私とエッチしませんか?

徒花

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イブのデートと生挿入

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 十二月。
 既に空気は冷たく張り詰め、夜はその長さを増している。
 木々の葉は落葉し、本体の樹は灰色がかった枝を虚空に晒す。そんな季節。
 冬。
 生物は活動を控え、冬眠や越冬の準備に入るが、人間にはそんなことは関係ないようだった。

 十二月十七日。
 今年ももうじき終わるという時期。
 僕はとあるデパートに足を運んでいた。
 この町では最大の規模を誇るその百貨店。流石に東京にある店舗とは比較にならないが、大抵のものは揃っている。そんな店。
 デパートの中にはクリスマスの飾り付けが既に為されており、これから始まる祝祭的な行事に備えていた。

「これは……いや、これは喜んでもらえそうにないな……」

 僕がこの場所に一体何をしにきたのかというと、牧本さんへのクリスマスプレゼントを購入するためだった。
 クリスマスイブまであと一週間。そろそろ準備しておくべきだろう。
 丁度その日、二人でデートすることにしていた。
 文化祭からだいぶ期間は開いてしまったが、一月に控えた一般入試のセンター試験の前に会える、最後のチャンスだった。
 クリスマスの時期には、僕も彼女も冬休みに突入する。
 二十六日から、彼女は学校が主催する、受験直前の詰め込み合宿で数日長野のホテルに缶詰になるらしい。
 だから、せっかくだからクリスマスイブにデートをしようという話になったのだ。
 それならば、プレゼントを用意しておくのがベストだろう。
 だが彼女が何を欲しがっているのかがよく分からない。
 僕の全財産は五万円程度だが、できるなら一万円以内に収めたい。もうじきお年玉を貰える時期だが、この歳になるとそろそろ貰えなくなるなるだろう。

「これは……ちょっと高いな……こっちの服は二万円もする……」

 現在僕は、洋服屋に来ている。そこで彼女に合いそうな服を見ているが、やはりどれも高い。
 少し値段を抑えたものは、どこかチープで彼女に似合わなさそうな気がした。
 そもそも、彼女の体のサイズをよく知らないから、服を選ぶのはよい選択ではないのかもしれない。
 彼女に訊けよと思うかもしれないが、サプライズで渡したいので悟られるようなことはあまりしたくない。
 ……僕のことだからきっとプレゼントを用意しようとしているんだろうなとは、勘の鋭い彼女には感づかれていそうだが。
 服は一旦保留にし、隣にある別のコーナーを見ることにした。

「こういうのもありか……」

 そこにはスカーフやマフラー、ネクタイのような、ちょっとしたお洒落が出来る衣装が取り揃えられていた。
 これなら、身長などは関係ない。
 値段も割と手ごろだ。
 マフラーはいい感じだろう。寒いこれからの季節にぴったりだ。
 襟巻き程度は牧本さんなら持っているだろうけど……。
 何色が彼女は好みだろうか。
 ピンクも可愛いが、そろそろ大学生になる彼女にはちょっと子供っぽい気がする。
 無難なのは白かな。

「……よし。これにしよう」

 僕はその白いマフラーを手に取り、レジへと持っていく。
 2200円。結構良い素材を使っているらしく、少し値段が張った。
 プレゼントにするのでそれ用の箱に入れていただけますかと願うと、そのようにして貰えた。
 中々見栄えのよい箱に、リボンまで付けてもらった。彼女もたぶん喜ぶだろう。
 鞄にそれをしまってからデパートを出ると、それなりに辺りは暗くなっていた。
 夏と違って日が短い。夕闇の降りつつある冬の夕刻は、容赦なく体温を奪おうとしているかのようだった。
 目的の物も手に入ったし、そろそろ家に帰ろう。
 僕はそう考え、駐輪所から自分の自転車に乗り込んだ。

 十二月二十四日。
 クリスマスイブ。
 彼女とのデートの当日。
 駅前の噴水で待ち合わせをしようと約束をしていたので、僕はその場所に向かう。
 道行く途中では既に何人かカップルらしき人たちがいて、「やっぱりクリスマスなんだな」と思う。
 空気は冷たい。今日は自転車を使わず、徒歩でデートすることにしたのだが、時々吹く冷風がナイフのように僕の肌を通り過ぎていく。
 時刻は午前十時。彼女はもう、来ているだろうか。
 駅前に着いた。駅前の広場の噴水付近には、何人か人がいたが、彼女の姿はない。
 待つとするかと噴水の縁に腰掛けて、スマホを弄る。

「おお~いっ! 荻野さんっ!」

 スマホでネットを閲覧し始めて十秒もしない内に、その声が聞こえた。
 牧本さんだ。
 右手を頭の上で振りながら、こっちに向かって駆けて来る。
 茶色のコートに長めのスカート。首には赤いマフラーを巻いている。
 彼女は僕の傍までやってくると、にこりと笑いながら口を開く。
 息切れしている様子はまるでなかった。さすが陸上部。

「遅れてすみません。待ちましたか?」
「いえ、本当についさっき僕も到着したばかりです。殆ど同時」
「それならよかったです。今日も寒いですね」
「ええ。風邪、引かないようにしないといけませんね。牧本さんはもうすぐ入試なわけだし」

 しばらく会話を楽しんだが、僕らは早速デートを始めることにした。
 まだ告白もしていないのにデート。順序が逆のような気もしたが、そもそも肉体関係を何度も持ってしまっている時点で今更だろう。
 駅の裏側の映画館に行こうという流れになり、僕らはそこに向かう。
 目的の場所にはすぐ着いた。
 何の映画を上映しているのか、僕はよく知らない。ラブロマンスを観ればいいのかなと思っていると、彼女はゾンビ映画を観たいと言い出した。

「僕、ちょっとそう言うの苦手なんですよね……。というかクリスマスのデートでゾンビ映画ですか」
「話題作なんですよっ。私もまだ観てないんですけど、ホラーよりもアクションが強めらしいんで、荻野さんもたぶん楽しめると思います」

 僕は他に案もないので、彼女の意見を尊重して結局それにすることにした。
 受付で座席表を発行してもらう。イブとクリスマス当日はカップル割引になっているらしい。僕らが「カップル」なのかは議論の余地がありそうだったが、ラッキーだと思ってそのサービスを利用させてもらう。
 お約束ということで、ポップコーンも購入した。Lサイズ。
 開場するまでの間、受付の近くにあるロビーの座席に二人で座る。

「僕は恋愛物の映画でも観ようかなと思っていたんですが、ちょっと意外でした」
「結構アクション系、好きなんです。たまにレンタルショップで色々借りてくるんです」
「性的な内容の映画でも観ようと言い出したらどうしようかと思いましたよ」
「あっ、それいいですねっ。そっちに変えましょうか?」
「いやいや、今の時間帯は上映してないし、そもそも高校生は観れないし」

 そんな会話をしている間に、会場時間になったようだった。
 係員にチケットを見せ、上映場所へと入る。
 選んでいた座席に座り、ポップコーンを二人でつまんでいると、周囲が暗くなりはじめた。そろそろ上映の時間だ。
 映画が始まる。正直、面白かった。僕も彼女も集中していた上に、「そういう」タイプの映画ではなかったため、手を握ったりするイベントは起こらなかった。
 二時間ほどで映画は終わり、スタッフロールまで観た僕らは上映会館から出てきた。

「面白かったですね。牧本さんの映画を選ぶセンス、確かでした」
「楽しかったですねっ! 私、最後の場面で心臓止まりそうになりましたよっ。まだドキドキしてる……」

 クリスマスにカップルが観る映画に相応しかったかどうかは別として、楽しい感覚を二人で共有出来たことに、僕は喜びを感じていた。
 彼女も同じなのかなと思いつつ、次はどこに行こうかと相談する。
 男性の僕がリードしていくべきだろうなと思い、提案する。

「ファミレスでご飯、行きますか? 丁度お昼時だし」
「いいですねっ。この近くだとどこがあるかなぁ」

 スマホで検索を掛けてみると、徒歩五分程度のところに手ごろな店があるらしかった。
 そこにしよう。
 僕たちは映画館を出ると、その食堂目指して歩きだした。

 ファミレスについた僕たちは、座席に案内される。
 僕はスパゲティ。彼女はピザを注文する。

「牧本さんは、陸上部で主に活動していた頃、友達とこういうお店で遊んだりしたんですか?」
「うーん。休みの日にはたまに行ったかな。でも部活動中は購買のパンや、自分の家から持ってきたお弁当や、ゼリー飲料なんかを食べてました」
「なるほど」
「荻野さんは、確か部活動に所属していないんでしたっけ」
「ええ。帰宅部です。自由に時間を使いたいなと思っていたんで」

 そんなことを話している間に、注文した品が席に届く。
 二人でそれを食べながら、彼女とピザとスパゲッティを分け合ったりしながら、暫し食事の時間を楽しんだ。
 ポップコーンのLサイズを食べたばかりなのに、僕らの胃袋はよく収めてくれた。
 食べ盛りの高校生。万歳。
 あまり長居すると店に迷惑が掛かるので、適当なところで僕らは店を出る。
 次はどこに行こうかなと、二人で幸せな悩みに興じた。

***

 結局僕らは、カラオケやら美術館やらに二人で出かけた。
 勉強の時間を忘れられた気がする。青春をしている。そんな気持ちになれた。
 気がつくと、時刻は午後五時。冬だから、既に辺りは暗くなり始めている。

「牧本さんはどうします? そろそろ、お開きにしますか?」
「……ねえ。荻野さん。あれ、見てください」

 彼女がいずれかの方角を指差す。
 その指の先を見ると、電飾に彩られたそこそこの大きさを持つ建物があった。

「……ラブホテルですか。なんとなく、行くんだろうなとは思っていたけど」

 こうなることはある程度予想ついていた。
 クリスマスイブだし、デートだし。
 でも、いい機会かもしれない。タイミングを見計らっていたが、セックスが終わった後がプレゼントを渡すチャンスかもしれない。

「行きましょうよっ。先輩からのお願いです」
「ええ。こんな日、ですもんね」

 行くことが決まって、更に嬉しそうになった牧本さんが、僕の手を引く。
 ラブホテルは初めてだなと思いながら、僕は彼女に誘われていった。

 入り口でフロントに受付を済ませ、料金を先払いして部屋に行く。
 結構値段が高かったが、二人で割り勘をした。
 二時間コースで利用することにした。二人の精力的にも、高校生の取れる時間的にも、その辺りが妥当だと思ったからだ。
 クリスマスイブだというのに、意外にも部屋を取ることができた。
 本格的に利用者が増えるのは、もっと後の時間だからだろう。
 部屋に入り、鍵を掛ける。
 暖房が効いていて、部屋は暖かい。
 部屋の端には大きなベッドが置いてあり、あそこが戦場になるんだなと思った。

「お風呂、入りましょうよ。一緒に入浴しましょ?」
「いいですよ。服、脱ぎましょうか」

 僕らは厚着のコートを脱ぎ始める。
 十二単みたいに着込んでいたから、結構脱ぐのに時間が掛かった。
 二人とも全裸になる。
 久しぶりに見た牧本さんの裸体は、相変わらず美しかった。
 若木のようにすらりとした体格。ぴしっと引き締まった肉体。余分な脂などどこにもついておらず、かといって硬すぎる筋肉というわけでもなく、触れると柔らかそうなその身体。
 夏に見た時に付いていた日焼けは、今はもう消えていた。
 血の色が僅かに差した乳白色の肌がその全身だった。染みなどどこにも見当たらない、美しい肌。
 胸は程よく肉が付いている。薄紅色の乳首がその中央を淡く染めていて、吸ってみたいという邪な考えが浮かんでくる。
 ヘソは妙な色気を放ち、括れのある腰が艶かしい。
 性器にはやや幼げな陰毛が生えていて、彼女のどこか大人びた雰囲気とギャップを放ち、正直なところ興奮させられる。

「見惚れてますね~。私の身体、そんなにいいですか?」
「その、いつ見ても均整の取れたいい肉体してますね……モデルになれそう」
「ふふふ。褒めてもセックスくらいしかしてあげられませんよ?」

 それで十分だ。
 時間無いし、早くお風呂に入りましょうと、彼女は言う。
 早速僕らは、浴室へと入った。

「意外と広いですね。ジャグジーだ」
 泡風呂。
 ぶくぶくと底の方から絶え間なく泡が湧き出て、入ったら身体中が刺激されそうだった。

「まずは身体洗いましょう。荻野さん、洗ってあげますね」

 プラスチック製の椅子に座り、彼女に背中を向ける。
 彼女の繊細な指が、皮膚に触れて気持ちいい。

「荻野さん、やっぱり結構細いですね。運動あまりしてないらしいのに、ちょっと意外」
「そういう体質みたいなんですよね。あんまり太りにくくて。体重も五十キロ弱程度だし」
「羨ましいなぁ。私、最近鈍ってきてるから、お肉付いちゃいそうなんです」
「見た感じ、全く問題無さそうですけどね。むしろ前に見た時より更に華奢になってるような……」

 前も洗ってもらう。僕のペニスは完全に出来上がった状態で、二人で苦笑する。

「何回やっててもやっぱり私とエッチしたいんですね。まあ、私も荻野さんと早くしたいからお互い様か」
「身体の相性、かなりいいですからね……。つい勃ってしまうんです」

 次は僕が彼女を洗う番だ。
 泡をつけて背中を摩る。
 彼女の肌は本当にすべすべとしていて、幾らでも触っていられそうだった。
 背中を洗い終わったので、今度は前だった。
 首下や、腋の下。胸、腹。そして性器。

「ふへへっ。くすぐったいですよっ」

 朗らかに彼女は笑う。セックスはまだだけど、本当に楽しい。
 映画を見たり、カラオケをしたりしていた時も思ったが、彼女とは肉体だけでなく、心でも繋がっているのだなという感覚がする。
 彼女と一緒にいられるのも、もう残り僅かだ。
 というか、これでもう会えないかもしれない。
 合格すれば、一人暮らしの準備で忙しくなるだろうし。
 彼女にお湯を掛けて、泡だらけの身体を洗い流す。
 それが終わると、僕らはジャグジーに身体を漬かった。

「気持ちいい~。荻野さん、ジャグジーって初めてです?」
「ええ。今まで入ったことありません。炭酸水に入ったら、こんな感じなのかな」

 止めどなく湧き出る泡で、お互いの裸体がよく見えない。
 僕らは身体を寄せ合う。肩と肩を付け、片手で手を繋ぐ。

「荻野さん」

 牧本さんが顔を向けて、僕の名前を呼ぶ。
 僕がその方を見ると、顔を近づけてキスをして来た。

***

 十分ほど湯に浸かった僕たちは、身体を拭いて部屋まで出てきた。
 あまり「仲良くなりすぎる」と、風呂の中で始めてしまいそうだったからだ。
 二人してベッドの上に乗る。

「ちょっと濡らしましょうか。アソコ、弄りますよ」

 立て膝になった彼女の性器の下に、僕は寝転んだ。
 まるで自動車の点検をする整備士のような格好だなと思いつつ、僕はそれを始める。
 左手の指で彼女のスリットを開き、右手の人差し指でその恥ずかしい裂け目をすりすりと撫でた。

「んっ♡」

 花の種のようなクリトリスを時々爪で軽く引っかいたりしながら、愛撫を続ける。
 下から見て思ったが、本当に柔らかそうな質感をしている性器だなと思った。
 一度咥え込んだら離さないとでも言いたげな、ぷにぷにとした膨らみを過ぎる秘裂。

「ねぇっ。……あそこ、舐めてもらっていいですか? 腰下ろすんで」
「いいですよ。顔に乗っちゃってください」

 彼女が腰を下ろす。
 彼女の秘肉と僕の唇が接吻を交わす。指で触っている時にも気づいていたが、既に湿り気を帯びていた。
 塩辛い。
 牧本さんの恥ずかしい場所に、僕の舌を忍び込ませる。

「あっ♡駄目っ!♡そこっ♡卑怯ですよっ♡」

 舌の先端をちろちろと、粘膜を纏う肉に擦り付ける。そうしていくと、段々彼女の中が解れてくる。
 息がし辛い。鼻を使って呼吸すると、彼女の甘酸っぱい濃密な香りが鼻腔をくすぐる。

「いやっ♡ひゃんっ♡っ……♡くぅっ……♡」

 唾液を愛液と混ぜ合わせる。既に彼女の中はかなり濡れている。
 牧本さんは、自分の口から出る可愛い喘ぎを隠そうとしない。
 温かい滑りをお互い感じている。僕の愛撫で、彼女の中の官能が花開いている。

「い、いやっ♡来ちゃうっ♡」

 彼女が絶頂に達する。ねっとりとした液体が口の中に満たされ、僕は溺れそうになった。
 牧本さんは快楽の余韻に暫し浸っていたが、僕の顔面に腰掛たままなことを思い出し、慌てたように腰を持ち上げる。

「げほっ、ごほっ、ごほっ!」
「ごめんなさいっ! 苦しくなかったですか?」
「げほっ……ま、まあ苦しかったですけど、牧本さんが気持ちよくなれたらそれでいいです」

 起き上がった僕の背中を彼女が摩ってくれる。優しいな。
 彼女の身体は出来上がっている。もう、本番をしてもいいだろう。

「じゃあ、ゴム付けましょうか。このホテルにも用意されてるでしょうけど、今日は僕が持ってきたんで」
「……い……ですよ……」
「え? 今、なんて……?」

 声がか細くて、よく聞き取れなかった。彼女は少し顔を背け、何となく恥ずかしそうにしている。

「……しなくていいですよ。生で……」

 え……。
 今、なんて言ったんだ。

「生でエッチ、してください。今日、大丈夫な日ですから……」
「え、いや、でも……」
「したく、ないですか? 現役女子高生の中、堪能したくないですか……? 私と荻野さんがお互い気持ちよくなれる。良いこと尽くめだと思いますよ」

 したい。というのが本音だった。
 ゴム越しでも極上とも思える快楽なのに、そんな小賢しいものがなければ更に気持ちいいだろう。
 でも。

「妊娠、大丈夫なんですか? もしも、出来ちゃったら……」
「大丈夫です。今日なら、赤ちゃんデキないから……たぶん」

 たぶん、か。

「どうです? お互い高校生でセックスできる、最後の機会かもしれませんよ? 逃したら、もう二度と出来ないかもしれないですよ? クリスマスイブなんですよ?」
「けど、責任が……」

 やっちまえよ荻野真一。彼女が大丈夫だと言っているんだ。生でお互いの体液を絡ませ合え。
 デキちゃったとしても堕ろせばいいし、高校を退学してでも責任を取ればいい。
 彼女に種を植え付けたいだろう。彼女の子宮口に勢いよく精液を吹きかけてやりたいだろう。彼女は自分だけの物だと、一生消えないマーキングを刻み付けてやりたいだろう。

「っ……」

 悪魔が囁く。生で挿入したい。
 ……僕はその誘惑に、抗えなかった。

「……やります。……ゴム、今回はつけないでやりましょう」
「……よろしくお願いしますね。荻野さん」

***

 彼女はベッドに寝転がり、股を軽く開く。
 そうすることで、性器が僕の目の前にはっきりと晒されて、なんとも淫靡だった。
 正常位。
 僕たちはその体位で性交をすることにした。
 最も基本的な、その体位。
 記念すべき、初めての生セックス。
 危険と、破滅との隣り合わせのセックス。
 彼女は安全日だと言っているが、どうなるかは分からない。

「来て……ください」

 牧本さんは、両手を伸ばして僕を迎え入れようとする。
 僕は、何も身に付けていない自分のペニスを、その外唇に宛がう。
 そして、少しづつ沈めていった。

「ああっ♡んんんっ♡やっ、はあうっ♡」

 快美を帯びた、甘く甲高い嬌声。
 僕の分身が、彼女の肉の洞窟へと土足で踏み込む。

「荻野さんのっ、ちんちんっ……生で入ってるっ♡」
「ええっ……やっちゃいましたね……」
「根元まで全部挿れちゃってくださいっ♡荻野さんと少しでも深く繋がりたいっ」

 言われた通りにする。彼女の中が、ペニスを締め付けて歓迎する。
 蜜溜りを押しのけて、深部にまで到達する。
 柔らかい物に、僕の先端が当たっていた。彼女の子宮口。
 牧本さんは僕の胴と腰に、自分の両手と両脚をがっしりと絡み付けた。
 逃れられないように。より深々と繋がれるように。
 ゼリー状の粘膜が、僕の肉槍を包み込んでいる。

「あっ♡はっ、あああっ♡」
「くっ……動きますよ……」

 今にも触れ合いそうな彼女の顔は、明らかに恍惚としたものが浮かんでいた。
 大好きな人と繋がれている。本当の意味で、一つになれている。

「はあっ♡ああっ♡」

 湿った歓喜の声を、牧本さんは漏らす。肉欲に溺れた可憐な音色は、僕の劣情を激しく煽る。
 僕の胸板に、彼女の乳房が軽く潰されている。
 牧本さんの膣内は、しっかりと男のものを締め付ける形をしていたが、深奥付近は洋梨のように括れており、それが雁首をきゅっと締め付けて、精液を搾り取ろうとしているかのようだった。
 その付近には、整えられた粒のような肉襞が並んでいて、蠢き、ぞよめくようにして僕のペニスを刺激する。
 愛液に溢れる僕の肉棒が、押し寄せる襞肉に強く押し付けられる。
 彼女の内部は細かい模様が付いているかのようで、僕の大切な部分を的確に撹拌した。
 生でやるのがこんなに気持ちいいなんて。

「すごっ、い♡荻野さんっ、こんなに気持ちいいんですねっ♡生っ♡」
「あなたの身体っ、具合よすぎですっ」

 起伏に富んだ穴にピストンを押し付けていくと、粘っこい、生々しい音が響く。
 突き刺さる僕のペニスにしっかりと纏わり付いて、きゅうきゅうと力強く締め付ける。
 密着する彼女の肌はマシュマロのように柔らかく、その感触がより一層性的興奮を高めていた。
 強烈な快感。目蓋の裏に星が瞬きそうになる。
 妊娠の不安も、恐怖も、全てが溶けて無くなる。熱が快楽の波へと変わり、腹の奥底が燃え焦げそうになる。
 全てが肉欲へと塗りつぶされる。永遠にこのままでいたい。
 ずっと彼女と一つになっていたい。
 突端が愛液を潤滑油として、より奥深くへと進もうとする。
 彼女を孕ませたい。彼女に自分の子供を産んでもらいたい。そんな欲求が、今まさに睾丸の内側で濃密な種を作り出しているかのよう。
 炎が僕と彼女に巻きついているかの様に、僕らは途中で止めるなんてことなど頭に浮かばなかった。

「荻野さんっ♡私っ、もうっ♡」
「僕もっ、もう出そうですっ……」
「一番奥で出してくださいっ♡大丈夫な日ですからっ♡」

 その言葉は殆ど聞こえていない。
 亀頭が大きく膨らんだかと思うと、彼女の体の奥底へと向かって精液が迸る。
 びくびくっと脈打つペニス。僕らの間には避妊具など存在しない。
 若く濃い種汁が、直に彼女の中に浴びせかけられる。

「ああっ……!♡ああああああっ♡♡♡」

 絶頂に身体を仰け反らせ、強張らせ、僕の精液を受け止める。
 感泣が目の縁から零れ、絡みつく彼女の両手と両脚がより一層力強さを増す。
 顔と顔が極限まで近づき、僕らの唇が強く密着する。
 頭の中で小さな爆発が起こる。汗と涎が流れ落ちる。僕の意識は、次第に薄れていった。

***

 意識を失っていたのは一瞬だった。
 僕と彼女は相変わらず交接していて、絶対に離さないとでもいうかのように身体を固定しあっていた。
 先に口を開いたのは、牧本さんだった。

「はあ……はあ…。すご、かったですね……」
「生で、やっちゃいましたね……」

 僕と彼女は軽く笑う。
 手足の力を抜き、結合を解くと、蓋を失ってどろりと精液が溢れる。

「うわっ。凄く出しましたね……後始末、大変だなぁ」
「すみません……興奮しすぎちゃって……」

 いいんですよと彼女は笑いながら言ってくれた。
 時計を見ると、そろそろ二時間が経過する頃だった。
 延長してやりたいところだが、あまりお金も時間も無い。

「……牧本さん。よく頑張りましたね。……ありがとうございます」
「いいんですよ。凄く気持ちよかったし」

 液に塗れた性器を拭き取り、軽くシャワーを浴びて僕らは部屋を出る。
 延長しますかという内線は、結局断った。

 ラブホテルの外に出ると、外は完全に暗くなっていた。
 年頃の女の子を途中まで送り届けるのも、男子の義務ということで、僕は途中まで牧本さんと一緒に帰ることにする。
 彼女は何となく、しおらしかった。
 遂に本当に一線を越えてしまったという事実。僕の精を胎内に浴びたのだと言う事実。
 その現実に、余韻を感じているのだろう。

「私、ここまでで大丈夫です。今日はデート、楽しかったです。……本当に、お別れかもしれませんね」
「ええ。お気をつけて。いい思い、させてくれてありがとうございます。また会える日を、楽しみにしていますよ」
「ラインの友達は削除しませんから、会話自体はいつでも出来ますよ」

 二人で笑う。寂しいけど、どこか心地良い。

「……荻野さん、もしも私が嘘付いてたらどうするんですか? もう、手遅れですけど」
「……絶望します……。嘘、じゃないですよね?」

 彼女は小悪魔的な笑みを浮かべる。
 両手を腰の後ろの辺りで組んで、ふふんと笑ってみせる。

「さあ。どうでしょうね。嘘つきおまんこに出しちゃったのかもしれませんよ? 君の赤ちゃんの素、私の中で元気に泳いでるんですよね。もしもデキちゃったら、セキニン取ってくださいね?」
「……頑張ります」

 牧本さんは走って闇の中へと消えていく。
 結局、安全日は嘘なのか、本当なのか、分からなかった。
 そもそも彼女が嘘を付いていないとしても、実質安全日などという日は存在しない。

「……まあ、いっか……」

 牧本さんの姓が荻野に変わる可能性があるかもなと思いつつ、一抹の後悔を感じつつ、僕は帰路に付いた。


「……あっ。プレゼント渡してない!」
 自宅の目の前に辿りついた時、僕は大声を上げてそう叫んだ。
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