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第15話※ ディルク改めナントカ子爵

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 壇上には身分の高い順に次々と人が呼ばれ、伯爵から一言賜り、会場からは拍手やどよめきが起こる。その横で、ディ…ナントカ子爵は鷹揚に構え、ゲストとして勲章のプレゼンターを務めている。もう何も頭に入って来ない。子爵って何それ。てか、ディッテンベルガーって帝国の辺境伯家じゃなかったか?隣国の、それも割と近い場所なので、流石に世情に疎い俺でも知ってるが…。

 予定が押していたせいか、褒賞の授与はテンポ良く巻きで進んで行く。俺は下の下の平民だから最後の方だろうけど…などと思案しているうちに、褒賞者の読み上げは終了した。舞台の上では演台の片付けが行われている。あれ、俺って忘れらてる?今日俺間違って呼ばれた?ソワソワきょろきょろしていると、

「さて、本年の最大の功労者。クラッセン工房代表、コンラート・クリューガー」

「うぇっ?!あ、はいッ!」

 右手右足を同時に繰り出しながら、俺はからくり人形のようにステージへと上がる。うわ、改めてステージの上からは、会場が隅々まで丸見えだ。手前にはドレスの塊があって、中心には白粉だらけにされたアールトが、心配げにこちらを見つめている。ああ、けばけばしい肉団子…いや、女性陣に揉まれて、随分と不快だろうに、こうなることを分かってて、俺を気遣って付き添って来てくれたんだ。てぇてぇ…。

「さてコンラート」

 アールトに気を取られていた俺に、伯爵様が咳払いをして注意を促す。俺は慌てて向き直り、跪いて褒賞の言葉を受け取る。「励め」という一言で結ばれると、立ち上がって勲章を受け取る。

「コンラート・クリューガー。今後の活躍を期待する」

 プレゼンターのディルクことナントカ子爵が、いつもの濁声だみごえとは違い、はらから良く通る声で宣言する。ヤバい。マジでお貴族様だ。半口を開けたまま勲章を付けられていると、彼は一瞬「チ、アールトの野郎」と眉を顰める。この目立つブローチが干渉するからか。しかし、襟にピンを留めると、いつものちょいワルな感じでニヤリと笑顔を見せ、馴れ馴れしく肩を抱き、髪をくしゃくしゃにされる。会場からは驚きの悲鳴と拍手が聞こえた。ヒィ!

 そして、

「あー、コンラート・クリューガーには俺からも褒賞がある。借りて行くが、異議はないな?」

 会場中に響き渡る声でそう宣言すると、俺の腰を抱いて、さっさとステージ脇から連れ出した。その時俺は、やっと気付いた。俺の衣装はディルクの色で、ディルクの衣装は俺の色だったことを。金とエメラルドのブローチはアールトの色だって分かってたのに、何故衣装の色の意味に思い至らなかったのか。てか、何で今日、ここでディルク。



 もはや腰を抱くというより、薪の束のように小脇に抱えられ、大股でのしのしと運搬されている俺。渡り廊下を経て、辿り着いたのは立派な客間。彼はガチャリと内鍵を掛け、立派な天蓋のベッドにドサリと俺を放り投げた。

「あのっ、ディッテンベルガー閣下…?」

「あァ?ディルクでいいぜ、コンラート。やぁっと捕まえたぜ」

 ディルクはニィッと笑ってクラバットを緩めながら、ベッドにのし上がって来た。

「きょ、今日どうしてここに」

「お前何でこんなブローチ付けてんだよ」

「いや、貴族様のお屋敷なんて怖いって言ったら、付いて来てくれるって」

 アールトのブローチを外そうとしたディルクの指先が、バチッと鳴った。

「くっそ、アイツ本気出しやがったか。まあいい」

 ディルクは軽く舌打ちした後、ブローチではなく衣装に手を掛け始めた。

「あのっ、だから何で」

「あァ?だから捕まえたっつったろ。もうお前ェは俺のモンだ」

「は?!」

「お前ェ、俺のオンナんなれ」

「はぁぁ?!」

 俺、オスですけど?!

「悪ィが、俺は欲しいと思ったモンは絶対ェ手に入れる主義だ。お前ェが逃げ回るんなら、正攻法で捕まえるまでよ」

 そのために辺境伯家の放蕩息子の三男坊は、実家に帰って子爵位をもぎ取って来たと。ちなみにこの伯爵家は、おばあちゃんの実家なのだそうだ。

めかけじゃねェ、正妻だ。お前ェは好きなモン作ってりゃいいし、旅に出てェなら何処にでも連れてってやる。カネならある。不自由はさせねェ。…いいだろ」

 至近距離で、オスのフェロモンムンムンで口説かれている。だから俺、何で男にモテてんの?!てか正妻って何?!

「おっ、俺っ、女の子がいいんです…けど…」

「あァ、女ァ?そりゃあ、許してやれねェなァ…まぁ、男もだけどよ」

 ヤだ、こんなので生涯童貞確定ルートなんて!だけど平民に拒否権なんてあるんだろうか。

「まァ、俺が一生可愛がってやっから。諦めろよ」

 耳元でエッロい声で囁かれ、耳、首筋、そして流れるようにキスで唇を塞がれた。



「は…ん…ちゅぅっ…」

 どこもかしこもチビな俺と違って、ディルクは何もかもがデカい。噛み付くようなキスに喰われそうになりながら、口の中いっぱいに押し込まれた舌で蹂躙される。

 大体分かってきた。イケメンはみんな強引だ。強引に事を進めても許される顔面偏差値、そしてその顔面で迫られたら、女子は即落ちするんだろう。「ただイケ(ただしイケメンに限る)」ってヤツだ。フツメン以下の俺が同じ事をやれば、肘鉄の上に踵落としが待っているに違いない。

 そして強引にも種類がある。フロルはホストのようにチャラく、懐っこく距離を詰める感じ。アールトはひたすら俺様だ。夢の中だけど。そしてディルクも俺様なんだけど、何て言うか、強引と紳士の間のギリギリを攻めてくる感じ。しかも、こないだはどっちかっていうと、明らかに俺をオモチャ扱いというか、遊ばれてんだろうなって感じだったんだが、今日はひどくエロく迫ってくる。何だろう、この感覚。

 ————そうだ。洋物だ。洋物のAVだ。

「へへっ。お前、感じてんのかァ?エロいな…」

「違、あ、んぶっ」

 エロいのはお前だ。時折唇を離したと思ったら、やらしいスケベボイスを耳に吹き込んで来る。うわ、耳やっべぇと思って首を竦めたら、また角度を変えて強烈なキス。その間にも、一張羅は着々と脱がされ、大きな手がひっきりなしに俺の身体をまさぐる。熱量がすごい。てかこれ、今更だけど大ピンチじゃね?

「んあっ…はあぁ…」

 太い腕にきつく抱かれ、首筋を強く吸われて、おれのちんこは完勃ちしている。しつこく乳首をいじっていた指先が股間に伸び、それがバレた。ディルクはククッと喉で笑い、反対側の乳首を含むと、太い指で器用にちんこを扱いて来る。

「あっダメっ、ダメっ、イっちゃ」

 堪え性のないちびっ子マグナム。アールトの工房でエロい夢を見るたびに、早撃ちに磨きが掛かってる気がする。指先一つでダウンだ。

「はんッ…!」

 しかし当然、これが終わりじゃなかった。俺が脱力した一瞬を狙って、ディルクの指が後孔を捉える。ジェルを纏った指が浄化剤とともに押し入って、そのままぐにぐにと手マンが始まる。いや、マンコじゃないんだけど。あ、やべ、気持ちェ…!

「相変わらずヤベェマンコだな」

「あっ、あっ、違っ、」

 だからマンコじゃねぇ。だけど耳に吹き込まれる低音スケベボイスと、大型の猫類のような鋭い目つきに、俺の身体は竦んでしまう。野郎なんて嫌だ、キモいから鳥肌が立ってるはずなのに、そのゾクゾク感が前立腺への刺激と相俟あいまって、俺の腰にビンビン来る。

「ヒあァ!イぐッ、やべでッ、やべでッ…!」

 指を増やされ、俺はザーメンとは違うものを吹いた。しかし吹いてもまだ止まらない。腰はガッチリ抱えられ、快感を逃がそうと身じろぎすると、その隙にまた指が増やされる。手マンだけで何べんイかせる気だよ!泣きを入れても止まらず、ぐったりとしてきた頃。

「さァて、そろそろ本番と行くかァ」

 ディルクはがばりと身を起こし、豪快に脱いだ。

 ———何ですか、そのビッグワンダーマウンテン。

「…ヒ…」

 力の入らない身体で、俺は必死に後退あとずさりした。だがディルクに足首を掴まれて引き戻され、組み敷かれる。至近距離にバキバキのマウンテン。

「無理ッ…無理無理無理…」

「無理じゃねェだろ。こないだ散々可愛がってやったじゃねェか」

 マウンテンを剥き出しにして、ディルクも余裕が無くなって来たようだ。忙しなく潤滑液を塗りたくり、ガクガク震える俺のケツに押し当てる。

「良い子にしてろよォ?そら…よッ…」

「んぎィ!!!イ”…ア”…!!!」

 メリメリッ、メリメリッと音を立てるような感覚で、ディルクが俺の尻を押し開く。二度目なのに、一度目よりも苦しい。なんせ一度目は、真っ暗な部屋の中で、何が何だか分からない間にメチャクチャにされた。あの後不本意ながら、フロルに掘られ、アールトに抱かれる淫夢を見て、改めてコイツがどんだけ規格外か身をもって知ってる。こんなんもうバットやん!ケツバットってそういうんとちゃうやん!

「ア”、ア”、ア”、ア”」

「…クぉッ…クッソ狭ェな…相変わらず凶器かよ…」

 ディルクが顔を顰めながら、じわじわとマウンテンを突き刺して来る。駄目だ。入り口を押し広げられてはイき、前立腺を押し潰されてはイき、腹をじわじわと圧迫されてはイき。だけどまだまだ終わらない。内臓がぐんぐんと押しやられ、吐き気が込み上げて来る。その吐き気すら快楽信号に置き換わり、ひたすら絶頂が押し寄せる。ヤバい、脳までバカんなってる。前は何か甘い飲み物を飲まされてフワフワしていたのに、今回は全ての感覚がビビッドで、暴力的な快楽がノーガードで撃ち込まれる。

「ア”…ヒ…ヒあァ…」

 涙と唾液とザーメンを垂れ流して海老反りになりながら、俺は断続的にアクメした。それでもまだ全部入らない。腹ん中が、もう上の方まで圧迫されてる。オスとして、生物として、圧倒的な敗北。俺の中のいろんな尊厳が、このデカマラの前に、完全に叩きのめされ、屈服させられている。

 頭の中では忙しくツッコミを入れている俺だが、そうでもしないと狂ってしまいそうだ。もう身体はオルガズムスにひたすら痙攣するだけ、口からは悲鳴しか出てこない。これ以上ディルクに許してしまったら、俺は、俺は———

「…さァ、挿入はいったぜ…。もう一度見せてやんよ、天国を…!」

 ミヂッ、ミヂッ、ミヂミヂミヂミヂ…

「ン”オ”ォッ!オ”おおおッ…」

 ミジュミジュミジュミジュノジュノジュドジュドジュ。

「ッッ!ハァッ!最高だぜ、コンラート…ッ!!」

「ン”ォあ”あああ”ッ!!あ”ーーーッ!!あ”ーーーッ!!!」

 俺は叫んだ。命の限り叫んだ。いや、身体が勝手にそうなった。腹の奥までゴリゴリに犯され、訳の分からない快感で頭がパァだ。程なくディルクが俺の中でブッパして、俺の視界も真っ白に塗り変わる。だけどすぐにまた硬くなって、さっきよりも強く、速く、体重を掛けてメチャクチャに陵辱される。

 ドツドツドツドツ!

「イ”ぐイ”ぐイ”ぐ!!!イ”ぐイ”ぐイ”グイ”グ!!!」

「へへっ、コンラートッ…!そんなに、感じてんのか、よッ!!」

 ドツッ、ドツッ、ドツッ!

「ヤ”ら”!!ヤ”ら”ァァ!!ジぬゥぅぅぅ!!!」

 ああ、しゅごいの、きてる。ハラんナカ、ボコナグリして、あちゅいの、びゅーびゅー、キてる。あちゅ…ふぁ…

「はぁ、はぁ。最高だな、コンラート。まだヘバってんじゃ、ねぇ、ぞッ!」

「んゴぁ!!!」

 じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ、ドツドツドツドツ!

「ぎァあああああ!!!あ”ーーーッ!!!あ”ーーーッ!!!」

 あひぇ…ちんじゃう…☆
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