【完結・R18BL】インキュバスくんの自家発電で成り上がり

明和来青

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第6章 騎士団編

(46)※ 最後の逢瀬

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 水曜日の午後。いつもの如く王太子オスカーに呼ばれ、二人だけのお茶会。

「これまでありがとう、メイナード。もうこれで最後にしたいんだ」

 突然、オスカーからそんなことを切り出された。驚いて固まる俺に、彼は続ける。

「はっきり分かったよ。もう僕が入り込む隙なんて、どこにもないって」

 しばらく前に見せた、毒気のない笑顔。あの、殺しても死なないようなしたたかな男が、風が吹いたら散ってしまいそうな花のように笑っている。

「僕は全てを手に入れた。だけど本当に欲しいものだけは、どうしても手に入らない」

「殿下」

 彼は改めて、俺に向き直る。

「もうこれっきりで、君のことは諦める。だけど」

 そう言って、彼は俺の手を取って、指先に口付ける。

「最後に一度だけ、君が欲しい。駄目、かな…」



 気がついたら、彼の手を取ってベッドへといざなっていた。彼の頬に手を添えて…だけど、キスだけは、してはいけない気がする。そのまま指を滑らせ、長い髪を掻き上げて、耳元に口付けを落とす。

「殿下…」

「メイナード。今だけは、オスカーって」

 お互いに自然と腕を回し合って、柔らかく、だけどしっかりと抱き合う。彼の背中からは見事な羽が広がり、外側からふわりと俺を包む。こないだ酷く陵辱した身体が、真珠のように美しい。壊れ物を扱うように、そっと口付けを繰り返す。

 彼は愛おしそうに俺の髪を撫でながら、切ないため息と共に、何度も俺の名前を呼ぶ。はらに浮かんだ隷属れいぞく紋が、淡く薔薇色に輝いている。やがて同じように、身体全体が色付いていく。

「はぁっ…」

 彼のものを口にするのは二度目だ。一度目は、罪と背徳の、ゾクゾクするような味がした。だけど今日は、全く別物の口当たり。愛を渇望する悲痛な叫びを感じる。そしてそこは、まだ固い。ゆっくり丁寧に開いてやらなければ、また傷つけてしまうだろう。

「あっ…あっ…」

 彼の体が、羽が、小刻みに震えている。指を増やしながら、ゆっくりと内側からなぞってやると、彼は悩ましい喘ぎ声とともに、俺の口の中に精を放った。彼のものだけは、絶対に取り込むまいと思っていたのに、自然と受け入れてしまった。優しく温かい味がする。

 彼の脚を開き、先ほどほぐしたそこに、俺のものを少しずつ呑み込ませていく。

「ふ…ああ…」

 まだ男を受け入れるのに慣れていないそこ。それでも不器用ながら切なく締め付け、全身で俺のことを受け入れようとしている。

 彼の頬は濡れていた。彼はこれが最後だと言った。俺がナイジェルの隷属紋を消し、彼から去ろうとした夜を思い出す。彼はあの時の俺と同じだ。あんなに尊大で自信満々で、俺のことを無慈悲に虐げようとした男が、今はひどく頼りなく、弱々しく見える。誰かにすがりたくて、でもどこにも逃げ場がなくて。立つ場所も掴まる場所もなくて、ただ独り取り残された感覚。忘れなければいけないのに、どうしても忘れられない。

「愛してるよ…メイナード。僕は君が好きだ」

 どうにか俺を奥まで受け入れて、彼は濡れた瞳で呟いた。「ふふ、思いを告げるくらい、いいだろ」と強がってみせる彼を、俺はしっかりと抱きしめ、耳元で彼の名を呼ぶ。

「オスカー…」

「!…ふ…」

 彼はぽろぽろと大粒の涙を流しながら、俺の背中に腕を回し、きつくしがみついてきた。そのまま俺たちは、ぴったりと身体を重ねたまま、情を交わし合った。



 オスカーは火照った身体を横たえ、余韻を味わっている。まるで美術の教科書で見た、美の女神のようだ。しかし、どこもかしこも艶やかに上気した彼は、地上のどんな生き物よりも魅力的だ。これでは、女神のほうが嫉妬するだろう。

 彼の目と下腹には、隷属紋が怪しく輝いている。もう、これも消さなければならない。

「…やめて、消さないで…!」

 俺が何をしようとしているのか察したオスカーが、俺の手首を掴み、邪魔をする。

「だってもう…」

「これが、君と僕との最後の繋がり。どうか、僕から取り上げないで…」

 そしてそのまま、俺の指に口付ける。

「君のことは、何でも覚えていたい。忘れたくないんだ。忘れられたくない…」

 そう言って、そのまま手の甲、手首にキスを落とし、濡れた頬を擦り寄せている。

「…ありがとう、メイナード。これで僕も、君のことを諦められる」

 彼は潤んだ瞳で、ぎこちなく笑った。そんな胸の締め付けられるような顔、するなよ…。

「!」

 気が付いたら俺は、彼に唇を重ねていた。彼は一瞬びくりとしたが、すぐに俺を受け入れ、俺たちはしばらく、甘く深く、舌を絡め合った。

「…酷いひとだ。これじゃあ、諦め切れないじゃないか…」



 その後俺は、退勤前に執務室に戻ったが、さすがにナイジェルと顔を合わせられない。何かを悟ったナイジェルは、盛大にため息をついた。

「いつかこうなるだろうと思った」

 面目次第もない。

 水曜日は彼の部屋を訪ねる日ではないのだが、俺に拒否権はない。まだ昨日のダメージを引きずるナイジェルは、それでも意地で俺を抱いて所有権を上書きし、そして翌朝またポーションをあおる羽目になった。
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