体が震える。
そして根本まで倫の中に収めてから、小さな体に覆いかぶさって倫を抱き締めた。
「……倫、分かる? 全部入ったよ」
「はぁ、はいっ……うれし、です……」
「もう、可愛いなぁ。すごい、いつもより熱い……すぐ出ちゃいそう」
「ん……いい、ですよ。今日は、何回出しても……」
圧迫感に顔を歪めながらそう言う倫の口をキスで塞ぐ。
そんなことを言われたら、本当に空っぽになるまで抱きつぶしてしまいそうだ。それで何度も痛い目を見ているというのに、この妻はちっとも分かっていない。
一瞬理性を失って、ひくひくと収縮する倫の中を思い切り抉った。
「あ──っ! ああっ! や、やまと、さんっ……!」
「もうっ、本当にっ……! 倫、もっと自覚持ってよねっ……!」
「はあぁっ、え、じ、かくっ? あ、ひぁっ、んんぅっ」
「自分が、どれだけ可愛いこと言ってるかっ……、もう、可愛すぎて殺されそうっ」
「な、なんで、ああっ! や、ああ、それ、きもちぃっ!」
最奥を強く突くと、倫は一際大きな声を上げた。いつもだったら痛がりそうなところだが、今日はこれでもかというほど解したし、体内が濡れきっているせいか痛みはないようだ。それどころか、快感が強すぎたのか数回突いただけで簡単に達してしまった。
「はぁ、んくっ……、い、いっちゃ……」
「うん、イっちゃったね。そんなに気持ちよかった?」
「は、いっ……大和さんの、きもちいっ……、だいすきぃ……っ」
「……もう、やばい。倫、もう何も言わないでっ……」
倫の紡ぐ言葉を聞いただけで達してしまいそうだ。
そんなことになったらさすがに情けなさ過ぎるので、再び唇を塞いだ。そしてそのまま腰を動かすと、苦しそうな喘ぎ声が俺の口内に響く。
「んうっ、ん、んんっ!!」
「はぁっ、倫っ……! 好き、大好きっ……、倫、倫っ!」
「あああっ! やぁ、んんっ、す、きぃっ、わたしも、すきっ、やまとさんっ……!」
「ぐっ……、ごめん、もう出るっ、倫、出すよっ……!」
「はいっ、あ、んんっ、くださいっ、わたしの、なかにっ、ああっ、あっ!」
「うん、倫の、一番奥に出すからっ、全部飲んで、倫っ……!」
「あっ……ん、うぅ、あっああ──っ!!」
倫の体をかき抱いて、強く腰を打ち付けた。
その瞬間にびゅるびゅると熱い白濁が飛び出して、倫の体内に飲み込まれていく。荒い吐息を耳元で聞きながら、最後の一滴まで倫の中に注ぎ込んだ。
「はっ、はぁ、んんっ……やまと、さん、あつい……」
「ん……ごめん。もうちょっと、このまま……」
中に自身を埋め込んだまま、ばたりと倫の上に倒れ込んだ。倫が苦しそうにうめいたけれど、気にせず抱きしめる。諦めたのか、汗だくになった俺の背中をそっと撫でてくれた。
「……子ども、できたかな?」
「さ、さあ……でも、そんな簡単にはできないんじゃ……」
「でもなんか、すぐに出来ちゃいそうだよ。俺の執念が籠もってるから」
「ふふ、確かに」
倫の顔中にキスを落とすと、くすぐったそうに身を捩った。その仕草すら可愛くて、出したばかりだというのにまた体の中心が固さを取り戻していく。
彼女もそれに気付いたのか、慌てて体を離そうと腕を突っ張った。
「あっ……や、大和さん? あの、も、もう抜いて……」
「どうして? 倫、今日は何回出してもいいって言ったよね?」
「いや、そ、それはつい言っちゃっただけで、本当にするなんてっ……ひゃんっ!」
「ふふっ、駄目だよ。大人なら、自分の言ったことに責任持たなくちゃ。ね?」
「あんっ! で、でもっ……あの、中、もういっぱいでっ」
「大丈夫、まだ入るよ。倫のお腹、いっぱいになるまで注いであげる」
少し腰を揺らすと、先ほど自分が出した液体と倫の愛液が混ざって泡立った。
その光景が妙に卑猥で、すぐに興奮が高まっていく。倫は今さら自分の発言を後悔しているようだけど、本当に今さらだ。
すでにカーテンの隙間からは明るい朝陽が差し込んでいる。
今日は買い物に行こうと言っていたけれど、それはまた今度になりそうだ。そんな無責任なことを思いながら、もう一度愛しい妻を抱き締めた。
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