sakanariaのショートショート

1.時を止める装置

    ある朝のこと。男がポストの中に入っていた朝刊や広告を取りコーヒーを飲みながら見ていると、怪しげな広告が目に止まった。
    そこには
       《1台限定！いつでも10秒間時を止める事ができる装置  なんと1000万円!!》
と書かれていた。男は呆れた。

    「ふん、そんな簡単に時間が止まるものか。電話して文句言ってやる」

    男は広告に書かれてあった電話番号をプッシュし電話をかけしばらくすると若い男の声が聞こえてきた。

    「はい、もしもし」

    「君、この広告に書かれてある時を止める装置なんて嘘だろう。そんな事できるわけがない」

    「嘘ではありません。この装置は必ず時を止める事ができます。人なら一度くらいは時を止めて見たいと思った事があるでしょう。1台限定ですよ？買わないのはもったいない。私もお金があれば買ってみたいですよ」

    それから30分間、この若い男の話を聞き続けていると、気がつけば注文してしまっていた。

    (くそ、つい買ってしまった。もし嘘なら訴えてやる)

    1週間後、その装置は届いた。箱を開けると中にはライターほどの大きさの、上部にスイッチが付いている物体が出てきた。説明書にはこのスイッチを押すだけですと書かれている。
    男は早速スイッチを押してみたが案の定何も起こらない。
    男は再び電話をかけた。

    「はい、もしもし」

    「君！この前時を止める装置とやらを買ったがやはり何も起こらないじゃあないか！どうしてくれるんだ！」

    するとそれを聞いていた若い男はいった。

    「いいえ、時は確かに止まっていますよ。あなたも含めてね」