sakanariaのショートショート

12.嘘つき少年

    ある村に、しょっちゅう嘘をついている少年がいた。この少年は村の中でも有名な嘘つきで、村の人々をいつもこまらせている。。

    天から見守っていたこの村の神はこの少年をなんとかしたいと思い、そうするうちに１つの案を思いついた。

    その頃少年は村の中をトコトコと歩いていた。人のいない路地裏を歩いている時に少年は何かの気配を感じた。よく見ると道の奥がぼんやりと光っている。そしてその光の中から1人の老人が現れた。少年はすぐにこの人は神様だなと思い話しかけた。

    「あんた、神様だよね？」

    「あぁそうじゃ。なかなか勘のいい少年だな。わしはあまり人間界におれないのでちょうどよかった。君に頼みがある」

    「ん、なに？」

    「今から2時間後にこの村で大規模な地震が起こる。ここにいたら誰も助からないだろう」

    少年は心底驚き、焦りだした。

    「ど、どうすればいいの？」

    「どうにもならぬ。すぐにこの村のみんなに逃げろと知らせてくれ。では頼んだぞ...」

    そう言ってから、老人の姿が次第に薄くなり見えなくなった。

    「大変だぁぁぁあ!!」

    少年はすぐに走り出し、もっとも人の多い広場に出ると大声でさっき起きたことの一部始終を話した。しかし案の定誰も信じてくれない。それでも少年は必死で話したがとうとう村人は怒り出した。

    「いい加減にしろ！毎回毎回...」

    あれから2時間が経とうとしていた。少年は誰もいない村の端に座って1人で泣いている。

    (普段僕が嘘をついていなければ...)

    少年は心底後悔した。嘘をつくには好きだったが、この村にことはもっと好きだったのだ。少年は泣きに泣き、ついにその時がきた。

    だが地震はいつになっても起きなかった。

    「騙されたっ!!」

    少年はこのとき初めて、騙されるという気持ちを知った。

    (みんないつもこんな気持ちになっていたんだ...)

    少年はすぐに広場に行き土下座して泣いて謝った。
それからというもの少年は1回も嘘をつかなくなり、もともと愛想が良かったので村の人気者になった。

    神は天からこの結果を見下ろし、微笑んだ。