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第25話 俺奪還作戦?
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「やあ、コンラート。ここにいたのか」
どこかで聞いたことのある声、どこかで見たことのある容貌。しかし思い出せない。どこかでお会いしましたっけ?って感じだ。背中の中ほどまである、艶やかにウェーブした紫の髪。そして血のように紅い瞳。青白いほど透き通った肌。表情は柔和なんだけど、それらの色味と、豪奢な衣装、黒い革のマント。何だかビジュアル系の人みたいな。誰だっけ、ここまで出かかってるんだけど…
「あ、バルドゥルさん?!」
ようやく記憶を掘り当てた俺、偉い。てかバルドゥルは茶髪茶目、ごくごくシンプルな法衣に身を包む神官だったはず。何でここに?
「ふふ、やっと分かったかい、コンラート。じゃあ行こうか」
「へ?」
ちょ、待、行くってどこに。だけど、彼の目は、アールトから借りているブローチに注がれている。そうか、アールトに言われて、助けに来てくれたんだ。でもここ、イングルビー王国の後宮。こんなとこまでズカズカ入り込めるとか、バルドゥルさんって何者?
「…あなたが皇帝陛下か」
背後から、王太子殿下の唸るような声がする。
「ああ、いかにも。お初にお目にかかる。バルトロメウス・フォン・ベルゲングリューンだ。此度皇帝に就任した。お会いできて光栄だ、アイヴァン王子」
「えっ」
皇帝?今皇帝っつった?バルドゥルが?
「まあ、そう言うことで。ボス・ゲースト大公国より要請があり、コンラート・クリューガーの身元を保護しに来た。異存は?」
王太子殿下はグッと拳を握ったが、改めてバルドゥルに膝をつき、恭順の姿勢を取った。
「じゃあ、そういうことで。さあ行こうか、コンラート」
俺はそのまま、バルドゥルとそのお付きの黒服の従者と共に、王宮を去った。
王宮の前には小ぶりな漆黒の馬車。車体には黄金の帝国の紋章が配われている。白毛と青毛の美しい馬に曳かれ、馬車は王都を軽快に進む。
未だにキツネに摘まれたようだ。目の前には2Pカラーのバルドゥル、俺の隣には片眼鏡を嵌めた小柄な従者。もう一人、大柄な従者は御者をしている。バルドゥルが連れた従者はたった二人。これが本当に皇帝陛下の行幸、ってことでいいんだろうか。お付きも装備も軽過ぎね?
「あの…皇帝、陛下?」
「ん?」
彼はいつもの柔和な笑みを向けて来る。だけど俺の隣の従者からは刺すような目線。だよね。もし本当に彼が皇帝陛下なら、平民が直接お話しするどころか、同乗するような馬車ではない。
しかし、いきなり王宮まで押しかけて、後宮に乗り込むとか。そんなの、他国の王族でもまかり通らないことだ。もし出来るとすれば、遥か格上の、そう、宗主国の元首くらい。ベルゲングリューン帝国は、イングルビー王国に隣接した大国だ。現在は和平条約が結ばれているが、実質属国扱いと言ってもいい。王太子殿下に膝をつかせる人物と言えば、そのくらいしか。
てか、いつ代替わりしたんですか、とか、俺から訊いて良いものなのか。
「ふふ。状況が飲み込めなくて、訊きたいことが沢山あるって顔してるね」
「あ、えっと…」
「うん。そろそろ城門も出るし、いいかな。バルナバス」
「は」
バルナバスと呼ばれた片眼鏡の従者は、懐から指揮棒のような杖を取り出すと、空中に文字を書くように振り出した。杖の先からは光の筋が描かれ、小声の呟きとともに拡散し、やがて馬車全体を幾何学模様が包んで行く。それらが一瞬カッと輝いたかと思うと、窓の外の景色が先ほどまでと一変していた。
「さあ、着いたよ。ようこそ帝国へ」
バルドゥルはにこにこと笑いながら、ひらりと両手を広げた。
何もかもに対して、理解が追いつかない。やたら上機嫌なバルドゥルに対して、俺が直接話しかけられる雰囲気じゃないし。てか、ここ、どこ。ようこそ帝国へって言われたけど、目の前には立派な屋敷、だけど周りは荒涼とした荒野。とても一国の首都には見えない。彼、皇帝って言ってなかったっけ?
「…ここは旧帝都の離宮。先程のは転移魔法だ」
片眼鏡のバルナバスっていう奴が、無表情で答える。コイツ俺の心が読めるのか?
「じゃあ僕は着替えて来るから。後でね」
バルドゥルは、片手を挙げて行ってしまった。俺は玄関先で待ち構えていた侍女さんに連れられて、個室に通された。
どこかで聞いたことのある声、どこかで見たことのある容貌。しかし思い出せない。どこかでお会いしましたっけ?って感じだ。背中の中ほどまである、艶やかにウェーブした紫の髪。そして血のように紅い瞳。青白いほど透き通った肌。表情は柔和なんだけど、それらの色味と、豪奢な衣装、黒い革のマント。何だかビジュアル系の人みたいな。誰だっけ、ここまで出かかってるんだけど…
「あ、バルドゥルさん?!」
ようやく記憶を掘り当てた俺、偉い。てかバルドゥルは茶髪茶目、ごくごくシンプルな法衣に身を包む神官だったはず。何でここに?
「ふふ、やっと分かったかい、コンラート。じゃあ行こうか」
「へ?」
ちょ、待、行くってどこに。だけど、彼の目は、アールトから借りているブローチに注がれている。そうか、アールトに言われて、助けに来てくれたんだ。でもここ、イングルビー王国の後宮。こんなとこまでズカズカ入り込めるとか、バルドゥルさんって何者?
「…あなたが皇帝陛下か」
背後から、王太子殿下の唸るような声がする。
「ああ、いかにも。お初にお目にかかる。バルトロメウス・フォン・ベルゲングリューンだ。此度皇帝に就任した。お会いできて光栄だ、アイヴァン王子」
「えっ」
皇帝?今皇帝っつった?バルドゥルが?
「まあ、そう言うことで。ボス・ゲースト大公国より要請があり、コンラート・クリューガーの身元を保護しに来た。異存は?」
王太子殿下はグッと拳を握ったが、改めてバルドゥルに膝をつき、恭順の姿勢を取った。
「じゃあ、そういうことで。さあ行こうか、コンラート」
俺はそのまま、バルドゥルとそのお付きの黒服の従者と共に、王宮を去った。
王宮の前には小ぶりな漆黒の馬車。車体には黄金の帝国の紋章が配われている。白毛と青毛の美しい馬に曳かれ、馬車は王都を軽快に進む。
未だにキツネに摘まれたようだ。目の前には2Pカラーのバルドゥル、俺の隣には片眼鏡を嵌めた小柄な従者。もう一人、大柄な従者は御者をしている。バルドゥルが連れた従者はたった二人。これが本当に皇帝陛下の行幸、ってことでいいんだろうか。お付きも装備も軽過ぎね?
「あの…皇帝、陛下?」
「ん?」
彼はいつもの柔和な笑みを向けて来る。だけど俺の隣の従者からは刺すような目線。だよね。もし本当に彼が皇帝陛下なら、平民が直接お話しするどころか、同乗するような馬車ではない。
しかし、いきなり王宮まで押しかけて、後宮に乗り込むとか。そんなの、他国の王族でもまかり通らないことだ。もし出来るとすれば、遥か格上の、そう、宗主国の元首くらい。ベルゲングリューン帝国は、イングルビー王国に隣接した大国だ。現在は和平条約が結ばれているが、実質属国扱いと言ってもいい。王太子殿下に膝をつかせる人物と言えば、そのくらいしか。
てか、いつ代替わりしたんですか、とか、俺から訊いて良いものなのか。
「ふふ。状況が飲み込めなくて、訊きたいことが沢山あるって顔してるね」
「あ、えっと…」
「うん。そろそろ城門も出るし、いいかな。バルナバス」
「は」
バルナバスと呼ばれた片眼鏡の従者は、懐から指揮棒のような杖を取り出すと、空中に文字を書くように振り出した。杖の先からは光の筋が描かれ、小声の呟きとともに拡散し、やがて馬車全体を幾何学模様が包んで行く。それらが一瞬カッと輝いたかと思うと、窓の外の景色が先ほどまでと一変していた。
「さあ、着いたよ。ようこそ帝国へ」
バルドゥルはにこにこと笑いながら、ひらりと両手を広げた。
何もかもに対して、理解が追いつかない。やたら上機嫌なバルドゥルに対して、俺が直接話しかけられる雰囲気じゃないし。てか、ここ、どこ。ようこそ帝国へって言われたけど、目の前には立派な屋敷、だけど周りは荒涼とした荒野。とても一国の首都には見えない。彼、皇帝って言ってなかったっけ?
「…ここは旧帝都の離宮。先程のは転移魔法だ」
片眼鏡のバルナバスっていう奴が、無表情で答える。コイツ俺の心が読めるのか?
「じゃあ僕は着替えて来るから。後でね」
バルドゥルは、片手を挙げて行ってしまった。俺は玄関先で待ち構えていた侍女さんに連れられて、個室に通された。
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