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性悪夫婦の愛ある結婚生活

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 見合いをした。
 お相手は大病院を経営する一族の末娘。国内で圧倒的シェアを誇る医療機器メーカーの社長である僕にとっては、得意先の御令嬢というわけである。
 もちろん、当人同士の意思は関係ない。この見合いにあるのは、取引先との関係を確固たるものにしたいという思惑のみだ。
 
 初めて彼女と顔を合わせたとき、二人きりになった時間を使って僕は告げた。「人を愛したことがない」と。それから、「今後愛するつもりもない」と。
 政略結婚でも、愛を育める夫婦は意外と多い。最初は情が無くとも、一緒にいるうちに愛しくなってしまった──という話は何度か聞いたことがある。
 しかしもし僕の見合い相手が、そんな夢を抱いた少女であったとしたら。残念だが丁重に断るつもりだった。それは僕のためでもあり、相手の女性のためでもある。なぜならば、そんな夢物語は僕には起こり得ないからだ。
 
 もし僕に愛情を望むのならば、この縁談は無かったことにしてほしい。そう言うと彼女は、紅をひいた唇を開いてこう言った。「それでもかまいません」と。
 





 それから両家の間で縁談は順調に進んでいった。僕が何かしなくとも勝手に両親顔合わせの席が用意され、結納が行われ、そして挙式と披露宴もあっという間に終わった。この間、約半年。見合いであるとはいえ、かなり急いた結婚だったように思う。
 というのも、僕と彼女の年齢がその要因の一つだ。僕は三十八歳、彼女は三十歳。世間的に見れば結婚するのに妥当な年齢だろうが、見合い結婚の多い僕たち親族からしてみれば遅すぎる結婚だったらしい。そのため少しでも若いうちに、と互いの両親を中心にかなり早いスピードで話が進んだのだ。

 そして、もう一つ理由がある。ほしいものはすべて手に入れてきた僕が、唯一ままならなかったもの。病で失った、両目の視力のせいだった。
 





隼人はやとさん。お茶をお淹れしましょうか」
「ああ、頼む」
 
 一週間前、僕と彼女は結婚式を挙げた。両家の親族、会社関係の列席者が多数集まった盛大な結婚式だ。
 一日中作り笑いをしていたせいで頬は攣りそうになり、深夜自宅に着いた頃にはぴくぴくと痙攣していた。結婚式というのは主催者も参加者も何かと気苦労が絶えない。

 そして引っ越しやら役所の手続きやらを済ませた今日から、僕と彼女は一緒に住み始めた。とはいえほとんど部下や業者に頼んだので今日はさほど疲れてはいない。夕飯も済ませメールチェックをしながら、どこか楽しげに自分の荷物を解いている彼女の後ろ姿を眺めていた。

 
 彼女は大人しい女性だった。見合いの際もぺちゃくちゃ話すことはせず、父親や僕に話を振られた時だけ愛想よく応じていた。よく躾けられているな、というのが彼女に抱いた第一印象だった。
 周囲からの評判も良かった。今は実家の病院を裏方として手伝いながら花嫁修業をしている、とのことだった。婚期が遅れたのは彼女の控えめすぎる性格のせいではないかと周りは勝手に噂して、彼女もそれを否定しなかった。
 御令嬢らしく趣味は茶道とバイオリン、名門女子大学出身で頭も悪くない。少々世間知らずな面もあるが献身的で、他人と比べて視力の弱い僕を支える妻としては申し分ない。彼女を逃したらこんなリスクのある結婚に応じてくれる女性などいないだろうという周囲の意見があって、彼女の同意を得てすぐ結婚という運びになったのだ。
 
 そして何より僕にとって大事なこと。それは先述したように、僕に夫としての愛情を求めてこないという要求を呑んでくれたことだ。実際に彼女とは結婚前に何度か二人で食事をしたが、僕とは一定の距離を取ってそれ以上入り込もうとはしなかった。
 

「もう寝ようか」
「はい、分かりました。お部屋まで……」
「大丈夫だ。きみも準備がいるだろう、寝室で待っているから後から来るといい」
「あ……は、はい」
 
 今夜は初めて二人きりで一夜を過ごす。つまり新婚初夜だ。
 世間知らずだという彼女もさすがにそれは理解しているようで、僕がそう口にすると薄っすらと頬を赤らめた。胸が高鳴ることこそないものの、その表情は見ていて不快ではなかった。
 






「隼人さん……お待たせ、いたしました」
「おや、思っていたより早かったね。心の準備はもういいのかい?」
「は、はい……」
 
 薄暗い寝室で、僕の横たわるベッドにおずおずと彼女が近づく。手招きをすると、失礼します、と布団を捲って隣に入り込んできた。こんなにも他人と近付くことは久しぶりで、その違和感を受け入れるのに時間がかかった。
 
「あの、隼人さん……ひとつ、お聞きしてもよろしいですか」
「何かな」
「……どうして、私と結婚しようと思ったのですか? どうして、私を選んでくださったのですか?」
 
 よく聞かれる質問だ。女はすぐこういうことを聞きたがる。
 彼女はこういった面倒な質問をしない人間だと思っていたが、今夜の彼女はどうしたのだろう。初夜に対する緊張感が彼女を狂わせているのか、それともこちらが彼女の素の姿なのだろうか。
 
「言わなかったかな? 僕に愛情を求めないと、きみが言ってくれたからだよ」
「そう、でしたね……」
「まさか実際に籍を入れてみたら愛が欲しくなった──なんて言わないだろうね。それは立派な契約違反だと思うが」
「そんなことは、いたしません」
「それならいい。では逆に聞くが、きみはどうして僕を選んだ? 愛情も望めない、この先すべての視力を失うかもしれない……そんな僕に嫁いできたきみの気持ちの方が分からないな」
 
 少し苛立った口調で捲し立てると、彼女が布団の中で体を強張らせる。そして上目遣いで僕を見つめてから、囁くような小声で言った。
 
「──愛してくれない人の方が、都合がいいからです」
 
 ぴたりと、時が止まったような気がした。
 残った視力を限りなく行使して彼女の目を見つめる。そこにいたのは紛れもなく僕が結婚した彼女で、嘘や冗談を言っているようにも、僕を試そうとしているようにも見えなかった。
 
「驚いていらっしゃいますか? そんな顔、初めて見ました」
「……驚いていないと言えば、嘘になるな。きみの口からそういった言葉が出るとは予想していなかったから」
「そうでしょうね。私も、初めて口にしましたから」
 
 目を細めて彼女は笑った。どこかあどけないと思っていたその笑顔が、今はどこか妖しく艶やかに見える。
 
「家族の誰も、本当の私のことなんて知りません。興味もありません」
「本当のきみ?」
「はい。一応初夜までには打ち明けようと思っていたので、今言わせていただきますが……この歳まで結婚を決めなかったのは、気ままな遊びができなくなるからです」
「……つまり、男遊びということか」
「ふふ、さすが頭の回転がお早いんですね。その通りです」
 
 薄く笑いながら、彼女は自ら着ていた生成りの夜着のボタンを外し始めた。そしてするっとその袖から腕を抜くと、見せつけるように下着まで取り払う。娼婦の演出のようなその一連の流れを、僕はただじっと見つめていた。
 
「あなたになら分かるでしょう? 面倒な家柄に生まれて、望んでもいないことを強要されて……その鬱憤を晴らす手段が、私にとってはセックスだったというだけです」
「なるほど。よく躾けられたあの姿は演技というわけか」
「演技というほどでもありません。清楚で従順なあの姿も、私の一部ですから」
「フッ、そうか。まんまと騙されてしまったな」
「そうですか? でも私、結婚してから死ぬまでずっとあの自分でいるのには耐えられそうになかったんです。だからずっと探していたんです……を、愛するつもりのない人を」
 
 彼女はくすくすと笑いながら、今度は僕の夜着を脱がせにかかる。抵抗もせずその手つきを眺めていると、途中で彼女は手を止めて僕を見上げた。
 
「……つまらないわ。私の本当の姿を見て、ちょっとでも動揺するあなたを見られると思っていたのに」
「それは期待に沿えず申し訳ない。でも僕にとってはきみの本性を知ったところで何も困ることはないんだよ。愛してほしいと請われる方がよっぽど困る」
「やっぱりあなたって歪んでるわ。まあ、そうでいてもらわないと困るけれど」
 
 丁寧で楚々とした言葉遣いが崩れ始めたあたりで、僕は笑いをこらえきれなくなっていた。
 彼女ほど僕の結婚相手にふさわしい人はいないと、今度こそ確証が持てたからだ。僕が喉の奥で笑っているのに気付いて、彼女が眉間に皺を寄せる。そんな顔もできるんだなと、僕はさらにおかしくなった。
 
「きみは、これからも男遊びを続けるつもりかい?」
「いいえ。独身の頃ならまだしも、今度は露見したらとんでもないことになるでしょ。だからあなた一人で我慢するつもり」
「なんだ、がっかりだな。そういった危険を冒してまで遊ぶからこそ楽しいのに」
「……夫自ら、不倫を推奨するの? ああそうだ、あなたは愛してくれないんだものね。不倫してくれる方がいいってことかしら」
「そういうわけではない。妻の醜聞が広まるのは会社として好ましくないからね。だが、そこまでして自分を貫くのは楽しそうだと思っただけだよ」
 
 今度は、彼女が少し驚いた顔をした。その隙に彼女の素肌に触れると、思っていたよりずっと滑らかで柔らかかった。
 
「んっ……あなたが、してくれるの? ちゃんと見える?」
「フッ、ずいぶん舐められたものだね。まだきみのすべてが見えるよ」
「あ、んっ……でも、今後は分からないんでしょう? 見えなくなったら、どうするの?」
「そんなことはきみが心配しなくていい。きみはそのままでいてくれればいいんだ」
 
 端から見れば愛の言葉を囁いているように見えるだろう。だが実際は違う。彼女と僕の間に愛情は無い。あってはならないからだ。
 愛情は人を狂わせる。いつか僕の弟がそうしたように、何もかもを投げ出してまで守りたくなるような存在ができてしまうことは、僕にとって最も恐れるべきことだった。
 
「ああ、そうか。きみが処女でないなら、必要以上に前戯をしなくてもいいということだね」
「冷たいことを言うのね。愛はなくたって、前戯くらいしてもいいと思うけど」
「そうかな?」
「そうよ」
 
 彼女の言葉に笑ってから、そっと陰部に手を伸ばす。柔らかいその場所はしっとりと湿ってはいるものの、まだ挿入できるほど濡れてはいなかった。
 布団を跳ね除けて彼女の体に跨ると、どういうわけか口付けたくなってそっと唇同士を重ね合わせてしまった。彼女とキスをしたのは、挙式の最中のただ一回だけだった。ということは、これが二度目のキスということだ。
 
「ん……ふふっ、どうしたの? キスなんかして」
「どうしてだろうな……ほんの気まぐれだ」
「気まぐれでも、たまにはキスしてもらえるのね。それは少し嬉しいかも」
 
 何が嬉しいのかは分からないが、そう言って笑う彼女が綺麗に見えたので何も聞かなかった。代わりに口をふさぐようにもう一度キスを落としてから、そっと胸を触る。
 男遊びをしていたと言う割に彼女の体は綺麗で、余分な脂肪もなく引き締まっていた。それでいて少し張りのある胸は触り心地が良くて、その中心の尖りを捏ねると彼女が息を詰めるのが分かった。
 
「っ、ふふ……なんだ、もっと雑に抱かれると思っていたけれど、意外と優しいのね」
「そうか? 手ひどく抱いてほしいならそうするが」
「いいえ。このままでいいわ」
 
 彼女が中途半端に脱がせた僕の夜着をすべて取り払ってから、彼女の履いていた下着も脱がせる。そっと撫でるように入り口や突起のあたりに指を這わせながら、首筋や鎖骨にキスを落とした。少しずつ彼女の艶のある声が漏れてくると、優越感にも似た感情が沸き起こってくる。
 
「ん、あぁっ……」
「きっと僕なんかよりきみの方が経験豊富だろう。無理に感じたふりをしなくてもいい」
「あ、んんっ! んっ……まだ、演技しているように見えるの? っ、それは、心外ね」
「演技でないのなら、男としての僕もまだ枯れていないと思っていいのかな」
「ん、ふふっ……私は、いいと思うけど」
 
 そのうち指先に濡れた感触がして、控えめな水音が耳に届く。もう十分だろうと判断して唯一残っていた自分の下着を脱ぐと、ふと視線を感じて手を止めた。
 
「……何かな?」
「いや、あの……それ、何か改造してる?」
「は?」
 
 彼女が“それ”と言って指差したのは、今しがた取り出したばかりの僕自身だ。そんなに性欲旺盛というわけでもないが、さすがにこの状況まで来たらそれなりの硬度を持ってその存在を主張している。
 
「改造? どういう意味かな」
「いや、大きすぎない? そういう手術でもしたのかと思って」
「フッ、そんな無意味なことを僕がすると思うかい?」
「……そうね。ああ、そういえばあなたって確かクォーターなのよね。外人は大きいって言うし、そのせいかしら」
「さあ、興味がないから比べたことはないな。比べたいとも思わないね。……それより、もうおしゃべりは終わりにしよう」
 
 彼女の脚の間に体を入れて腰を掴むと、微かにではあるが彼女が一瞬ためらうような仕草をした。ちらりと顔を窺うと、彼女の視線はまだ僕自身に向けられている。もしかしたら、先ほど茶化してきたのは多少なりとも怖気づいていたからだろうか。男遊びを経験してきたと宣言した彼女のことだから平気で僕を受け入れられるかと思ったが、やはり女性が恐怖を感じる大きさではあるらしい。
 
「きみのそんな表情が見られるなら、改造を疑われるようなモノを持っていて良かったかもしれないな」
「……は?」
「何でもない。もし痛いようなら言ってくれ」
 
 けれど僕は知っている。いくら恐怖を覚えようと、よほどのことがない限り女性のそこは男の一物を受け入れられるようになっているのだ。痛みを感じるかどうかは別として。
 だから彼女に止められる前に入れてしまおうと思って、何も纏っていないその先端を蜜で濡れた入り口に押し当てる。そして彼女の体が強張る前に、一気に奥まで挿入した。
 
「あっあああっ!!」
「くっ……」
 
 みちみちと音を立てて彼女の膣内は僕自身を受け入れた。想像していたよりずっと狭いその中に包まれると、額から汗が一筋流れる。自分でも気づかないうちに、いつの間にか彼女との蜜事に夢中になっていたらしい。
 
「あ、んんっ……もう、いきなりっ……」
「すまない。痛かったか?」
「そういう、わけじゃないわ……もっとムードを大事にしてほしいってこと」
「そうか。それは専門外だから僕に期待しないでくれ」
「ふふ、つまらない人ね。……それより、避妊してないみたいだけど」
「きみと僕は一応夫婦だからな。跡継ぎも早めに考えなければならないし、別に構わないだろう」
 
 僕が淡々と言うと、彼女は承知したように頷く。それを合図に律動を始めると、彼女の整った顔がだんだんと快感に歪んでいった。
 
「あっ、ああっ! ん、はあっ……」
「っ、これは、光栄だな……僕程度の責めに、感じてくれているのか?」
「ん、あっ! も、もしそうなら、どうするの? んんっ、愛してくれなくていいから、あっ、私を抱くことはやめないでと、言ったらっ……」
「そんな簡単な願いだったら、いくらでも聞いてあげるよ……っ」
 
 馬鹿らしい言葉のやり取りをしていられたのは、それまでだった。あとは本能の赴くままに彼女をかき抱いて、腰を打ち付け、艶やかな喘ぎ声を聞きながら彼女の体内に精を吐き出した。
 
 萎えた自身をずるりと引き抜くと、それと一緒に白濁の液体が零れ出る。肩で息をする彼女の裸体にその白い欲望はよく映えて、萎えたはずの自身が性懲りもなく硬度を取り戻そうとした。
 
「はっ、はぁっ……もう、本当に、遠慮なく出したのね……」
「何か問題があったかな」
「生でするのは、初めてだったのよ? もう少し気を遣ってくれてもいいのに」
「そうか、それはすまない。僕も避妊なしでセックスをするのは初めてだったものでね」
 
 何がおかしいのか、彼女は汗ばんだ額を拭いながら笑った。でもその笑い声は耳触りが良くて、この先彼女の笑顔が見えなくなったとしても、その声が聞こえるならいいとさえ思った。でも。
 
「──きみの姿が見えるうちに、できるだけ抱いておきたいな」
 
 その言葉は、意図せず口から零れ出ていた。
 はっと我に返ったときにはすでに遅く、彼女は目を丸くして僕を見つめていた。
 
「ああ、いや……他意はない。早めに子どもを作らなければならないからね」
「そう……そうよね」
 
 彼女はそんな弁明に納得したのかしていないのか、僕から目を逸らして枕元に置いてあったティッシュペーパーで自らの陰部を拭き清めた。僕も同じように汚れた自身を拭いてその残骸をゴミ箱に放り投げてから、裸のまま布団を被る。彼女も自然と隣に擦り寄ってきた。
 
「……ねえ。もうひとつ、聞いてもいい?」
「きみは質問が多いな。まあ、いいだろう」
 
 柔らかい髪が胸元をくすぐる。他人の感触や体温をこんなにも心地良いと思ったのは初めてだった。
 そして彼女は少し逡巡してから、僕の胸に顔を埋めたまま問いかける。
 
「愛してほしいなんて言わないわ。でも……もし、万が一、私があなたを愛してしまったら──それも契約違反になるのかしら」
 
 今度は僕が目を丸くする番だった。
 彼女の表情は分からない。ふざけているのか、また演技をしているのか判断もつかない。だから僕は、頭に浮かんだ通りの言葉を口にした。
 
「それは……きみの自由だ。僕の関知することではないからね」
 
 我ながら事務的な返しだと思った。しかしそれは本心でもある。嘘をつくのは得意だが、彼女に対して嘘をついたところで何の意味もない。なぜなら、彼女はもう僕の所有物だからだ。
 
 しかし僕は妙に彼女の反応が気になって、顔を埋めたままの顎を捉えてこちらを向かせる。そこにあったのは、いくらか頬を朱に染めた少女のような笑顔だった。
 
「……驚いたな。それも演技か、恐れ入るな」
「ふふっ……ご想像に、お任せします」
 
 意味もなく敗北感を覚えて、僕は彼女の細い体を抱きすくめた。もう僕の物になったはずなのに、どうしてこんなにも彼女の意思が気になってしまうのだろう。そんなものを理解したところで、何の利益にもならないと分かっているのに。
 煮え切らない気持ちが芽生えてしまった僕とは対照的に、彼女は僕の腕の中で眠りにつくまでずっと穏やかに微笑んでいた。
 





 ほしいものはすべて手に入れてきたはずの僕にとって、ままならないものが二つになった。
 一つは病で失った両目の視力。
 そしてもう一つは、僕の妻だ。
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みんなの感想(1件)

生津直
2019.01.26 生津直

スピンオフのみ単独で読みましたが、面白かったです。この短さでこれだけの起伏を作り、独特の余韻まで残せるものなんですね。勉強になります!

染野
2019.01.29 染野

お読みいただきありがとうございます!
登場人物たちの性格的にあまり好かれないお話かなぁと思っていたので、面白いと言って頂けてほっとしました。もったいないお褒めの言葉をありがとうございました!

解除

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