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第5章:新聞社のポールの話
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バーバラに連絡が取れないので、とりあえずマリアは地元の警察に電話をした。ことの経緯を話すと警察はすぐに来てくれることになった。マリア一人ではピーターの遺体を降ろすことが出来ないため、申し訳ないと思ったが子供たちをリビングに留まらせることで精いっぱいだった。
ピーターの亡骸の近くにバーバラからの手紙が落ちていた。それを見た時、マリアは背筋が凍った。
======================
マリアは私たちの秘密に気づいたかもしれない。そうなれば、あなたも私も豚箱行きよ。
マリアを殺すしかないと思う。それ以外に方法が思いつかないわ。
あなたのことは愛してる。帰ったらいつも通り楽しみましょう。
======================
『秘密ってどういうこと?私を殺すって?冗談じゃない。でも何故ピーターは自殺したの?何がなんだか・・・』
マリアは不安と恐怖と混乱の入り混じる中で、とりあえずこの手紙は自分のポケットにしまった。そうこうしているうちに警察が到着し、ピーターの遺体を下ろした。一件は自殺ということで処理され、バーバラと連絡の取りようがないことを告げると、帰ってから葬式の手配をしてくれと頼まれた。
警察が帰った後、玄関のベルが鳴った。バーバラが帰ったかと思い一瞬寒気がしたが、玄関の向こうから聞こえたのは男の声だった。
『マックインさん、マックインさん?ポールです。ポール・ステファンです。』
声の主はピーターが広告を出すために訪れた、新聞社のテンガロンハットの男ポールステファンだった。ポールはバーバラが出てくると思っていたのかマリアを見て少しびっくりした様子だったが、遠慮もなく家の中に入ってきた。
『マックインさんはもう仕事ですか?警察とすれ違ったけど何かあったんですか?広告の件、まだ原稿をもらってなかったんで、こっちから取りに来たんですよ。あ、コーヒーは砂糖なしでお願いします。』
コーヒーを出すとは言ってないにも拘らずズケズケと話を進めるポールにマリアは少しためらった様子で『それが、ピーターさんが亡くなりまして・・・』そう告げると、テンガロンハットを脱いでポールはどういうことなのかとマリアに尋ねた。
『そうだったんですか・・・せっかくの契約が・・あ、いや、それは本当に残念な話ですね。で、タイミングよく奥さんも旅行に出てしまったと。で、あなたは?ベビーシッター?なんだそういうことか!もう決まっちゃったのか!』
ポールはピーターの一件よりも広告契約が無くなったという事がハッキリしたことに残念がっていた。ここに来た理由を失ったポールはブラックコーヒーを飲みながら、マリアを舐めるような目つきで見回した。
マリアはポールに対して警戒はしていたものの、ちょうどいいと思ってあの話を切り出してみた。
『あの、ピーターさんとバーバラさんについて何か知っていることはありませんか?昔何かあったとか、なんでもいいんです。ご家族について何か知っている事とかありませんか?』
マリアを厭らしい目で見ているポールに対して、そのくらいしか価値がないと言わんばかりに侮蔑の口調で尋ねた。するとポールはこんなことを話し始めた。
『マックインさんは昔から、代々大きな農場を経営してましてね。先代が無くなってすぐにピーターさんが責任者になったんですが、その前からうちの新聞社とは取引がありまして。ほら、農場のアルバイトとか肥料の買い付けとか、よく広告を出してもらうことが多かったんで贔屓にしていただいているんですよ。』
『家族という点で言えば、ピーターさんとバーバラさんとの間には娘さんがいるんですよ。確かシェリーっていう名前だったと思います。僕はあんまり会った事は無かったんですが、2年前に見かけたのが最後でしたねぇ。シェリーは、右手の甲に切り傷があって失語症を患っていること以外は、奥さんに似てきれいな顔立ちのお子さんでしたよ。』
過去形だったことがマリアは気になったので深堀して聞いてみた。
『あぁ、実はね1年前の話なんですが、シェリーが居なくなっちゃったんですよね。ご夫妻が仕事に行ってる間はおとなしく自宅で留守番出来るいい子だったので、どこかに出かけてしまったことは考えにくいと。でも近くは森があったり川があったり、子供が行方不明になる要素は揃ってるから、現状では行方不明ってことで落ち着いてるんですよ。夫妻もすごく心配しているんですが、どこかで生きてていつか帰ってくると思っているみたいですよ。まぁ、警察の捜査としては事実上打ち切りになってますがね。』
マリアは悟った。
恐らくシェリーの失踪にはマックイン夫妻が何らかの形で関わっているのだろうと考えられた。また、バーバラが残した手紙の『私たちの秘密』という点を考えれば、あまり良くない形で関わっているのではないだろうかと考えるのは自然なことだ。子供たちの朝食があるからとポールを追い返すと、マリアはバーバラが帰ってくるだろう1週間の間にその秘密を探ることを決意した。
ピーターの亡骸の近くにバーバラからの手紙が落ちていた。それを見た時、マリアは背筋が凍った。
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マリアは私たちの秘密に気づいたかもしれない。そうなれば、あなたも私も豚箱行きよ。
マリアを殺すしかないと思う。それ以外に方法が思いつかないわ。
あなたのことは愛してる。帰ったらいつも通り楽しみましょう。
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『秘密ってどういうこと?私を殺すって?冗談じゃない。でも何故ピーターは自殺したの?何がなんだか・・・』
マリアは不安と恐怖と混乱の入り混じる中で、とりあえずこの手紙は自分のポケットにしまった。そうこうしているうちに警察が到着し、ピーターの遺体を下ろした。一件は自殺ということで処理され、バーバラと連絡の取りようがないことを告げると、帰ってから葬式の手配をしてくれと頼まれた。
警察が帰った後、玄関のベルが鳴った。バーバラが帰ったかと思い一瞬寒気がしたが、玄関の向こうから聞こえたのは男の声だった。
『マックインさん、マックインさん?ポールです。ポール・ステファンです。』
声の主はピーターが広告を出すために訪れた、新聞社のテンガロンハットの男ポールステファンだった。ポールはバーバラが出てくると思っていたのかマリアを見て少しびっくりした様子だったが、遠慮もなく家の中に入ってきた。
『マックインさんはもう仕事ですか?警察とすれ違ったけど何かあったんですか?広告の件、まだ原稿をもらってなかったんで、こっちから取りに来たんですよ。あ、コーヒーは砂糖なしでお願いします。』
コーヒーを出すとは言ってないにも拘らずズケズケと話を進めるポールにマリアは少しためらった様子で『それが、ピーターさんが亡くなりまして・・・』そう告げると、テンガロンハットを脱いでポールはどういうことなのかとマリアに尋ねた。
『そうだったんですか・・・せっかくの契約が・・あ、いや、それは本当に残念な話ですね。で、タイミングよく奥さんも旅行に出てしまったと。で、あなたは?ベビーシッター?なんだそういうことか!もう決まっちゃったのか!』
ポールはピーターの一件よりも広告契約が無くなったという事がハッキリしたことに残念がっていた。ここに来た理由を失ったポールはブラックコーヒーを飲みながら、マリアを舐めるような目つきで見回した。
マリアはポールに対して警戒はしていたものの、ちょうどいいと思ってあの話を切り出してみた。
『あの、ピーターさんとバーバラさんについて何か知っていることはありませんか?昔何かあったとか、なんでもいいんです。ご家族について何か知っている事とかありませんか?』
マリアを厭らしい目で見ているポールに対して、そのくらいしか価値がないと言わんばかりに侮蔑の口調で尋ねた。するとポールはこんなことを話し始めた。
『マックインさんは昔から、代々大きな農場を経営してましてね。先代が無くなってすぐにピーターさんが責任者になったんですが、その前からうちの新聞社とは取引がありまして。ほら、農場のアルバイトとか肥料の買い付けとか、よく広告を出してもらうことが多かったんで贔屓にしていただいているんですよ。』
『家族という点で言えば、ピーターさんとバーバラさんとの間には娘さんがいるんですよ。確かシェリーっていう名前だったと思います。僕はあんまり会った事は無かったんですが、2年前に見かけたのが最後でしたねぇ。シェリーは、右手の甲に切り傷があって失語症を患っていること以外は、奥さんに似てきれいな顔立ちのお子さんでしたよ。』
過去形だったことがマリアは気になったので深堀して聞いてみた。
『あぁ、実はね1年前の話なんですが、シェリーが居なくなっちゃったんですよね。ご夫妻が仕事に行ってる間はおとなしく自宅で留守番出来るいい子だったので、どこかに出かけてしまったことは考えにくいと。でも近くは森があったり川があったり、子供が行方不明になる要素は揃ってるから、現状では行方不明ってことで落ち着いてるんですよ。夫妻もすごく心配しているんですが、どこかで生きてていつか帰ってくると思っているみたいですよ。まぁ、警察の捜査としては事実上打ち切りになってますがね。』
マリアは悟った。
恐らくシェリーの失踪にはマックイン夫妻が何らかの形で関わっているのだろうと考えられた。また、バーバラが残した手紙の『私たちの秘密』という点を考えれば、あまり良くない形で関わっているのではないだろうかと考えるのは自然なことだ。子供たちの朝食があるからとポールを追い返すと、マリアはバーバラが帰ってくるだろう1週間の間にその秘密を探ることを決意した。
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