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ジャスパーの就活
侯爵邸へお邪魔しました ※
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侯爵邸へは夕方に到着した。途中、街道沿いの宿場町を順当に経由すると、大体こんな旅程なのだそうだ。広大な敷地、門を潜ってもまだしばらく揺られていると、大きなお屋敷の前で馬車は停まった。使用人の方がズラリと並び、中心に蜂蜜色の金髪を結い上げた綺麗な女性。
「ようこそジュールさん。疲れたでしょう、今夜はゆっくり休んでね」
優雅な物腰と、嫋やかな微笑みに、思わず見惚れてしまった。キース様のお母上なのだそうだ。信じられないくらいお若い。僕はキース様に連れられて、ぎくしゃくと別邸の方に案内された。
別邸では、既に食事と入浴の用意が整っていた。
「さあ、気を楽にして。ここには僕と君しかいないからね」
傍に給仕が控えていたものの、ダイニングには僕とキース様だけだ。別の意味で緊張してしまうのだけれど、長旅の身体に優しい食事を、少しずついただく。
別邸とはいえ、本邸よりも小ぶりだというだけで、ずいぶん立派な建物だ。ここは侯爵家の若夫婦が住むために作られた屋敷で、いずれキース様とそのご家族が住まうことになるらしい。プライベートな家だから、寮のようにくつろいで、と言われるんだけど…確かに道中の高級宿よりは、他の宿泊客も護衛騎士の姿もなく、人目を気にしなくてもいいといえばいいんだけど、キース様のお屋敷だと思うと、別の意味で緊張する。
しかし、緊張もそう長くは続かない。三日間馬車に揺られ、ずっと気を張り詰めっ放しだった僕は、お風呂を借りて気が抜けてしまった。道中の宿にもお風呂はあったのだけど、遠慮してシャワーで済ませていた僕。しかし別邸では、二人の侍女さんが待ち構えていて、あれよあれよという間に制服を剥ぎ取られ、浴室に押し込まれた。危うく身体を洗われそうになったが、それだけは阻止した。だけど、贅沢に張られた温かいお湯に浸かると、長い緊張ともやもやとした悩みが、溶けて流れてしまったようだ。
ところが、攻防はまだ終わっていなかった。すっかりリラックスしてお風呂から出た僕は、先ほどの侍女さんたちに捕らえられ、身体を拭かれ、髪は丁寧に梳られて、ツヤツヤに乾かされた。湯上がりの肌にオイルを塗り込まれ、「やだお肌ピチピチ」などとはしゃがれる。抵抗したいところだが、極上のマッサージにふやふやにされる。ああもう駄目だ。お婿に行けない。
一応パジャマも持ってきたんだけど、シルクのローブのようなものを着せられる。着てきた制服は回収されてしまった。泊まってきた宿と同じように、これから超特急で洗って、翌朝には風属性スキルで乾燥して返して下さるらしい。うちのようななんちゃって貴族と違い、本物のお貴族様はすごい。
僕に割り当てられた部屋は、キース様の部屋の隣で、コネクトルームになっている。これって、将来奥様とかが使う部屋なんじゃ、と思いつつ、「客間だと遠いからね」だそうだ。ちょっとおしゃべりしてから寝るのに、隣の方が都合がいいから、だって。確かに客間は一階だし、キース様のお部屋は二階だし、そういうものなのかな。
とはいえ、立派な天蓋付きのベッドに並んで座っていると、やっぱりちょっとドキドキする。昨日も一昨日もそうだったけど、いつもキース様とはロームを通して通信実験で同じように過ごしていたのに、やっぱり本物は慣れない。
「顔、赤いね。疲れたかい?」
「いえっ、そのっ…マッサージが、気持ちよくて、ちょっと恥ずかしくて…」
しどろもどろの僕に、キース様は目を細めた。
「ふふ。聞こえていたよ。君の肌が美しいって、侍女がはしゃいでいるのを」
「!あ、えっと、駄目ですよね、騎士団に入るのに、生っ白い肌では…ひゃっ」
キース様の大きな手が、ローブからするりと侵入して来る。
「どんな風に触られたの?」
「どんな…風にって…あっ…」
胸の先に触れられて、変な声が出てしまう。慌ててキース様を止めようと身じろぎした途端、彼の左腕が背中に回り、きつく抱き留められ、唇が重なる。
「ふ…んっ…」
キス、してる。額じゃなくて、唇に。
頭がふわふわしている。僕の上にキース様が覆い被さって、舌を絡め合いながら、蕩けるようなキス。まるでいつも、通信実験が終わった途端、ロームが僕にそうするように。だけど今、目の前にいるのは、間違いなくキース様だ。何度か唇を離しては、その度に見つめ合い、そして角度を変えて、深く。
そうか。味が違うんだ。
ロームが擬態すると、姿形は同じでも、肌は白く、髪と瞳は水色で模倣される。それ以外は全て同じだと思っていた。鼓動や息遣い、汗や体温まで忠実に再現するロームは、凄いと思う。だけど初めて分かった。ロームの体液は、全て少し甘いんだ。本物のキース様は、ほんのりミントの香り。ああ、今僕初めて、他の人とキスしてる。
キース様のキスが、首筋に落ちる。ふわりと香る、髪と肌の匂い。僕と同じ柑橘系のボディーソープの香りに混じって、ちょっと苦くてスパイシーな、大人の男の匂いがする。ずっと触ってみたかった、艶やかな赤い髪。ロームのは散々触ったことあるはずなのに、想像してたよりもちょっと硬い。
でも、大きな手で僕を昂らせるやり方は、ロームと同じだ。あれはロームが完全にコピーしていたのか、それともキース様がロームと接続したまま、ロームを通してやっていたことなのか。そんなことはもう、どうでもいい。今、こうして僕の身体を縦横無尽に愛撫しているのは、キース様ご本人なのだから。
「キース、様…」
僕は彼の背中に腕を回し、上擦った声で名前を呼んだ。変な声って思われただろうか。だけどキース様が、僕の名前を何度も熱っぽく呼んでくれるから、つい。どうしよう、胸がいっぱいで、涙が溢れてくる。これはロームじゃない、本当に、キース様なんだ。
先走りで濡れたそれを同じもので擦られ、僕ははしたなく達してしまった。キース様は耳元で「可愛いね」と囁くと、僕の膝を割り広げ、陰部を露わにする。ローブはとっくに意味を為さず、肩からもはだけ落ちて、僕の下でくしゃくしゃになっている。キース様も勢い良く脱ぎ捨てて、二人とも纏っているのは汗だけ。
改めて、キース様の身体に目が釘付けになる。男の僕から見ても、完成された肉体美。赤いのは髪だけじゃなくて、体毛もそうで。赤黒く立派なそれも、そこから立ちのぼるワイルドな香りも、オス、って感じがする。僕はこれでも男だ。男の身体に惹かれる性質じゃない。だけど、知ってる。あれで貫かれたら、もう何も考えられないくらい、気持ちいいっていうこと。
「解すよ」
キース様の長い指がぬるりと入って来た。さっき僕に塗り込まれた、香油の香りがする。だけど、「あ、おい」という言葉の後、指の代わりに別のものがずるりと侵入してきた。
「あっ、ロームっ、やだっ」
枕元で大人しくしていたロームのうち一体が、キース様の指を押し退けて、代わりに僕の中に入り込んでしまった。彼はうぞうぞぐねぐねと暴れ回り、粘液を分泌して、そこをぐずぐずにしてしまう。催淫成分をたっぷり含んだそれを、弱いところに念入りに塗り込まれて、身体が熱い。
「はっ、ああん、もうっ、…キース様…っ」
欲しい。ナカが切ない。
時折内腿や鼠蹊部に口付けを落としながら、僕がロームにいいように悶えさせられていたのを見ていたキース様は、ニヤリと嗤って先端を押し付けた。
「あ、あ、あぁ…」
彼の巨大な先端は、僕の中にぬちゅりとめり込んだ。そして、中にいるロームと一緒に、ずっ、ずっと奥に押し込まれて行く。
凄い硬さ。凄い圧迫感。僕はこの感覚を知ってる。だけど全然違う。
「ジャスパー…」
キース様が、熱く潤んだ瞳を細めて、切ない声を漏らす。僕も何か答えようと思ったけど、すぐに唇は塞がれてしまう。上と下とで繋がって、ぴったりと抱き合って。僕たちは窒息しそうになりながら、夢中で唇を奪い合った。そして、動くのももどかしいほどの不自由な体勢で、キース様が強く腰を押し付けるその動作だけで、僕は呆気なく射精した。同時に僕が強く締め付けるのに合わせて、キース様も中で果てた。
「あんっ♡ あんっ♡ んふっ♡ んんっ♡」
ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ。
キスを繰り返しながら、キース様の激しい律動を受け入れる。膝を抱えられ、身体を折り曲げられ、時折視線を下に移せば、いやらしい水音を立てながら、キース様の巨大なそれが僕の中を出入りしているのが見える。挿入ってる。今、僕、キース様に抱かれてる。先の太いところが、気持ちいいところを全部ゴリゴリ擦って、一番奥をゴツゴツとノックする。こんなの、こんなの…
「んふぅぅ…ッ!!!♡♡♡」
もう何度果てたか分からない。キース様にも、何度も注がれて。
どうしよう。夢みたいだ。これまで彼の隣に美しい夫人を想像しては、胸が張り裂けそうだった僕が、まさかこうして彼を受け入れているだなんて。
そこで、僕の頭はスッと醒めた。
この部屋は、どう考えても、キース様の奥方が使われる部屋だ。このベッドも。
ここは、僕が居ていい場所じゃない。
貴族が妾や愛人を持つことは、珍しいことじゃない。特に侯爵家のような大貴族なら尚更だ。だけど、それが良いことかと言われると、そうとも言えない。夫人同士の争いや、夫婦関係の破綻。だってそうだろう。僕が彼の夫人なら、僕の他に愛人がいたり、僕の前に誰かとこのベッドで愛し合ったんじゃないかと思ったら、とても耐えられない。過去に恋人がいたのは仕方ないけど、これから自分がずっと暮らす場所だもの。こんなこと、絶対…
「キース、様っ、駄目っ…」
さっきから流れっ放しだった涙。だけど、さっきとは違う涙が頬を伝う。
僕は馬鹿だ。何で今、こんな時になるまで、そのことが分からなかったのだろう。
「いやぁぁ!駄目、駄目、やめてくださいッ!!」
今更、頭を振って抵抗しても、キース様にがっしり捕らえられていて。
どちゅどちゅどちゅどちゅ。
「ジャスパー。いいね、行くよ?」
射精寸前だったキース様は、激しく腰を叩きつけ、僕の一番奥で精を放った。
「あああああ!!!」
ああ、この期に及んで、狂ってしまいそうなほど気持ちいい。僕の意識は、そこでふつりと途切れた。
「ようこそジュールさん。疲れたでしょう、今夜はゆっくり休んでね」
優雅な物腰と、嫋やかな微笑みに、思わず見惚れてしまった。キース様のお母上なのだそうだ。信じられないくらいお若い。僕はキース様に連れられて、ぎくしゃくと別邸の方に案内された。
別邸では、既に食事と入浴の用意が整っていた。
「さあ、気を楽にして。ここには僕と君しかいないからね」
傍に給仕が控えていたものの、ダイニングには僕とキース様だけだ。別の意味で緊張してしまうのだけれど、長旅の身体に優しい食事を、少しずついただく。
別邸とはいえ、本邸よりも小ぶりだというだけで、ずいぶん立派な建物だ。ここは侯爵家の若夫婦が住むために作られた屋敷で、いずれキース様とそのご家族が住まうことになるらしい。プライベートな家だから、寮のようにくつろいで、と言われるんだけど…確かに道中の高級宿よりは、他の宿泊客も護衛騎士の姿もなく、人目を気にしなくてもいいといえばいいんだけど、キース様のお屋敷だと思うと、別の意味で緊張する。
しかし、緊張もそう長くは続かない。三日間馬車に揺られ、ずっと気を張り詰めっ放しだった僕は、お風呂を借りて気が抜けてしまった。道中の宿にもお風呂はあったのだけど、遠慮してシャワーで済ませていた僕。しかし別邸では、二人の侍女さんが待ち構えていて、あれよあれよという間に制服を剥ぎ取られ、浴室に押し込まれた。危うく身体を洗われそうになったが、それだけは阻止した。だけど、贅沢に張られた温かいお湯に浸かると、長い緊張ともやもやとした悩みが、溶けて流れてしまったようだ。
ところが、攻防はまだ終わっていなかった。すっかりリラックスしてお風呂から出た僕は、先ほどの侍女さんたちに捕らえられ、身体を拭かれ、髪は丁寧に梳られて、ツヤツヤに乾かされた。湯上がりの肌にオイルを塗り込まれ、「やだお肌ピチピチ」などとはしゃがれる。抵抗したいところだが、極上のマッサージにふやふやにされる。ああもう駄目だ。お婿に行けない。
一応パジャマも持ってきたんだけど、シルクのローブのようなものを着せられる。着てきた制服は回収されてしまった。泊まってきた宿と同じように、これから超特急で洗って、翌朝には風属性スキルで乾燥して返して下さるらしい。うちのようななんちゃって貴族と違い、本物のお貴族様はすごい。
僕に割り当てられた部屋は、キース様の部屋の隣で、コネクトルームになっている。これって、将来奥様とかが使う部屋なんじゃ、と思いつつ、「客間だと遠いからね」だそうだ。ちょっとおしゃべりしてから寝るのに、隣の方が都合がいいから、だって。確かに客間は一階だし、キース様のお部屋は二階だし、そういうものなのかな。
とはいえ、立派な天蓋付きのベッドに並んで座っていると、やっぱりちょっとドキドキする。昨日も一昨日もそうだったけど、いつもキース様とはロームを通して通信実験で同じように過ごしていたのに、やっぱり本物は慣れない。
「顔、赤いね。疲れたかい?」
「いえっ、そのっ…マッサージが、気持ちよくて、ちょっと恥ずかしくて…」
しどろもどろの僕に、キース様は目を細めた。
「ふふ。聞こえていたよ。君の肌が美しいって、侍女がはしゃいでいるのを」
「!あ、えっと、駄目ですよね、騎士団に入るのに、生っ白い肌では…ひゃっ」
キース様の大きな手が、ローブからするりと侵入して来る。
「どんな風に触られたの?」
「どんな…風にって…あっ…」
胸の先に触れられて、変な声が出てしまう。慌ててキース様を止めようと身じろぎした途端、彼の左腕が背中に回り、きつく抱き留められ、唇が重なる。
「ふ…んっ…」
キス、してる。額じゃなくて、唇に。
頭がふわふわしている。僕の上にキース様が覆い被さって、舌を絡め合いながら、蕩けるようなキス。まるでいつも、通信実験が終わった途端、ロームが僕にそうするように。だけど今、目の前にいるのは、間違いなくキース様だ。何度か唇を離しては、その度に見つめ合い、そして角度を変えて、深く。
そうか。味が違うんだ。
ロームが擬態すると、姿形は同じでも、肌は白く、髪と瞳は水色で模倣される。それ以外は全て同じだと思っていた。鼓動や息遣い、汗や体温まで忠実に再現するロームは、凄いと思う。だけど初めて分かった。ロームの体液は、全て少し甘いんだ。本物のキース様は、ほんのりミントの香り。ああ、今僕初めて、他の人とキスしてる。
キース様のキスが、首筋に落ちる。ふわりと香る、髪と肌の匂い。僕と同じ柑橘系のボディーソープの香りに混じって、ちょっと苦くてスパイシーな、大人の男の匂いがする。ずっと触ってみたかった、艶やかな赤い髪。ロームのは散々触ったことあるはずなのに、想像してたよりもちょっと硬い。
でも、大きな手で僕を昂らせるやり方は、ロームと同じだ。あれはロームが完全にコピーしていたのか、それともキース様がロームと接続したまま、ロームを通してやっていたことなのか。そんなことはもう、どうでもいい。今、こうして僕の身体を縦横無尽に愛撫しているのは、キース様ご本人なのだから。
「キース、様…」
僕は彼の背中に腕を回し、上擦った声で名前を呼んだ。変な声って思われただろうか。だけどキース様が、僕の名前を何度も熱っぽく呼んでくれるから、つい。どうしよう、胸がいっぱいで、涙が溢れてくる。これはロームじゃない、本当に、キース様なんだ。
先走りで濡れたそれを同じもので擦られ、僕ははしたなく達してしまった。キース様は耳元で「可愛いね」と囁くと、僕の膝を割り広げ、陰部を露わにする。ローブはとっくに意味を為さず、肩からもはだけ落ちて、僕の下でくしゃくしゃになっている。キース様も勢い良く脱ぎ捨てて、二人とも纏っているのは汗だけ。
改めて、キース様の身体に目が釘付けになる。男の僕から見ても、完成された肉体美。赤いのは髪だけじゃなくて、体毛もそうで。赤黒く立派なそれも、そこから立ちのぼるワイルドな香りも、オス、って感じがする。僕はこれでも男だ。男の身体に惹かれる性質じゃない。だけど、知ってる。あれで貫かれたら、もう何も考えられないくらい、気持ちいいっていうこと。
「解すよ」
キース様の長い指がぬるりと入って来た。さっき僕に塗り込まれた、香油の香りがする。だけど、「あ、おい」という言葉の後、指の代わりに別のものがずるりと侵入してきた。
「あっ、ロームっ、やだっ」
枕元で大人しくしていたロームのうち一体が、キース様の指を押し退けて、代わりに僕の中に入り込んでしまった。彼はうぞうぞぐねぐねと暴れ回り、粘液を分泌して、そこをぐずぐずにしてしまう。催淫成分をたっぷり含んだそれを、弱いところに念入りに塗り込まれて、身体が熱い。
「はっ、ああん、もうっ、…キース様…っ」
欲しい。ナカが切ない。
時折内腿や鼠蹊部に口付けを落としながら、僕がロームにいいように悶えさせられていたのを見ていたキース様は、ニヤリと嗤って先端を押し付けた。
「あ、あ、あぁ…」
彼の巨大な先端は、僕の中にぬちゅりとめり込んだ。そして、中にいるロームと一緒に、ずっ、ずっと奥に押し込まれて行く。
凄い硬さ。凄い圧迫感。僕はこの感覚を知ってる。だけど全然違う。
「ジャスパー…」
キース様が、熱く潤んだ瞳を細めて、切ない声を漏らす。僕も何か答えようと思ったけど、すぐに唇は塞がれてしまう。上と下とで繋がって、ぴったりと抱き合って。僕たちは窒息しそうになりながら、夢中で唇を奪い合った。そして、動くのももどかしいほどの不自由な体勢で、キース様が強く腰を押し付けるその動作だけで、僕は呆気なく射精した。同時に僕が強く締め付けるのに合わせて、キース様も中で果てた。
「あんっ♡ あんっ♡ んふっ♡ んんっ♡」
ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ。
キスを繰り返しながら、キース様の激しい律動を受け入れる。膝を抱えられ、身体を折り曲げられ、時折視線を下に移せば、いやらしい水音を立てながら、キース様の巨大なそれが僕の中を出入りしているのが見える。挿入ってる。今、僕、キース様に抱かれてる。先の太いところが、気持ちいいところを全部ゴリゴリ擦って、一番奥をゴツゴツとノックする。こんなの、こんなの…
「んふぅぅ…ッ!!!♡♡♡」
もう何度果てたか分からない。キース様にも、何度も注がれて。
どうしよう。夢みたいだ。これまで彼の隣に美しい夫人を想像しては、胸が張り裂けそうだった僕が、まさかこうして彼を受け入れているだなんて。
そこで、僕の頭はスッと醒めた。
この部屋は、どう考えても、キース様の奥方が使われる部屋だ。このベッドも。
ここは、僕が居ていい場所じゃない。
貴族が妾や愛人を持つことは、珍しいことじゃない。特に侯爵家のような大貴族なら尚更だ。だけど、それが良いことかと言われると、そうとも言えない。夫人同士の争いや、夫婦関係の破綻。だってそうだろう。僕が彼の夫人なら、僕の他に愛人がいたり、僕の前に誰かとこのベッドで愛し合ったんじゃないかと思ったら、とても耐えられない。過去に恋人がいたのは仕方ないけど、これから自分がずっと暮らす場所だもの。こんなこと、絶対…
「キース、様っ、駄目っ…」
さっきから流れっ放しだった涙。だけど、さっきとは違う涙が頬を伝う。
僕は馬鹿だ。何で今、こんな時になるまで、そのことが分からなかったのだろう。
「いやぁぁ!駄目、駄目、やめてくださいッ!!」
今更、頭を振って抵抗しても、キース様にがっしり捕らえられていて。
どちゅどちゅどちゅどちゅ。
「ジャスパー。いいね、行くよ?」
射精寸前だったキース様は、激しく腰を叩きつけ、僕の一番奥で精を放った。
「あああああ!!!」
ああ、この期に及んで、狂ってしまいそうなほど気持ちいい。僕の意識は、そこでふつりと途切れた。
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