私とエッチしませんか?

徒花

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彼女の大切な場所

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 金曜日まで、僕は悶々とした日々を送った。
 二日間というのは大した日数ではないはずなのだが、彼女と会えるという楽しみが僕を煩わせていた。
 ふとした瞬間に彼女の姿が頭に浮かび、授業にもあまり集中できない。
 習ったことは帰ってからしっかりと復習をしたので、ちゃんと頭には入ったが。
 煩悩を絶てていない僕は精神力が弱いなと思いつつ、その時を僕は待っていた。
 金曜日。下校時刻。
 授業が終わると、僕はすぐに校舎からでた。
 僕は帰宅部だ。授業が終われば、後は特に何かに縛られることなく行動できる。
 駐輪所から自転車に乗り、少し急ぎながら目的地へと向かう。
 勿論、事故を起こさないように気をつけながら。
 スマホのナビで確認しつつ、住宅街を通る道を抜けていく。少しでも早く彼女に会いたいから、家で着替えず制服のままだ。
 慣れない順路を進んでいるもので、若干迷った。
 彼女は待っているだろうか。もしも遅れそうだったら、その旨をラインで伝えなくては。
 待ち合わせの時刻は五時半。現在は五時二十分。
 授業が少し長引いて、校舎を出るのが遅れてしまったから、結構ギリギリだ。
 ……結局、喫茶店に着いたのは五時半ぴったりだった。
 五分前行動は失敗だなと反省する。
 手ごろな場所に自転車を停める。同じ場所に、牧本さんの自転車が駐輪してあった。
 流石にもう来ているよなぁ。
 首を持ち上げ全体を見ると、その喫茶店はそれなりの大きさを持っていた。コンビニより少し大きい程度の敷地にあって、住居兼職場といった風貌だ。
 個人が営業している喫茶店なのだろう。
 入り口のガラス戸の前に立ち、深呼吸をしてから戸を開ける。ドアの上部に付いていた小さなベルが、チリンと軽い音を立てて僕という来訪者の到着を中に知らせる。

「いらっしゃいませ」

 カウンターに付いている男性が、よく通る声でそう言う。
 初老の男性だった。恐らく、この店の店主なのだろうなと僕は予想する。
 ぱっと見た喫茶店の内装の印象は、木製だという感想だった。質の良さそうな木の床に、カウンターやいくつかある席も滑らかな質感の、深い色合いの木でできている。
 平日だからだろうか。店内に人は少なかった。

「あの、人と待ち合わせているんですが……」

 店主の男性にそう話し掛けた刹那。

「あっ、こっちっ! こっちです!」

 聞き覚えのある声がした。店の奥の壁側の席。四人掛けのそこには牧本さんが座っていて、屈託のない笑みを浮かべてこちらに軽く手を振っている。
 彼女も制服を着ていた。既に何か注文していたようで、席のテーブルの上には、白いカップが湯気を吐き出しながら鎮座している。
 僕は店主に軽く会釈をし、そちらの席に向かう。
 彼女の向かい側の席に座ろうとしたのだが、隣に座って欲しいと言われてしまった。

「店主さんに見られてて、ちょっと恥ずかしいし……」
「大丈夫ですよ。あの人、あんまり無粋なことはしない人だし」

 手を握られて、彼女の傍に引き寄せられる。彼女は店の奥の、壁と壁の交差している部分にある席。僕はその隣の席だった。彼女の鞄が足元に置かれている。僕もそれに倣った。
 牧本さんが注文していたのはコーヒーのようだった。ミルクを入れたのだろう。優しい肌色が、カップの中に収まっている。いい香りだ。

「荻野さんも、何か注文しましょっ。ここ、コーヒーとチーズケーキが美味しいんですよ」
「じゃあ、それにします。すみません、注文いいですか?」

 カウンターで皿を磨いていた店主に、そう呼びかける。彼はこちらまで歩いてきて、朗らかな表情で注文を取ってくれた。
 しばらくすると、それが運ばれてくる。
 エスプレッソのコーヒーと、チーズケーキ。ケーキは彼女の分も注文したので、三つの品が新たにテーブルに載せられる。
 店主に会釈をすると、彼は口を開いてきた。

「牧本さんがこの店で人と待ち合わせをするなんて、しかもその方が男性だなんて珍しいですね。お友達の方ですか?」

 彼女に対して言っているらしい。牧本さんはにこりとしながらこう言う。

「はいっ。ボーイフレンドみたいなものです。ちょっと私のプライベートな場を紹介したくて、今日このお店に無理言って呼んじゃったんです」
「そうですか。ゆっくりと楽しんでくださいね。……えーと君の名前は?」
「荻野です。初めまして。いいお店ですね」

 型どおりの返答だったが、今の所それくらいしか話すことがない。
 店主は「ごゆっくり、何かあったら言ってください」と言葉を掛けると、カウンターの方へと戻っていった。
 コーヒーに口を付け、チーズケーキの先端をフォークで切って口に運ぶ。
 本当に美味しかった。

「ここにはよく来るんですか?」

 彼女のことが知りたくなって、訊いてみる。

「ええ。頻度はそんなに高くないけど、一人になりたい時とか、静かな場所で勉強したいときに、ここに来るんです」

 落ち着いた音楽が流れている以外に、目立った音は無い。ガラス窓から外を見ても、周囲には車も走っている様子がなく、かなり静かな環境だと言えた。
 ゆっくりと落ち着ける、憩いの場。ここは、彼女が一人になれる大切な空間なのだ。

「そんなプライベートな場に連れて来てくれるだなんて……ありがとう」
「なんか、そんな気分になったんです。君なら、大丈夫かな……って」

 少し俯き、彼女は照れている。どこか大人びているなと思わせる雰囲気の彼女が、身に纏う高校の制服のせいで、等身大の女子高生らしさを演出していた。
 彼女の制服姿は新鮮だった。彼女の通う女子高、『藤坂院学園』の制服。黒を基調としていて、カーディガンのようなデザインをしていた。左胸には校章を模したピンが付けられている。
 少し涼しくなってきたからだろう。その下には紺色のセーターが見える。首元にはワイシャツの襟があって、結構着込む服だなと思った。
 穿いているスカートはそこそこの丈だった。平常時なら問題ないが、風が吹いたら中身が見えてしまうかもしれない。そんな程度。
 僕の制服はというと、普通の学ランだ。

「何かこうしていると、デートしてるみたいですね……」
「そうですね。僕ら、こういうことするの初めてか」

 図書館で一緒に勉強したり、家に誘ってもらったりはしたが、どちらかというとそれは勉強会に近くて、いやセックスなんてことはしてしまったが、それでもあくまでも流れでそうなってしまっただけで。
 能動的に二人でこんな憩いの時間を楽しむのは、恐らく初めてのことだった。
 しばらくは、勉強のことは忘れていたい。
 僕らはコーヒーとケーキに口をつけていた。お互い黙っていたが、でも嫌な沈黙ではなく、互いに相手のしたいことを尊重するというような感じ。
 沈黙を破ったのは、牧本さんのほうだった。

「……ねえ。耳、貸してくれません? 他の人に聞こえちゃうとまずいから」
「いいですよ。何ですか?」

 彼女の頬はいつの間にか紅潮していた。触ると熱を感じそうだ。
 彼女が背を伸ばして、僕の耳に顔を近づける。音を漏らさないように、掌で壁を作るようにして。

「私、今パンツ穿いてないんです……」
「えっ!?」

 思わず声を出してしまう。彼女がその肉厚の花弁のような唇に人差し指を当て、「シー」とジェスチャーを取る。

「今朝パジャマから制服に着替えた時から、何も付けてないんですよ……? ちょっと興奮しちゃって、ついやっちゃいました」
「『つい』じゃすまないでしょう」

 お互い、ギリギリ聞こえる程度の声量で会話する。
 彼女がノーパン。そのスカートの下には何も穿いていない。それで外出してここにいる。
 正直僕は、挙動不審になりかけていた。

「学校でバレちゃわないか、ドキドキしました。みんなのいる教室で授業を受けている時、私だけ実は下半身を晒しているんですよ? 一歩間違えたら私の学生生活は終わりってリスク。その状態で荻野さんと会うという背徳感。ちょっと刺激的だなと思ったんです」
「……バレてないですよね」
「大丈夫。見られてないです。見せても無いし見せる気も無いです。……荻野さん以外には。どうです? 気になりませんか?」

 正直、好奇心が刺激された。でも、こんな場所で見せるのか? 見つかったらマズいことになるのは容易に分かる。監視カメラの類は確認できないが、バレたら言い逃れができる自信が無い。
 牧本さんは小悪魔的な笑みで僕の顔を直視している。視線を合わせるのも、彼女の身体を見るのも恥ずかしくなって、コーヒーを口に含んでその場をごまかす。

「ほら、ちょっとだけ見せてあげます。こっち見て。見つからないうちに」

 僕は身体を前にやり、なるべく彼女の下半身を隠すようにしてから、視線を動かす。
 牧本さんは人差し指と親指でスカートの端を摘まみ、ゆっくりとそれを捲くっていく。
 日焼けした部位から乳白色の彼女の地の色の肌。太股の見える領域がどんどん広がっていき、両の腿の付け根にまで到達する。

「っ……」

 そこには、あるべき布が無かった。なくてはならない筈の下着が見えなかった。
 血の色が差して赤みがかった白い肌と、彼女の鏡のように輝く黒い髪と同じ陰毛が、肉質のいい両腿の狭間に存在した。
 はいてない。

「はいっ終わりっ」

 さっと布を下ろして下半身を隠す。見せてくれたのは一瞬だけだった。
 全ては元通り。と言いたいところだったが、僕の心臓は鳴り渡り、頭はかっと熱くなり、陰部に無意識の内に血が集まる。
 彼女の性器は見慣れているはずだったが、こんな場所で晒してくるという背徳的な状況が、妙な興奮を僕にもたらしてきた。
 牧本さんは顔を赤らめ、目の前のコーヒーとケーキを見つめている。
 頬に汗が滲んでいそうなその表情。
「やっちゃったなぁ~」と言いたげなその目。唇はきゅっと固く結ばれていた。
 誰も僕らの不道徳に気がついた様子は無い。店主も、何人かの客らも、食事や談話を楽しんだり、思案を巡らせたりと忙しいらしかった。
 僕らの間に流れる沈黙。無表情に固まった僕たちの視線が、小刻みに動いているのが何となく分かる。
 時間が止まったかのようだった。
 何か言わなければなと焦り、僕はあまり考えを纏めないで口を開く。

「そ、その……あの、そういうのが、好きなんですか?」

 もっとまともなこと言えただろ。言葉にしてから後悔した。
 少々上ずった声で牧本さんは返答する。

「い、いえ。こんなことをしたのは荻野さんが初めてだし、普通はパンツを穿かないなんてことしないし、他の人に見せ付けるとか一線は越えてはいないし……」

 もう一線を越えている気がするが。
 彼女も自分が変なことを言っているのに気がついて、くすりと顔を綻ばす。
 僕もそれに釣られて唇が緩んだ。二人して、くすくすと忍び笑いをする。
 僕らの間には、愉しみが戻っていた。

*** 

 それから僕らは、店の外に出ることにした。コーヒーを飲んで少し用を足したくなった僕は、トイレを借りて放尿する。
 出てくると、彼女はレジでお会計を済ませていた。
 1740円。どう見ても、僕と彼女の注文した商品の合計の金額だった。

「えっ、そんな、大丈夫でしたのに。僕の分の料金、お支払いします」

 彼女は丁寧にそれを断った。財布を取り出そうとする僕を制止する。

「いえっ。誘ったの、私の方からですから。最初から、全部私が払うことにしてたんです」
「でも……」

 僕はしばらく悩んでいたが、埒が明かなさそうなので素直に厚意を受け取ることにした。
 会計を済ませた僕らは、喫茶店から出る。
 いい雰囲気の店だったな。
 機会があったら、また来てもいいだろう。そう思った。

「……それで、どこでヤるんです? 牧本さんの家、開いてたりするんですか?」
「ふふふ。ちょっと付いて来てください」

 自転車に乗る彼女。あのサドルの上に直に素肌が触れているんだよなと思うと、なんだか変な気分になる。
 しばらく自転車で、彼女の後を付いていく。ラブホテルにでも行くのだろうか。
 ある程度まで進むと、牧本さんがどこで性交をしようとしているのかがなんとなく分かった。
 そこは町の外れに位置する野山だった。
 秋が訪れ、木々の緑が次第にその色を乾いたものへと変えている途中。そんな山。
 人気は殆ど無く、青姦には確かにうってつけだった。
 コンクリートで舗装された道から外れ、山の中へと入っていく坂道へと僕らは登っていく。
 すぐにペースが落ちた僕に比べて、彼女はさほど問題無さそうに自転車を漕ぐ。
 さすが運動部所属。最近は身体をあまり動かしていないから、少し鈍っているとは聞いていたが、大して差はなさそうに見える。

「大丈夫ですかっ?」

 時々自転車を止めながら、彼女は僕を待っていてくれる。
 情けないなと自嘲しつつ、「平気ですよ。ありがとうございます」と返事をし、僕は彼女の後を付いていった。
 道なりに進んでいくと、「ここでやりましょう」と彼女は言う。
 降りた自転車を転がして、道から外れた藪の中へと入っていく。僕もそれに倣った。
 少し奥の方へと進む。林立した木々が闇を足元に落とし、周囲は薄暗い。
 足元に落ちている枯葉の感触が、靴の中からでも分かる。
 比較的日光が多い辺りまで来ると、そこで自転車を停めた。

「大丈夫です? ちょっと疲れました?」
「もう、大丈夫です。歩いたんで」

 そうは言っても、身体は温まっていた。

「ゴム、私の使いましょうか。薄い奴」

 彼女は鞄から箱を取り出す。中身を出して、包装を破いた。

「さっ、ちんちん出してください。私が付けてあげますよっ」
「ええ……お願いします」

 学生服のズボンのジッパーを下ろし、自分の肉棒を出す。そこに彼女が丁寧に避妊具を嵌めてくれた。以前よりも、付けるのが上手くなっている気がする。
 会わない間に練習していたのかなと僕は思った。
 今回僕らは、服を脱がず制服のままでセックスをすることにした。
 屋外で万一誰かに見つかった時のリスクを考えると、その方が何とかその場をごまかせそうだったからだ。
 寄って来る虫に刺されたくないというのもあるし、十月に入りかけていて少々肌寒かったのも理由の一つだった。

「へへへ……屋外セックスって、なんだか興奮しますよね。しかも、制服着てやるなんて、なんだか背徳的」

 牧本さんはそう言って笑う。
 正直、僕も情欲を誘われていた。

 彼女は尻を突き出して手ごろな木に片手を付き、もう片方の手で自分のスカートをぺらりと捲る。
 下着など身に付けていない下半身。恵まれた形を持ち、程よい肉付きのでん部と性器が露になる。
 挑発的な表情と仕草。僕の劣情を煽るその行動。

「ほらっ。もう濡れてますから、挿れちゃってください。ね?」

 久しぶりのセックスに、彼女は待ちきれないようだった。僕も同じだ。
 僕は尻を鷲づかみにする。柔らかい。握った指が、柔軟な肉に軽く沈み込む。
 久しぶりのバックの体位だ。初めてのセックスの時も、こうだったな。
 膣口に僕の肉槍を触れさせる。
 そして、少しずつ性器を沈めていった。

「んっ♡久しぶりの荻野さんのちんちん良いっ♡圧迫感あるっ♡」
「ううっ……」

 牧本さんの、以前よりも締め付けがよくなった気がする。久々の性交だからそんな気がするだけかもしれないが。
 自分でするオナニーなんかよりもずっと良い。
 思いっきり突き入れたくなるが、少し試してみたいことがあって、それを実行してみる。
 ペニスを最奥まで突き入れず、あえて膣の中間程度までで止めるのだ。
 そこを重点的に、断続的に擦り付けるように小刻みに往復させる。

「ふぇっ?」

 いつもと違うやり方に、牧本さんは振り向いて怪訝そうな顔をする。
 だがしばらくそうしていると、段々彼女の様子が乱れてきた。

「あっ♡っ、ぁ♡それ、それ駄目っ♡いやっ♡はぁ♡反則ですよっ♡」

 甘い嬌声が彼女の口から漏れる。腰に力が入れられなくなってきたようで、がくがくと脚が震えている。
 それでも彼女は、崩れ落ちないように耐えていた。

「んあっ♡何か変な、波、来てっ♡やっ♡どこでっ、そんなの覚えたんですかっ♡」
「貴女を、うっ、気持ちよくさせるにはどうすればいいのかなって、牧本さんの弱い部分を思い出しながら考えて、いた……んです」

 どろどろに溶けたかのような膣肉が、僕のことを締め付ける。正直、射精しそうだった。
 その欲求を、下半身に力を入れて我慢する。

「ねぇっ、んっ♡荻野さんっ」
「どう、しましたかっ?」

 牧本さんが僕に向かって振り返る。その整った顔には嬌笑を浮かべていた。

「久しぶりの私の身体、どうですか? 私のでも、ちゃんと感じられますっ?♡」
「ええっ。僕たち、本当に相性いいですね……っ。もう、出そうになってますっ」
「もうちょっとだけ我慢我慢♡もっとこの快楽に溺れましょうよっ♡先輩からのっ、命令ですよっ♡」

 そう言うことなら。僕は腰の動きを早める。一気に奥まで何度も突いたと思えば、先ほどと同じように膣の半ばを擦ることを繰り返してみる。

「ひゃっ♡激し、すぎっ♡そうですっ、その調子ですっ♡」
「痛くっ、無いですか?」
「全然っ、そんなことないですよっ」

 染み出した愛液は地面にまで零れ落ちているようだった。
 楽しんでいる所申し訳なかったが、僕はもうそろそろ限界だった。

「ごめんなさいっ……出そうだっ」
「いいですよっ♡ゴムあるし、子宮の近くで全部私の中に出しちゃってくださいっ♡」

 一番奥に突き入れる。根元まで。僅かな距離も開かないほどに。
 ペニスが痙攣する。一瞬自分の肉棒が大きく膨らんだような感覚がした直後、僕の獰猛な肉槍から大量の体液があふれ出た。
 彼女はそれを全て受け止めてくれる。

「ああああっ♡……っ♡はあぁぁぁ♡」

 久しぶりのセックス。彼女も僕も酔いしれて、理性が吹き飛びそうになっていた。
 牧本さんの胴体は半ば重力に負けかけて、今にも崩れそうになっていた。
 性器を引き抜く。癖でゴムの中身を確認すると、かなりの量の精液が詰まっている。
 異常に白く濁り、かなり粘りがある。
 これが彼女の中に出たら確実に妊娠するだろうなと思わせる、凶悪そうな子種汁だった。
 行為を終えた僕らは、ティッシュで性器の汚れを拭き取り、使用したゴムもろともティッシュで包んで僕の鞄の中に入れた。
 気がつくと、藪の中はかなり暗かった。スマホで時間を見ると、後十五分もすれば七時になるという時刻になっている。そろそろ帰らなくては。

「帰りますか。荻野さん」
「ええ。途中までは、一緒に行きましょう」

 僕らは山道まで出てくると、自転車に乗って山を下る。
 行きと違って降りるのは非常に楽だった。あっという間に麓まで辿り着く。
 そこからしばらく道路を進んでいくと、とある十字路で先導していた彼女が止まった。

「ここでお別れしましょう。今日は、本当に楽しかったです」
「ええ。僕も。忙しい中お時間を作っていただき、ありがとうございます」

 これでしばらくは彼女に会えなくなるかもしれない。
 お互いいつでも時間を作れるというわけではないのは僕らが良く知っている。

「……荻野さん。私のわがままに付き合ってくれて、本当にありがとう。また、いつかお互いに時間ができたら、会ってくれますか」
「……勿論ですよ。きっとですよ。約束です」

 彼女が笑む。闇の帳が下りてきた中でも、その表情がよく分かる。

「じゃあ、お別れですね。また、いつか」
「ええ。牧本さん。お元気で」

 名残惜しそうに、彼女が自転車を漕ぐ。
 僕はそれに背を向けて、正反対の道を進む。
 きっとまた、会えるはずだ。
 そう思いながら、僕は帰路についた。
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