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デキちゃったらどうする?
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「荻野さんっ♡荻野さんっ♡」
「牧本、さんっ」
僕らは名前を互いに呼びあい、性交に励む。
血管まで浮き出ていそうな僕の陰部を、ねっとりと絡みつく肉襞が揉みくちゃにする。
射精意欲を刺激する彼女の肉体。たまらなく抱き心地のいい彼女の女体。
「牧本さんっ、出るっ!」
「うん……! 出して……っ!♡一番奥で、赤ちゃんの部屋の近くでっ!♡」
込み上げてくる精液。一瞬の内に僕の先端からは子種がほとばしり、僕らの将来を護るために付けられた避妊具の中を満たしていく。
「ああああぁっ♡んんっ♡お腹、温かいっ♡」
恍惚とした表情。僕の精液を受け止めて、実に嬉しそうな顔をしている牧本さん。
0.01ミリの隔たりを持って、僕らは愛を確かめ合っている。
僕らはしばらく繋がって、交尾の余韻を楽しんでいたが、やがて彼女の側が腰を持ち上げ結合を解く。
姿を見せたゴムの中身は、先ほどに比べると流石に少なかった。
「もう三回目ですもんね……」
「ええ……」
僕らはあれから三回連続でセックスをした。
やりすぎだと言われるかもしれないが、高校生の精力を甘く見ないで貰いたい。
ゴムも結構消費してしまった。
ただ、流石にそろそろ限界だった。最初にやり始めた時は何百回でも出来るのではないかと思うほど情欲に突き動かされていたが、今は自分の肉体が「もう止めておけ」とストップを掛けているのが分かる。
これ以上やったら死にかねないなと思い、今日の所はもう終わりにしようと彼女に言う。
牧本さんも同じ意見のようだった。
時計を見ると、十七時だった。二時間ほど交尾をしていたことになる。
僕らは汗や涎や精液や、愛液やらいろんな液体で汚れていた。シャワーを浴びたい気分だ。
「身体、洗いに行きましょうか。服も着ないと、夏とは言っても流石に風邪引くかもしれません」
「そうですね。でも、その前にちょっといいですか?」
牧本さんが何か言いたげだった。なんだろう。
「……少し裸で一緒にお昼寝しませんか? 挿入は無しで。……駄目、ですか?」
「まあ、いいですけど。まずはゴム、外します」
手元にあったティッシュを二枚ほど取り出してから、ペニスに付けていた避妊具を外す。
それを先ほど取ったティッシュに包んで、丸めて傍に置いておいた。
まさか高校生の女の子の家のゴミ箱に使用済みコンドームを捨てていくわけにはいかない。
僕が持ち帰って、コンビニのゴミ箱にでも捨てておこう。
お互い自分の性器の汚れも拭き取り終えると、二人してベッドに寝そべる。
一人用のベッドは狭い。できるだけ身体を密着させる。
「なんかこうしてると、恋人みたいですね」
すぐ傍から牧本さんの声が聞こえる。
「セックスは恋人のすることじゃないんですか?」
「そうなんだけど……私が荻野さんに無理言って付き合わせてしまってるだけじゃないですか」
「嫌ではないですけどね」
「ねえ……もし君と私の子供がデキちゃったら、どうします?」
「どうって……」
ゴムを付けていても、避妊できる確率は百パーセントではない。
「え、まさか」
「いえっ、違うんです。たとえ話、ですよ。ちゃんと生理来てますし」
「……」
デキてしまったらの状況が、高校生の現在なのか、しっかり自立している頃なのかにもよる。
責任の取れない今子供を彼女が孕んでしまったら、人生設計が台無しになるだろう。
「……私、怖いことは怖いんですけど君の子供なら産んであげてもいいんですよ? 君のお嫁さんになってあげても。添い遂げてあげても」
そんなこと言われたら、その気になってしまう。本気で好きになってしまう。
牧本さんは身体の側面をベッドに預け、僕の方に正面を向ける。
黒真珠のように美しい目を細め、艶やかな唇をきゅっと引き締めている。
男を惑わす妖艶な表情。か細い声が、床を這う。
「君はどう思います? デキちゃったら、私と結婚したいですか……?」
「……う」
そんな顔されたら、押し倒したくなる。そんなこと言われたら、孕ませたくなる。
後も先も考えず、彼女のことをめちゃくちゃにしてしまいたくなる。
一生消えない印を、胎内に刻み付けてやりたくなる。
牧本さんは相変わらず、少し意地悪そうな表情を僕に向けている。その視線は真っ直ぐ僕の瞳を貫いていた。
逃げることが出来ないほどに、魔法に掛けられたかのように、僕の身体は凍り付いて固まっている。
「ぼ、僕は……その……」
言葉が出てこない。
口に出すと、それが確定してしまうような気がしたから。
永遠にも思える沈黙。蒸し暑い空気。
「ぷっ……ぷははははっ!」
突然牧本さんは破顔した。
あっけに取られて僕はその笑顔を見つめている。
「ごめんなさい、性格悪いこと訊いて。でも、荻野さんのことを無くてはならない大切な人だとは思ってるんです。不器用だけど、それを伝えたかった」
不器用すぎるだろ。
「ははは」と乾いた笑いがようやく僕の口から出る。
牧本さんはベッドから起き上がった。
まだ寝そべっている僕に、その華奢な腕を伸ばす。
「さっ、シャワー浴びて身体を清めましょうか」
***
湯を掛けて、肌の表面のベトベトを洗い流す。
シャンプーとリンスも借りて、髪の毛や身体を泡だらけにした。
背中を洗ってくれていた牧本さんが、突然僕に声を掛ける。
「ねぇっ、これ見てください」
首を動かし後ろを見ると、性器と一対の胸の中央にある蕾に白い泡を付けた彼女が立っていた。右手を腰にやって「どうだ」とでも言いたげな表情を僕に向けている。
その泡の下がどうなっているのかはよく知っていたが、すぐに掃える物で彼女自身の恥ずかしい場所を隠しているという行為に、正直興奮した。
「遊んでないで、身体洗いましょうよ」
「反応薄いですね~。ちょっとセクシーかなと思ったのに」
僕は身体の白い泡を洗い流す。牧本さんの身体も綺麗にすると、浴室から脱衣所に出て二人でタオルで身体を拭いた。
服に着替え、ドライヤーで髪を軽く乾かすと、僕らの身支度は完了した。
「さて……僕はそろそろ帰ります。勉強もしなくちゃいけないんで」
「泊まっていってもいいんですよ? 少なくとも明日の夜までは、親は絶対に帰ってこないんで」
名残惜しそうな表情を牧本さんが向ける。僕もそうしたかったが、自分の親になんて説明すればいいのか案が浮かばない。
友達の家に泊まることになったと適当な友人の名前を話したところで、その友達の家に電話されたらまずいことになる。
断っておいたほうがいいだろう。
「止めておきます。またいつか、機会があったら泊まらせてもらいます。今日はありがとうございました」
「分かりました。また、会いましょうね。絶対ですよ」
玄関を出ると、彼女は見送るためか後ろをついて来た。駐輪してあった自分の自転車に乗る間も、牧本さんは僕の姿を見つめている。彼女の少し短めの髪が、どこからか吹いてきた弱い風に儚く揺れた。
準備が完了した。後はペダルを漕いで、家に帰るだけ。
「じゃあ、また今度。さよなら、牧本さん」
「ええ。事故を起さないように、気をつけて帰ってくださいね」
会釈すると、僕は夕暮れに向けて自転車を走らせた。
鞄の中には使用済みのコンドームが、ティッシュに包まれて入っている。
途中でコンビニのゴミ箱にそれを捨てていこう。
「……結局、好きって言えなかったな」
彼女からは告白めいたもの……にしては過激な気がしたが。があったが、僕は自分の気持ちを話せていなかった。
はっきりと「愛してる」と言えるのはいつになるだろうな。
そう思いながら、僕は帰路についた。
「牧本、さんっ」
僕らは名前を互いに呼びあい、性交に励む。
血管まで浮き出ていそうな僕の陰部を、ねっとりと絡みつく肉襞が揉みくちゃにする。
射精意欲を刺激する彼女の肉体。たまらなく抱き心地のいい彼女の女体。
「牧本さんっ、出るっ!」
「うん……! 出して……っ!♡一番奥で、赤ちゃんの部屋の近くでっ!♡」
込み上げてくる精液。一瞬の内に僕の先端からは子種がほとばしり、僕らの将来を護るために付けられた避妊具の中を満たしていく。
「ああああぁっ♡んんっ♡お腹、温かいっ♡」
恍惚とした表情。僕の精液を受け止めて、実に嬉しそうな顔をしている牧本さん。
0.01ミリの隔たりを持って、僕らは愛を確かめ合っている。
僕らはしばらく繋がって、交尾の余韻を楽しんでいたが、やがて彼女の側が腰を持ち上げ結合を解く。
姿を見せたゴムの中身は、先ほどに比べると流石に少なかった。
「もう三回目ですもんね……」
「ええ……」
僕らはあれから三回連続でセックスをした。
やりすぎだと言われるかもしれないが、高校生の精力を甘く見ないで貰いたい。
ゴムも結構消費してしまった。
ただ、流石にそろそろ限界だった。最初にやり始めた時は何百回でも出来るのではないかと思うほど情欲に突き動かされていたが、今は自分の肉体が「もう止めておけ」とストップを掛けているのが分かる。
これ以上やったら死にかねないなと思い、今日の所はもう終わりにしようと彼女に言う。
牧本さんも同じ意見のようだった。
時計を見ると、十七時だった。二時間ほど交尾をしていたことになる。
僕らは汗や涎や精液や、愛液やらいろんな液体で汚れていた。シャワーを浴びたい気分だ。
「身体、洗いに行きましょうか。服も着ないと、夏とは言っても流石に風邪引くかもしれません」
「そうですね。でも、その前にちょっといいですか?」
牧本さんが何か言いたげだった。なんだろう。
「……少し裸で一緒にお昼寝しませんか? 挿入は無しで。……駄目、ですか?」
「まあ、いいですけど。まずはゴム、外します」
手元にあったティッシュを二枚ほど取り出してから、ペニスに付けていた避妊具を外す。
それを先ほど取ったティッシュに包んで、丸めて傍に置いておいた。
まさか高校生の女の子の家のゴミ箱に使用済みコンドームを捨てていくわけにはいかない。
僕が持ち帰って、コンビニのゴミ箱にでも捨てておこう。
お互い自分の性器の汚れも拭き取り終えると、二人してベッドに寝そべる。
一人用のベッドは狭い。できるだけ身体を密着させる。
「なんかこうしてると、恋人みたいですね」
すぐ傍から牧本さんの声が聞こえる。
「セックスは恋人のすることじゃないんですか?」
「そうなんだけど……私が荻野さんに無理言って付き合わせてしまってるだけじゃないですか」
「嫌ではないですけどね」
「ねえ……もし君と私の子供がデキちゃったら、どうします?」
「どうって……」
ゴムを付けていても、避妊できる確率は百パーセントではない。
「え、まさか」
「いえっ、違うんです。たとえ話、ですよ。ちゃんと生理来てますし」
「……」
デキてしまったらの状況が、高校生の現在なのか、しっかり自立している頃なのかにもよる。
責任の取れない今子供を彼女が孕んでしまったら、人生設計が台無しになるだろう。
「……私、怖いことは怖いんですけど君の子供なら産んであげてもいいんですよ? 君のお嫁さんになってあげても。添い遂げてあげても」
そんなこと言われたら、その気になってしまう。本気で好きになってしまう。
牧本さんは身体の側面をベッドに預け、僕の方に正面を向ける。
黒真珠のように美しい目を細め、艶やかな唇をきゅっと引き締めている。
男を惑わす妖艶な表情。か細い声が、床を這う。
「君はどう思います? デキちゃったら、私と結婚したいですか……?」
「……う」
そんな顔されたら、押し倒したくなる。そんなこと言われたら、孕ませたくなる。
後も先も考えず、彼女のことをめちゃくちゃにしてしまいたくなる。
一生消えない印を、胎内に刻み付けてやりたくなる。
牧本さんは相変わらず、少し意地悪そうな表情を僕に向けている。その視線は真っ直ぐ僕の瞳を貫いていた。
逃げることが出来ないほどに、魔法に掛けられたかのように、僕の身体は凍り付いて固まっている。
「ぼ、僕は……その……」
言葉が出てこない。
口に出すと、それが確定してしまうような気がしたから。
永遠にも思える沈黙。蒸し暑い空気。
「ぷっ……ぷははははっ!」
突然牧本さんは破顔した。
あっけに取られて僕はその笑顔を見つめている。
「ごめんなさい、性格悪いこと訊いて。でも、荻野さんのことを無くてはならない大切な人だとは思ってるんです。不器用だけど、それを伝えたかった」
不器用すぎるだろ。
「ははは」と乾いた笑いがようやく僕の口から出る。
牧本さんはベッドから起き上がった。
まだ寝そべっている僕に、その華奢な腕を伸ばす。
「さっ、シャワー浴びて身体を清めましょうか」
***
湯を掛けて、肌の表面のベトベトを洗い流す。
シャンプーとリンスも借りて、髪の毛や身体を泡だらけにした。
背中を洗ってくれていた牧本さんが、突然僕に声を掛ける。
「ねぇっ、これ見てください」
首を動かし後ろを見ると、性器と一対の胸の中央にある蕾に白い泡を付けた彼女が立っていた。右手を腰にやって「どうだ」とでも言いたげな表情を僕に向けている。
その泡の下がどうなっているのかはよく知っていたが、すぐに掃える物で彼女自身の恥ずかしい場所を隠しているという行為に、正直興奮した。
「遊んでないで、身体洗いましょうよ」
「反応薄いですね~。ちょっとセクシーかなと思ったのに」
僕は身体の白い泡を洗い流す。牧本さんの身体も綺麗にすると、浴室から脱衣所に出て二人でタオルで身体を拭いた。
服に着替え、ドライヤーで髪を軽く乾かすと、僕らの身支度は完了した。
「さて……僕はそろそろ帰ります。勉強もしなくちゃいけないんで」
「泊まっていってもいいんですよ? 少なくとも明日の夜までは、親は絶対に帰ってこないんで」
名残惜しそうな表情を牧本さんが向ける。僕もそうしたかったが、自分の親になんて説明すればいいのか案が浮かばない。
友達の家に泊まることになったと適当な友人の名前を話したところで、その友達の家に電話されたらまずいことになる。
断っておいたほうがいいだろう。
「止めておきます。またいつか、機会があったら泊まらせてもらいます。今日はありがとうございました」
「分かりました。また、会いましょうね。絶対ですよ」
玄関を出ると、彼女は見送るためか後ろをついて来た。駐輪してあった自分の自転車に乗る間も、牧本さんは僕の姿を見つめている。彼女の少し短めの髪が、どこからか吹いてきた弱い風に儚く揺れた。
準備が完了した。後はペダルを漕いで、家に帰るだけ。
「じゃあ、また今度。さよなら、牧本さん」
「ええ。事故を起さないように、気をつけて帰ってくださいね」
会釈すると、僕は夕暮れに向けて自転車を走らせた。
鞄の中には使用済みのコンドームが、ティッシュに包まれて入っている。
途中でコンビニのゴミ箱にそれを捨てていこう。
「……結局、好きって言えなかったな」
彼女からは告白めいたもの……にしては過激な気がしたが。があったが、僕は自分の気持ちを話せていなかった。
はっきりと「愛してる」と言えるのはいつになるだろうな。
そう思いながら、僕は帰路についた。
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