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2巻

2-2

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「……結婚式はやっぱり、教会式なのかなあ……」

 サフィージャも女の子なので、なんだかんだいって結婚式には憧れがある。
 教会式にヴェールの下で宣誓をするのでもいいけど、できれば自分の神さまの前でも誓いたい。
 そんな気持ちを読んだように、クァイツは微笑んだ。

「二回やればいいじゃないですか。教会式と、そちらのご宗教の式と」
「そ、そんなことが許されていいのか?」
「もちろんです」
「教会の連中は騒がないか? 異教の神なんて認めてない連中だろう」
「いいんですよ」

 いいわけがなかった。

「そうか……いいのか……」

 しかしサフィージャも浮かれていたので、クァイツの言葉をそのまま信じることにした。
 何しろ異教徒同士だ。もし結婚できたとしても、式に関してはほとんど諦めていた。
 実際にできるかどうかはともかく、やってくれると口約束をしてもらえるだけでも、やっぱりちょっと、嬉しかったりする。

「式を二回やってもいいんだ……」
「いいんです」

 たとえ根拠はなくとも、自信満々じしんまんまんに言い切られると気持ちいいものがある。
 この男の強引なところに困ることもあるが、こういうときは頼もしい。

「へへ……」

 もちろん自分の宗教儀式も大事にしたいが、教会式の結婚式も、あれはあれでいいものだなと思っていた。両方やっていいなんて贅沢ぜいたくすぎやしないだろうか。
 サフィージャが嬉しさを隠せずにへらへらしていると、クァイツは相好そうごうを崩した。

「ああ、もう、サフィージャ。そんなにかわいい顔をしていると、どうなっても知りませんよ」

 クァイツはサフィージャを抱き寄せ、もう片方の手を服の中に忍び込ませる。

「ちょっ……待て、ここをどこだと思って……」
「暴れてはいけませんよ。誰に気づかれるか分からないんですから」

 含み笑いを浮かべ、彼は目だけで御者ぎょしゃがいるはずの前方を示す。馬車の外側からだとこちらの様子は見えないが、声は聞こえるかもしれない。反射的に口をつぐんだサフィージャを満足げに見つめながら、彼はさらに服をはだけさせ、手をわせていった。
 クァイツの指がきゅっとサフィージャの胸の先端をつまみあげる。

「ん……」

 小さく声をもらすと、彼はより一層面白がるように笑う。

「静かにしてくださいと言いませんでしたか?」

 そっとささやかれる笑みを含んだ声に、サフィージャの意識はとろけそうになる。
 胸をさいなむ感覚にゾクリと肌があわ立った。

「それともわざと? あられもない声を聞かせたいんですか。仕方のない人だ」

 サフィージャは焦りながら小声でささやき返す。

「……ば、ばかなことを言ってないで、手を離せ……」

 今は仕事に向かうための馬車に乗っているのだ。前方には御者ぎょしゃがいるし、そばを走る立派な馬車には侍従やら護衛やらが大勢乗っている。いつ誰がこの馬車の中をあらためてくるか分からない状況でこんなことをされるのには、抵抗があった。
 そんなサフィージャの内心も知らず、クァイツは「嫌です」と楽しげに言う。

「離しません。離したら逃げるおつもりでしょう?」

 彼は吐息といきだけの声でサフィージャの耳朶じだをくすぐり、やわらかい唇を敏感な首筋に押しつける。
 それだけで、彼女のからだはびくん、と大げさに跳ねた。
 爪の先で胸のいただきをやさしくつつかれ、サフィージャは息がつまった。
 指の腹を何度もすりつけられる感覚に、体温があがってしまう。

「胸、気持ちいいですか? 目元がとろんとして素敵です」

 ちがう、と言おうとして、サフィージャはのどをつまらせる。気を抜いたら変な声が出そうだった。力の抜けたからだに、快感を刷り込まれていく。

「……あ、……っぁ……ッ」

 流されてどうする。そう思うのに、なぜか全然動けない。指先で緩急をつけていじめられて、たまらなくなった。

「相変わらず反応がいいことで。もうこんなに硬くして……」
「ぁっ……!」

 クァイツの手のひらが胸をやわやわともみしだいては、指先で胸のいただきを刺激する。
 先端からひっきりなしに甘いしびれを流し込まれるようだ。

「やだ……、やめて……」
「やめてほしいんですか? すごく気持ちよさそうに見えるんですが……」

 くすくすとやわらかな笑い声が耳元で響く。
 執拗しつように攻められて硬い芯が現れた胸の先を、彼の指がいたようにい回る。

「もうどこにも行かないでくださいね。あなたに置いてきぼりにされた朝のこと、まだ根に持ってますから。今度されたら、私も何をするか分かりませんよ」

 甘い束縛まじりのささやきと一緒に激しくまさぐられて、サフィージャは身もだえた。
 自分勝手な言いぐさだと分かっていても、なぜか胸をかれてしまう。

「私から離れていかないと約束してください」
「わ、分かった、分かったからっ……」

 サフィージャはクァイツの腕をつかんで止めた。このままでは快感に溺れてしまう。
 とにかく彼に約束とやらをして、納得してもらわなければ。

「離れてなんて……いくわけないだろ。だいたいな、もう、頼まれたって、離れてなんかやらない」

 サフィージャは言ってから後悔した。なんて恥ずかしいセリフなんだ。
 しかしクァイツには響いたらしい。彼は目を丸くしたあと、喜びがにじんだ表情を浮かべた。

「だからちょっと落ち着け……って、聞いてるか?」
「ああ……あなたの気が変わらないうちに、早く式をあげてしまいたい……」
「そ、それはいくらなんでも気が早……、んんっ!」

 片手で乱暴に両頬を挟まれて、唇をふさがれた。熱い粘膜に口の中を愛撫あいぶされて、指の先までしびれが広がっていく。彼のやわらかい舌におそるおそる自分のものを絡めると、待ちかねたように吸い上げられた。ビクリと大げさに反応した肩口を、彼に荒っぽく抱き寄せられる。
 逃げようとすると首の後ろをフードごとがっちりとつかまれて、口の中の深いところまで舌の侵入を許してしまう。サフィージャはたまらず嬌声きょうせいをもらす。

「ん……ん、んく、……んンッ……ふ……」

 ひとしきりキスしたあと、彼はばさっと外套がいとうを脱いだ。サフィージャをひざの上に抱え、密着した体勢で、はだけた鎖骨をつうっとなめとる。サフィージャののどが、ひくりと震えた。素肌の上をすべる彼の舌の感触に、全身の肌があわだった。

「あなたは信じられないくらいかわいいですから、ときどきたまらなくなります」

 クァイツはそんなことを言った上に、幸せそうなとろけ顔である。謎の伝染力があって、なんとなくこちらも幸せな気がしてくるから、恐ろしい。
 クァイツは舌の腹までさらして、サフィージャの乳首を大きくなめた。
 みだらすぎる刺激に、びくりとからだがけいれんする。

「ん……、……ゃ……あ……ッ!」

 甘い声が止まらない。少し触られただけですぐに抑制がかなくなる自分が、心底恥ずかしい。
 胸の先の小さな突起を舌先でもてあそびながら、彼は楽しげに目を細めた。
 人が恥ずかしがっているのを見て喜んでいるとしか思えない表情。しかしそうやって見つめられていると、ますますサフィージャは快感が湧いてきて、止まらなくなる。
 彼のひざの上に座らされた不安定な姿勢のまま、サフィージャはからだをよじった。

「待ってっ、……ひん、んん……んくうぅっ……」

 絶え間なくうずく乳首を舌と唇とに攻め立てられ続けて、サフィージャは太ももをぎゅっと閉じた。その間が熱で溶かされていくような錯覚におちいってしまう。


 薄赤い突起をついばまれるたびに足に力を入れているのを察したのか、クァイツはなめらかな太ももの内側に、するりと手のひらをすべらせた。

「やぁ……、ばか……ッ」
「触ってほしくないんですか? 悲しいですね。もう気が変わってしまいましたか? 私には抱かれたくない?」

 彼の声が傷ついたように低くなる。サフィージャの耳には妙になまめかしく響き、胸の奥がきゅんとうずいた。

「し、仕事が……仕事がっ……」

 情けない裏声で、サフィージャはけんめいに訴える。

「もう、また仕事ですか。私と仕事と、どっちが大事なんですか」
「そ、そういう質問はずるいから、禁止だって言ってるだろっ。だいたいここは馬車でっ……」
「なんだ、恥ずかしかっただけですか。大丈夫ですよ、急いだりしません。ベッドまでお待ちします」
「……あ、ち、ちが……私は、するとは言ってない……っ」
「不安に思わないでください。ちゃんとやさしくしますから」
「え……あ、だから……」

 どうしてこうも話がみ合わないのだろう。この男に人の話を聞く気がないせいか。
 何かがおかしいと思いながらも、羽根でなでるようにそっと名前をささやかれて、理性が吹き飛びそうになる。うっかり目の前の美貌びぼうに見とれていると、嬉しげに微笑まれた。
 柔和に細められた彼の瞳があふれるほどの好意を訴えかけてくるようで、ますますサフィージャの気がゆるんでしまう。
 気づけば、もう何度目かわからないキスを受け入れていた。クァイツの舌に自分の舌がからみ、粘膜がやわらかくこすりつけられる感触にいしれる。舌のかなり深いところまでなめとられて、ぞくぞくと背筋がしびれた。
 さんざんなぶられて、頭がぼーっとする。唇を離し、きらめくあかい瞳と見つめ合うことしばし。
 欲情をにじませた彼の甘い表情に何もかもとろかされかけ――あやういところで、サフィージャはわれに返った。
 ……って、だめだろうが! いい加減、目を覚ませ!
 気を強く持たなければならない。サフィージャはせても枯れても筆頭魔女。
 職務をまっとうする義務があるのだ。仕事は楽しいし、やりがいもある。絶対にいい加減なことをしたくはなかった。サフィージャはツンと顔をそむけてみせる。

「だめと言ったらだめだ。時と場合と自分の立場ぐらいわきまえろ、ばか野郎」

 王太子が相手ということで、今までは一応、サフィージャもある程度言葉を選んでいた。
 さすがにまずかろうと思って控えていた憎まれ口が遠慮会釈えんりょえしゃくもなく出てくることに、サフィージャ自身も驚く。でも、いい傾向だ。この調子でもっといろいろ言ってやろう。

「とにかく、これ以上はだめだ。馬車の中なんだからちょっと我慢しろ。だいたい――」

 勢いがつきはじめたサフィージャだったが、クァイツが見るからに悲しそうな顔をしているのに気づいてしまい、早くも言葉につまる。

「……だいたい……」

 いかん。何も出てこない。
 弱い。弱すぎる。なんでこんなわがままひとつ、いさめられないんだ。
 サフィージャはこれでも名の知れた魔女である。黒死こくしの魔女の名前をつぶやくとき、人は皆恐れとうやまいを同時に声ににじませる。
 なのにクァイツの手にかかるとこのざまだ。サフィージャは情けなさでぷるぷる震えはじめた。

「そんなつれないことを言わないでください。せっかく二人きりなのに……あなたと一緒に過ごせるように、出張の日程も調整したんですよ。あなたを愛せないなんて耐えられない……私はきっと養分が足りなくなった花のようにしおれて、枯れてしまいます……」

 ええい、自分をお花にたとえるのはやめろっ。
 特に違和感もなくしっくりくるのが余計に腹立たしい。

「サフィージャ……あなたに、触れたい」

 悲愴な声でつぶやいて、クァイツはそっと顔を伏せた。彼の美貌びぼうに影が差し、悲しげに顔がゆがむ。
 ――勝てない。
 サフィージャは震えながらそう思った。うっかりときめいてしまったではないか。
 甘く切ない気持ちをかきたてられて、サフィージャは自分の弱さに泣きそうになった。
 クァイツがそっと気づかわしげに見つめてくる。

「もう少しだけ。どちらにしろ、昼の休憩までは時間がありますから、それまであなたをこの腕に抱いていたいのですが……だめでしょうか」

 よかった、やめてくれる気になったのか。それなら、ちょっとくらい妥協してやってもいい。

「分かった。でも本当に、昼の休憩までだからな」
「ありがとうございます。……十分です」

 くすりと耳元に笑い声を吹き込まれて、サフィージャは毛穴が開くような感じがした。

「……どうせあなたは、すぐに耐えられなくなって、降伏してしまうでしょうから」

 サフィージャの背筋がぞくりと冷える。

「きゅ、休憩までだからな……?」

 念を押すと、彼は了解したとも、しないとも取れる微笑みを浮かべてみせた。

「ちゃんと分かってるのか……?」

 サフィージャは怖くなってさらに聞いてみたが、クァイツは何も答えない。
 彼は、触れるだけのキスを何度もくり返し、そのたびに欲情しきった瞳でこちらの顔をのぞき込んでくる。そんな彼から、何を言っても許してもらえなさそうな雰囲気を感じ取り――サフィージャのからだが甘く震えた。
 クァイツは、にこりと微笑むと、サフィージャのコルセットがほどけかかっている肋骨ろっこつのあたりをんだ。軽いくちづけを何度も肌に落としながら、コルセットの残りをくつろげていく。
 からだをい回る舌がとろけるようにやわらかくて、絶え間なく甘いしびれに襲われた。
 クァイツはサフィージャの足の付け根まで手をわせていき、下着の中にもぐりこませると、その中心に指を突き立てる。

「……んっ……ぁ……、……っぅ、ンンッ……」

 指先が花弁の奥にヌプリと呑み込まれた。
 とたんに震えが背筋をかけのぼり、高い声が出そうになる。

「やぁ……ぁ……、……ん、……んん……」

 クァイツの上で、腰がびくりと跳ねあがる。
 ふやけきった胎内をちゅくちゅくとかき回されて、めまいがした。

「指の付け根まで入ってしまいましたよ。いけない人だ……うろたえるそぶりで誘いをかけるなんて、あなたの手口は娼婦も顔負けですね」
「ち、ちがう、違う……ってば……、……ッ」
「おや、違いましたか? 私の目にはずいぶんお辛そうに見えますが。こうしてほしいと顔に書いてあるようですよ」

 彼の長い指がかぎ状にしなり、おなかのほうをこすられる。

「んんんぅっ……!」

 甘い声が出かかり、サフィージャはつばとともに一生懸命呑み込んだ。
 彼の指は蜜でぬるぬるとなめらかになかをい回り、ひだをやたらとこすりつけた。
 その快感に、サフィージャの目はとろんとする。

「……目が開かなくなってきましたか? とってもかわいいですよ。私があなたの感じている顔に弱いのはお分かりのくせに、そんな顔をして。わざとやっているのではないかと疑いたくなります……」

 次から次に攻められて、サフィージャはわけが分からなくなってきた。
 快感で目の前に甘いかすみがかかったみたいな感じがする。

「へ、変なことばっかり言うな……」

 彼のからかうような言葉をやめさせたくても、なかに指を差し込まれて刺激されると、思考が全部どろどろにとけていく。内から湧きあがるうずきに、もっとと懇願してしまいそうになる。
 肩を震わせて快感に耐えるサフィージャを観察しながら、彼は微笑んだ。
 どこか潔癖な印象を与えるクァイツの端整な顔立ちが、サフィージャの半裸を劣情れつじょうまじりに見つめている。その奇妙な背徳感に、サフィージャは一層快感を得てしまう。
 なかに入れられた指がらすように上下に動いて、サフィージャはビクリと肩を跳ねさせた。

「……あなたが私の腕の中で踊ってくださっているのを見ていると、今にも我慢できなくなりそうです。いけない人だ、こんなに腰を揺らしてあおったりして……あなたよりも先に私のほうが耐えられないかもしれない。この場で襲ってしまいたくなる……」
「……っぅ、……だめ、それは、だめ……」

 クァイツの言葉を聞いて、サフィージャは体温が一気にあがったような気がした。なかに入った指を引き抜いてしまいたい衝動にかられる。
 しかし、身をよじっても指は執拗しつようになかをいやらしくまさぐり続ける。
 とろみのついた指先で内ひだをぐいぐいと圧迫されて、サフィージャは泣きそうになった。

「……っ、ぁ、……あ、……っんん!」
「……本当にだめですか?」

 だめじゃないことは、サフィージャ自身が一番よく分かっている。
 それでも、高まる声を必死にこらえながら、サフィージャはこくこくとうなずく。
 口を開いたら嬌声きょうせいが出てしまいそうで、身振りで示すしかなかったのだ。
 クァイツの指先がれそぼった壁を割り広げる。ねっとりと粘着するひだからゆっくりと指が引き抜かれ、ふたたび感じるところに突き入れられた。

「――んぅっ……!」

 快い衝撃に耐えきれず、サフィージャはからだを硬くする。

「……もっと甘えてくださってもいいんですよ。イース行きなら焦らなくても大丈夫です。あとのことは私に任せて……もう少しだけ、私と一緒にすべてを忘れてしまいませんか」

 悪魔のような誘いが耳をくすぐった。気持ちよさに耳の後ろのあたりがざわざわする。
 顔が熱くて、意識もとろんとしてしまって、焦点もうまく定まらない。
 クァイツは呆けたサフィージャの頬に軽くくちづけをした。彼は馬車の窓から身を乗り出し、御者ぎょしゃだいの男に、馬車をゆっくり走らせるよう命じる。そのあと、馬車いしてしまったサフィージャを休ませるからと、他の馬車を先に宿場町まで行かせる。
 サフィージャはくたくたでしまらない上半身をぐいっと持ち上げられて、馬車の座席にひざ立ちになる。向かい合わせに座り直したクァイツが下穿きを着崩した。

「……そのまま、腰を落として。ゆっくりでいいですから」

 やわらかい口調で言われているが、それはもう命令だった。サフィージャは反抗できない。
 馬車が揺れた拍子に下腹部がこすれ合う。
 硬いものが蜜口に当たった。その感触にため息が出て、甘い期待に胸がときめく。馬車の中でこんなことをするなんて。たまらなく不安なのに、期待でくらくらする。どうしても逆らえない。
 その時、馬車の振動にあおられて、サフィージャは倒れそうになる。とっさにクァイツと手をつないだ。
 不安定な姿勢に負けて少しだけ身を沈めると、彼の先端がなめらかに花弁の奥へと埋まってしまう。信じられないほどの気持ちよさにからだがねじれて、眉根が寄った。

「ぅくっ――あ、ぁ……ッ」

 うめき声と一緒に、からだからどんどん力が抜けていく。欲情しきったサフィージャのなかに、大きなものがぬめりながら入り込んでくる。
 息苦しいほどの質感に、鳥肌が立った。

「あ、……あ、これ、だめ……」

 目の前が近くなったり遠くなったりする。
 粘膜がいっぱいに満たされて、なかがうずいてたまらない。
 サフィージャがぺたりとクァイツのひざに座ると、くいが根元までぎちぎちにめりこんだ。

「……よくできましたね?」

 笑いをたっぷり含んだ声でささやかれ、サフィージャはくすぐったさにビクリとする。
 にやにやと意地悪く相好そうごうを崩している美しい青年と、まともに視線がぶつかり合う。
 その表情はサフィージャのカンにさわるのに、不思議な色気を感じてしまって目が離せない。
 無防備にクァイツに見とれていたら、ふいに下から突き上げを食らうはめになった。

「んんぅっ……!」

 ぐちゅぐちゅと激しく奥を突かれて、甘いしびれと衝撃が背筋を駆け上がる。
 狭いひだを最奥まで貫く硬い先端の感触が、頭にガンガン響く。

「やぁ、あ、待っ、あ、……ああっ……!」

 みだらな音を立てながら出入りするくいに、何度も内壁をこすりあげられて、サフィージャはびくびくと上半身をのけらせる。息もできないほど気持ちいい。

「あぁ……もう、食べごろのあなたを味わえて、幸せです」

 甘くかすれるうめきを耳から流し込まれ、サフィージャは震えるほど興奮した。
 容赦ようしゃなくなかをかき回されて、快感はどんどん高まるばかり。
 切っ先がグプリと奥まで挿し込まれたとたん、サフィージャの口から声がもれる。

「ひゃ、あ、あぁっ……!」
「気持ちイイですか? すごくれてますよ。瞳も、声も、唇も……ここも」

 不安定な体勢で下からクァイツにずちゅりと突き上げられて、サフィージャはびくりと腰を浮かせた。引きずり出されるくさびが中でこすれ、おなかの奥が熱くなっている。
 もっとほしいと訴えるように、蜜口がひくんとうごめいた。

「あなたが気持ちいいのはここですよね?」

 クァイツは楽しげに笑いながら、またも強く突き上げる。切っ先がぐりっとサフィージャの内側をえぐった。

「はん、んん、んぅっ……!」

 たまらない快感が込みあげる。グチュグチュと連続で何度もいいところに当てられて、息が続かない。クァイツが動くたびにズクンとなかがうずく。
 はしたないと思っていても、腰が勝手にくねってしまう。

「んっ……んはぁっ……! あっ、あっ!」

 うわずった嬌声きょうせいがもれる唇を、クァイツにふさがれた。ちゅる、くちゅ、と、れ上がりそうなほど強く吸われる。
 脳内に響くひわいな水音にあおられて、サフィージャは何も考えられなくなった。

「ん、……んん、んむっ、んくぅっ……」

 真下から突き上がる振動が、甘い衝撃に変換される。からだから力が抜け、クァイツの支えがなければ倒れそうだ。
 唇を解放された瞬間、せき止められていた悲鳴がぜた。

「……ぷはっ、あっ、あふっ、はぁっ、はぁっ、あぁぁぁっ!」
「だめですよ、もう少し静かにしてくださらないと。あなたのかわいいあえぎ声を御者ぎょしゃに聞かれては腹立たしいですから」
「……っ!」

 そのひと言で自分がどこにいるのかを思い出し、サフィージャは息が止まるかと思った。
 それでも、下から軽くゆさぶられるだけでまた声をあげてしまいそうになる。

「ん……っ、くっ、……ぅ……」

 クァイツはじゅぷじゅぷと音を立てながら上下に動く。奥を突かれるたびに、サフィージャの腰や胴がぴんと伸びた。のどが開いて、甘い声が少しずつこぼれ出る。
 クァイツは苦笑しながら、指を一本立てて、サフィージャの唇に置いた。

「サフィージャ。いけないと言っているでしょう?」
「だっ、……ってッ……!」

 泣きそうになり、声が震える。

「こらえられない? 仕方のない人ですね」

 意地悪く吊り上がる唇の奥で舌が見え隠れして、サフィージャはかすかに欲情した。先ほど交わした甘いくちづけをもう一度与えてもらいたくなる。

「そんなにいやらしい顔で見つめられると、困ってしまいます。見境がなくなりそうなので……」

 クァイツは上気した美貌びぼうを伏せた。情欲まじりの彼の視線が、むき出しのサフィージャの肩のあたりをう。
 サフィージャはぞくぞくと身もだえながら、おなかの奥を硬い先端に押しつけた。

「もう、勝手に動いたりして……そんなにこれがほしいんですか?」

 クァイツはサフィージャの腰を抱き上げてギリギリまでくいを引くと、一気に奥まで突き刺す。

「――ッ!」

 サフィージャのからだがびくんと跳ねあがった。あまりの快感に身をよじるが、腰を押さえ込まれて逃げられない。立て続けにからだを大きく揺り動かされ、頭の中が真っ白になる。

「あんっ! ……あ、ああ、や、やだ、あっ! あ……っ!」

 激しく突き上げられるたびに、甲高かんだかい悲鳴をあげてしまう。

「あぁっ、ちょっ、と、それ、以上、したら、も、……あぅっ……」

 強い律動りつどうさいなまれて抗議すると、やっとペースを落としてもらえた。ほとんど達しそうになっている。サフィージャは嬉しいような、苦しいような、矛盾した気持ちを味わった。
 クァイツはサフィージャの腰を抱き、甘えるように浅く抜き差しする。

「なか、すごく溶けてる。……ねえ? どうしてこうなってしまったんです?」

 やたらと嬉しそうに言われると、反論しづらい。

「お前の、せいだ、ばか……っ」

 責めてみるものの、声は甘さを帯びてしまっている。もはやただの睦言むつごとにしか聞こえない。
 クァイツはそれがいたくお気に召したらしく、サフィージャのからだをぴったりと抱き寄せた。
 深くまで挿入し、ぐりぐりとなかの感じやすいところをえぐる。

「ひ、あぁっ……! あう、ぅくぅっ……!」
「……いい声ですね。耳に残って、頭から離れなくなる……私を夢中にさせる声だ」

 ゆっくりとくさびを抜き差しされ、すぐに引き抜かれた。感じるところに当たりそうで当たらない。

「う、ふ、くふ、う……ぁッ!」

 れそぼった入り口をねっとりとかき回される。
 ゆるい快感を与えられるもどかしさに、思わずねだってしまいそうになった。

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