上 下
66 / 135
番外編 インキュバスの能力を得た俺が、現実世界で気持ちいい人生を送る話

(12)告白

しおりを挟む
「あのさ…変な話するけど、聞いてくれる?」

 ベッドの中で腕枕をしながら、俺は年末からの話をした。自分が淫魔になった夢を見たこと。そしたらその淫魔の能力が手に入ったこと。今の大学に受かったのも、琉海を助けた時に使ったのも、淫魔の力。セックスの時に、琉海が俺のザーメンでイき狂うのも。

 元々エロかったから、淫魔の力が手に入ったのか。それとも淫魔の力で人格が変わってしまったのか。俺は気持ちいいセックスをするために、大学に来た。だから、最初琉海と付き合い始めた時、後腐れなくヤれるセフレが欲しかった。それは本音だ。だけど琉海と身体を重ねるたびに、俺はどんどんハマって行った。そもそも俺が初めて抱いたのが琉海だ。我ながら、こじらせた童貞の執着は凄まじい。ボディガードだから、彼氏役だから、セフレ役だからと何だかんだ言い訳しながら、四六時中べったりと彼に張り付く。

 一方で、半分淫魔になったせいか、性欲がとどまることを知らない。普段は翌日に支障がない程度に琉海を抱き、精を受け取っているわけだが、正直あれでは小腹も満たされない。彼の限界まで抱くと、ようやく腹六分目と言ったところか。だがそれでは、彼の日常生活がままならない。毎日自家発電でやり過ごしてはいるが、他の人間の精も欲しい。そういう意味で、藤川はちょうどいい供給源なんだが…

「えっと…信じらんないと思うけどさ…」

 俺だって自分で話してて、荒唐無稽だと思う。そして要は、「浮気を許せ」って言ってるようなもんだ。我ながら、何というクズだろう。だが琉海は、

「うん、わかった」

 と言って、穏やかに微笑んだ。あの、変な作り笑いじゃなくて、ちゃんと自然なヤツ。だけどこれはアレだ、ロトの時と同じだ。信じてないな。

「例えばさ…」

 俺は手のひらの上に、水の塊を出す。そして消す。

「…何、今の…」

 氷柱つららも出せる。氷の壁や、黒い雷の球とかも。ああ、目に見えるスキルが少ないの、もどかしいな。あとそれから、俺のアパートに転移。

「分かった?」

 反応がないので顔を覗いてみると、琉海はフリーズしている。面白い。今はこの部屋は物置なので殺風景だ。戻ろう。

「…何、今の…」



「というわけで、ロトもこの力で当てました」

「滅茶苦茶だよ…」

 琉海が若干、最初に会った時の砕けた調子に戻った。

「でも、その力で俺のこと、助けてくれたんだよね。…ありがとう」

 彼は鼻先を俺の胸に寄せて、甘えてくる。お前、その力でガッツリ魅了されてんだけど…まあいいか。あの夢の中の淫魔の気持ちも、ちょっと分かる。彼が本当に俺に惚れているのかどうか、はなはだ怪しい。だけど琉海をこの腕の中に捕まえておく為なら、例え今後解き方が分かったとしても、俺は絶対にこの魅了を解かない。

「でさ。交換留学なんだけど、琉海、行くの」

「弓月と一緒に居ていいなら、行かない」

 俺の腕の中で小さく呟く。彼は俺の胸の匂いを嗅ぐのが好きだ。匂いフェチめ。そしてそんな俺も、琉海の髪の匂いを嗅いでいる。もちろん匂いフェチだ。

「藤川が推薦書くって言ってる。だから、琉海が行きたいなら、俺も行くけど」

「本当?」

 琉海は、上目遣いで見上げてくる。行きたいらしい。

「じゃあ早速、願書出して来るか。琉海、自動車学校しゃこういつ行く?」

「え、あ、クルマ…でもそんなお金…」

「だから、働いて返すとかしょっぱいこと言うなって」

「だって」

「そんな琉海さんに、残念なお知らせがあります」

 俺はスマホを取り出し、とあるアプリを開いた。

「こないだ、琉海にいくつかアカウント取ってもらって、投資始めたじゃん?」

 その画面には、見たこともない桁の数字が並んでいた。

「その、調子乗ってたら、桁が大分だいぶん増えちゃってさ。多分一生働いても、返すとか無理かなって…」

「…」

 琉海が、本日二回目のフリーズに突入した。大丈夫、とあるツテで税理士さんとか頼んであるから。配当なんかは税金でかなりゴッソリ行かれるだろうけど、それでもある程度余裕のある生活は送れると思う。

「弓月は滅茶苦茶だよ…」

 二回目の滅茶苦茶、頂きました。

「そ。琉海を逃がさないために、俺だって必死なの」

 彼は「そんな言い方、ズルい」と言って、俺の胸に顔をうずめた。



「あともう一つ、大事な話がある」

 琉海が「まだあるの」って顔をしている。

「俺は、琉海しか抱かない」

「!」

 正確には、「抱けない」のだ。気持ち的にも、欲求という点でも。一度コイツの肉体を知ってしまうと、男を見ても女を見ても勃たない。いや、正確には彼しか抱いたことはないんだが、あらゆるエロコンテンツで充電していた俺が言うんだから間違いない。どうしても琉海と比べると、見劣りしてしまう。そして他にも、深刻な原因が。

 そう。向こうの世界と同じように、俺がセックスで経験値を得ると同時に、俺が精を注いだ人間のステータスも上がるっぽい。こちらの世界にはレベルの概念はないが、彼の能力値はあちらの世界の基準に照らし合わせると、レベル七十程度。例えば戦闘力で言えば、恐らく軍人並みに達しているものと思われる。試しに空き缶を握らせてみると、あっけなくクシャッと握りつぶしてしまった。リンゴとかでも行けそうだ。

「…」

 琉海、三度目のフリーズ。

「というわけで、こっちでセフレ作るのは、許してもらえると、その…」

 俺は自分のケツを指差しながら、言った。病気とか、絶対もらってこないから。来ても治せるけど。

 再起動後、琉海からはまた「滅茶苦茶だよ」頂きました。どうも最近勉強がはかどるなって思ってたそうだ。すまん。

「…その代わり俺のこと、ちゃんと構って」

 今朝から遠慮なくスリスリと甘えるようになった琉海が、そっぽを向いてねる。小悪魔め。俺たちは一日こうして、学校をサボって甘々と過ごした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...