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プロローグ
策略で「女にされる」5秒前
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圭柊は恋人のゆいが夕方からアルバイトに行くのを玄関まで送り出した後、部屋で一人テレビをながめていた。
大学2年の二十歳で知り合ったゆいとは付き合ってもう半年になる。
フリーターで一人暮らしだった彼女の部屋は誰からも制限されることもなく圭柊にとって精神安定上、これ以上ない空間だった。
なぜなら圭柊にとっては一見、普通に生きているようなことでさえ、制限が課せられていることになるからだ。
家族にはもちろん、社会にはなかなか公言できないこと。
圭柊には誰にも打ち明けられなかった秘密があった。
初めて圭柊が秘密を打ち明けることができた人、それが恋人のゆいだった。そのことがさらにゆいの部屋を心地よい空間に変えていき、この場所は自分らしく生きられる更に心地よい空間になっていった。
実家暮らしの圭柊にとって、そこに住民票があるからという理由だけで家に帰る理由にならなかったのは当然だった。
ゆいとの出会いはありきたりだった。
大学の友達の誘いで参加した合コン。ありきたりすぎて圭柊はそんな二人の馴れ初めが好きではなかった。
その日、お酒の勢いもあり準備も何もなく転がり込んだゆいの部屋。
着替えも何もなかったことで圭柊はゆいの下着や服を着て過ごしていた。
着替えがないのだから仕方がない。そんな口実で借りていたゆいの服。
でも、いったん家に帰って大きなカバンに着替えを詰めて持ってくれば簡単に解決することをなぜしなかったか?
その理由はたった一つ。圭柊はゆいの下着と服が着たかったから。
着たいだけではなく、幼い頃から女の子になりたかったから。
合コンで転がり込んだ翌日、シャワーを借りたあとから始まった女装生活。
「どうしよう、着替えないや・・・」ゆいからは当然、「私のでもいい?」という返答がくるはずだ。そうやって誘導していった圭柊。
変だと思われないためにある意味ゆいを洗脳していったと言っても過言ではないかもしれない。
コミュニケーション能力が高かった圭柊にとって、こう言えばこう返ってくるという誘導がきっと得意だった。自ら誘導しているにもかかわらず仕方なくこうなっているというシチュエーションにしていく。
素直にカミングアウトできないのは幼少期のいじめが原因でもあった。
ゆいにとっては気づかないうちに彼が女性のような身なりになっていくことが自然で当たり前のように感じていた。
ゆいもゆいで圭柊が男としても大柄でもなく、女性として見れば若干身長が高い方に含まれるものの決して女性にいないわけでもない身長と体格であったこと、なによりも二重まぶたで、まつげが長く、目の形が女性的な圭柊はどことなくフェミニンな印象があり彼が女性用の下着を身に着けている姿も、ブラウスやスカートを履いている姿もまったく違和感なく受け入れてしまっていた。
ゆいの部屋の中での女装が日常になり、一人、ゆいの下着を身につけその上にブラウス、スカートを身につけている。女装が圭柊の日常になっていく。夢にも見た生活。
床に座り内股でテレビを見ながらもれる本音「はぁん、うれしぃ・・・」
時々ひとりで噛みしめるほどにきっと本来の自分を抑圧してきた人生だった。
一人静かに誰にも邪魔されず、好奇の目で見られることもなく、女性として生きてる時間を堪能しているこの日、ゆいの策略でこれから自分が「女性として」男に犯されること、もう男に戻ることが許されなくなることを「彼」はまだ知らない。
男女として付き合ったのに独りよがりの策略でレズカップルのようになっていくことに普通の女性が違和感を感じないわけがない。ゆいのやったことは暴挙のようでもあった。でも、最初に洗脳という暴挙を使っていたのは明らかに圭柊の方だった。
付き合って間もなく女性になりたかった過去も打ち明けた。男性が好きになったことがあることも打ち明けた。なんでも話せる彼女。圭柊はゆいをそんなふうに思っていた。
ゆいはそういうことを理解できる利発な女性だった。ただ、違和感があったのは、彼女は性指向的にはノーマルであり、付き合ったと思った彼が女性になりたいという性同一性障害なのか、バイセクシャルなのかわからない「男」であったこと。そして何よりの違和感は自分が性対象としてそのような男性を望んではいなかったこと。
ふと気づいた時、あれ、なんでこうなっているんだろう?という不安から、彼女は自身にとっての正常化を試みるために、どうすればいいのか、考えて行動するしかなかった。別れる。それとも、女性になりたいのであれば同性の友達になれるんじゃないか。そんな選択肢が浮かぶのは彼女が決して圭柊を忌み嫌っているわけではなかったからだ。
害はないがなにか違う。
ならば圭柊を女にしてしまったほうが…
ゆいの発想がそこにたどり着いた時から間もなくゆいの策略により圭柊の女性としての人生が幕を開くことになる。
アルバイトに行ったはずのゆいが男友達二人を連れて帰ってくる。
女性としての時間をくつろぐ圭柊に聞こえた突然のインターホン。
女装のまま出てしまおうか、でもそんな勇気もない、どうしようと思っていたその時、鍵が解除され玄関の開く音が聞こえてきた。
「ゆいちゃん、早かったね・・・え・・・?」
圭柊の前にゆいの後から初めて見る男性が二人入ってきた。
そして、圭柊は、この後、彼女の前でこの片方の男性に犯されます。
男から女へ。この物語は圭柊、「彼」がジェンダーに悩むようになった生い立ちと、この後、ゆいの策略によって女性として生きていくことを強いられるようになる「彼女」の物語です。この事件の真相と、それ以前それ以後の圭柊の物語を綴ります。
大学2年の二十歳で知り合ったゆいとは付き合ってもう半年になる。
フリーターで一人暮らしだった彼女の部屋は誰からも制限されることもなく圭柊にとって精神安定上、これ以上ない空間だった。
なぜなら圭柊にとっては一見、普通に生きているようなことでさえ、制限が課せられていることになるからだ。
家族にはもちろん、社会にはなかなか公言できないこと。
圭柊には誰にも打ち明けられなかった秘密があった。
初めて圭柊が秘密を打ち明けることができた人、それが恋人のゆいだった。そのことがさらにゆいの部屋を心地よい空間に変えていき、この場所は自分らしく生きられる更に心地よい空間になっていった。
実家暮らしの圭柊にとって、そこに住民票があるからという理由だけで家に帰る理由にならなかったのは当然だった。
ゆいとの出会いはありきたりだった。
大学の友達の誘いで参加した合コン。ありきたりすぎて圭柊はそんな二人の馴れ初めが好きではなかった。
その日、お酒の勢いもあり準備も何もなく転がり込んだゆいの部屋。
着替えも何もなかったことで圭柊はゆいの下着や服を着て過ごしていた。
着替えがないのだから仕方がない。そんな口実で借りていたゆいの服。
でも、いったん家に帰って大きなカバンに着替えを詰めて持ってくれば簡単に解決することをなぜしなかったか?
その理由はたった一つ。圭柊はゆいの下着と服が着たかったから。
着たいだけではなく、幼い頃から女の子になりたかったから。
合コンで転がり込んだ翌日、シャワーを借りたあとから始まった女装生活。
「どうしよう、着替えないや・・・」ゆいからは当然、「私のでもいい?」という返答がくるはずだ。そうやって誘導していった圭柊。
変だと思われないためにある意味ゆいを洗脳していったと言っても過言ではないかもしれない。
コミュニケーション能力が高かった圭柊にとって、こう言えばこう返ってくるという誘導がきっと得意だった。自ら誘導しているにもかかわらず仕方なくこうなっているというシチュエーションにしていく。
素直にカミングアウトできないのは幼少期のいじめが原因でもあった。
ゆいにとっては気づかないうちに彼が女性のような身なりになっていくことが自然で当たり前のように感じていた。
ゆいもゆいで圭柊が男としても大柄でもなく、女性として見れば若干身長が高い方に含まれるものの決して女性にいないわけでもない身長と体格であったこと、なによりも二重まぶたで、まつげが長く、目の形が女性的な圭柊はどことなくフェミニンな印象があり彼が女性用の下着を身に着けている姿も、ブラウスやスカートを履いている姿もまったく違和感なく受け入れてしまっていた。
ゆいの部屋の中での女装が日常になり、一人、ゆいの下着を身につけその上にブラウス、スカートを身につけている。女装が圭柊の日常になっていく。夢にも見た生活。
床に座り内股でテレビを見ながらもれる本音「はぁん、うれしぃ・・・」
時々ひとりで噛みしめるほどにきっと本来の自分を抑圧してきた人生だった。
一人静かに誰にも邪魔されず、好奇の目で見られることもなく、女性として生きてる時間を堪能しているこの日、ゆいの策略でこれから自分が「女性として」男に犯されること、もう男に戻ることが許されなくなることを「彼」はまだ知らない。
男女として付き合ったのに独りよがりの策略でレズカップルのようになっていくことに普通の女性が違和感を感じないわけがない。ゆいのやったことは暴挙のようでもあった。でも、最初に洗脳という暴挙を使っていたのは明らかに圭柊の方だった。
付き合って間もなく女性になりたかった過去も打ち明けた。男性が好きになったことがあることも打ち明けた。なんでも話せる彼女。圭柊はゆいをそんなふうに思っていた。
ゆいはそういうことを理解できる利発な女性だった。ただ、違和感があったのは、彼女は性指向的にはノーマルであり、付き合ったと思った彼が女性になりたいという性同一性障害なのか、バイセクシャルなのかわからない「男」であったこと。そして何よりの違和感は自分が性対象としてそのような男性を望んではいなかったこと。
ふと気づいた時、あれ、なんでこうなっているんだろう?という不安から、彼女は自身にとっての正常化を試みるために、どうすればいいのか、考えて行動するしかなかった。別れる。それとも、女性になりたいのであれば同性の友達になれるんじゃないか。そんな選択肢が浮かぶのは彼女が決して圭柊を忌み嫌っているわけではなかったからだ。
害はないがなにか違う。
ならば圭柊を女にしてしまったほうが…
ゆいの発想がそこにたどり着いた時から間もなくゆいの策略により圭柊の女性としての人生が幕を開くことになる。
アルバイトに行ったはずのゆいが男友達二人を連れて帰ってくる。
女性としての時間をくつろぐ圭柊に聞こえた突然のインターホン。
女装のまま出てしまおうか、でもそんな勇気もない、どうしようと思っていたその時、鍵が解除され玄関の開く音が聞こえてきた。
「ゆいちゃん、早かったね・・・え・・・?」
圭柊の前にゆいの後から初めて見る男性が二人入ってきた。
そして、圭柊は、この後、彼女の前でこの片方の男性に犯されます。
男から女へ。この物語は圭柊、「彼」がジェンダーに悩むようになった生い立ちと、この後、ゆいの策略によって女性として生きていくことを強いられるようになる「彼女」の物語です。この事件の真相と、それ以前それ以後の圭柊の物語を綴ります。
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