私とエッチしませんか?

徒花

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来ない連絡

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 秋が深まり、空気の肌寒さが増していく。
 木枯らしが冷たくなっていく季節。
 冬の足音が聞こえてきそうな、そんな時期。
 今は十一月の上旬。
 放課後などの授業外では僕は自主的に学習しをしつつ、時々読書や昼寝で休息を取る。という生活を送っていた。
 二学期に入ってからのその生活に変わりはない。
 ただ一つ、変化があったこともある。
 牧本さんとの連絡が中々取れなくなったのだ。
 中間テストに入るからと両親にスマホを一時的に規制され、彼女とラインや通話でやりとりができなくなったのだ。
 彼女はツイッターやフェイスブックのようなSNSもやっていないらしく、連絡する術が無い。
 入試が数ヵ月後に迫っている状況で直接会いに行くのも迷惑だろう、そもそも僕自身、テストが迫っているのに彼女に一々うつつを抜かしている場合でもないだろう。
 でも、今は何をしているんだろう。直接会ったのは、あの青姦の時が最後だ。九月の下旬だったな。
 三週間ほど前、最後にラインで連絡を取った時、かなり彼女は大変そうだった。
 休日は徹夜続きの日々らしく、正直結構疲れているのだと。
 冗談も交えながら明るい調子でそんなことを言っていたが、今は関わるべきではないだろう。
 幾ら彼女に会いたいからといって、それを実行するのは本人にも僕自身のためにもならない。
 そういう意味では、自分のことに集中できるためにスマホを一時的に取り上げられたのは、ラッキーかもしれないな。
 しばらく連絡が取れなくなるということは、スマホを親に預ける直前に彼女にその旨を送っていた。
 知らずに会話を試みて、返事が返ってこないので無視されていると誤解する恐れはない。
 早くスマホを返してもらい、彼女に連絡を取りたい。
 そう思いながら、僕はテスト兼受験勉強に励んだ。

***

 一週間後。
 学校の校舎から出てきた僕は、伸びやかな気分だった。
 ようやく中間テストが終わった。多少は自由になれるのだということに、僕は安堵する。
 正直、かなり上手くいった気がする。一学期の頃は頭を抱えていた期間内テストが、今回はかなり理解出来ていた。
 自己採点でもどの教科も八十点以上は堅い結果だった。夏休み前からは考えられないことだった。

「彼女のお陰……なのかな」

 牧本さん。彼女と共に勉強したり、コツを教えてもらったり、何より彼女に憧れて、積極的に学ぶようになった。
 高校の教員よりも解りやすい彼女の教えは、どんなに役に立ったか分からない。

「スマホ、返してもらったら感謝しないとな」

 そう呟きながら、僕は駐輪所で自分の自転車に乗った。

 家に帰り、母親にテストが終わったことを報告する。
 母はどこかに仕舞っていたスマホを持ってくると、「勉強ちゃんと続けるのよ」と言って返してくれた。
 三週間ぶりのスマホ。三週間ぶりの彼女との会話。
 軽い感謝の言葉を母に言うと、僕は二階の自室へと駆け足気味で上がっていった。
 階段を上がるときには電源を付けていたので、自室のベッドに寝転がる頃には起動が完了している。
 早速ラインを開き、彼女とのトークを手元に呼び出す。なんだか緊張する。
「しばらく連絡できない」という僕のメッセージの数時間後、彼女の返答が書き込まれていた。

「そちらは今テストの時期なんですね。私の高校は先日終わった所なんです。わざわざ話すことでもないかなと思って言わなかったんですけど。頑張ってくださいね。また会話出来る日を、楽しみに待ってます」

 それ以外のメッセージは無い。
 僕は早速新たな文章をそこに残す。

「お久しぶりです。お元気ですか。ようやくテストが終わったところです。牧本さんのお陰でいい点が取れそうです。ありがとうございます」

 送信と。
 しばらく待ってみるが、既読はつかなかった。
 まあ、彼女も忙しいのだろう。
 連日勉強ばかりなのだろうし、スマホを見る時間が取れないのは十分考えられる。
 僕はしばらく、昼寝でもして時間を潰す事にした。

 一階からの、夕飯が出来たとの母からの呼び出しに、僕の眠りは中断させられた。
 反射的に時間を見ると、午後七時十五分だった。
 二時間ほど昼寝をしていたことになる。牧本さんから返信が無かったかスマホを見たかったが、あまりモタモタしていると母に小言を言われそうなので、食後の楽しみに取っておくことにした。
 一階に降り、食卓につく。
 今日の夕飯は白米に味噌汁、煮魚と少々の野菜だった。なんとも日本的な食事だ。
 早く彼女からの返事を見たかったので、それを少し急ぎながら掻き込む。
「なんかちょっと嬉しそうね」と母に言われた。流石に肉親には見抜かれていた。
 牧本さんのことは両親には話していない。テストが終わったからねと適当に理由をつけ、僕は夕食を口に運んだ。
 十分程度で僕は完食した。
「もっと味わって食べなさいよ」と母に言われ、それもそうだよなと思いつつ謝っておく。
 二階に上がり、ベッドの上に置いてあるスマホを手に取り画面を見た。

「……」

 通知が無い。既読も付いていない。彼女はまだ、スマホに触れていないらしかった。
 僕と同じく、親に端末を預けているのだろうか。入試が近いし。
 少し不安に思いつつ、気を紛らわそうと勉強に取り掛かった。

***

「……どうしたんだろ。来ないな」

 勉強を始めてから、四時間程度が経過していた。
 問題集は三十ページ程度進んだ。学習は順調だ。
 途中で風呂に入ったのでぶっ続けで机にいたわけでは無いが、殆ど張り付いていた状態だったと言っていい。
 だがその間も、彼女からの返事は無かった。
 流石に不安になってくる。もう、家には帰っているはずだよな。
 事故にでも遭ってしまったのではないか。もしかしたら、誘拐?
 ……僕に興味を失って、別の男の下に行ってしまったというある意味最悪な想定をしてしまう。
 好奇心が強すぎて、悪い男に利用されかねない面があるから、あながちあり得ないと言い切れないのが怖い。
 ラインを起動し、「返事が無いですが、どうしましたか?」と送信しそうになったが、止めた。
 催促しているみたいで、引かれてしまいそうだ。
 入力した文章を取り消し、スマホをポケットに仕舞って勉強の続きをすることにした。
 けれど、不安は止まらない。今までは、こんなことはなかった。
 僕が話しかけると、すぐに彼女から返信があった。気を使わせているようで申し訳なかったが、僕と会話するのを本当に楽しみにしているという風で、明らかに授業中のような場合を除いて殆どの場合即座に返事が返って来た。
 でも、今回は違う。
 何かあったのだろうか。
 何もないといいが。
 勉強に身が入らないというほどではないが、何となくそわそわする。
 彼女に依存してしまっている。彼女の存在が、自分の中のかけがえのないものの一部となっていることに、僕は気がついた。
 唐突に消えてから実感する、彼女の大切さ。
 こんなので、彼女が東京に行った時に耐えられるのだろうか。
 そう思いながら、ペンを握る手を動かした。

 結局、更に一時間が経過しても既読はつかなかった。
 やはり、何か事件に巻き込まれたとか。
 不安は募る。たった数時間返事が無かっただけで情けない。
 女々しい自分に嫌になる。
 そう思っていた時、ポケットの中のスマホが着信音を鳴らし始めた。
 木琴のような音の小気味よいメロディ。すぐに端末を取り出し、誰からの着信なのかを確認する。

「あっ……!」

 牧本瑠璃葉。彼女の名前が表示されていた。
 すぐに通話を開始するボタンをタップし、耳にスマホを当てる。

「もしもしっ! 牧本さんっ!」
「うわっびっくりしたぁ。元気ですかって訊こうと思ってたけど、その様子じゃ大丈夫そうですねっ」

 クスクスと笑い声が聞こえる。正直な所、さっきまでの僕はあまり元気ではなかったが。

「どうしたんですか。全然連絡が無かったから、心配したんですよ」
「ごめんなさい。ちょっと帰ってから寝てしまって。しばらく荻野さんから連絡が来ない習慣で、スマホ確認するのも忘れていたんです」
「寝てたんですか。やっぱり勉強疲れか何かですか?」
「ええ。そんなところ。まあ、それだけでは無いんですがね」
「何か、他にも?」
「はいっ。……私の高校、今度の土曜日に文化祭やること、知ってます?」
「えっ……」

 文化祭。知らなかった。
 彼女の高校の近況は調べてなかったし、牧本さんと連絡を取ることもできなかったから、知る機会が無かった。

「その様子じゃ、知らないみたいですね。荻野さんと連絡が取れなくなった辺りから、準備が始まったんです」
「そうなんですか」
「受験で忙しいってことで本当は今年から三年生はやらないかもって話になりかけてたんですけど、「高校最後の思い出が減る!」ってことで生徒からの反対が多くて、結局私たち三年生もやることになったんです」
「なるほど。それで、牧本さんのクラスは何をするんです?」

 ふふふと、良いことを教える前にする笑い声がする。
 何かあるな。

「聞いて驚かないでくださいよ? メイド喫茶です」
「め、メイド喫茶ですか」

 ちょっと意外だった。
『藤坂院学園』はどちらかと言えばお嬢様の印象で、そういうサブカル的な催しをする印象は無かったからだ。

「結構堅いイメージの高校ですけど、私たちの世代だとアニメやマンガを見てる子も多いんですよ。先生も、時代の流れかなってその催しをするのを承認してくれました」
「なるほどね。……もしかして、牧本さんもメイドですか?」
「ご名答。私、メイドします。十人くらいの生徒がローテーション制でメイドをやるんです。他の子は客引きや入り口での受付。自慢じゃないけど、『牧本さんがメイドをやったらきっと人が来る』って推薦してもらったんです」

 牧本さんがメイドか。美少女の可愛さと陸上部員の引き締まった格好よさを両立している彼女。その彼女が、可愛さに振り切った衣装を着た姿。
 妄想して、少し胸が高ぶった。

「それで、荻野さん。土曜日、よかったら文化祭に来ませんか? 他のクラスの子も気合入れたことしてるし、勉強の息抜きになると思いますよ。……私のメイド姿も見てもらいたいし」
「勿論。行かせてもらいますよ。牧本さんに会いたいし」
「よかった。じゃあ、当日よろしくお願いします。私のクラスは3-Cです。当日高校に行けば入り口でパンフレット貰えると思うんで、それを見るか人に聞いて私のクラスまで来てください」
「ええ。楽しみにしてますよ。久しぶりに牧本さんの声聞けて、よかったです」

 文化祭。僕の高校では今年やらないんだよな。
 そういえば、彼女の学校に行くのは初めてか。女子高内部に入れるなんて、滅多にない機会だ。楽しんでこよう。

「……荻野さん。まだお時間、あります? 勉強に差し支え無いなら、もう少しだけお話したいんですけど……」
「大丈夫ですよ。僕も牧本さんとお話したいですし」
「あの……笑わないで聞いてくれますか……?」

 何だろう。この手の切り出し方をする時は、大体の場合目玉が飛び出そうになる言葉を聞くことになるが。

「笑いませんよ。たぶん。遠慮せず言ってください」
「じゃあ、言います」

 コホンと軽く咳払い。

「私のお、オナニーを聞いていただけますか?」

 目玉が飛び出そうになった。言葉を失う。
 何だって?

「ごめんなさいっ。やっぱり引いてますよね……。言うんじゃなかった……」
「い、いえ。引いてなんかいません。ちょっと驚いただけで。まあ、続きを聞かせてください」

 暫し逡巡した様子がスマホ越しに感じられたが、彼女が口を開く。

「せっかく通話してるし、久しぶりに荻野さんの声を聞けたので、その、この機会にやってみたいなぁって……」

 今一頭の中が整理できていない。元々彼女には唐突なことをする面と少々強い好奇心があることは知っていたが、流石に驚く。
 以前の露出に比べれば、まだ危ない道を通っているわけではないのかな。

「それで……聞いてくれますか?」
「牧本さんが良ければ」
「……分かりました。荻野さんは、私がしている間、エッチな言葉を掛けてください。私も気分が乗る言葉を言うと思うんで」

 何か彼女を欲情させてあげられる言葉はあるかな? 考えている間に、衣服を脱ぐ音が闇を突き抜けて聞こえて来た。
 すうっと息を吸い込む音がする。彼女が「演技」に入る準備のようだった。

「私たちはセックスをしていると思ってください。体位は荻野さんの好きに想像してください。……いきますよ」
「……」

 今この瞬間、彼女が指を性器に添えているのだと考えた。

「んっ……いやっ。そんなところっ、触らないでくださいっ」

 始まった。やるしかないな。

「ほら。ここが気持ちいいんですよね? 段々濡れてきてますよ? 僕の指、ちょっと突っ込んでみましょうか」」
「……! だ、駄目っ。んぁっ!」

 彼女が自分の指を、秘裂に潜り込ませていく様を想像する。

「ほら。もうこんなに入った。こんなに奥にまで咥え込むなんて、淫乱ですね」
「んっ、違っ……!」
「口ではそう言っていても、身体は正直ですよ」

 蜜が溢れるように誘導する。妄想の世界へと入り込めるように、誘導する。
 しばらく淫語を並べ、彼女の欲望を刺激させる。
 快楽が波打つように、言葉を擦り付ける。

「んっ、ひゃっ、ダメッ……やっ!」
「かなり濡れてきましたね。挿れますよ……」

 自分のペニスを、彼女の膣口に宛がう場面を思い描く。
 僕はバックの姿勢で妄想を進めていくことにした。

「挿れちゃっ、駄目ぇっ……」 
「どうです? 牧本さんの中、凄くキツいです。肉が絡みついてくる」
「んっ、……ひっ。らめぇ」

 段々彼女の喋り方が変になってくる。呂律があまり回っていない。
 粘度の高い涎が口から糸を引き、よがらせているのだろう。

「どうして欲しいです? あなたの口から聞きたい」
「ぁっ、んっ、っ、一番っ♡奥まで挿れてくださいっ。一思いに、一気にっ♡」
「分かりました。……いきますよ」
「ん、ん、んあっ……ああああっ!」

 彼女が自分の指を奥にまで突き入れたのだろう。
 結構大き目の喘ぎ声が聞こえて来る。

「どうして欲しいです? 今度は、何をして欲しいですか?」

 意地悪な質問をもう一度ぶつけてみる。一瞬彼女は溜めてから、恥ずかしそうにこう言う。

「私のっ、ことをっ♡めちゃくちゃにしてくださいっ♡荻野さんのちんちんの形を刻み込んでくださいっ♡」

 正直、僕も興奮してきた。
 パンツの中が、先端から漏れでた液で濡れてきているのが分かる。

「んっ♡っ……♡」

 いやらしい水音すら聞こえてきそうだった。彼女は完全に、変なスイッチが入っている。

「荻野さんっ♡気持ちいいですかっ? 私の生の感触っ、どうですかっ♡」

 え、生でやってる設定だったのか。
 思わず唾を飲み込む。いけない。早く答えないと。

「……気持ちいいですよ。お互いの熱も体液も混ざり合って、どっちが自分の身体なのか分からないくらいに」
「もうっ……イっちゃいそうですっ♡荻野さんっ、どうですかっ?♡」
「僕も、そろそろ出そうですっ。抜きますね……」
「ううんっ。中に出してっ♡中でいいですよっ♡」
「え、で、でもそれだと……」
「だ、大丈夫ですよっ♡きっと、大丈夫っ♡」

 妄想の中とは言え、彼女に中出ししてもいいのだろうか。
 いや、いいのだろう。頭の中でしていることなら、妊娠することはない。

「じゃあ、いきますよ……! 僕の精子、受け止めてくださいっ」
「来てっ来てっ。私の中に、荻野さんの印、刻み付けてっ♡あああッ♡」

 声にならない声を出しながら、彼女が絶頂する。
 十秒程度喘ぎ声が聞こえた後、はあはあと息を切らす声が、スマホの向こう側から聞こえて来た。

「すご、かった……指べどべと……糸、引いてる……最後、ちょっと泣いちゃいました……」

 壮絶だったんだな。彼女の親に聞かれていないといいが。

「えへへ……中出し、されちゃいましたね……頭の中の話ですけど」
「……ちょっとびっくりしました」

 初めは僕が上位だったはずなのに、いつの間にかそれが入れ替わっていた。
 牧本さんには勝てないなとぼんやりと心の中で思う。

「あの、こんな変態なお願いに付き合ってくれてありがとうございます。……土曜日、待ってますね」
「ええ。楽しみにしてます。じゃあ、今日はこれで。牧本さんの声聞けてよかったです」
「私も。……じゃあ、これで」

 通話が終わった。
 危惧していた事故や病気や寝取られではなかったことに、安堵する。
 むしろ元気だった。相変わらず、性的な好奇心が強めだな。
 彼女、メイド喫茶のメイドさんをやるんだったなと思い出す。
 どんな接客をしてくれるのか。楽しみだ。
 土曜日までは後数日かと思いつつ、僕はベトベトになったパンツのことに気がつき、どうしようかと思いあぐねた。
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