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≪零≫の美女達
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インベリッテ宮殿魔導師団≪零≫特務室ーー
インベリッテ王国の東に位置している巨大な建物は宮殿魔導師団≪零≫の本部である。
俺達は建物の中へと入っていく。
「あの少女を様子はどうだ?少しは落ち着いたのか?」
ナインは首を横に振る。
「いや、お前達の所へ向かう前に少女の様子を見てきたが様子は変わらずだ。泣き止んではいたが、身体の震えは未だに止まらずお前のローブも肌身離さず持っている」
「……そうか」
「あれは中々どうして忘れる事はできないだろう」
かなり状況は深刻のようだ。
≪零≫の連中は上手くやっているのだろうか。
特務室は三階に位置している。一階には食堂や、リラックスルーム。二階にはトレーニングルームがある。
本部から少し離れた場所には体育館もあり、実践形式で戦ったりすることもできる。体育館は頑丈、完全防音の為、人々に迷惑を与えることもない。
ナインは、特務室のドアを開く。
「あっ!隊長!お疲れ様でーす!」
「おつー」
「お疲れ様です」
そこには三人の美女と少女の姿があった。
「ジン君!今日は凄く大変だったみたいだね!肩でも揉んであげようか?」
桃色の瞳に桃色の髪を腰あたりにまで伸ばし、笑顔で接してくる女性。名をモモ・シャーロットという。年齢は二十◯と俺の次に若い。童顔で可愛らしく背もそこまで大きくないのだが、二つの膨らみはとてつもない破壊力を持っている。
「いらん」
「ええー!」
「モモちゃん!代わりの俺の肩を……」
「イヤです!」
アレスが頼むが、モモは即刻で断った。
「まったく。騒がしいわね」
スラっとした体型に、モモとアレスのやりとりをうるさそうにして見ている女性。名をヒルデ・カートラーと言う。長い黒髪をお団子ヘアーにしている。彼女が言うのは、任務の上で邪魔だからそうだ。年齢は二◯五と≪零≫の中では上だ。しかし、美しさを歳を重ねる毎に磨かれていっている。
「とりあえず三人とも。座っていてください。今お茶を入れてきますから」
茶色のツインテールの女性が柔和な笑みを浮かべながらお茶を淹れている。名をカンナ・イグネスタと言う。年齢は二◯二と≪零≫の中では平均的な年齢だ。所作がとても美しく、お茶を淹れている姿もとてもよく似合う。
アレスはその姿を見てニヤニヤしている。
「はい、どうぞ」
カンナは俺達の前にお茶を置く。
「うん。やっぱりカンナが淹れたお茶は美味いな」
ナインがカンナを褒める。
「ありがとうございます」
カンナは柔らかく微笑む。
その姿を見て、アレスはニヤニヤしている。
「顔、ニヤついてるぞ」
そう言って、俺はお茶を喫する。
うむ、美味い。
「だってよー。≪零≫の部隊には可愛い女の子が三人もいるんだぜ!目の保養になるし、ニヤニヤしない方がおかしいだろ!」
「キモいです」
「死ね」
「はっきり言って迷惑です」
三人の女性の口から辛辣な言葉が飛ぶ。
「……ひどい……」
アレスは落ち込んではいるが、明日になれば忘れている。切り替えの速さだけは俺でも敵わん。
「……それで……あの少女の様子はどうだ?先程と変わらんか?」
お茶を飲み終えたナインが言う。
「はい、お茶やお菓子を差し上げてはいるんですが口にはせず、ずっと奥の部屋で引きこもっています」
モモは奥の扉を指さす。
あの部屋は、一人になりたいときにはうってつけの部屋だ。部屋には何もなく、窓から見える雄大な町の景色が見えるのだが、日も沈んでいるので景色はほとんど見えないだろう。少女にとってはインベリッテの景色すら見たくないかもしれないだろうから今はそれでいいのかもしれない。
「あの子、今のままで大丈夫なのかい?私達とだって会話を避けていたじゃないか」
「今、殆どの人間が敵に見えているのだろう。自分が失敗作と言われるのが怖くて仕方がないんだ」
「だから、それはクソ魔導師達のクソみたいな魔法のせいだろ?あの子は何にも悪くはないじゃないか」
「人間の心は脆い。傷ついた心はそう簡単に癒えはしないんだよ」
「……そうだな」
ナインの言葉に俺は納得した。
俺だってそうだったのだから。
「だから今は、そっとしてあげるのが一番なのかもしれないな」
「いや、それじゃあ駄目だ」
俺の一声に≪零≫の皆が驚きの表情を浮かべた。
なんだ?俺が何か言ってはいけないのか?
まぁ、いい。
「そっとしたところで本人の心は癒されない。ただ時間だけが過ぎていく。誰かが手を差し伸べてあげないといけないんだ」
落ち込んでいる時、悩んでいる時、時間の経過とともにそれはどんどん重く積み重なっていく。
それを誰かが助けてやらねばいけないのだ。
「でも……どうするんだよ?」
アレスが首を傾げる。
「本人と話すしかないだろう」
俺は立ち上がる。
「ちょっと待ってよ!」
モモが俺を制する。
「あの子は今、精神的に不安定な状態なの!今ジン君が言ったところでむしろ悪い方向にしか行かないよ!時間をかけてゆっくりと向き合っていくべきだよ!」
確かに言っていることは正しい。
時間をかけることも大切だとは思っている。
「時間をかけてって……いつまでだ?半月か?一ヶ月か?半年か?それとも一年か?」
「それは……」
モモは口籠る。
「時間をかけたら元気になる保証はない。もしかしたら、このまま一生あの状態かもしれない。いつかじゃない。今助けないといけないんだ」
俺はモモを横を通り抜け、少女のいる部屋へと向かう。
「変わりましたね。ジンは」
「そうだな。あの子を失ってからだな……」
カンナとナインが話しているのが微かではあったが聞こえていた。
変わったか……。自分ではそうは思わないが。
だが、前よりほんの少しだけ……
自分が守ろうと決めたものは死んでも守る。
その想いが強くなっただけだ。
インベリッテ王国の東に位置している巨大な建物は宮殿魔導師団≪零≫の本部である。
俺達は建物の中へと入っていく。
「あの少女を様子はどうだ?少しは落ち着いたのか?」
ナインは首を横に振る。
「いや、お前達の所へ向かう前に少女の様子を見てきたが様子は変わらずだ。泣き止んではいたが、身体の震えは未だに止まらずお前のローブも肌身離さず持っている」
「……そうか」
「あれは中々どうして忘れる事はできないだろう」
かなり状況は深刻のようだ。
≪零≫の連中は上手くやっているのだろうか。
特務室は三階に位置している。一階には食堂や、リラックスルーム。二階にはトレーニングルームがある。
本部から少し離れた場所には体育館もあり、実践形式で戦ったりすることもできる。体育館は頑丈、完全防音の為、人々に迷惑を与えることもない。
ナインは、特務室のドアを開く。
「あっ!隊長!お疲れ様でーす!」
「おつー」
「お疲れ様です」
そこには三人の美女と少女の姿があった。
「ジン君!今日は凄く大変だったみたいだね!肩でも揉んであげようか?」
桃色の瞳に桃色の髪を腰あたりにまで伸ばし、笑顔で接してくる女性。名をモモ・シャーロットという。年齢は二十◯と俺の次に若い。童顔で可愛らしく背もそこまで大きくないのだが、二つの膨らみはとてつもない破壊力を持っている。
「いらん」
「ええー!」
「モモちゃん!代わりの俺の肩を……」
「イヤです!」
アレスが頼むが、モモは即刻で断った。
「まったく。騒がしいわね」
スラっとした体型に、モモとアレスのやりとりをうるさそうにして見ている女性。名をヒルデ・カートラーと言う。長い黒髪をお団子ヘアーにしている。彼女が言うのは、任務の上で邪魔だからそうだ。年齢は二◯五と≪零≫の中では上だ。しかし、美しさを歳を重ねる毎に磨かれていっている。
「とりあえず三人とも。座っていてください。今お茶を入れてきますから」
茶色のツインテールの女性が柔和な笑みを浮かべながらお茶を淹れている。名をカンナ・イグネスタと言う。年齢は二◯二と≪零≫の中では平均的な年齢だ。所作がとても美しく、お茶を淹れている姿もとてもよく似合う。
アレスはその姿を見てニヤニヤしている。
「はい、どうぞ」
カンナは俺達の前にお茶を置く。
「うん。やっぱりカンナが淹れたお茶は美味いな」
ナインがカンナを褒める。
「ありがとうございます」
カンナは柔らかく微笑む。
その姿を見て、アレスはニヤニヤしている。
「顔、ニヤついてるぞ」
そう言って、俺はお茶を喫する。
うむ、美味い。
「だってよー。≪零≫の部隊には可愛い女の子が三人もいるんだぜ!目の保養になるし、ニヤニヤしない方がおかしいだろ!」
「キモいです」
「死ね」
「はっきり言って迷惑です」
三人の女性の口から辛辣な言葉が飛ぶ。
「……ひどい……」
アレスは落ち込んではいるが、明日になれば忘れている。切り替えの速さだけは俺でも敵わん。
「……それで……あの少女の様子はどうだ?先程と変わらんか?」
お茶を飲み終えたナインが言う。
「はい、お茶やお菓子を差し上げてはいるんですが口にはせず、ずっと奥の部屋で引きこもっています」
モモは奥の扉を指さす。
あの部屋は、一人になりたいときにはうってつけの部屋だ。部屋には何もなく、窓から見える雄大な町の景色が見えるのだが、日も沈んでいるので景色はほとんど見えないだろう。少女にとってはインベリッテの景色すら見たくないかもしれないだろうから今はそれでいいのかもしれない。
「あの子、今のままで大丈夫なのかい?私達とだって会話を避けていたじゃないか」
「今、殆どの人間が敵に見えているのだろう。自分が失敗作と言われるのが怖くて仕方がないんだ」
「だから、それはクソ魔導師達のクソみたいな魔法のせいだろ?あの子は何にも悪くはないじゃないか」
「人間の心は脆い。傷ついた心はそう簡単に癒えはしないんだよ」
「……そうだな」
ナインの言葉に俺は納得した。
俺だってそうだったのだから。
「だから今は、そっとしてあげるのが一番なのかもしれないな」
「いや、それじゃあ駄目だ」
俺の一声に≪零≫の皆が驚きの表情を浮かべた。
なんだ?俺が何か言ってはいけないのか?
まぁ、いい。
「そっとしたところで本人の心は癒されない。ただ時間だけが過ぎていく。誰かが手を差し伸べてあげないといけないんだ」
落ち込んでいる時、悩んでいる時、時間の経過とともにそれはどんどん重く積み重なっていく。
それを誰かが助けてやらねばいけないのだ。
「でも……どうするんだよ?」
アレスが首を傾げる。
「本人と話すしかないだろう」
俺は立ち上がる。
「ちょっと待ってよ!」
モモが俺を制する。
「あの子は今、精神的に不安定な状態なの!今ジン君が言ったところでむしろ悪い方向にしか行かないよ!時間をかけてゆっくりと向き合っていくべきだよ!」
確かに言っていることは正しい。
時間をかけることも大切だとは思っている。
「時間をかけてって……いつまでだ?半月か?一ヶ月か?半年か?それとも一年か?」
「それは……」
モモは口籠る。
「時間をかけたら元気になる保証はない。もしかしたら、このまま一生あの状態かもしれない。いつかじゃない。今助けないといけないんだ」
俺はモモを横を通り抜け、少女のいる部屋へと向かう。
「変わりましたね。ジンは」
「そうだな。あの子を失ってからだな……」
カンナとナインが話しているのが微かではあったが聞こえていた。
変わったか……。自分ではそうは思わないが。
だが、前よりほんの少しだけ……
自分が守ろうと決めたものは死んでも守る。
その想いが強くなっただけだ。
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