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第44話 招聘
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「そんな…危険過ぎる」
普段表情筋がどこにあるのか分からない父上が、血相を変えて立ち上がる。
善は急げということで、殿下は早速メレディスにコンタクトを取り、招聘した。すると彼は、ものの半刻もしないうちに執務室に現れた。王宮の正門からまっすぐ向かってもそのくらいはかかる。殿下は領都の伯爵邸に連絡を送ったはずだ。しかしメレディスは「普通に飛んできましたが何か?」って顔をしている。
以前彼は、俺に母の形見の指輪を渡し、「何かあったら、それでいつでも私を呼んでくれ」と言った。俺はそれを聞き流していたが、どうも直接飛んでくるつもりだったらしい。そもそもこの指輪でどうやって彼を呼ぶのか、その方法を教わっていない。
天然か。うちの親父、天然なのか。
俺たちは早速、事のあらましを告げた。天使族の監視は思ったより杜撰で、俺たちは思ったよりも自由に動けそうだということ。そして、最終的には楽園の結界を通過しなければならないんだけど、ちょっと一度近くまで行って見に行きたいこと。鑑定で解析出来たら、打てる手段は格段に増えるからね。
殿下が仰るには、楽園の入り口は険しい山岳地帯の中にあって、王都からはかなりの距離があるらしい。交通手段は殿下の翼だから、必然的に同行者は俺だけになる。二人以上抱えて飛ぶのは難しい。そして、一定距離を稼いだら俺の転移で戻り、翌日は転移地点の続きからという具合に進めて行こうと思うんだけど、最後の山岳地帯が結構な難所で、もしかしたら毎日帰れないかも知れない。というわけで、精気の供給、すなわちベロチューなんですけども…と話を持って行こうとした途中で、「危険過ぎる」と。うん、分かるよ。
しかし俺は、ここで偽装を解いた。
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 645
HP 6,450
MP 32,250
POW 645
INT 3,225
AGI 645
DEX 1,935
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
呪詛 LvMax
暗黒の雷 LvMax
ヒール LvMax
キュアー LvMax
ウォーターボール LvMax
剣術 LvMax
身体強化 LvMax
格闘術 LvMax
投擲術 Lv7
転移 LvMax
偽装 Lv—
E サーコート
スキルポイント 残り 20
我ながら、取れるだけのスキルは取ったと思うんだ。闇属性から、バッドステータス付与の呪詛と攻撃スキルの暗黒の雷。そして致命的なHP不足を補うため、パッシブスキル目当てに身体強化と格闘術。後衛からの物理攻撃のために、投擲術も習得中だ。
あれから輪番でベロチュ…精気の摂取を繰り返し、俺はめきめきとレベルを上げた。レベルは上がれば上がるほど上がりにくくなるので、さすがに今は一度に上がるレベルは少なくなってきたが、それでも一週間に二十ほど上がる。
そして、レベル三百を超えてからずんずん長くなる一方だった長角は、五百を超えると側頭部でカーブを描いて羊のような形状に変化した。よく歴代魔王の肖像画で見る巻き角だ。殿下には「魔王にでもなるつもりか」と言われたけど、とんでもない。そもそもベロチューの輪番制度作ったの、殿下だろ。そもそも俺は、レベルの割に戦闘力に乏しい淫魔。しかも野心のかけらもない雑魚キャラ気質だ。いつ寝首をかかれてもおかしくない王様になんて絶対なりたくない。丁重にお断りいたします。
と、そんな俺の角を見て、メレディスが愕然としている。
「育ったよねぇ、うんうん」
殿下は「メイナードはワシが育てた」状態だ。コイツ。
ここで殿下から種明かし。俺は戦闘ではなく、他者から精気を取り込むことでレベルが上がること。そして体液交換した相手のレベルも少し上がること。俺はその場でメレディスを鑑定して、ステータスを書き写した。
名前 メレディス
種族 ヴァンパイアロード
称号 マガリッジ伯爵
レベル 246
HP 7,380
MP 7,380
POW 738
INT 738
AGI 492
DEX 492
属性 闇・風
スキル
真祖の権能 LvMax
飛翔 LvMax
風刃 LvMax
剣術 LvMax
E 魔力糸の礼服
E 吸精のタリスマン
E マガリッジの指輪
スキルポイント 残り 260
状態 飢餓・弱
俺が初めて彼の飢餓を抑えた時、彼のレベルは218だった。あの時はまだ風刃がLv9だったから、Lv10の風嵐は使えなかったはずだ。そう告げると、彼は言葉を詰まらせている。今日は彼の表情筋がよく仕事をするなぁ。
俺たちの事情と実力を知ってもらった上で、殿下が切り出す。
「僕が今日君を呼び出したのは、一つ試したいことがあったからだ。それは、メイナード以外の体液から精気を吸収出来るかどうかということ」
「!」
そう。今日最も重要な要件は、こちらだ。
メレディスは今、義母上からスキルによって精気を分け与えられている。しかし前妻の母とは、それなりの期間寄り添っていたという。ヴァンパイアは長く生きれば生きるほど、強くなればなるほど多くの精気を欲するようになるが、一介の淫魔が何十年も彼を支え続けることが出来たのは、吸血のみならず体液の交換が鍵になったに違いない。
そしてこのたび、成り行きで俺とベロチューして飢餓を癒したわけだけど、母と義母では足りなかった分を俺が補ったということは、精気の供給とレベルの間に相関関係があるんじゃないかってことだ。もし高レベルの武人の体液が精気の供給に適しているのであれば、ヴァンパイア全体の飢餓を遠ざけ、因子の発動を大きく遅らせることができる。そして万が一俺に何かあっても、何とかなるってことだ。精気の供給のあり方については、議論の余地があるとしても。
現在不在の魔王様に代わり、一番レベルが高いのは俺。そして二番目はオスカー殿下。実験台にはピッタリだ。もしメレディスの飢餓を殿下の体液で満たすことが出来るのであれば———
普段表情筋がどこにあるのか分からない父上が、血相を変えて立ち上がる。
善は急げということで、殿下は早速メレディスにコンタクトを取り、招聘した。すると彼は、ものの半刻もしないうちに執務室に現れた。王宮の正門からまっすぐ向かってもそのくらいはかかる。殿下は領都の伯爵邸に連絡を送ったはずだ。しかしメレディスは「普通に飛んできましたが何か?」って顔をしている。
以前彼は、俺に母の形見の指輪を渡し、「何かあったら、それでいつでも私を呼んでくれ」と言った。俺はそれを聞き流していたが、どうも直接飛んでくるつもりだったらしい。そもそもこの指輪でどうやって彼を呼ぶのか、その方法を教わっていない。
天然か。うちの親父、天然なのか。
俺たちは早速、事のあらましを告げた。天使族の監視は思ったより杜撰で、俺たちは思ったよりも自由に動けそうだということ。そして、最終的には楽園の結界を通過しなければならないんだけど、ちょっと一度近くまで行って見に行きたいこと。鑑定で解析出来たら、打てる手段は格段に増えるからね。
殿下が仰るには、楽園の入り口は険しい山岳地帯の中にあって、王都からはかなりの距離があるらしい。交通手段は殿下の翼だから、必然的に同行者は俺だけになる。二人以上抱えて飛ぶのは難しい。そして、一定距離を稼いだら俺の転移で戻り、翌日は転移地点の続きからという具合に進めて行こうと思うんだけど、最後の山岳地帯が結構な難所で、もしかしたら毎日帰れないかも知れない。というわけで、精気の供給、すなわちベロチューなんですけども…と話を持って行こうとした途中で、「危険過ぎる」と。うん、分かるよ。
しかし俺は、ここで偽装を解いた。
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 645
HP 6,450
MP 32,250
POW 645
INT 3,225
AGI 645
DEX 1,935
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
呪詛 LvMax
暗黒の雷 LvMax
ヒール LvMax
キュアー LvMax
ウォーターボール LvMax
剣術 LvMax
身体強化 LvMax
格闘術 LvMax
投擲術 Lv7
転移 LvMax
偽装 Lv—
E サーコート
スキルポイント 残り 20
我ながら、取れるだけのスキルは取ったと思うんだ。闇属性から、バッドステータス付与の呪詛と攻撃スキルの暗黒の雷。そして致命的なHP不足を補うため、パッシブスキル目当てに身体強化と格闘術。後衛からの物理攻撃のために、投擲術も習得中だ。
あれから輪番でベロチュ…精気の摂取を繰り返し、俺はめきめきとレベルを上げた。レベルは上がれば上がるほど上がりにくくなるので、さすがに今は一度に上がるレベルは少なくなってきたが、それでも一週間に二十ほど上がる。
そして、レベル三百を超えてからずんずん長くなる一方だった長角は、五百を超えると側頭部でカーブを描いて羊のような形状に変化した。よく歴代魔王の肖像画で見る巻き角だ。殿下には「魔王にでもなるつもりか」と言われたけど、とんでもない。そもそもベロチューの輪番制度作ったの、殿下だろ。そもそも俺は、レベルの割に戦闘力に乏しい淫魔。しかも野心のかけらもない雑魚キャラ気質だ。いつ寝首をかかれてもおかしくない王様になんて絶対なりたくない。丁重にお断りいたします。
と、そんな俺の角を見て、メレディスが愕然としている。
「育ったよねぇ、うんうん」
殿下は「メイナードはワシが育てた」状態だ。コイツ。
ここで殿下から種明かし。俺は戦闘ではなく、他者から精気を取り込むことでレベルが上がること。そして体液交換した相手のレベルも少し上がること。俺はその場でメレディスを鑑定して、ステータスを書き写した。
名前 メレディス
種族 ヴァンパイアロード
称号 マガリッジ伯爵
レベル 246
HP 7,380
MP 7,380
POW 738
INT 738
AGI 492
DEX 492
属性 闇・風
スキル
真祖の権能 LvMax
飛翔 LvMax
風刃 LvMax
剣術 LvMax
E 魔力糸の礼服
E 吸精のタリスマン
E マガリッジの指輪
スキルポイント 残り 260
状態 飢餓・弱
俺が初めて彼の飢餓を抑えた時、彼のレベルは218だった。あの時はまだ風刃がLv9だったから、Lv10の風嵐は使えなかったはずだ。そう告げると、彼は言葉を詰まらせている。今日は彼の表情筋がよく仕事をするなぁ。
俺たちの事情と実力を知ってもらった上で、殿下が切り出す。
「僕が今日君を呼び出したのは、一つ試したいことがあったからだ。それは、メイナード以外の体液から精気を吸収出来るかどうかということ」
「!」
そう。今日最も重要な要件は、こちらだ。
メレディスは今、義母上からスキルによって精気を分け与えられている。しかし前妻の母とは、それなりの期間寄り添っていたという。ヴァンパイアは長く生きれば生きるほど、強くなればなるほど多くの精気を欲するようになるが、一介の淫魔が何十年も彼を支え続けることが出来たのは、吸血のみならず体液の交換が鍵になったに違いない。
そしてこのたび、成り行きで俺とベロチューして飢餓を癒したわけだけど、母と義母では足りなかった分を俺が補ったということは、精気の供給とレベルの間に相関関係があるんじゃないかってことだ。もし高レベルの武人の体液が精気の供給に適しているのであれば、ヴァンパイア全体の飢餓を遠ざけ、因子の発動を大きく遅らせることができる。そして万が一俺に何かあっても、何とかなるってことだ。精気の供給のあり方については、議論の余地があるとしても。
現在不在の魔王様に代わり、一番レベルが高いのは俺。そして二番目はオスカー殿下。実験台にはピッタリだ。もしメレディスの飢餓を殿下の体液で満たすことが出来るのであれば———
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