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御礼SS

(SS)※ 噛み跡(IFストーリー)

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こちらはメイナードが特別な力に目覚めることがなかった場合のIFストーリーとなります。
読者の皆様の温かい応援に感謝して、アルファポリス様にて先行公開させていただきます。

(2023.06.21追記)

章の名前を御礼SSとし、作品の最後に移動しました。
閲覧下さった皆様、しおりを挟んで下さった皆様にはご不便をお掛けして申し訳ありません。

✳︎✳︎✳︎



 暗闇からは、低い唸り声。そして二つの紅い光。

「ただいま。いい子にしてた?」

「ぐるるる…」

 理性のある答えは返って来ない。彼が飢餓の狂気に囚われて久しい。僕たちは、こうして王宮の地下深くの小部屋で二人きり。ここは誰にも邪魔されない、僕らだけの楽園エデンだ。



 彼と僕との出会いは、およそ百年前に遡る。真祖の直系として、いずれ狂気に侵され災禍に至る少年、メレディス。そして、彼を討伐するために育てられた僕。僕は王太子として諸侯をとりまとめ、彼を監視討伐する旗頭として君臨しながら、秘密裏に彼の討伐を防ぎ、守る手立てを探し求めてきた。王宮を掌握し、力を蓄え、協力者を集め。だけどどうやら時間切れだ。メレディスの飢餓は限界を突破し、ついに二番目の妻を手に掛けた。幸い彼女は一命を取り留めたが、僕は彼を隔離する名目で、彼を王宮の地下へ幽閉した。

 ヴァンパイアは不老不死である代わりに、生きるために他者の精気を必要とする呪われた種だ。彼らは永劫ともいえる人生を、常に飢えとともに過ごす。そして最期は理性を失い、精気を求めて破壊と殺戮を尽くす魔物となり果てる。理性ある間に自ら消滅を求める者も少なくないが、なまじ不老不死のため、容易に滅びることも叶わない。討伐隊を編成し、細かく切り刻み、入念に焼き尽くすことで、初めて彼らに安息が訪れる。

 かつて真祖と呼ばれるヴァンパイアがこの世界に君臨する以前、彼らを討伐したという記録は残っていない。しかし彼の能力とカリスマ性を危険視した天使族の里「楽園ザイオン」が多大な犠牲を払って討伐に成功した後、真祖に近いヴァンパイアは次々と飢餓に狂い、その度に壮絶な討伐が繰り広げられることとなった。

 ヴァンパイアが呪われた種であり、我ら魔人にとって不倶戴天の敵であると刷り込んだのは天使族だ。そして真祖以前、ヴァンパイアにはきっと他の種族と同じように平穏な終末があったに違いない。意図的に隠されたか、奪われたか。僕はその秘密を探し求め、エージェントを放っては古文書の解析に明け暮れた。

 しかしもう、タイムリミットだ。メレディスは飢餓に理性を失い、最初の妻は吸血の末に儚くなった。次の妻は、自ら精気を分け与えるスキルを持っていたが、彼の求める精気は歳を経るごとに増大し、ついに彼女の首に牙を立てるまでになった。彼の討伐は秒読みだ。僕の戦いも、これで終わり。



「ガッ!」

 じゃらり、と鎖を鳴らして、彼が飛びかかってきた。そしてそのまま、僕の喉笛に牙を立てる。動脈から噴き出す血液に、うっかりブラックアウトしそうになった。大丈夫、僕には治癒スキルがあるから。彼がごくり、ごくりと美味しそうに喉を鳴らすたびに、僕は全力で回復を続ける。

 僕が百年恋焦がれてきた、彫刻のような美貌をたたえる不死の王。しかし僕の喉にちゅうちゅうと吸い付き無心に啜るメレディスは、まるで母犬の乳を求める子犬のようだ。可愛い可愛い、僕だけの宝物。

「…オスカー…」

 ふと動きが止まったかと思うと、彼は絞り出すような呻き声を上げた。紅い瞳には理性の光が戻り、透明な涙が頬を伝っている。孤高の彼は、長らく独りで飢餓と戦ってきた。精気を供給するパートナーの助けを借りながら、それでもヴァンパイア以外の親族や使用人を遠ざけ、牢獄のような執務室に自らを閉じ込めて。

 ヴァンパイアは、同種の精気では飢えを満たせない代わりに、吸血衝動は起こらない。彼らはごく小さなコミュニティで互いを牽制し合い、滅びの時を待っている。彼らの中で最も血が濃く、最も強い彼の飢えと衝動は、他のヴァンパイアの比ではない。それでも彼は、最初の妻を吸血の末に衰弱死させたことを悔い、そして今の妻を同様に手に掛けようとした自分に絶望している。その上、僕に度々こうして給餌を受けているなど。

「ころしてくれ、オスカー。私は、もう…」

 腕の中で小さくなって震える、愛しいメレディス。僕はずっと君を救いたかった。君が妻を娶り、子を儲け、その幸せをずっと守ってあげたかった。だけどこうも思う。今君は、僕の他に頼るすべもなく、僕と君はここに二人きり。やっと僕の手に堕ちて来てくれた。

「足りないんだろう、メレディス。もっとあげるね…」

 泣きじゃくるメレディスの顎を掴み、口付ける。彼はいつも躊躇しながら、それでも精気への甘い衝動を避けられない。すぐに僕の唇に喰らいつき、唾液に含まれる精気の虜になる。ちゅうっ、ちゅくっといやらしい音を立てながら、彼の熱烈なキスに脳が痺れそうだ。

 ヴァンパイアの体液には、獲物を逃さぬよう恍惚をもたらす作用がある。平たく言えば麻薬だ。噛みつかれた首筋、そしてぴったりと合わせた唇から、えもいわれぬ多幸感が押し寄せる。ああ、愛しいメレディス。ずっと君が欲しかった。



 精気を含むのは血液だけじゃない。唾液を含む、あらゆる体液。そしてもちろん、精液にも。

「ああああ…ッ…!!!」

 シックスナイン、からの挿入。彼は白い肢体をなまめかしくくねらせ、僕を歓んで迎え入れる。内側から注がれる快楽を知ってしまった彼は、羞恥に泣き濡れながら、同時にその紅玉ルビーを欲望のままギラギラと輝かせ、いやらしい穴でキュンキュンと媚びる。胡座あぐらをかいた僕にしがみついてへこへこと腰を振り、自ら快感を追いながら、僕からザーメンを搾り取ろうと必死だ。

「イイッ!イイ、あああ、オスカ…ッ!!」

 奥までずっぽり咥え込んで、ぐいっ、ぐいっとナカを擦り付けるようにして、達する。完全に僕のメスだ。エロいったらない。しかし彼はご不満だ。僕の子種が欲しいんだものね。荒い息も整わないまま、また僕の上でいやらしくグラインドを始める。媚び媚びの求愛ダンスだ。僕も応えてあげないわけにはいかない。

「んああッ!!!」

 僕は彼をそのまま押し倒し、改めて上から深くブッ挿した。奥の奥をズゴンとブチ抜き、先端を超えてブッスリと。メレディスはそれだけで深イキし、目を見開いてビクッ、ビクッと痙攣している。さあ、ご褒美の時間だ。

 ズゴッ、ズゴッ、ズゴッ。

「ギあぁああッ!!あ”あッ!!あ”ああッ!!」

 狭い石室に響き渡る、メレディスの絶叫。奥をカリで引っ掛けながら、くぐってはいけない門をぐぽぐぽと出入りする。ここに来るまでは男を知らなかったのに、すっかりそこが好きになっちゃったね。彼の脚を肩に担ぎ、上からガニ股で種付けプレス。屈辱的に犯されながら、彼は結合部から目が離せない。

 欲しいよね。そら、あげよう———

 ばちゅん。

「~~~~~!!!」

 睾丸が縮み上がり、ドクン、ドクンと射精するリズムに合わせて、メレディスがぎゅん、ぎゅんと尻穴を収縮させる。一番奥に直接注がれる精気に、彼の瞳孔はカッと開き、焦点が合わないまま歓びの涙を流している。突き出した舌がくたりと力を失い、とめどなく唾液を漏らしながらハッ、ハッとメス犬のような呼吸を繰り返す。

 これだ。こんな君が見たかった。幾重にも張り巡らされた厳重な結界の中、薄暗い石の檻に囚われ、魔力を封じる縛鎖に繋がれて、まるで重罪人のよう。そんな君に男の味を教え、飼い慣らし、容赦の欠片もない苛烈なセックス。誇りも尊厳も奪われ、性奴隷以下のみじめな蹂躙に、メス堕ちしてアヘ顔を晒す不死の王。

 君がここに匿われていることは誰も知らず、君が頼れるのは僕だけ。ここは二人だけの楽園。僕らだけの、そして僕らの最期を飾るにふさわしい、約束の場所。



 抱き潰されて眠るメレディスの寝顔は、少しあどけない。僕は彼を起こさないようにそっとベッドを抜け出し、一旦地上へ戻る。もう引き継ぎは全て済ませた。次代以降については、みんなに任せる。父上や他の者たちには散々引き留められたけど、僕の決意は変わらない。

 王宮のあらゆる結界を管理するコアは、地下深くにある。これまでは全て僕が維持してきたわけだけど、僕というあるじが消滅した後は、無用の長物でしかない。僕が王宮に君臨する間、地脈から、王宮に滞在する者から、少しずつ集めた魔力。それは今や、王宮どころか王都周辺まで全て吹き飛ばすほどの力を秘めている。しかし僕の死と共に暴走する核の力は、厳重な結界の中で押し留められ、外に出ることはない。その結界の内にあるのは、核を安置する部屋と、そしてあの石作りの小部屋。

 僕は今日もポーションを飲み下す。彼にたっぷり精気を供給してあげなくちゃ。僕は最期の一瞬まで、彼と共にある。誰にも討伐なんかさせない、誰にも彼を殺させない。

 ずっと愛しているよ。僕だけのメレディス。



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(2023.06.21追記)

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