ホームセンター

高橋松園

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「ここ」という場所

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「そう、安倍くんっていうの。貴方に、ここの場所について理解できるかしら・・・」と、斎藤さんは話始めた。

「まず、時間の概念について言うけど、ここでは時間は人によって違うの。今が夜の人も居れば、朝の人も居る。それぞれの時間で動いているから、時計が指している時間は意味が無いわ。わかった?

だから貴方の時間は、貴方だけの時間なのよ。人と接していて、時間を共有しているように思えても、同じ時間を生きているわけじゃない。

人にはそれぞれ体内時計があるし、人生の長さも太さも違うのは分かるわよね。だから、違って当然なの。

それに、人は、自分の思い込みの世界で生きているの。だから、あなたと、私は今、『ここ』という時間で同じ体験をしているように思えるけれど、個々に体験をしていることは違うのよ。理解してもらえたかしら・・・。

貴方が『ここ』に居る理由は、本当のところ、私には、分からないから、『ここ』がどんな場所で何をする所かを教えるわ。

まず、『ここ』の場所のことだけど、県内でも特に縛りがきつい地域なの。

モルモットタウンとでも言うかしら。

ありと、あらゆる実験を人間で試しているってことね。

世界中がコントロールされているし、日本全土が実験対称だけど、その中でも、日本全国に数箇所設けられていて、特別管理体制を強いられている場所のうちの一つね。

ここの場所を地図で見てもらうとわかるけど、四方を川と海で囲まれていて、何かあっても簡単に隔離できるようになっているの。

このエリアの住人は、このエリアに住所を移す前から、『ここ』で何らかの実験をされるために、『ここ』での生活を決められた人たちが集まっているの。

『ここ』で何かがあった場合は、直ちに海の底に沈められるようになっているのよ。沈め方は至って簡単。

地盤沈下と津波を起こすだけだから。

もちろん、本人達は、実験目的で自分達が『ここ』に住んでいるとか『ここ』にある企業や何らかの施設に通っている、なんて誰も知らない。

個人的な理由で引越しをして来たと思っている人や、生まれながらに『ここ』に住んでいるという人もいる。

転勤して来て、一定期間を過ごして出て行く人もいる。

その中には、特別に研究対象として、その後も引き続き、追跡調査をされる人もいる。

薬剤関係は全体的、全ての年齢で実験されるし、体の部位を提供するのは、基本的には還暦過ぎた人間の担当なの。切り刻まれて、練習台にさせられるのよ。

でも、全ての還暦を過ぎた人間が切り刻まれるわけじゃないし、手術のされ方も人による。

もちろん、若いうちから試されることになる人間もいる。

頭を押えられるのは、何世代か続いてマークされている人や、身内にノーベル級の頭脳を持った人や知能指数が高い人たちね。

だけど、まるでおもちゃみたいに徹底的に試されるのは、陰になった人たち。

仮に失敗して気がふれても、その人の人格が、めちゃくちゃになっても、39法で守られるようになっているし、壊れちゃっても受け皿も用意されている。

ひどい話しでしょ。

こんな小さなエリアに大きな総合病院が四つもあって、他にも精神科の専門病院もある。

表向きは最高に手厚くもてなされているように思える地域だけど、このエリアの外を含めた、区全体の広さに対して、老人用の介護施設はたった一つしか無いの。病院のベッドの数や介護する人間も少ないわ。

このエリアのシステムでは、実験に失敗して、一時的に施設に入れられても、すぐに亡くなるようになっていて、ベッドの回転率が良いから、介護施設は基本的にはいらないのよ。

そういう場所にある、ホームセンターが『ここ』のホームセンター ホーム センター ホーリー・ホーリーの ざんまい店なのよ。

ここまでで、質問はあるかしら。」と斉藤さん。

「つまり、ここに居る僕は、僕の時間とイメージの中で生きていて、だから、僕の時間が夜を指していれば夜だってことですよね。そして、僕が感じていること、イメージしていることは、あなたとは同じじゃない・・・。

それから、この場所は、特殊な人体実験をしている地域の中にあるホームセンターだってことなのですね。

そして、何か重大なことが起きた場合は、このエリアごと海の下に沈むようになっている・・・なるほど・・・まるで小説か何か、映画の世界の話しのようです・・・。

ところで、具体的にはどんな人体実験をしているのですか。もちろん、身の保障はされているというか、実験は本人の同意を得ているのですよね。」と、僕はお金が無かった頃に、大学の研究室で血液を売ったり、人体実験に参加したりしたときのことを思い出しながら訊いた。

「今、あなたが何を思ったか分かるわ。ドラマか映画の見すぎで、私の頭はいかれているって思ったでしょ?でも、私が、今話していることはドラマでも、映画でもなく、妄想でもなく、夢でもない。事実なのよ。

だいたい、頭が可笑しくなった人間が言うことって、ほぼ同じようなことだってことが既に変なのよ。

みんな同じ実験をされて気が変になったから言えることなの。

そして、私が話していることは、現実に今、『ここ』で起こっていることなの。

あなたの思うような、そういう、人権を認められた公平な実験とは違うわ。仮に、このことに対して不服に思って表ざたに公表しても無駄よ。」と斉藤さん。

「斉藤さんが言う、公平な実験とは違うという意味は、どういうことですか。このエリアに住んでいる人は、本人達の同意無しに、実験されるために選ばれ、ここで生活しているという意味が僕にはわかりません。」と僕が少し興奮気味に混乱して訊くと、

斉藤さんは「ここには人権は無いのよ。家畜同然。だからモルモットタウンとも呼ばれている。

誰も自分が本当のところ、何の目的で、何をされているのか、はっきりとわかっている人は居ないわ。実験材料になっていることすら知らない人が殆どよ。」と返事した。

「馬鹿なことを言わないで下さい。そんなことが許されるはずが無いじゃないですか。そんなことが現実に行なわれていたら、人権問題になりますよ。誰も斉藤さんが言っているようなことを問題にしたことは無いじゃないですか。」と僕が言う。

「誰もこのことを公にすることは出来ないのよ。仮に貴方がこのことを公に公表しようとしたとしても、貴方が話すことは、既にどこかの誰か、貴方以外の体験として作り上げられていたり、語られていたりしていて、全て摩り替えられ塗り替えられている。だから、貴方が何を言っても、貴方は嘘つきかキチガイ扱いを受けて精神科に送られるだけになる。

自分は実験材料になっていると思っている人も、表向きは正当に行われていることだから、ありがたいとすら思う人もいる。

そして、周りの人間も医学や未来の発展のためにはある程度仕方がないと思っているのよ。

貴方も、そういう人間の一人何じゃない?」と斉藤さんも少し興奮しながら僕の顔を見つめた。

僕は、この話は、ラーメンを食べながら聞くような話じゃないと思い、食べかけのラーメンを目の前にして、箸を置いた。

僕は、斉藤さんをなんとなく見ながら、しばらく黙って考えた。二人の間に、沈黙が続き、その沈黙を破るかのように、突然、話に割って入る声がした。

「さぁさぁ、安倍さん、食べて、食べて、ラーメンが伸びちゃいますよ。オッオー」とフクロウに似た小太りで黒縁眼鏡をした鈴木氏がフクロウのような動きで顔を並行に右にそらし声をかけて来た。

「承諾なしで行われる人体実験の話しを、ラーメンを食べながら出来るほど、僕の心臓は強くないです。もしも、それが事実なら、そんな、気持ちの悪いことが街ぐるみで行われているということも知らなかったし、それが医学と未来の発展の為には仕方が無いなんて、僕には許せないし、今まで、考えたこともなかったです。

だけど、どうやって本人の承諾なしに、そんなことが出来るのですか。

そんな事をしたら、それは犯罪じゃないですか。斉藤さんは、誰もこのことを公表することは出来ないって言うけれど、多くの人が関わっているなら、必ず何処かしらから話は出るというか、問題になるはずです。

精神疾患扱いだけじゃ済まされないはずですよ。

それなのに、今まで、誰一人、訴えた人も居なければ、ニュースや新聞に載ったことだって無いじゃないですか。

僕が知らなかっただけかも知れないけど、それは都市伝説やトンでも話の類ってことじゃないですか。」と僕は少し動揺しながら斉藤さんに再び訊いた。

そこに、先ほど、ラーメンを運んで来た同じ店員が、トレイに何かを乗せて、「お待たせ致しましたー」と、こちらに向かって声をかけてきた。

店員がテーブルに辿り着くまで、僕たちの間には、またしても沈黙が続いた。

店員がテーブルに近づき「焼き蕎麦をお持ちしました。どなたの前に置けば宜しいでしょうか。」と言うと、

フクロウに似た小太りで黒縁眼鏡をかけた鈴木氏がそっと手を持ち上げ、五本の手の指をピンと伸ばして意思表示した。

それに気がついた店員は、鈴木氏のテーブルの前に、トレイに乗っている食べ物を置いた。

それは焼き蕎麦だった。

いつの間に頼んでいたのか、フクロウに似た小太りで黒縁眼鏡をした鈴木氏が注文していた焼き蕎麦が届いたのだ。

店員は焼き蕎麦をテーブルの上に置くと、「毎度、ありがとうございましたーまた、よろしくお願い致します。」と言い、さっさとその場を離れていってしまった。

「スウィ ありがとうございます。オッオー」と鈴木氏は店員に返事をしながら、割り箸を手にとって、二つに割り、「二十日はサービスディだから、百円になるのですよ。ほほほほほっ オッオオッオオ」と言い、さっそく食べ始めた。

数分なのか、しばらくの間、沈黙が続く。

鈴木氏が焼き蕎麦を勢いよく食べる音だけが、室内には響いていた。

誰も、会話の続きを始めようとはしなかった。僕は斉藤さんを見る。斉藤さんはいつの間にか、ラーメンの汁まで飲干して食事を終えていた。

目だけキョロキョロと動かしている。黙って事の成り行きを伺っている様子だった。

斉藤さんは、斉藤さんを見る僕の視線に気づいて僕を直視した。そして、最初に口を割って話し始めた。

「えーっと、どこまで話したかしら。そうそう、安倍ちゃんの質問ね。どうやって本人の承諾なしに実験が出来るかってことよね。

安倍ちゃん、あなた、特殊検査研究所の検査員だって言ったけど、何の検査をどんな目的でしているの?」と斉藤さんが訊く。

「僕の主な業務は、所に持ち込まれた、何らかの物体を検査することです。どんな成分で出来ているのか、細菌の種類とかそういうものを分析するのです。どこから持ち込まれた物質なのか、目的は何かについては、検査員は聞かされません。教えないこと、知らないことがルールです。それは、公に情報が漏れないために、限られた人しか知ることが出来ないようになっているからです。

それから、検査員が変な憶測をもってことにあたると、間違った考えを導き易いため、そのもの以外の情報は伏せておく方が正確で正しい答えを得られるからで、持ち込まれた細菌を採取した場所などの情報は伏せられているのです。

僕は、今までに、世の中で話題になるようなことに繋がりそうな成分分析をした記憶は一度も無いです。守秘義務があるのでこれ以上はいえません」と僕が答える。

「ふぅーん。なるほどね。じゃあ、ケムトレイルは聞いたことあるかしら。ケミカルトレイルの略語だけど・・・・」と斉藤さんが訊く。

「ケムトレイル・・・・ケミカルトレイル・・・ですか・・・なんでしょうか、全く、分からないです」と僕が言う。

「貴方、本当に知らないの。だって、持ち込まれた細菌とかを調べているのでしょ。知らないなんて、信じられないわ。知らないで、その仕事に関わっているなんて、鈍感っていうか、無知すぎよ。」と斉藤さんは言い、深く息を吸い吐き出すと、たて続けに、「ケミカルトレイルは有害な化学物質を航空機で意図的に地上に散布することよ。それによって世の中に病気を蔓延させようとしているの。最近では、新型インフルエンザで大量に人が死んでいるわ。人類を攻撃しているって言う人もいるけど、私は単純に利益を追求しているに過ぎないって思っている。大量のタミフルが売れるしね。利益を目的とした、国境を越えた闇の力が存在しているのよ。

宇宙開発だってそうよ。あたかも宇宙人がいるように仕向けて、地球上の人間達を納得させ、莫大な資金を宇宙開発に投資させている。

戦争だって同じ。国同士の戦いが起きるように闇の力は仕向けているの。そんなに難しいことじゃないわ。

馬鹿なトップを持ち上げて、頭を取上げて、コントロールすればいいだけ。闇の力だって証拠はどこにも残らないし、出てくることも無い。そして、不可思議なことは全て神か宇宙人の責任にしてしまえば良いだけだもの。

神を崇める組織や宗教団体にとっても利益に繋がるありがたいことだしね。彼らを信じる人間が増えれば増えるほど、そこに繋がる闇の力も増すことになるし、信者の望みを叶えやすくもなるのよ。

それから、力のある国家は、この闇の力のシステムに便乗したり、やり方を真似たりもしているわ。だから、この組織は野放しにされているの」と斉藤さんが言う。

「斉藤さんは、僕がここにいる理由は、その団体と何かしらの係わりがあるからと言いいたいのでしょうか。それに、頭を取上げてコントロールするってどういうことですか。マインドコントロールのことですか。僕もマインドコントロールされているとでも思っているのですか?」と僕が訊く。

「少なくとも、あなたの経済はこういったシステムによって支えられているのよ。別に、貴方だけじゃないわ。地球上の全ての人間が、この闇のシステムによって生かされているとも言えるのよ。

この街はね。昔は海の底だったの。それを開拓して、田んぼにして、畑にして、そして人が住めるようにしたの。随分と長い間、何の産業も無く、お金を生み出す手段は農業と機織だけだった。

日本って言う国が、そもそも資源が無い国だったから、この街に限らず、どこでも同じような状況だったと思うわ。そして、戦後、人間は資源になるということに目を付けた人たちが、このシステムを利用することを考え出し実践したのよ。

貧乏人はね。食べるために、最後の手段として自分の体を売るの。

いつの時代だって同じよ。それが街ぐるみで行われた。迷信まがいのキチガイ染みたことだって沢山行なわれたのよ。

特に、ここのエリアは、元々は海の底だったから、地盤を上げる為にあらゆることが試されたわ。一体、何体の人柱が眠っていることかわかりゃしないわ。

他にも政府からの闇の命令によってね。戦争中に実験されていた恐ろしいことをここに持ち帰ったりもしている。もちろん、知っていたのは一部の人間だけ・・・そして、ここに医療系の大学病院や多くの病院施設が出来たの。

ここって、病院が多い地域だと思わない?

都市伝説って言う人もいるけど、戦時中に東京の初台に軍事病院があったの。戦後もそこは病院として残ったけど、その病院の地下では、恐ろしい実験が繰り広げられていたっていう噂があるわ。今は、その場所には大きなビルが出来て、通信関係の会社が入っている。現在は民間企業になっているけど、以前は国営だった企業と繋がっている企業ばかりが使用しているビルよ・・・国中の裏の電波を押えているって噂もあるの」と斉藤さんは言う。

そして、僕の反応を窺うように口を閉ざした。僕は返事に困り何も言わない。斉藤さんは、再び、話し始めた。

「あら、ごめんなさい。安倍ちゃんの質問から脱線しちゃったわね。安倍ちゃん、あなたがマインドコントロールされているかいなか、頭を取られるってどういうことかってことね。

安倍ちゃんは、ここにくる前にMRIに入らなかったかしら。頭をガッリと抑えるには、あなたの脳みその形が分からないと駄目なのよ。

形がわかれば、それはそのまま、バーコードリーターとして登録されるの。そして、あなたは商品になる。

もちろん、病院側はこのことを知らないわ。彼らは、ただ単に検査するだけだから、データーに侵入して情報を抑えるのは闇の力の組織がすることね。

その後は、衛生を通じて、追跡されることになる。そして、どんな価値があるのか、どんな価値を生み出すのか見定められることになるの。

もちろん、頭に送った刺激に対して、どんな行動を取り、反応を見せるかも調べられ、脳の研究データーに使用されることになる。

彼らにとって都合の良い情報を頭に叩き込んで、信じ込ませ操ることも簡単に出来る。

頭は元々、シナプス間に一定の電流が流れることで動いているでしょ。

最近では、おでこから発せられる電気的周波数を拾って遠隔操作したりすることも出来るようになっているし、心の中で、テレビをつけるとでも思えば実際につけることも出来るから、その逆も可能なの。

そして、偶然を装いテレビや,ネットを通じて見せる映像や、真夜中にあなたの頭の中に情報を入れ込むだけで、あなたの意思を誘導することだって出来るの。

頭の中で考えていることを、ある程度は言語化できるようになっているし、あなたが目で見ている映像は、そのまま、モニターに映し出すことだって出来る。

だから、誰かがあなたの頭の形をバーコードリーターにしていれば、あなたの動きはわかってしまうのよ。

頭に流し込まれる情報は、人に寄って、違うものもあれば、一律同じものもある。同じDNAを持ち、脳の構造が類似している人間は同じ情報を共有することになる。但し、同じリズムで脳内に影響を与えても、脳の作りによって反応は違うから同じ情報でもそれを言語化し、表現しようとしても、全く同じものにはならないの。類似したものになるだけね。

それで、世の中には類似したものが蔓延しているってわけ。それを確かめるのも彼らの実験の1つみたいよ。

この実験の中には関係妄想や誇大妄想に対しての反応を見ることも含まれているから、敏感な人は直ぐに、大騒ぎを始めて、「鬱」や「精神疾患」の扱いで病院に行くことになる。

この裏には、そういう病変を直す方法の研究というのも含まれているの。元々、頭の良い子達に仕掛けることだから、自己解決力が非常に高い人達ばかりなの。

だから、新たらしい治療法を生み出すときにも試されたりするわ。いくつかのプロジェクトがあって、その内容によって頭に入れられる内容も違って来るみたいだけど、どんなプロジェクトを組まれるかは、その人間の可能性や先祖からの因縁がある事柄などで決まるみたいね。」と斉藤さんは言った。

「何故、そんなことをする必要があるのですか、そんなこと誰にするのですか」と僕が訊く。 

「闇の組織が、なぜ、そんなことをするのかって言うと、行動を起こさせ、世の中に波風を起こさせるのが目的なのよ。その波が経済を生むの。

頭を取られ実験される人は、いくつかのパターンがある。国家プロジェクトとして、日本の全ての人間に対して行うのは一般的に厄年と言われている年の人達や、更年期の年頃の人達ね。

その他には、産まれる前から選ばれた人。お腹に居る時から、ある程度は国によって洗脳されている人たちよ。そういう人は、頭を構われても、ひどい拒絶反応を示さないけどね、人によっては構われすぎて本当に、キチガイになる人もいる。

頭の脳幹、つまり古い記憶がつまっている海馬を攻撃して、人間の本能をむき出しにさせるのも目的のひとつなのよ。

ここのホームセンターで働く何人かには過度にストレスを与え続けてどんな反応、つまり行動を取るか実験されている人も居る。

ストレスの種類は色々ね。その反応に対して回りはどんな行動を取るのかということも試されているの。」と斉藤さん。

「そんな酷いことを本当にしているのですか」と僕。

「闇の力の住人達にとっては、社会貢献を通じて、世の中に波風をたてない人間が一番、害なの。だから、そういう人間は、頭を構われて、犯罪をさせられたり、体の部分を提供させられたり、一番、ひどい扱いを受けることになる。

もちろん、頭を構われても理性でコントロールできるわよ。だから、その人間の理性がどこまで本能と感情を押さえることが出来るのか、正しい行いを出来るか試しているともいえる。

他にも、闇の団体の資金源に協力しない人間もひどい扱いを受けるわ。これは、公に行われている募金のことよ。

私の知り合いでも、毎年、送られてくる赤い糸の募金に一銭たりとも支払いをしなかった人がいるの。

その人が住んでいた家は、その募金活動を支える社員が建てて住んでいた家で、闇の力で救済された人だけが安く住める家だった。その人は、そこに引っ越してから、十三年間、一度も赤い糸の募金に支払いをしなかった。もちろん、支払いを出来るだけの収入はあったのよ。そして、十三年目の夏に、腸を差し出すことになってしまったわ・・・これは腸を差し出すような状態になるような生活に十三年かけて誘導されたから起きたことなの。

誘導の仕方はその人間のレベルによる。一番、低レベルはテレビやラジオを使うの。目や耳から入る刺激で頭の中を作り変える。シナプスのリズムを変えてね。頭の経路をコントロールする。

救いは規則正しい生活と適度な運動、そして新聞。テレビやラジオで薬の宣伝をしていたら、その前後は薬が良く売れるように、ウィルスがばらまかれ、体の部位が痛むように、頭の中のシナプスの動きが構われる。

新聞の広告欄には、それをお知らせしている内容が記載されているの。

頭への攻撃はテレビやラジオからだけじゃないから防ぎようが無いけど、新聞に医療系の宣伝が載っていたら、その新聞が配信されているエリアには行かないことよ。

体に気をつけてね・・・。

これは一部のエリートが身を守る為にしていることなの。彼らは医療系の広告が載っている新聞が家に届いたら、それから数日は、別荘やホテルで生活するわ。こうやって新聞を暗号として使用している。

話しはちょっと逸れるけど、新聞に『刀売ります』とか『刀買います』って書いてあるのを見たこと無い?あれは殺し屋の求人らしいわ。
今度、よく見てみてね。で、ね。

話しを戻すと、他にも、何の社会貢献もしないで、納税しない人間や国民の税金で生活している人間もその対象になる。

それはもう、見るも無残なひどい扱いを受けることになるの。でも、その後は、救済されるの。ひどい扱いの中でも、人体実験に協力する人達、つまり、体を実験台として提供して、病気を乗越えた人には新たなステージが用意される。

闇の力がすることの中には、救済システムというものもある。救済される対象者は各団体によっても様々よ。」と斉藤さん。

「それは、どんな団体ですか。団体というからには表立った行動が分かるのですよね」と僕。

「一番、この世界で有名な団体組織は『髭おやじプロジェクト』と呼ばれているものね。元々は髭男爵と言われて、貴族の間で密かに起こったことなの。国のために戦って命を落とした人達の子孫、つまり、戦争孤児とその一族の中で貧しい生活環境から抜け出せない人を救うのが目的で始まった。負のサイクルからの救出とも言うわね。彼らには率先して知識とチャンスを与え、努力できる環境も与える。もちろん、本人達に気がつかれないように、接触無しにね。恩恵に授かった人達はご先祖様のお陰だと思うわけ。そして、信仰心にも目覚めるし、ご先祖様に対する供養や国も大切にするようになる。

他にも、『髭おやじプロジェクト』とは関係なく、世の中に何かしら貢献して出ようとしている人には、サポートするシステムもある。

だって、お金を産み出す金の卵かも知れないものね。但し、ただ、じゃない。

頂いたものは返さないとね。最後には、自分が得た利益に対して恩恵をささげて死ぬようにはなっているの。」と斉藤さん。

「どんな風に恩恵を返すのですか」と僕が訊く。

「薬を販売して利益を得て生計を立てていた人間は、薬の実験台になるし、外科医は後輩育成の為に、切り刻まれて死ぬことになる。もちろん、自分の得た利益以上の貢献をしている場合は、違う関わり方をすることになる。闇の組織は死ぬまで付きまとって、生きているうちに、全てをこの世の中に置いていかせる。

骨の髄まで吸い取るわ。それから、何事も、やり過ぎる人間は、それはそれで害とみなされて、蝕まれる対象になるのよ。

闇の力の組織には一定のルールがあって、多分、それは長年培われた、哲学や宗教から生まれた価値観や、陰陽の世界を織り交ぜたものだと思う」と斉藤さんは一気に話して僕を見た。


斉藤さんの話は、僕にとっては初めて聞くことばかりで、現実離れしているように思えた。

ただ、僕は、MRI検査について少し心に引っかかった。

話そうか迷った。斉藤さんがここまで話してくれたのだから、僕の知っていることで話せることは話したほうが良いように思った。

僕は斉藤さんと鈴木氏に「MRIには半年前に・・・朝、目眩がして、立ち上がれなくなったことがありました。その後、頭痛がひどかったので、念の為に、救急外来で頭を検査してもらったことがあります。結果は何の異常もなかったのですが・・・」と話した。

「それ、それよ。いきなり目眩がしたって言ったでしょ。どんな状況で目眩がしたの。」と斉藤さんは訊く。

「僕は、毎朝、目が覚めるとユーチューブで音楽を聞きます。その日は、仕事が休みだったのですが、いつもの通り、朝5時に起きて、ユーチューブで毎朝聞いている曲がかかる映像にアクセスしました・・・その日の朝は、その映像の前に流れる広告がいつもと違っていました。

その広告の画面には二人の若い男性が向き合って座っていました。二人が向き合って何か話しをしている場面が始まり、その男性の1人が、『恨むなら僕たちを恨まないで、FJテレビを恨んでよ』って言ったのです。それを聞いた直ぐ後に、クラッと目眩がして、その後、強い吐き気を感じて、僕はその場に倒れ込みました。

いつものCMと違っていたので良く覚えています。

それで、僕は脳溢血か何か、良くないことが自分の身に起きたと思い、しばらく横になりました。体調が少し戻って来て・・・でも、何かあったら困ると思い、その後、病院に連絡をして状況を話したら、緊急外来に来て欲しいって言われたので、行って検査を受けたのです。」と簡単にその時の状況を話した。

「耳石をやられたのね」と斉藤さんは言った。

「やつらが、よくやる手よ。ターゲットに接触せずに病院に送り込む方法なの。ターゲットの生活習慣を調べ上げて、音が出るものに侵入して耳石を壊す為の超音波を発生させるの。そして、ターゲットの耳石を割り、めまいを起こさせる。

耳石は直ぐに再生するし、割と頻繁に崩れるものだから、これが何者かによって意図的にされたことだとは思われないですむしね。

大抵の人が、自分に不味い状況が起きているって思って病院に行くことになるわ。

そして、必ず頭の検査をする・・・やっぱり、あなた、頭を抑えられているわね。

頭を抑える方法は他にもあるけど・・・他に何か思い当たることはない?頭を取られると、次から、次へと変なことが身の回りで起こると思うの。

やつらは、ちゃんと乗っ取られているか、試すのよ。

対外、この時点で気が変になって病院にいくことになるの・・・。

例えば、あなたしか知らない情報やあなたが考えていたことや話したことを数日のうちにテレビやメディアを通じて、あなたが知ることになったり・・・まるで、盗聴されているか盗撮されているって思えるような数々の出来事が起こったりするの。

それに彼らは痕跡を残すつもりなのか分からないけど、プロジェクト番号を示すの。あなたが69番という番号札を渡されたみたいに・・・どう?身に覚えあるかしら。

それから、FJテレビとあなたとの関わりは何かあるの?『FJテレビを恨んでよ』って言われたのでしょ。そういわれて、そうだと思い込み、テレビ局を攻撃する人も実際に居るのよ。確かに彼らも、というよりテレビの視聴率を上げるために制作会社によって仕組まれている数々の出来事もあるから、叩かれる要因があるのかもしれないけど・・・」と言った。

僕は、少し考えてから「僕は、テレビをあまり見ないし、通勤途中に朝夕とラジオを聴く程度で、メディアに接触することは、ほぼ無いので分からないです。仕事以外で外に出かけることもあまり無いので世の中で何が起こっているかも殆ど知らないです。仕事以外で出かけることがあっても、たまに、山に登る程度です。」と答えてから、突然、数字のことを思い出した。

「そう言えば、僕のカルテの番号・・・そう、カルテの番号が69番でした。

頭のMRIを取った後に、耳の調子が悪くなって、耳の検査もしたのです。違う病院で見てもらったのですが、その時の番号は609でした。

やっぱり、6と9が使用されている番号でした。偶然とはいえ、ここの時計の修理待ちの番号と同じですね。

69番って何か意味があるのですか。

それから、さっき、頭を押えるにはMRIの他にも方法があるって言っていましたが、どんな方法があるのですか。」と僕が訊く。

「そう。番号が同じだったの。もちろん、偶然じゃないわ。多分、あなたのプロジェクトの番号のことですもの。

あなたに付けられた数字には意味があるの。頭を押える方法は、MRIの他に、カプセルもある。

ナノサイズのカプセルを飲むことで、そのカプセルを頭の脳幹に侵入させ、模様体をコントロールするの。そして、睡眠に侵入し刷り込みをするのよ。イスラエルで開発された化学兵器よ。

このカプセルを脳幹に定着させる為には一定期間の時間が必要なの。その間に、国内の病院で何らかの処置をされて体外へ排出されたら困るから、本人に気がつかれないように拉致して、国外へ連れ出し、一般人の医師が手を出せないような環境で、何らかの方法で体調不良にさせ、それを救う形で薬を与えて、薬に仕込まれたナノサイズの化学兵器を体内に取り込ませ、脳内に送るの。そうやって、頭を抑えるのよ。

ただ、この薬を飲まされると、その後、何年も後になって、睡眠障害を引き起こし易くなり、それが原因で運動や筋肉を動かす能力に支障をきたし易くなるという副作用があるの」と斉藤さんは言った。

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私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

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