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第6章 騎士団編

(43)※ お仕置き

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「う…あ…」

 白昼の路地裏、彼は路上で四つん這いになり、息を荒げている。

 鍛え上げられた肉体。全身がバネのように躍動する、しなやかな造形美。艶やかな褐色の肌。戦いに絶対的に有利な、長い手足。短く整えられたプラチナブロンド。彫りの深い、優美な顔立ち。吸い込まれそうな碧い瞳。頭上に狼の耳がなければ、異世界の外国のダンサーみたいだ。

 俺は彼の瞳を見つめながら、あちらの世界で散々蓄えたいやらしいシーンの集大成を、どんどん脳内に送り込んで行く。淫夢スキルは最大まで上げると、睡眠中でなくても相手の脳内にイメージを送り、白昼夢を見せることができる。幻惑スキルとは違い、卑猥なイメージ限定なのが、いかにも淫魔専用のスキルらしい。エロければエロいほど鮮明に届く。

 彼は脳内で今、一糸纏わぬ姿でベッドに転がされ、俺にいいようにオモチャにされている。髪、耳、首筋、乳首、脇腹。背中、二の腕、手首、手のひら、指。鼠蹊そけい部、腿の内側、尻。膝の裏やふくらはぎ、つま先まで。指先でいやらしく撫で回すと、彼は不自由な身をよじって、息を荒げる。コイツやけに性感帯が多いな。ほぼ全身じゃないだろうか。

(俺にこんな風にされて、どんな気持ちだ?)

 耳元で甘く囁く俺に、彼は為す術がない。身体はどんどんたかぶって、はしたない喘ぎ声が出そうになっている。慌てて口をつぐむが、彼の尻から見事な尻尾がファサ、と現れた。それは細かく震えながら、ゆらゆらと左右に振れている。

 俺の目がヤバいと理解した彼は、視線を逸らして魔眼をかわした気になっているが、残念。魔眼を極めると、視覚を通さずとも脳や神経に直接アクセスできる。

(ほら、中がとろけて来ているぞ。どんだけ淫乱なんだ)

 ロクに前戯もしていないのに、彼はもうすっかり欲情してしまって、初めて受け入れる指に、いやらしく吸い付いてくる。そのくせ、中で少し動かしてやるだけで達しそうなくらい感じている。

(そんな…そんな…ああっ…)

 処女のように初々しく、しかし娼婦のように妖艶に。白昼堂々、猥褻わいせつな淫夢に、乱れに乱れる。脳内で繰り広げられる痴態を表に出さぬよう、歯を食いしばって耐えているが、ふうっ、ふうっと悩ましい吐息が漏れる。コイツがあの憎たらしいワン公と同一人物とは思えない。

 おっと。彼を犯すのに夢中になっていたが、そういえば、俺はさっさと王宮に戻らないといけないんだった。ここからは手早くやろう。



 彼の脳内には、俺が二人。片方は、彼を後ろから突き上げ、もう片方は、彼の口を犯す。イメージは俺が支配している。彼が嚙み千切るとか、そういう心配もない。

 彼は獣人。王都で再会した頃のナイジェルと同じだ。弱い者には強さを示して恭順を要求し、強い者には徹底的に支配されたい。ちょっと苦しいんじゃないかな、とこっちが心配になるようなプレイの方が、彼らを昂らせる。

(ん”ん”っ!ん”ん”ん”っ!!)

 喉までつかえそうな程度に押し込んでやると、彼は窒息しそうになりながら激しく感じている。もちろん、下の方も。初めて受け入れたばかりのそこに、容赦なく奥までじ込んでやると、びくびくと身体をしならせて、全身で歓んで迎え入れる。

(どうしちまったんだ、俺…身体が…熱い…!)

 彼の動揺が手に取るように伝わってくる。うんうん。淫魔は寝技では最強なんだぞ?

(そら、飲め。一滴もこぼすなよ)

 後ろの俺は彼の尻尾を鷲掴みし、その勢いで彼に腰を打ちつけ、中にブッ放す。同時に、上の方からも。

(お”っご!ん”ん”ん”ん”!!)

 実物よりいささか劣るが、魔眼の魔力だけで十分な媚薬効果。俺のを口に咥え込んだまま、強制的に絶頂へ押し上げられる。それらがすぐさま引き抜かれると、がくりと力を失い、気を失いそうなパーシヴァル。しかし息も絶え絶えに、霞む視界が捉えたのは、彼を取り囲む何十人もの俺。

(さあ、ヘバってる暇はないぞ?)

(う…ああ…っ)

 彼は涙目でガクガクと震えだした。だが身体は自由に動かず、それどころか精を注がれたところが強烈に疼く。すぐさま彼を取り囲む別の俺が、ギンギンにたぎったアレを、上にも下にもぶち込んで、同じことを繰り返す。



「う…う…」

 彼は路上で丸くうずくまり、小刻みに震えながらうめいている。脳内で繰り広げられている凄惨な輪姦と陵辱を、外側の人間が知る術もないが、獣人ならば、彼から漂う卑猥な精の匂いを嗅ぎ取るだろう。三十分くらいで切れるようにしておくが、それまでにその辺のならず者に襲われるなよ。じゃあな。

 少し遅くなったが、鼻歌を歌いながら手土産を片手にオフィスに帰った俺を、ナイジェルは怪訝な目で見つめていた。

「何かあったのか」

「ちょっとね」

 気分は晴れ晴れだ。今度また噛みついて来たら、魔眼でけちょんけちょんにレイプしてやる。いかん。不謹慎ながら、ちょっぴり楽しみだ。



 しかし。

 その「今度」は、意外と早く訪れた。彼を路上でやり込めたのが金曜日。そして翌日の土曜日、ナイジェルと連れ立って王都の中心部まで買い物に出掛けていた最中、

「兄貴!!」

 遠くから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。猛然と駆けて来るのは、昨日脳内で手籠めにした大男。

「えっと…閣下。何用でございましょう…」

「嫌だな兄貴!俺と兄貴の仲じゃねぇか!」

 うっ。横からナイジェルの冷ややかな視線を感じる。

「わ、私は閣下と仲を深めた覚えは…」

「水臭ぇな兄貴!パーシーって呼んでくれよ!」

 肩をバシバシとはたかれ、そのまま馴れ馴れしく腕を回される。

「メイナード。どういうことだ」

「誤解だ!俺は何もしていない!」

 非接触型だからセーフ!

「あ”ぁ?ノースロップの雑種かぁ?」

「こらお前!ナイジェルに手ぇ出したらブチ犯すぞ!」

「あああ兄貴!そんな大胆な…」

 彼の尻から尻尾が現れ、ブンブンと左右に振られる。

「メイナード」

「ごめん!ごめんて!本当に何もないんだって!」

 俺とナイジェルは大型犬を差し置いてさっさと跳び、その後俺は、彼から延々と説教を受ける羽目になった。
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