16 / 40
占いなんて信じない 16話
しおりを挟む「これ、彼女の物じゃないんですか?」
…まぁ、そうなるよな普通。
というか妖精もそこら辺の価値観同じなんだな、なんて思う。
俺から受け取った物、綺麗な花柄の刺繍が散りばめられた女性用のサンダルを眺めながら、彼女はそう言ってなんだか申し訳ないような表情をしていた。
「違う違う。今はいないよ」
「あ、なら元カノの」
「まぁね、家に置いていったもの捨てれなくて残ってるんだ」
「履いちゃっていいんですか?」
「捨てるつもりだから全然いいよ。逆に元カノの物でごめんな?今日は靴も買わないとね」
そう言って俺も彼女と同じように申し訳なさそうな顔をすれば、レイナは困ったように小さく笑った。
そして「ありがとうございます」とそれを受け取ればそのまますぐに履いてくれている。
「よかった、ピッタリ」
「…でも高いですね、この靴」
「妖精ってヒールがある靴履かないの?あ、そもそも靴を履かないのか」
「妖精界では履かないです。でも前に人間界に住んでいた時、人間の姿でいる時はスニーカーを履いていました」
「そっか。人間の女の子はこういった靴も履く人が多いかな」
「そうなんですね」
サイズはぴったり。
けれど履き慣れていないその靴にレイナは不安そうな顔をする。
そんな彼女をまじまじと見ればとても似合っていて可愛かった。
白いワンピースに映える鮮やかな花柄のサンダル。ヒールが高いそれは彼女のスタイルを更に良く見せている。
コツコツコツ、と音を鳴らしてその場で靴を慣らすように足踏みをすれば、レイナの表情は少し明るくなった。
「大丈夫?歩けそう?」
「はい、なんとなく歩き方わかりました。可愛いですね、花柄」
妖精といえどレイナもやはり女の子。
靴に慣れたのか不安はなくなってきたのだろう。
くるくるとその場で踊るように自分の姿を確認する彼女は、オシャレをして楽しそうにする普通の女の子のようだった。
やはり「可愛い」という感覚は世間一般の女の子たちと変わらないらしい。
目の前のレイナの様子が面白いし可愛くて、今日は彼女に色んな洋服を買ってあげたくなってしまう。
こんなにも誰かに何かをしてあげたくなるなんていつぶりだろうか。
久しぶりのそんな感覚は不思議と自然に出てくるのだった。
「あと、これ」
「なんですか?」
「えっと、服の中に着るものだよ」
「…服の中に?」
「ブラジャーの代わりに」
「あー、前に言ってたブラジャーですか」
そう言って、もう一つ持ってきた物を彼女に渡した。
カップ付きのキャミソールだ。勿論これも元カノの物になる。
先程サンダルを探した時に見つけたのでついでに持ってきたのだった。
…なぜなら、レイナはブラジャーをつけていなかったからだ。
レイナが初めて俺の部屋に泊まった日、彼女が風呂に入った後濡れた服を洗濯してやろうと見てみればそこにはワンピースとパンツだけが置いてあって、ブラジャーの姿がどこにもなかったのだ。
そして、一応その後妖精の下着事情を聞いてみれば「ブラジャー、ですか?」と、やはりその存在は知らないらしい。
そんなわけで人間の下着事情を説明すれば、休みの日に買いに行くことを約束したのだった。
妖精の姿ならともかく、人間の姿でノーブラは一緒に生活する上で大変色んな意味で困るからな。
…とまぁ、そんなことを思い出してこちらも探して持ってきたわけである。
ちなみに他人の下着は流石に嫌だろうと思い、まだ抵抗感のなさそうなキャミソールをチョイスしたわけだ。
「よし、行こうか」
「はい」
そんなこんなでやっと準備が整って外に出れば、そこにはやはり「穴」はなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる