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第4章
10.この先もずっと
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「……ごめんな、ユキちゃん」
「え……?」
突然の謝罪に驚いて、動かない身体はそのままで顔だけをソウの方に向ける。
先ほどまでの嫉妬と怒りの感情にまみれたソウはもういなくて、叱られた子どものようにしゅんとしてしまったソウが不安気にわたしを見つめていた。
「……今日は、別の部屋で寝る。一緒におったら、またユキちゃんにひどいことしてまう」
さっきまでの勢いはどこへやら、すっかり意気消沈してしまったソウが寂しげに呟く。そして、わたしの返事も聞かずに背を向けてドアに向かって歩き始めた。
「ま、待って!」
「……ごめんな、ユキちゃん。ボクやっぱり、ユキちゃんのことになると自分が抑えられへんみたいやわ。ユキちゃんのこと、一番大事にしたいんやけど……いつも傷つけてまう」
背を向けたまま寂しそうに笑うソウを見て、わたしはどうしようもなく彼を愛おしいと思った。
ソウがわたしにきつく当たるときは、彼が傷ついている時だ。感情のぶつけ方が分からなくて、癇癪を起こす子どものように。
そう思った途端、わたしは何も身に付けていないことも忘れて、ベッドから降りてソウの背に思い切り抱き着いた。
傷ついた彼が、一人でどこかに行ってしまわないように。
自分を責めてしまわないように。
わたしがソウを傷つけてしまったのだ。謝るのはソウではない。
「ごめん……ごめんね、ソウ」
ソウの背に縋りついて、必死に許しを請う。腰に回したわたしの手をソウがそっと撫でた。戸惑っているようなその仕草に、彼の優しさが見える。
「ごめんね……わたし、ソウの気持ち、全然考えてなかった。自分勝手だよね」
ソウは何も言わない。何を言えば良いのか、彼にしては珍しく迷っているのだろう。抱きしめる腕の力を強くすると、ソウの体温が伝わってくる。
「あのね、ソウ……? わたしがソウを傷つけたこと、簡単に許してもらえるなんて思ってない。でも、このままソウが離れていっちゃうのは嫌なの。わたしが愛してるのは、ソウだけだから」
「……ユキ、ちゃん」
そこでようやく、ソウが振り向いてわたしを見てくれた。自信無さげな表情はそのままだが、その瞳は確かにわたしを映してくれている。
しばらくの間、わたしの真意を窺うようにソウはただじっと口を噤んでいた。わたしも口を開かずに、ソウの答えを待つ。
「……愛してるって」
「えっ?」
「愛してる、って……ユキちゃん、初めて言うてくれたな。言葉に出さんでも、ユキちゃんがボクのこと好きでいてくれてるんは分かってた。けどやっぱり……嬉しいもんやな」
切れ長の目を細くして、ソウが微笑んだ。そして、距離を詰めてぎゅっとわたしの身体を抱きしめてくれる。身長差があるから、わたしの頭にソウが顔を埋める形になる。
わたしは、ゆっくりと鼓動するソウの胸にぴったりと頬を押し当てた。
「……トーヤくんがな、さっき言うとってん。ユキちゃんは、ボクといつどこで出会うても、きっとボクのことを好きになってた、って」
「トーヤが……?」
「うん。そやけどボクは、そうは思われへんかった。ユキちゃんがボクより先にトーヤくんと出会うてたら、ユキちゃんはトーヤくんのこと好きになる思うてた。そやから、ユキちゃんがトーヤくんのこと意識してるの見たら……自分でも訳分からんくらい嫉妬した」
「そ、そんなの……」
「アホらしいやろ。ユキちゃんはもうボクのもんで、トーヤくんもそれをよう理解してる。それやのにボクは一人で勝手に嫉妬して、ユキちゃんに八つ当たりして……我に返ったとき、ぞっとしたわ。これでユキちゃんがボクから離れていったらどないしよう、て」
珍しく、ソウが自分の気持ちを正直に話してくれている。きっと、これをわたしに話すことには抵抗があっただろう。
ソウは自分の弱いところを見せるのが、とてつもなく格好悪いことだと思っている節がある。わたしにはよく分からないけれど、男の人はとにかく格好つけたい生き物なのだと、以前タカミが話していた。
未だ不安気にわたしを抱きしめているソウを安心させたくて、身体はぴったりとくっつけたままソウを見上げた。
「……離れないよ。だってわたし、ソウのそういう弱いところが好きなの。だから、わたしも頑張って素直になるから……ソウも、わたしに甘えて? 嫌いになんてならないから。この先も、ずっと」
言い終わると、さらにぎゅうっと強くソウに抱きしめられる。胸が苦しかったが、何も言わずに受け入れた。
「もう、ユキちゃん……ボクを泣かせたいん? そんなん言われたら、ボクずうっと駄目な男になってまうで? ええの?」
「いいよ。駄目になっても。わたしだって駄目な女だから」
「よう言うわ。ほんまに……強いなあ、ユキちゃんは」
薄く笑いながら、ソウが腰をかがめて唇にキスを落とす。一瞬しか触れ合っていないのに、溶けてしまいそうなくらい優しいキスに全身が震えるほど喜びを感じた。ソウの弱いところが好きと言ったけれど、やっぱり優しいソウも大好きだ。
啄むように、瞼や頬に触れるだけの口づけをしながら、ソウがするすると素肌のままのわたしの腰を撫でた。そういえば、裸のままベッドから飛び出したんだった。
「あっ……あの、服着るね?」
「ええよ、このままで。……なあ、ユキちゃん」
「えっ?」
「……嫌やなかったら、もう一回だけ抱かせて? 今度は、優しいするから」
ソウが切なげにわたしを見下ろして、謙虚にねだってきた。照れているのか、興奮のせいか、目元がほんのり赤い。
はっきり言って、ものすごく色っぽい。
つい先ほど改めてお互いの愛を確認しあった夫に、こんな風にねだられてしまったら断れるわけがない。現に、さっきソウに乱暴に抱かれたせいでひりひりと痛んでいた下半身に、じわじわと熱が籠もっていくのが分かった。
恥ずかしくて思わず拒絶してしまいそうになるところを、ぐっとこらえる。わたしだって、ついさっき素直になると宣言したばかりだ。ソウだって恥ずかしい思いをしているのだから、わたしも素直にならなければ。
心の中で葛藤してから、覚悟を決めてもう一度ソウを見上げた。
「……うん。だ、抱い、て?」
恥ずかしさのあまり声が上ずってしまったが、なんとか口にできた。ほっとしたのも束の間、ひょいっとソウに持ち上げられて、再びベッドの中に二人で入り込んだ。
「ああもう、ユキちゃんあかんでそれ。一回やそこらで終わらへん」
「ええっ!? い、一回って言ったっ……!」
「ユキちゃんが悪いんやで、ボクを煽るから。仲直りの記念に、今日は朝までしよな?」
「そ、そんなの無理っ!」
さっきまでどん底まで落ち込んでいたくせに、すでに嬉々としてわたしを押し倒してくるソウに呆れてしまう。立ち直らせたのはわたしだが、それを通り越して舞い上がってはいないだろうか。
口内を舌で弄ばれながら、立ち直りが早すぎるこの夫が一回だけで満足しますように、とただ願うばかりだ。
「はあ……ユキちゃん、体冷たいやん。ボクが温めたる」
「ん、だって……ソウだけずるい」
口付けの合間に、ソウの夜着をするりと脱がした。自分だけ真っ裸なのが恥ずかしかっただけなのだが、その行為がソウには先をねだっているように思えたらしく、口角を上げて遠慮なく素肌同士をくっつけてくる。
「もう、ユキちゃんかわいい……一緒に、温かくなろな?」
「ん、んんっ……!」
胸元に顔を埋めて甘えてきたかと思いきや、いきなりかぷっと胸の先端を口に含まれる。その温かさに身震いすると、すぐに舌で舐られる。時折強く吸われたり、噛まれたりすればもう甘い声は止まらなくなってしまう。
「あ、ああっ……もう、それっ……!」
「ん……、ユキちゃん、これ好きやろ? 小さい割に感じるもんなぁ」
「ち、小さいは余計っ……ああんっ!」
「こっちも立ってきた……ユキちゃん、気持ちいい?」
優しい責めに翻弄されて、こくこくと頷く。でも、ソウはそれだけでは満足していないようで、促すようにもう一度その先端を舐め始めた。
「ん、んうっ……! あ、き、きもち、いっ……、ソウ、気持ちいいっ……!」
恥ずかしさを押し殺してそう叫ぶと、ソウは満足気にその部分を強く吸ってから唇を離した。
「はあ、かわいい……ユキちゃんがかわいすぎて、もうボク死んでまいそうやわ」
「な、なにそれ……」
「そない冷めた目ぇで見んといてや。ほな、ユキちゃんの好きなとこ舐めたるから、脚開いて?」
「えっ……そ、それは」
「好きやろ? ここ舐められんの」
「きゃんっ!」
突然、脚の間の敏感な突起を撫でられて、まるで犬のような声を上げてしまった。抗議するようにソウを見つめるけれど、悪びれる様子は一切ない。それどころか、嬉しそうにそこを執拗に撫で上げてくる。
「かわいい声……けど、舐められる方が好きやろ?」
「あ、あっ、ち、がっ……!」
「違うん? そやけど、指やと刺激強すぎるやろ。ほら、素直になる言うたやん」
耳元で囁かれると、それだけで体が震える。ソウの言う通り、指で触られると刺激が強すぎてすぐ達してしまうから、舌でゆっくり舐められる方が好きだ。だけど、そんなことをソウに言えるわけがない。なぜかソウにはいつの間にかばれているけれど。
もうばれているのなら、今さら口にしたところで変わらないんじゃないか。この恥ずかしさを乗り越えたら、きっとソウが今よりもっと気持ちよくしてくれる。その期待の方が勝って、わたしにしてはあっさりとソウの手に落ちた。
「はぁ、あっ、そ、うぅ……、そこ、なめてぇっ……!」
「っ……、ユキちゃん、えらい素直やな……調子狂うわ」
言葉の割にソウは嬉しそうに、突起を撫でていた手を止めてわたしの脚を割り開いた。撫でられて赤く腫れた突起も、その下の蜜を垂らす入り口も、きっとソウに丸見えだ。慌ててそこを隠すように手を伸ばしたが、それより先にソウの舌が突起を舐め上げた。
「ああんっ! んあ、あ、ソウ、それぇっ……!」
「ん……、気持ちいいん? ユキちゃん」
「う、んっ……きもちいいっ……! それ、すきぃっ……!」
「はあ、ユキちゃん……あんまりかわいすぎると、ほんまに朝まで離されへんでっ……!」
ぴちゃぴちゃとはしたない音を立てながら、ソウが突起を舐る。舌先で抉るような動きも、舌全体で覆われる動きですら快感に変わる。そして激しく動かされると、わたしは声もなく達してしまった。
「はあっ、はあっ……ご、めん、いっちゃった……」
「ええよ。そやけど……ごめん、ボクももう限界やわ」
そう言って、すでにそそり立った自身を濡れきった秘所に宛がう。くちゅ、と微かに水音がして、やってくる刺激を待ち構えた。
「え……?」
突然の謝罪に驚いて、動かない身体はそのままで顔だけをソウの方に向ける。
先ほどまでの嫉妬と怒りの感情にまみれたソウはもういなくて、叱られた子どものようにしゅんとしてしまったソウが不安気にわたしを見つめていた。
「……今日は、別の部屋で寝る。一緒におったら、またユキちゃんにひどいことしてまう」
さっきまでの勢いはどこへやら、すっかり意気消沈してしまったソウが寂しげに呟く。そして、わたしの返事も聞かずに背を向けてドアに向かって歩き始めた。
「ま、待って!」
「……ごめんな、ユキちゃん。ボクやっぱり、ユキちゃんのことになると自分が抑えられへんみたいやわ。ユキちゃんのこと、一番大事にしたいんやけど……いつも傷つけてまう」
背を向けたまま寂しそうに笑うソウを見て、わたしはどうしようもなく彼を愛おしいと思った。
ソウがわたしにきつく当たるときは、彼が傷ついている時だ。感情のぶつけ方が分からなくて、癇癪を起こす子どものように。
そう思った途端、わたしは何も身に付けていないことも忘れて、ベッドから降りてソウの背に思い切り抱き着いた。
傷ついた彼が、一人でどこかに行ってしまわないように。
自分を責めてしまわないように。
わたしがソウを傷つけてしまったのだ。謝るのはソウではない。
「ごめん……ごめんね、ソウ」
ソウの背に縋りついて、必死に許しを請う。腰に回したわたしの手をソウがそっと撫でた。戸惑っているようなその仕草に、彼の優しさが見える。
「ごめんね……わたし、ソウの気持ち、全然考えてなかった。自分勝手だよね」
ソウは何も言わない。何を言えば良いのか、彼にしては珍しく迷っているのだろう。抱きしめる腕の力を強くすると、ソウの体温が伝わってくる。
「あのね、ソウ……? わたしがソウを傷つけたこと、簡単に許してもらえるなんて思ってない。でも、このままソウが離れていっちゃうのは嫌なの。わたしが愛してるのは、ソウだけだから」
「……ユキ、ちゃん」
そこでようやく、ソウが振り向いてわたしを見てくれた。自信無さげな表情はそのままだが、その瞳は確かにわたしを映してくれている。
しばらくの間、わたしの真意を窺うようにソウはただじっと口を噤んでいた。わたしも口を開かずに、ソウの答えを待つ。
「……愛してるって」
「えっ?」
「愛してる、って……ユキちゃん、初めて言うてくれたな。言葉に出さんでも、ユキちゃんがボクのこと好きでいてくれてるんは分かってた。けどやっぱり……嬉しいもんやな」
切れ長の目を細くして、ソウが微笑んだ。そして、距離を詰めてぎゅっとわたしの身体を抱きしめてくれる。身長差があるから、わたしの頭にソウが顔を埋める形になる。
わたしは、ゆっくりと鼓動するソウの胸にぴったりと頬を押し当てた。
「……トーヤくんがな、さっき言うとってん。ユキちゃんは、ボクといつどこで出会うても、きっとボクのことを好きになってた、って」
「トーヤが……?」
「うん。そやけどボクは、そうは思われへんかった。ユキちゃんがボクより先にトーヤくんと出会うてたら、ユキちゃんはトーヤくんのこと好きになる思うてた。そやから、ユキちゃんがトーヤくんのこと意識してるの見たら……自分でも訳分からんくらい嫉妬した」
「そ、そんなの……」
「アホらしいやろ。ユキちゃんはもうボクのもんで、トーヤくんもそれをよう理解してる。それやのにボクは一人で勝手に嫉妬して、ユキちゃんに八つ当たりして……我に返ったとき、ぞっとしたわ。これでユキちゃんがボクから離れていったらどないしよう、て」
珍しく、ソウが自分の気持ちを正直に話してくれている。きっと、これをわたしに話すことには抵抗があっただろう。
ソウは自分の弱いところを見せるのが、とてつもなく格好悪いことだと思っている節がある。わたしにはよく分からないけれど、男の人はとにかく格好つけたい生き物なのだと、以前タカミが話していた。
未だ不安気にわたしを抱きしめているソウを安心させたくて、身体はぴったりとくっつけたままソウを見上げた。
「……離れないよ。だってわたし、ソウのそういう弱いところが好きなの。だから、わたしも頑張って素直になるから……ソウも、わたしに甘えて? 嫌いになんてならないから。この先も、ずっと」
言い終わると、さらにぎゅうっと強くソウに抱きしめられる。胸が苦しかったが、何も言わずに受け入れた。
「もう、ユキちゃん……ボクを泣かせたいん? そんなん言われたら、ボクずうっと駄目な男になってまうで? ええの?」
「いいよ。駄目になっても。わたしだって駄目な女だから」
「よう言うわ。ほんまに……強いなあ、ユキちゃんは」
薄く笑いながら、ソウが腰をかがめて唇にキスを落とす。一瞬しか触れ合っていないのに、溶けてしまいそうなくらい優しいキスに全身が震えるほど喜びを感じた。ソウの弱いところが好きと言ったけれど、やっぱり優しいソウも大好きだ。
啄むように、瞼や頬に触れるだけの口づけをしながら、ソウがするすると素肌のままのわたしの腰を撫でた。そういえば、裸のままベッドから飛び出したんだった。
「あっ……あの、服着るね?」
「ええよ、このままで。……なあ、ユキちゃん」
「えっ?」
「……嫌やなかったら、もう一回だけ抱かせて? 今度は、優しいするから」
ソウが切なげにわたしを見下ろして、謙虚にねだってきた。照れているのか、興奮のせいか、目元がほんのり赤い。
はっきり言って、ものすごく色っぽい。
つい先ほど改めてお互いの愛を確認しあった夫に、こんな風にねだられてしまったら断れるわけがない。現に、さっきソウに乱暴に抱かれたせいでひりひりと痛んでいた下半身に、じわじわと熱が籠もっていくのが分かった。
恥ずかしくて思わず拒絶してしまいそうになるところを、ぐっとこらえる。わたしだって、ついさっき素直になると宣言したばかりだ。ソウだって恥ずかしい思いをしているのだから、わたしも素直にならなければ。
心の中で葛藤してから、覚悟を決めてもう一度ソウを見上げた。
「……うん。だ、抱い、て?」
恥ずかしさのあまり声が上ずってしまったが、なんとか口にできた。ほっとしたのも束の間、ひょいっとソウに持ち上げられて、再びベッドの中に二人で入り込んだ。
「ああもう、ユキちゃんあかんでそれ。一回やそこらで終わらへん」
「ええっ!? い、一回って言ったっ……!」
「ユキちゃんが悪いんやで、ボクを煽るから。仲直りの記念に、今日は朝までしよな?」
「そ、そんなの無理っ!」
さっきまでどん底まで落ち込んでいたくせに、すでに嬉々としてわたしを押し倒してくるソウに呆れてしまう。立ち直らせたのはわたしだが、それを通り越して舞い上がってはいないだろうか。
口内を舌で弄ばれながら、立ち直りが早すぎるこの夫が一回だけで満足しますように、とただ願うばかりだ。
「はあ……ユキちゃん、体冷たいやん。ボクが温めたる」
「ん、だって……ソウだけずるい」
口付けの合間に、ソウの夜着をするりと脱がした。自分だけ真っ裸なのが恥ずかしかっただけなのだが、その行為がソウには先をねだっているように思えたらしく、口角を上げて遠慮なく素肌同士をくっつけてくる。
「もう、ユキちゃんかわいい……一緒に、温かくなろな?」
「ん、んんっ……!」
胸元に顔を埋めて甘えてきたかと思いきや、いきなりかぷっと胸の先端を口に含まれる。その温かさに身震いすると、すぐに舌で舐られる。時折強く吸われたり、噛まれたりすればもう甘い声は止まらなくなってしまう。
「あ、ああっ……もう、それっ……!」
「ん……、ユキちゃん、これ好きやろ? 小さい割に感じるもんなぁ」
「ち、小さいは余計っ……ああんっ!」
「こっちも立ってきた……ユキちゃん、気持ちいい?」
優しい責めに翻弄されて、こくこくと頷く。でも、ソウはそれだけでは満足していないようで、促すようにもう一度その先端を舐め始めた。
「ん、んうっ……! あ、き、きもち、いっ……、ソウ、気持ちいいっ……!」
恥ずかしさを押し殺してそう叫ぶと、ソウは満足気にその部分を強く吸ってから唇を離した。
「はあ、かわいい……ユキちゃんがかわいすぎて、もうボク死んでまいそうやわ」
「な、なにそれ……」
「そない冷めた目ぇで見んといてや。ほな、ユキちゃんの好きなとこ舐めたるから、脚開いて?」
「えっ……そ、それは」
「好きやろ? ここ舐められんの」
「きゃんっ!」
突然、脚の間の敏感な突起を撫でられて、まるで犬のような声を上げてしまった。抗議するようにソウを見つめるけれど、悪びれる様子は一切ない。それどころか、嬉しそうにそこを執拗に撫で上げてくる。
「かわいい声……けど、舐められる方が好きやろ?」
「あ、あっ、ち、がっ……!」
「違うん? そやけど、指やと刺激強すぎるやろ。ほら、素直になる言うたやん」
耳元で囁かれると、それだけで体が震える。ソウの言う通り、指で触られると刺激が強すぎてすぐ達してしまうから、舌でゆっくり舐められる方が好きだ。だけど、そんなことをソウに言えるわけがない。なぜかソウにはいつの間にかばれているけれど。
もうばれているのなら、今さら口にしたところで変わらないんじゃないか。この恥ずかしさを乗り越えたら、きっとソウが今よりもっと気持ちよくしてくれる。その期待の方が勝って、わたしにしてはあっさりとソウの手に落ちた。
「はぁ、あっ、そ、うぅ……、そこ、なめてぇっ……!」
「っ……、ユキちゃん、えらい素直やな……調子狂うわ」
言葉の割にソウは嬉しそうに、突起を撫でていた手を止めてわたしの脚を割り開いた。撫でられて赤く腫れた突起も、その下の蜜を垂らす入り口も、きっとソウに丸見えだ。慌ててそこを隠すように手を伸ばしたが、それより先にソウの舌が突起を舐め上げた。
「ああんっ! んあ、あ、ソウ、それぇっ……!」
「ん……、気持ちいいん? ユキちゃん」
「う、んっ……きもちいいっ……! それ、すきぃっ……!」
「はあ、ユキちゃん……あんまりかわいすぎると、ほんまに朝まで離されへんでっ……!」
ぴちゃぴちゃとはしたない音を立てながら、ソウが突起を舐る。舌先で抉るような動きも、舌全体で覆われる動きですら快感に変わる。そして激しく動かされると、わたしは声もなく達してしまった。
「はあっ、はあっ……ご、めん、いっちゃった……」
「ええよ。そやけど……ごめん、ボクももう限界やわ」
そう言って、すでにそそり立った自身を濡れきった秘所に宛がう。くちゅ、と微かに水音がして、やってくる刺激を待ち構えた。
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