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御礼SS

(SS)※ ある異世界の物語

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オメガバース小話
時系列的には、第9章と第10章の幕間のストーリーとなります

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「オメガとは何のことだ」

 ある週末。ナイジェルは、傍で読書をするメイナードに問うた。彼の口から時々こぼれる、「オメガ」という単語。メイナードはきょとんとしている。無意識だったらしい。

「ああ、それは」

 信じてもらえないかもしれないけど、という前置きをして、メイナードは「この世界とは違う世界の夢を見た」という話を始めた。その世界では、男女という性別ともう一つ、アルファ、ベータ、オメガという性があり、オメガならば男性でも子を孕むことができるという。アルファは発情したオメガのうなじを咬むことで、つがいとなるのだとか。他にも色々細かい設定はあるが、メイナードはかいつまんでそう説明した。

「オメガって、中性的で、めっちゃ綺麗なんだよ。ナイジェルみたいなさ」

「中性的とは何だ。俺は」

「そんな可愛かったら、孕ませたくなっちゃうだろ?」

「おい、俺に発情してるのはお前だろう。あっ…!」

 雰囲気が甘くなると、夜まで待てないメイナード。そしてメイナードに迫られると、ノーとは言えないナイジェル。そのままなし崩しに、ソファーの上で愛撫が始まる。

 メイナードの弱いパターンを把握して、的確に追い詰めるナイジェルとは違い、メイナードのセックスは本能と感覚のものだ。視線、まとう魔力は魅了の力を帯び、身体中の体液という体液が媚薬。絶世の美貌と相俟あいまって、彼の存在自体がこの世の全ての老若男女を籠絡するためにある。彼に見つめられれば胸が高鳴って目が離せず、彼が触れた場所はどこもかしこも甘く痺れ、彼の口付け一つで理性は粉々になる。

「あっ…あ…」

 メイナードに強引に押し倒されながら、ナイジェルはどうにか本をテーブルに戻す。首筋に口付けられ、指を絡め取られると、もう彼から逃れる術はない。

 彼は欲しい時に欲しい快感を、欲しいだけ与える。しばしば過剰に。ナイジェルには虎人族としてのオスの本能がある。メスを抱く時には、完膚なきまで徹底的に支配したい。その本能にメイナードは的確に応え、健気に発情まで催して、全身で熱く媚びる。一方、抱かれる時には、有無を言わさず強く支配されたい。その欲求にもまた、メイナードは完璧に応えた。いつも壊れるまで犯され、啼かされ、注がれて、嵐のように全てを奪われる。

 そしてナイジェルにはまた、海の眷属サイレンとしての本能がある。愛する男に全てを捧げ、そして彼の全てを手に入れたい。彼の精を受けて子を宿したい。ナイジェルもメイナードも、お互い子を生すわけには行かない立場でありながら、だからこそ、孕みたい。孕まされたい。なるほど、メイナードがナイジェルをして「オメガ」だと評する気持ちも、ナイジェルには分かる。口には出さないが、実際彼は「孕みたい」と欲求を隠し持っていたからだ。

「はあぁっ…!」

 メイナードのものが、ナイジェルの中に乱暴に割り入って来る。淫魔と呼ぶに相応しい凶器。強引にじ込まれる感覚が、ナイジェルを一気に高みに運ぶ。

 海の眷属のセックスは、長い時間を掛けてとろけあうような営み。交接器を番えて交わりながら、淫らに身体をくねらせ、絡ませ、歓びのまま大海を躍る。だが陸の眷属は違う。硬くたぎったそれで、ガツガツと破壊し尽くすかのような、荒々しい交わり。サイレンが深海から時折陸に上がるのは、その暴虐的な性に焦がれるからだ。無遠慮に穿うがたれ、注がれ、また自分のものは彼の後孔で絞り上げられ。脚を持ち上げられ、卑猥な結合部を見せつけられながら、徹底的に陵辱される。

「はぁ、種付けプレス最高…ッ…!」

 どくん!

「ひぐううう!」

 ソファーで幾度となく犯され、そしてベッドに運ばれてからは、更にいやらしい体位で嬲られる。次第に力尽きて朦朧とするナイジェルに対し、ナイジェルの精を搾り取ってはどんどん責め苦を激しくするメイナード。もう指一本も動かせない彼に、背後から猛烈に追い込みをかけながら、一番奥深くまでずぶりと突き刺し、容赦無く精を放つ。

「そら、孕めッ…!!」

「ひ…あ…」

 精を注ぐと同時に、メイナードはナイジェルの頸を咬んだ。魔人に備わる鋭い犬歯が、ナイジェルの首筋に食い込む。ナイジェルは、最後に大きく身体をびくりとしならせると、沈黙した。



 翌日。毎度の如く激怒するナイジェルに、ぺこぺこと頭を下げたり、ベタベタと絡んだり、ひたすら機嫌を取るメイナードの姿があった。咬み跡はきちんと治癒したが、ナイジェルの機嫌は直らなかった。更にメイナードは「でもめっちゃ感じてたじゃん」「本当は孕まされたかったんでしょ」などと余計なことを言い、火に油を注いだ。しかし、そっぽを向きながら耳まで赤くするナイジェルの姿はメイナードの劣情を煽り、彼は月曜日を欠勤する羽目になった。

 その後ナイジェルは、度々背後からうなじを咬まれることになったという。



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「とまあ、そういう物語を夢で見たんだよ」

「それは何と素晴らしい…」

 ある木曜日。そういえばこないだそんな話をしていたなと、ラフィと共にピロートーク。俺たちの間には、いつもの如く「みせられないよ!」なロッドが横たわっている。

「そんな性があったとしたら、きっと素敵でしょうね…」

 ラフィは瞳を細め、ロッドの髪を愛おしそうに撫でる。コイツら何気なにげにラブラブカップルなんだよな。俺の相手してていいんかよ。しばらくうっとりとロッドのことを見つめていたラフィは、いきなりむくりと起き上がり、ロッドに覆い被さってずぶりと肉棒をうずめた。

「お”…っ」

 ほんの数秒の出来事だった。意識がないまま、生理的に呻き声を発するロッド。まだ俺の精が残る体内は、ラフィの陰茎をぬるりと迎え入れ、全身がぴくぴくと痙攣している。

「ああっ、可愛い。可愛いですロッド。あなたとなら、きっと可愛いお子が」

 ラフィの豹変に唖然としている俺の前で、彼はいきなりトップギアでぐいぐい犯し始める。さっきま三3人で濃厚なプレイを長時間楽しんでいたというのに。ラフィに、ドSに続いて新たに絶倫の称号が加わった。

「名前は何にしましょうか。二人で決め…ああ、その前にご両親にご挨拶に伺わなければ」

「ぉっ…ぐ…」

 白目を剥いた状態で気を失っているロッドを激しく揺さぶりながら、ラフィは一方的に捲し立てる。激しいセックスの振動で、俺まで揺さぶられている。俺は一体何を見せられているんだろう。

「ははは!素敵ですね!素敵です!さあロッド、私たちの赤ちゃん、しっかり孕んでくださいね?」

 ラフィは、ははははは!と高笑いしながら最後の追い込みを掛け、ロッドをきつく抱きしめながら射精した。そして首筋にガブリと咬み付くと、ロッドはまたビクリと身体を震るわせる。

 その後俺は、彼らに背を向けて、置き物になった。背後からは、「孕め孕め」とか「子種を受け取れ」などと物騒な単語と妖しい振動が伝わって来たが、見て見ぬふりをした。

 あまりにもいたたまれず、誰か他に土属性いねぇかなぁ、なんてチラリと思ったりもしたが、何より彼らたっての希望で、木曜枠は継続することとなった。



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「とまあ、そういう物語を夢で見たんだよ」

「ふぅん、なるほどな」

 火曜日のベッドの中。パーシーの腕の中で、何となくそういう話題になった。

 とはいえ彼は、公爵家の後継。神狼の血を色濃く残す彼は、既に同じく神狼の血統の許嫁がいて、彼女と次代の神狼の仔を残すことが決まっている。こうしてベッドを共にするのも、因子がある程度鎮まるまでの話だ。そう思うと、ちょっと胸の奥がツキンと痛んだ。彼と彼の許嫁にとっては、俺は後から来た異分子で、彼らの幸せの邪魔をする存在でしかない。

 急に黙り込む俺を、パーシーは大きな腕で優しく包み込んで来る。ちょっと泣きそうになった顔を見られたくなくて俯く俺の耳元で、彼は囁いた。

「で?ガキはどんくらい欲しいんだ?」

「は?」

 急に何を言い出すかと思えば。俺は唖然として、彼を見上げた。パーシーはニッと笑って、

「心配すんな、何匹だって孕ませてやる」

「ちょ、空想の話だってば」

「それとも俺を孕ませてぇのか?」

 彼は喉でくつくつと笑いながら、俺に口付ける。

「いいぜ、何匹だって産んでやる」

「あっ、もう…」

 違う、そうじゃない。アルファとかオメガとかって、なりたくてなれるもんじゃない。だけど彼ならきっと、俺が子を産みたいと思えばいくらでも産ませてくれるし、俺の子供が産めるならいくらでも産んでくれる。そしてこの大きな手で、全部受け止めて、守ってくれるだろう。彼と一緒にいると、どんなことでもひどく簡単に感じる。

 俺はまた、優しく見つめる蒼玉に吸い込まれ、体を預けた。



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「僕たちの子供…それは素敵だね…!」

 オスカーは黄玉を見開き、そして潤ませた。え、ちょっ、これ、空想の話なんですけど。

「ああ、メイナードとの愛の結晶か…。きっと可愛い子が産まれるね。メイナードは、男の子がいい?それとも女の子?何属性がいいだろうね…?」

 そう言いながら、彼は俺の腹を撫でさする。

「いや、俺が産むの?」

「君が望むなら、僕が産んでもいいよ。君からお子を授かれるなら、僕は幸せだよ…」

 彼はうっとりと俺の肩を抱き寄せ、髪に口付ける。

 何と、彼によれば、俺たちでも子をすことは可能らしい。ただし、子を生すと言っても、セックスで授かるのではない。楽園ザイオンの聖龍のように、竜人族ドラゴニュートの里から龍の核を譲り受け、魔力を注いで養育する。つまり養父母となるわけだ。

 うん。それならオスカーと子供を生してもいいかも知れない。彼は恋人でありながら、母のような、姉のような、兄のような…俺にとって、温かく守ってくれる、優しい存在だ。里子を迎えても、きっと俺と一緒に慈しんでくれるだろう。

 だがしかし、龍の核を育てるためには、魔力を注ぐ必要がある。今の俺は真祖の因子を持っていて、万一呪われた魔力が核に流れ込もうものなら、次代にその力を引き渡してしまうかも知れない。いつかこの因子が消滅した時には、改めて検討しようということとなった。

 俺とオスカーの子供って、どんな子になるんだろう。オスカーに似たら、賢くて可愛いだろうな、ってちょっと想像してしまった。



 オスカーは、無防備に身体を預けてくるメイナードを抱きしめながら思う。

 龍の核は、持ち回りで育てる竜人族の宝。オヴェットの長として、持ち回りの順を譲り受ける工作は難しくないだろう。龍の核とは卵である。楽園ザイオンでは神殿に安置し、皆で魔力を注ぎつつ遺伝子操作をしていたが、卵は胎内で温めることもできる。つまり、メイナードのはらに埋め込み、子育てと称してオスカーが独占的に魔力を注ぐ、すなわち抱きまくる。日に日に育つ卵。日に日に膨らむ胎。大きくなった腹を撫でさすりながら体を預けて来るメイナードを、オスカーが愛情込めて容赦無く貫く。これぞ合法ボテ腹セックス。たまらん。なお子供を取り上げるのは、転移スキルでも可能。だが出来れば出産して欲しい。是非出産アクメを決めていただきたい。そしてそれを記録として魔石に収め、いつまでも繰り返し愛でたい。

 しかし問題は、真祖の因子だ。実はこの因子、先日パーシーが神狼と化してメイナードに神気をたっぷり送り込んだ結果、大幅に浄化されたことが分かっている。それはオスカーの審判ジャッジメントスキルでも確認したし、何なら審判よりも詳細なメイナードの鑑定でも証明されている。だがしかしそれを肯定してしまうと、パーシーがあと何度か神狼の姿でメイナードと交われば、この輪番制度は終わりを迎える。今のままでは、彼はナイジェルを選び、もう二度と彼をこの腕に抱けないかもしれない。それでは困る。大いに困るのだ。

「再びあのようなことがあって君の身に何かあれば、因子は浄化されないまま次代に引き継がれるかもしれない」

 そんな論法で、オスカーはメイナードを丸め込んだ。パーシーの神気に頼らなければ、因子の浄化は大幅に時間を必要とするであろうが、その間に何としてもこの後宮体制を堅固なものとし、あわよくば他の恋人を出し抜かねばならない。慌てるなオスカー。勝負はこれからだ。

 しかし子を持つことに関して、メイナードからは肯定的な反応が得られた。これは大きな収穫だ。彼は自分が出産するつもりはなさそうだが、お人好しのメイナードを丸め込むくらい、オスカーにとっては朝飯前だ。僕が産んでもいいよ、と言いつつ、絶対その腹に埋め込んでやる。

 それにしてもうなじを噛むっていうシステム、いいな。背後からメイナードをガンガン突きながら、その首筋に牙を立てる。そんな想像をしただけで、オスカーの中心は硬く張り詰めた。

 腕の中ですっかり安心し切っているメイナードを優しく撫でながら、そっと彼の性感帯に指を伸ばす。感じやすい彼が、延長戦を求めて濡れた瞳を向けてくるまで、あと少し。



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 がぶり。

 あ。

 月曜日の夜、異世界の物語の話をしている最中。メレディスは突然、メイナードの首筋を咬んだ。それはもう、流れるように鮮やかに、静止の暇もなく。秒で。

 ちょっとこれ、物語の話だからいいけど。本当に俺がオメガだったら、メレディスは俺と番って俺に子を産ませる気なのか?いや、つい咬んじゃいました、そういうの全然考えてませんでした、みたいな顔してるな。てか話は最後まで聞け。

 生まれて約二十年、メレディスと身体を重ねあうようになって半年。彼の本当の人となり、そして彼がいかに天然か、今更ながら思い知らされる俺なのだった。
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