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18.受け入れ難いもの(3)
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快感の波にさらわれそうになるたびに、この世で一番憎い男に抱かれているのだという事実が脳裏を過ぎる。
――自分の都合のためにミーアの生活を奪い、父を盾に脅し、そして無理矢理この身体に己の子を孕ませようとしている、身勝手な男に。
頭ではそう思うのに、ミーアの体はもっともっとと貪欲にリオンを求めている。それは催淫成分のせいでもあるが、今のミーアはそこまで思い至ることができなかった。
「ひぅっ、やだ、いやあぁっ……! あ、ああっ」
「はあ……っ、そろそろ、『嫌だ』以外の言葉も聞きたいところだな。言ってみなさい、『気持ちいい』と」
「い、やっ……! きもち、よくなんか……っ」
「ふふ、こんなにも蜜を垂らしてよく言う……ならば、『気持ちいい』と言えたら今日は種付けせずに終わらせてあげよう。どうかな?」
「えっ……」
律動を止めて、リオンは試すような視線でミーアを見た。
はあはあと息を整えながら、ミーアは逡巡する。
たった一言、「気持ちいい」と言えばこの行為は終わる。膣内に射精され、これで孕むかもしれないという恐怖も感じなくて済む。
しかし、快感を認めることはミーアにとってこの上なく屈辱的なことであった。父のためと腹を括ってリオンに抱かれているだけなのに、「気持ちいい」なんて言葉を口に出してしまえば、それはこの男を受け入れることになるのではないか――。
「どうした? 言えたらすぐに止めてあげるよ。まあ、だとしても明日になったらまた抱くわけだが」
「っ……! い、言いたくない……っ! んっ、んんぅっ!」
「本当に強情だな……いいのか? 今夜のきみは随分と感じているからな。女性が感じれば感じるほど孕みやすい、という迷信もあるくらいだ。もしかしたら今日、孕むかもしれないが」
「やっ……! それは、いやぁっ!」
「それなら、言ってごらん。気持ちいいと」
ミーアの頑なな態度を崩してやりたいとでも言いたげに、リオンは彼女に問いかけた。
孕むかもしれない、という言葉を聞いて怯えるミーアにくすくすと喉の奥で笑いながら、リオンはさらに激しく腰を打ちつける。
「さあ、どうする? 早く決めないと、出してしまうが……っ」
「あ、ああっ、いやあぁっ……!」
がつがつと欲望をぶつけるように膣奥を穿たれ、今にも吐精されそうなその勢いにミーアは焦った。
リオンの言う通りに従うのはひどく腹立たしいが、一言「気持ちいい」と言うだけでこの行為を終わらせることができるのならそれでいい。口に出したからと言って、決してリオンに屈したわけではない。
ミーアは恥を承知で、甘い声が出てしまわないように口をわずかに開いて言った。
「き……きもち、いいからっ……、だから、もうやめて……!」
口にした途端、すでに赤みを帯びた頬がさらに熱くなるのを感じた。
しかし、これで今日のお役目はおしまいだ。ミーアはやり切った思いで、自分を組み敷く男の顔を見上げた。
「投げやりな言い方だが……まあ、良しとしよう。だが、すまないね。潤滑油のせいか、今夜は私も昂ってしまったようだ……!」
「なっ……!? やっ、やあぁっ!」
解放されるはずだったミーアの体をかき抱いて、リオンは一層強く膣内を突き上げた。
肌と肌とがぶつかる乾いた音と一緒に、悲痛なミーアの叫び声が部屋中に響き渡る。
「うそ、嘘つきぃっ……! いったのにっ、や、やめてっ、もういやあっ!!」
「はは、すまないね……っ、なぜだろうな。きみを見ていると、どうにもいじめたくなってしまう」
「ひ、ひどいっ……、あっ、いや、出さないで、おねがいっ!」
「くっ……、そのお願いは、聞けないな……!」
「やっ……! あっ、やだっ、あああ――っ!!」
どくんと熱い滾りが脈を打ち、その次の瞬間にはミーアの体内がリオンの吐き出した白濁に満たされていく。
その熱さに震えながら、ミーアはまた絶望の底へと落ちていく。覇気のない目でリオンを見上げると、彼はまた「すまないね」と思ってもいない謝罪を口にした。
「きみの感じる姿は、とても愛らしかった。今夜の伽は楽しかったよ」
「ひ、うぅっ……! あ、あなたなんて……っ」
「ん?」
「あなたなんて、消えてしまえばいい……! 私の前から、いなくなって……!」
精一杯の怒りを込めて、ミーアは絞り出すような声で低く叫んだ。
本当は、またしても自分を騙したリオンに対する怒りよりも、彼の言葉を信じてしまった自分自身への怒りの方がずっと強い。でも、リオンさえいなければこんなにも惨めな思いをすることは無かったはずだ。
ミーアの本心からの叫びを聞いたリオンは一瞬目を丸くするも、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「――そこで『殺してやる』と言えないのが、きみの甘さだ。だから私のような者に狙われる……」
「っ……!」
「……疲れただろう。今夜はもう寝なさい」
幼子をあやすようにミーアの背をぽんぽんと叩くと、リオンはさっと寝衣を羽織って部屋を出て行った。
残されたミーアは、彼の出て行った扉をじっと睨みつけながら、ただ歯噛みすることしかできなかった。
――自分の都合のためにミーアの生活を奪い、父を盾に脅し、そして無理矢理この身体に己の子を孕ませようとしている、身勝手な男に。
頭ではそう思うのに、ミーアの体はもっともっとと貪欲にリオンを求めている。それは催淫成分のせいでもあるが、今のミーアはそこまで思い至ることができなかった。
「ひぅっ、やだ、いやあぁっ……! あ、ああっ」
「はあ……っ、そろそろ、『嫌だ』以外の言葉も聞きたいところだな。言ってみなさい、『気持ちいい』と」
「い、やっ……! きもち、よくなんか……っ」
「ふふ、こんなにも蜜を垂らしてよく言う……ならば、『気持ちいい』と言えたら今日は種付けせずに終わらせてあげよう。どうかな?」
「えっ……」
律動を止めて、リオンは試すような視線でミーアを見た。
はあはあと息を整えながら、ミーアは逡巡する。
たった一言、「気持ちいい」と言えばこの行為は終わる。膣内に射精され、これで孕むかもしれないという恐怖も感じなくて済む。
しかし、快感を認めることはミーアにとってこの上なく屈辱的なことであった。父のためと腹を括ってリオンに抱かれているだけなのに、「気持ちいい」なんて言葉を口に出してしまえば、それはこの男を受け入れることになるのではないか――。
「どうした? 言えたらすぐに止めてあげるよ。まあ、だとしても明日になったらまた抱くわけだが」
「っ……! い、言いたくない……っ! んっ、んんぅっ!」
「本当に強情だな……いいのか? 今夜のきみは随分と感じているからな。女性が感じれば感じるほど孕みやすい、という迷信もあるくらいだ。もしかしたら今日、孕むかもしれないが」
「やっ……! それは、いやぁっ!」
「それなら、言ってごらん。気持ちいいと」
ミーアの頑なな態度を崩してやりたいとでも言いたげに、リオンは彼女に問いかけた。
孕むかもしれない、という言葉を聞いて怯えるミーアにくすくすと喉の奥で笑いながら、リオンはさらに激しく腰を打ちつける。
「さあ、どうする? 早く決めないと、出してしまうが……っ」
「あ、ああっ、いやあぁっ……!」
がつがつと欲望をぶつけるように膣奥を穿たれ、今にも吐精されそうなその勢いにミーアは焦った。
リオンの言う通りに従うのはひどく腹立たしいが、一言「気持ちいい」と言うだけでこの行為を終わらせることができるのならそれでいい。口に出したからと言って、決してリオンに屈したわけではない。
ミーアは恥を承知で、甘い声が出てしまわないように口をわずかに開いて言った。
「き……きもち、いいからっ……、だから、もうやめて……!」
口にした途端、すでに赤みを帯びた頬がさらに熱くなるのを感じた。
しかし、これで今日のお役目はおしまいだ。ミーアはやり切った思いで、自分を組み敷く男の顔を見上げた。
「投げやりな言い方だが……まあ、良しとしよう。だが、すまないね。潤滑油のせいか、今夜は私も昂ってしまったようだ……!」
「なっ……!? やっ、やあぁっ!」
解放されるはずだったミーアの体をかき抱いて、リオンは一層強く膣内を突き上げた。
肌と肌とがぶつかる乾いた音と一緒に、悲痛なミーアの叫び声が部屋中に響き渡る。
「うそ、嘘つきぃっ……! いったのにっ、や、やめてっ、もういやあっ!!」
「はは、すまないね……っ、なぜだろうな。きみを見ていると、どうにもいじめたくなってしまう」
「ひ、ひどいっ……、あっ、いや、出さないで、おねがいっ!」
「くっ……、そのお願いは、聞けないな……!」
「やっ……! あっ、やだっ、あああ――っ!!」
どくんと熱い滾りが脈を打ち、その次の瞬間にはミーアの体内がリオンの吐き出した白濁に満たされていく。
その熱さに震えながら、ミーアはまた絶望の底へと落ちていく。覇気のない目でリオンを見上げると、彼はまた「すまないね」と思ってもいない謝罪を口にした。
「きみの感じる姿は、とても愛らしかった。今夜の伽は楽しかったよ」
「ひ、うぅっ……! あ、あなたなんて……っ」
「ん?」
「あなたなんて、消えてしまえばいい……! 私の前から、いなくなって……!」
精一杯の怒りを込めて、ミーアは絞り出すような声で低く叫んだ。
本当は、またしても自分を騙したリオンに対する怒りよりも、彼の言葉を信じてしまった自分自身への怒りの方がずっと強い。でも、リオンさえいなければこんなにも惨めな思いをすることは無かったはずだ。
ミーアの本心からの叫びを聞いたリオンは一瞬目を丸くするも、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「――そこで『殺してやる』と言えないのが、きみの甘さだ。だから私のような者に狙われる……」
「っ……!」
「……疲れただろう。今夜はもう寝なさい」
幼子をあやすようにミーアの背をぽんぽんと叩くと、リオンはさっと寝衣を羽織って部屋を出て行った。
残されたミーアは、彼の出て行った扉をじっと睨みつけながら、ただ歯噛みすることしかできなかった。
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