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「新潟港警察署で取り調べされたわよ。いやになっちゃう」
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岡田警部補が取調室を出て、捜査一課の部屋に戻ると、山田警部がデスクの椅子に座っていた。他に出勤している者もいて、捜査一課のデスクはいつもより賑わっていた。皆、朝の万代橋での大捕り物の情報をいち早く聞き駆け付けたのだ。
「口を割ったか・・・」山田警部が訊いた。
「いいえ、まだです。アルコール検査は白でしたが、尿検査はこれからなので薬物かどうかは、まだ分からないですね。今、取調室で伊藤さんが聞き取りしてます。」と岡田警部補が返事した。
新潟港警察署に、大竹、梶原の両巡査等からの応援要請を受けた時、たまたま、夜勤で控えていたのが伊藤と岡田を含む、数名の警察官達だった。そして、彼らが、万代橋に駆け付け、事の次第が起きた。
万代橋の犯人逮捕後、伊藤と岡田、両警部補は、大竹、梶原の両巡査から、犯人を引き継ぎ、新潟港警察署へ連行し取り調べを始めていた。
「しかし、聴いたところによると、奴は女なんだって。信じられないな。悪いが、どこから、どう見ても女には見えんわ。」と山田警部が訊いた。
「そうなんですよ。私たちも驚きました。これが、手元に所持していた、免許書とパスポート、本籍地が記載された住民票です。それに、船舶免許書も持っていました。」と岡田警部補は手に持っていた免許書類とパスポートに数枚の書類を見せた。
「書類に記載されている記事は、確かに女になってます。性別に関しては、本人も口頭で女だと言っています。戸籍上も女と記載されていますが、本当に女なのか、どういうことなのか・・・」と岡田警部補。
「性同一性障害の可能性もあるし、書類に記載されている本人ではない可能性もある。他人のパスポートと戸籍を何らかの方法で手に入れて成りすましているってことかもな。しかし、慎重に事を運ばないと、後から問題になるかもしれんぞ・・・。戸籍も女で、本人も女だと言って、偽っているように思えるが、我々が見慣れていないだけで、外国にはデカい女っていうのもいるからな・・・。ここで脱がせて確かめるわけにもいかん。それにしても、デカい。筋肉は良く発達しているし、男にしか見えん」と山田警部。
「手元の書類には、国籍は日本と書かれ、本籍は魚沼・・・六日町となってます。名前は齋藤 彗神子(さいとう えみこ)。1966年6月6日生まれ。ってことは、今日が誕生日で、満年齢で五十三歳、数えだと54歳ってことです。さいとうのさいは刀にYに氏に示すを使用するさいで、とうは藤の花の藤と同じです。名前の漢字がちょっと、変わってまして、彗星(すいせい)の彗の字に神の子で彗神子(えみこ)と読むようです。」と岡田が言う。
「なんだか、当て字みたいな名前だな。年齢の割にはキラキラネーム。今日が誕生日で、53歳か。私と同じ年とは・・・服装が派手だから若く見えるな。それに、国籍は日本か・・・。さっき、裏から見たが、てっきり外国人だと思ったよ。しかし、それだけのものを全て所持していたってことは、高跳びするつもりだったのかな」と山田警部が訊く。
「本人が言うには、パスポートの更新手続きをする為に新潟市に来たらしいのです。これから、裏を取りますが、職業は糸魚川漁業組合に所属している、船乗りと言ってました。今日、新潟市に来たのも自分のクルーザーで来たらしく、竜が島に停泊しているそうです。普段は佐渡沖の大和堆付近で漁業をしているらしく、数日後に、出航する予定で個人でも漁船を持っているそうですが、海洋に出る時は糸魚川にあるナカタ海洋漁業のお世話になっているとも言ってました。」と岡田が言う。
そこに、伊藤警部補が現れた。
「山田警部、いらしていたんですか。」と伊藤。
「ああ、今、岡田から話を聞いていた。で、どんな感じだ。長引きそうかい?。奴さんはまだ、取調室にいるのか」と山田警部が訊く。
「はい、一旦、取り調べは終えて、今は、高良田(たからだ)が見ていますが、監視のもと、朝飯を食っています。少し話したいこと、とお願いがありまして、居ていただいて、丁度良かったです。」と伊藤。
「アルコール検査は白で薬物検査は検査中だという話は聞いていますか?」と伊藤。
「ああ、その件は聞いている。奴さん、女なんだって、しかも、船乗り・・・」と山田警部。
「はい。しかも、今日は誕生日で53歳。何の為に、万代橋の上で大声を出していたのかは、答えないんですが、パスポートの更新手続きをしに新潟市に来たと言っていました。普通に考えれば、薬の受け渡しか何かが、万代橋の上、または下で行われたようにも思えるのですが、今回の騒動時の橋の下の状況確認が出来ていないので、他にも人が居たのかどうか・・・橋の上の状況は、暗闇でしたが、防犯カメラの画像解析で確認が取れます。しかし、橋の下は、あいにく、防犯カメラが付いておらず、録画されていないため確認が取れません。」と伊藤が言う。
「それは、橋の上から下に居る何者かに、薬を投げて渡した可能性があるというとだな。」と山田警部。
「確証はないですが、その可能性もあると思います。朝方に万代橋に居た理由について、本人からの自供がないもので・・・。大声を張り上げていたのは、何かトラブルがあって、馬頭しあっていたのか、物だけもって逃げられて、それに対して、奇声を上げていたのか・・・でなければ、あの状況は説明がつかないかと・・・」と伊藤。
「聞くところによると第一目撃者は、万代橋交番の者らしいが、そのものは、橋の下の状況には気が付かなかったのか・・・」と山田警部。
「はい、気が付かなかったようです・・・配属したばかりの新人なもので、目の前の状況で手一杯だったようです。」と伊藤。
「そうか、仕方ないとは言い難いが、どうしてみようもないな。何か証拠が無いか橋周辺を隈なく探せ。」と山田警部。「はい。この後、私も今一度、現場向かいますが、すでに残して来た警官で調べています。」と伊藤。
「ところで、お願いとはなんだ・・・。何かトラブったのをごまかせは無しだぞ。」と山田警部が言う。
「山田警部。私が今まで、そんなお願いしたことないじゃないですが、嫌だな~。お願いというのは、齋藤 彗神子のDNA鑑定と、それから、まだ、送致も決まっていないのですが、精神鑑定もさせて欲しいのです。」と伊藤。
「精神鑑定?・・・刑事責任能力があるかどうかを調べようということか?。しかし、能力鑑定は検察側が起訴するかどうか判断する際に参考として行う起訴前鑑定で、拘留期間中に半日から一日で行われる簡易鑑定と鑑定留置期間を別途に設けて行う起訴前本鑑定、他に起訴後に裁判所の判断で行う公判鑑定が主にあるが、我々、警察が送致前にすることではないぞ」と山田警部が言う。
「はい。それは、十分に分かっているのです。ただ、プロファイリングができる精神科医、または心理学者に近日中に斎藤 彗神子を診てもらいたいと思うのです。」と伊藤が言う。
「それは、送致してからでは遅いのか」と山田警部。
「はい。もしかしたら、今回の事件では送致できない可能性があるからです。そうしたら、斎藤 彗神子は国外へ逃亡してしまいます。実は、別件で引っ掛かる事件があるのです。その事件も含め、斎藤 彗神子を洗い直したいのです。」と伊藤。
「別の事件とは何だ・・・」と山田警部。
「昨年の10月にあった糸魚川での事件です。」と伊藤。
「あぁ・・あの事件か・・・。あの事件の犯人は大男と誰もが思っていから、その線でしか調べなかった・・・。うぅ~ん・・・確かに、あの事件の犯人が齋藤 彗神子のような女なら、可能性はあり得る。そうだな、大女の可能性もあるわけだ。わかった。わかったが、送致するか決めるのに48時間しかない。もう朝の9時だから、残すところ、約44時間だぞ。間に合うかどうか、急ぎ、DNA鑑定をしてもらいなさい。それから、新潟大学の医学部に連絡してプロファイリングができる心理学者か精神科医を紹介してもらい、早急に齋藤 彗神子を診てもらうんだ。」と山田警部が言う。
「了解しました。私は、万代橋周辺の見直しと、精神鑑定の件で動きます。」と伊藤が言う。
傍で聞いていた、岡田は「私は齋藤 彗神子の裏を取りに六日町と糸魚川に行ってきます。」と言った。
「岡田は、六日町と糸魚川には若いのを連れていけ。夕方に一度、連絡を入れろよ。場合によって打ち合わせをするからな」と山田警部が言う。
「了解しました。」と岡田は頷きながら答えた。
岡田警部補は、自分のデスクに座り、話を聞いていた若い警察官の一人に「おい、中西、今日は俺に付き合え」と、六日町と糸魚川に共に行きこの件を調べる人間として声を掛けた。
「はい。了解しました。」と中西は言い、椅子から立ち上がると椅子に掛けておいた上着に手を通した。
中西 淳(なかにし じゅん)は、警察大学を卒業後、新潟港警察署に勤務して5年目で、今年、28歳になる。身長は178㎝、中肉中背だが、柔道で鍛え上げた体に付いた、筋肉と骨格は服の上からでもよく分かるほど整えられていて見事な作りだった。そして、顔つきは俳優のような印象を受けた。さわやかで男前であったが、まじめさゆえか、髪型は短髪に刈り上げられ、前髪を七三分けにしヘアームースでがっちりと固めた風にもなびかないヘルメットのようなスタイルだった。
「じゃ、また、夕方に・・・。レクサス、借りて行きます。」と岡田は言い、中西と二人で新潟港警察署の表玄関を出ると、目の前の駐車場に止めてあった、トヨタのレクサスRX450h グレーの覆面カーに乗った。運転するのは中西だった。中西は少し浮かれた。こんなことでもないと、このクラスの車には乗れない。中西は飛ばし屋だった。事件のことより、この車を飛ばせることにわくわくした。
レクサス(LEXUS)のSUVモデル。LX/RX/NX/UXの四車種ある。車名にはクロスオーバーを表す「X」がついている。その中で、今回、乗る車はレクサスRX。「RX」は「Radiant Crossover」に由来している。「R」は「Radiant=輝く、光を放つ」、「X」は「Crossover=交差を意味するX」という意味だ。高級セダンの快適性と乗り心地、SUVの機能性を兼ね備えている。中西の憧れの車だ。去年、2018年に新潟港警察署で購入し、主に長距離を乗る時や追跡調査をする時に使われるが、新潟市での使用頻度は低く、基本的にお偉いさんしか乗れない代物のため使用されている回数も少なかった。その為、新品同様で、真新しい皮の匂いが鼻に付いた。まさに、高級車だ。中西のハンドルを握る手に力が入った。岡田は中西のそんな浮かれた気持ちに気が付く余裕もなく、事件について考えていた。岡田が助手席に座ると、さっそく二人は、齋藤 彗神子の本籍地の六日町へ向けて、新潟港警察署を後にした。時計の針は9時30分を回ったところだった。
「口を割ったか・・・」山田警部が訊いた。
「いいえ、まだです。アルコール検査は白でしたが、尿検査はこれからなので薬物かどうかは、まだ分からないですね。今、取調室で伊藤さんが聞き取りしてます。」と岡田警部補が返事した。
新潟港警察署に、大竹、梶原の両巡査等からの応援要請を受けた時、たまたま、夜勤で控えていたのが伊藤と岡田を含む、数名の警察官達だった。そして、彼らが、万代橋に駆け付け、事の次第が起きた。
万代橋の犯人逮捕後、伊藤と岡田、両警部補は、大竹、梶原の両巡査から、犯人を引き継ぎ、新潟港警察署へ連行し取り調べを始めていた。
「しかし、聴いたところによると、奴は女なんだって。信じられないな。悪いが、どこから、どう見ても女には見えんわ。」と山田警部が訊いた。
「そうなんですよ。私たちも驚きました。これが、手元に所持していた、免許書とパスポート、本籍地が記載された住民票です。それに、船舶免許書も持っていました。」と岡田警部補は手に持っていた免許書類とパスポートに数枚の書類を見せた。
「書類に記載されている記事は、確かに女になってます。性別に関しては、本人も口頭で女だと言っています。戸籍上も女と記載されていますが、本当に女なのか、どういうことなのか・・・」と岡田警部補。
「性同一性障害の可能性もあるし、書類に記載されている本人ではない可能性もある。他人のパスポートと戸籍を何らかの方法で手に入れて成りすましているってことかもな。しかし、慎重に事を運ばないと、後から問題になるかもしれんぞ・・・。戸籍も女で、本人も女だと言って、偽っているように思えるが、我々が見慣れていないだけで、外国にはデカい女っていうのもいるからな・・・。ここで脱がせて確かめるわけにもいかん。それにしても、デカい。筋肉は良く発達しているし、男にしか見えん」と山田警部。
「手元の書類には、国籍は日本と書かれ、本籍は魚沼・・・六日町となってます。名前は齋藤 彗神子(さいとう えみこ)。1966年6月6日生まれ。ってことは、今日が誕生日で、満年齢で五十三歳、数えだと54歳ってことです。さいとうのさいは刀にYに氏に示すを使用するさいで、とうは藤の花の藤と同じです。名前の漢字がちょっと、変わってまして、彗星(すいせい)の彗の字に神の子で彗神子(えみこ)と読むようです。」と岡田が言う。
「なんだか、当て字みたいな名前だな。年齢の割にはキラキラネーム。今日が誕生日で、53歳か。私と同じ年とは・・・服装が派手だから若く見えるな。それに、国籍は日本か・・・。さっき、裏から見たが、てっきり外国人だと思ったよ。しかし、それだけのものを全て所持していたってことは、高跳びするつもりだったのかな」と山田警部が訊く。
「本人が言うには、パスポートの更新手続きをする為に新潟市に来たらしいのです。これから、裏を取りますが、職業は糸魚川漁業組合に所属している、船乗りと言ってました。今日、新潟市に来たのも自分のクルーザーで来たらしく、竜が島に停泊しているそうです。普段は佐渡沖の大和堆付近で漁業をしているらしく、数日後に、出航する予定で個人でも漁船を持っているそうですが、海洋に出る時は糸魚川にあるナカタ海洋漁業のお世話になっているとも言ってました。」と岡田が言う。
そこに、伊藤警部補が現れた。
「山田警部、いらしていたんですか。」と伊藤。
「ああ、今、岡田から話を聞いていた。で、どんな感じだ。長引きそうかい?。奴さんはまだ、取調室にいるのか」と山田警部が訊く。
「はい、一旦、取り調べは終えて、今は、高良田(たからだ)が見ていますが、監視のもと、朝飯を食っています。少し話したいこと、とお願いがありまして、居ていただいて、丁度良かったです。」と伊藤。
「アルコール検査は白で薬物検査は検査中だという話は聞いていますか?」と伊藤。
「ああ、その件は聞いている。奴さん、女なんだって、しかも、船乗り・・・」と山田警部。
「はい。しかも、今日は誕生日で53歳。何の為に、万代橋の上で大声を出していたのかは、答えないんですが、パスポートの更新手続きをしに新潟市に来たと言っていました。普通に考えれば、薬の受け渡しか何かが、万代橋の上、または下で行われたようにも思えるのですが、今回の騒動時の橋の下の状況確認が出来ていないので、他にも人が居たのかどうか・・・橋の上の状況は、暗闇でしたが、防犯カメラの画像解析で確認が取れます。しかし、橋の下は、あいにく、防犯カメラが付いておらず、録画されていないため確認が取れません。」と伊藤が言う。
「それは、橋の上から下に居る何者かに、薬を投げて渡した可能性があるというとだな。」と山田警部。
「確証はないですが、その可能性もあると思います。朝方に万代橋に居た理由について、本人からの自供がないもので・・・。大声を張り上げていたのは、何かトラブルがあって、馬頭しあっていたのか、物だけもって逃げられて、それに対して、奇声を上げていたのか・・・でなければ、あの状況は説明がつかないかと・・・」と伊藤。
「聞くところによると第一目撃者は、万代橋交番の者らしいが、そのものは、橋の下の状況には気が付かなかったのか・・・」と山田警部。
「はい、気が付かなかったようです・・・配属したばかりの新人なもので、目の前の状況で手一杯だったようです。」と伊藤。
「そうか、仕方ないとは言い難いが、どうしてみようもないな。何か証拠が無いか橋周辺を隈なく探せ。」と山田警部。「はい。この後、私も今一度、現場向かいますが、すでに残して来た警官で調べています。」と伊藤。
「ところで、お願いとはなんだ・・・。何かトラブったのをごまかせは無しだぞ。」と山田警部が言う。
「山田警部。私が今まで、そんなお願いしたことないじゃないですが、嫌だな~。お願いというのは、齋藤 彗神子のDNA鑑定と、それから、まだ、送致も決まっていないのですが、精神鑑定もさせて欲しいのです。」と伊藤。
「精神鑑定?・・・刑事責任能力があるかどうかを調べようということか?。しかし、能力鑑定は検察側が起訴するかどうか判断する際に参考として行う起訴前鑑定で、拘留期間中に半日から一日で行われる簡易鑑定と鑑定留置期間を別途に設けて行う起訴前本鑑定、他に起訴後に裁判所の判断で行う公判鑑定が主にあるが、我々、警察が送致前にすることではないぞ」と山田警部が言う。
「はい。それは、十分に分かっているのです。ただ、プロファイリングができる精神科医、または心理学者に近日中に斎藤 彗神子を診てもらいたいと思うのです。」と伊藤が言う。
「それは、送致してからでは遅いのか」と山田警部。
「はい。もしかしたら、今回の事件では送致できない可能性があるからです。そうしたら、斎藤 彗神子は国外へ逃亡してしまいます。実は、別件で引っ掛かる事件があるのです。その事件も含め、斎藤 彗神子を洗い直したいのです。」と伊藤。
「別の事件とは何だ・・・」と山田警部。
「昨年の10月にあった糸魚川での事件です。」と伊藤。
「あぁ・・あの事件か・・・。あの事件の犯人は大男と誰もが思っていから、その線でしか調べなかった・・・。うぅ~ん・・・確かに、あの事件の犯人が齋藤 彗神子のような女なら、可能性はあり得る。そうだな、大女の可能性もあるわけだ。わかった。わかったが、送致するか決めるのに48時間しかない。もう朝の9時だから、残すところ、約44時間だぞ。間に合うかどうか、急ぎ、DNA鑑定をしてもらいなさい。それから、新潟大学の医学部に連絡してプロファイリングができる心理学者か精神科医を紹介してもらい、早急に齋藤 彗神子を診てもらうんだ。」と山田警部が言う。
「了解しました。私は、万代橋周辺の見直しと、精神鑑定の件で動きます。」と伊藤が言う。
傍で聞いていた、岡田は「私は齋藤 彗神子の裏を取りに六日町と糸魚川に行ってきます。」と言った。
「岡田は、六日町と糸魚川には若いのを連れていけ。夕方に一度、連絡を入れろよ。場合によって打ち合わせをするからな」と山田警部が言う。
「了解しました。」と岡田は頷きながら答えた。
岡田警部補は、自分のデスクに座り、話を聞いていた若い警察官の一人に「おい、中西、今日は俺に付き合え」と、六日町と糸魚川に共に行きこの件を調べる人間として声を掛けた。
「はい。了解しました。」と中西は言い、椅子から立ち上がると椅子に掛けておいた上着に手を通した。
中西 淳(なかにし じゅん)は、警察大学を卒業後、新潟港警察署に勤務して5年目で、今年、28歳になる。身長は178㎝、中肉中背だが、柔道で鍛え上げた体に付いた、筋肉と骨格は服の上からでもよく分かるほど整えられていて見事な作りだった。そして、顔つきは俳優のような印象を受けた。さわやかで男前であったが、まじめさゆえか、髪型は短髪に刈り上げられ、前髪を七三分けにしヘアームースでがっちりと固めた風にもなびかないヘルメットのようなスタイルだった。
「じゃ、また、夕方に・・・。レクサス、借りて行きます。」と岡田は言い、中西と二人で新潟港警察署の表玄関を出ると、目の前の駐車場に止めてあった、トヨタのレクサスRX450h グレーの覆面カーに乗った。運転するのは中西だった。中西は少し浮かれた。こんなことでもないと、このクラスの車には乗れない。中西は飛ばし屋だった。事件のことより、この車を飛ばせることにわくわくした。
レクサス(LEXUS)のSUVモデル。LX/RX/NX/UXの四車種ある。車名にはクロスオーバーを表す「X」がついている。その中で、今回、乗る車はレクサスRX。「RX」は「Radiant Crossover」に由来している。「R」は「Radiant=輝く、光を放つ」、「X」は「Crossover=交差を意味するX」という意味だ。高級セダンの快適性と乗り心地、SUVの機能性を兼ね備えている。中西の憧れの車だ。去年、2018年に新潟港警察署で購入し、主に長距離を乗る時や追跡調査をする時に使われるが、新潟市での使用頻度は低く、基本的にお偉いさんしか乗れない代物のため使用されている回数も少なかった。その為、新品同様で、真新しい皮の匂いが鼻に付いた。まさに、高級車だ。中西のハンドルを握る手に力が入った。岡田は中西のそんな浮かれた気持ちに気が付く余裕もなく、事件について考えていた。岡田が助手席に座ると、さっそく二人は、齋藤 彗神子の本籍地の六日町へ向けて、新潟港警察署を後にした。時計の針は9時30分を回ったところだった。
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