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楼蘭妃の憂鬱

楼蘭妃の憂鬱 ※

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 いつもならば、彼は性急に事を運び、すぐに身体を繋げようとする。皮膚や粘膜から送られる龍気に当てられ、私の身体も夫を受け入れる準備が出来ている。しかし今日に限って、彼は体の位置を入れ替え、私の陰茎を口に含みながら、後孔に指を突き入れ、解し始めた。そして代わりに、私の目の前には夫のものがある。

 驚いたのは、夫のそれが、いつもの巨大な肉棘の凶器ではなく、人間ヒトの…それも少年のような。

「これからはローレンスが心地良い交わりを目指したい」

 とは、先ほどの夫の言であるが、そうか。夫にアドバイスを下したのは、キース殿。彼は卒業と同時に、ジャスパーと夫夫ふうふとなるのだという。手際の良い彼のことだ。もしかしたら、今頃既に教会で結婚の誓約書を交わしているかも知れない。

 ジャスパーは、私よりも小柄だ。華奢な彼を抱くには、細心の配慮でもって身体を拓かなければなるまい。レナードが、夜の営みまで彼に助言を求めたのは無粋かとも思ったが、なるほど教えを乞うには最適の相手だったかも知れない。

 男として、オスの象徴たるそれを、大きく立派にしたいという希望はあっても、小さく変えるという発想はなかった。理屈ではない。そこの力強さは、男のプライドでもある。しかし受け入れる側にとっては、必ずしもそうではないのだ。受け入れる側を十分にほぐし慣らせ、無理なく事を運ぶ。パートナーに男性を選んだキース殿ならではの、優れたアドバイスと言えよう。



 つい考えが遠くへ及んでしまったが、私は彼の愛撫に応え、目の前のそれを口にした。口淫をするのは初めてではないが、如何せん人体の構造に適合しない大きさのそれ。これまでは、辛うじて先端を咥えるか、もしくは舌を這わせるので精一杯だった。しかしこの大きさならば、無理せず受け入れることが出来る。歯を立てないように注意しながら、舌と唇を使って奉仕する。

 一方、レナードから本格的に口淫を受けたのは初めてだ。指で中を解されるのも。私の雄膣は、しばらく夫のがなかったため、ぴっちりと閉じられていた。三番目の子が難産だったのもそのせいだ。思えば初めて彼と交わったのは、スライムを介在して。まだ小さな翼蛇だったレナードが、スライムに捉えられ、スライムによって尾を私の中に埋められ、強制的に交合させられたのだった。その時、魔力と龍気の交換が行われ、レナードが大蛇から龍神に進化し…それからはずっと、セックス三昧だった。そう、拓くとか慣らすとかそういう過程を一足飛びに超えて、気付いたらレナードを受け入れられる身体に作り変えられていた。

 出産を終え、再び固く閉じられたそこを、レナードの指が辿々しく解す。陰茎に時折ちくりと歯が当たるが、私を歓ばせようと、不慣れながらも努めているのが愛おしい。私もお返しとばかり、彼の陽根を心を込めて愛でる。先走りに含まれる龍気が、たまらなく美味だ。私の身体は龍に変化して行く途上にあるが、龍のつがいの一番のエネルギー源は、夫の龍気である。勿論、飲食で問題なく生命維持は可能だが、今の私は、身体中に染み渡る龍気を、本能で欲している。

「!ぅ…っ」

 彼の指が、私の中の善いところを探り当てた。スライムに侵入され、翼蛇のレナードを受け入れ、初めて覚えさせられた、メスの快感。そこを撫でられると、理性のたがが外れてしまう。私のそこは、オスを求めていやらしくうねり、よだれのように愛液をこぼして、情けを強請ねだる。

 頃合いと見たのか、レナードは私からペニスを引き抜き、解れた蜜壺に当てがって、ゆっくりと侵入してきた。

「あ、あ…あ———ッ…」

 久しぶりに受け入れたせいか、それとも元々私の身体には、このくらいのものが丁度良かったのか。これまで可愛がられてきた夫のそれよりも、随分と小ぶりだと思っていたペニスが、まるであつらえたかのように、私の雄膣にぴったりとフィットする。というよりも…

「凄い…凄い、凄い…!」

 初めてだ。レナードに抱かれることを知ってから、初めて、気持ちいいだけのセックスを経験している。痛くも、辛くも、苦しくもない。発達したカリ首が私のメスの善いところにちょうど当たり、コリコリと刺激して。ああ、駄目だ。こんなの、こんなの…!

「や♡ あ♡ あ♡ …」

 前戯で高められていたせいか、私はあっという間に頂点を極めた。ヒトの、しかもどちらかというと控えめなこれが、こんなに善いなんて。私がすぐに達してしまったので、レナードの動きは止まらない。だが彼の顔にも驚きが浮かんでいる。

「まさか、こんな…くっ、吸い付くッ…!!」

 中でレナードが爆ぜる。陰嚢も小さくしてあるせいか、いつもより射精が短く、量も少ない。だが、含まれている龍気が濃い。ああ、美味しい…!

「レナード、もっと…もっと!」

 精を吐いてなお、鋼のように硬いレナードを、私ははしたなく求めた。彼もすぐに夢中になって、それに応じる。セックスを覚えたばかり少年のように、私たちは余裕もなく求め合い、そして精を放ち合った。

「くあぁッ、ローレンス、たまらぬッ!」

「あっあ、レナード、レナードッ♡」

 身体が熱い。レナードから注がれた龍気は、私の中で練り直され、皮膚や粘膜を伝ってレナードに戻って行く。夫から与えられる龍気は番の糧となり、番から龍に戻る龍気が龍の力となる。私とレナードとの間で、龍気が激しく循環している。ああ、これが本当の、龍の交わり。龍のセックスとは、こういうものだったのか。

 お互い汗まみれになり、息を合わせて腰を振りたくる。恥も理性もない、本能に導かれるままの交合。ずっとイきっ放しだ。何度放っても止まらないし、何度放たれても気持ちいい。

 だけど。

 空になったはらうずく。無防備に子を授からぬよう、姉上に教わった通り、卵子の活動は凍結してあるが、常に奥まで蹂躙を受け、卵で満たされていた胎が、孕みたくてうずうずしている。ああ、気持ちいい、気持ちいいけれど———

「レナード…奥、奥まで、欲しい…」

 もう何十回目の射精だったか。動きを止め、注いだ後のレナードに、私はたまらず懇願した。レナードは、ニヤリと牙を見せつけるような笑みを浮かべ、そのままぐりぐりと腰を押し付けた。

「あ、あ、あ」

 中で、彼のペニスが奥までズンズン伸びて行くのが分かる。さっきまで、深くとも前立腺の前後にぴったり沿う大きさだったものが、子宮口まで、届く。

 とちゅん。

「あヒッ♡」

 背筋が弓を描き、視界に星がチカリと舞う。来た。

 レナードは、私に見せつけるように、わざとゆっくりペニスを引き抜き、またゆっくりと中に戻す。大きなストロークで、ぐちゃり、ぐちゃりと。さっきと長さが全然違う。細めのペニスは、ちっとも苦しくないのに、先のカリは相変わらずコリコリと引っかかり、内側の善いところを全てさらって行く。そして。

 トン、トン、トン。

 長い陰茎で膣内を弄んだ後、彼は一番奥で子宮口をノックし始めた。小さな動きで、コツコツ、コツコツと。それは私の子宮を震わせ、大きな波になって広がって行く。

「あっ、来るッ……やぁ…だ、…イくッ…イくイくイくッ…!!」

 それから私は、快感の嵐にひたすら翻弄されていた。子宮に規則正しくキスを繰り返すレナードを、形がはっきり分かるほど締め付け、何度も果てる。ああ、子宮口が降りて来ている。硬いレナードの先端がめり込むように、キスはどんどん深くなる。

 ああ、足りない。足りない!

 そこから先は、入ってはいけない場所。だが、夫のあの凶悪なペニスを受け入れ、暴虐的な快楽に泣き叫んだあの夜が忘れられない。

「来て!来てッ!!レナード、全部、全部欲しいッ!!!」

「…我が最愛、仰せのままに」

 彼は一度全てを引き抜くと、あの肉棘の付いた本来のペニスで、私を貫いた。これ、これ、ああッ…!

 かつては快楽と苦痛を併せ呑むようにして受け入れていたはずなのに、私は今それを、歓んで飲み込んでいた。ただただ気持ちいい、気持ちいいだけのセックス———。



 意識がふわりと上昇すると、辺りは既に明るい日差しが差し込んでいた。

「目覚めたか、ローレンス」

 夫は既に身支度を済ませていた。いつもの龍袍ロンパオに剣を佩き、背には美しい翼が折り畳まれている。彼は私の額にキスを落とし、「行って来る」と飛び立って行った。

 驚いたことに、後宮に帰還してから一ヶ月が経っていた。私は約一月もの間、夫を片時も離さずに寝台で求め続けたらしい。そしてその後、三日寝込んでいたのだとか。確かに時間の感覚はなかったが、まさかそんな…。

「お妃様もようやくですね☆ おめでとうございます☆」

 あの賑やかしい女官が、さも喜ばし気に告げた。私の身体は、順調に龍化が進んでいるとのことだ。

 一ヶ月のセックスが?それが龍の標準なのか?

 いかに久しぶりとはいえ、飲まず食わずで夫を求め続けた浅ましさ。本能の赴くまま、欲しい欲しいとあられもなく腰を振りたくり、最後は二本同時に、そしてあの鱗の巨根を奥の奥まで受け入れて、陶然と喘ぎ…

 思い出したくない。頭が痛い。だが後宮は既にお祝いムードだ。私は、一際華やかな衣装を着せられ、昼も夜も祝膳が供され…。

 だが、あれが龍の一般的な営みだとすると、レナードは以前、あれでも相当手加減してくれていたことになる。

「レナード、その」

「ん?」

 私たちは、食事を必要としない。目の前の美酒や馳走は嗜好品だ。だが、私は杯を呷り、酒の力を借りて告げた。

「私を娶ってくれて、ありがとう」

 私は彼を誤解していた。私も未熟だったし、彼も未熟だった。だけど彼は未熟なりに、私のことを愛し、大切にしてくれていたのだ。

 彼は嬉しそうに笑い、私たちはその夜、また睦み合った。



「あ”っ!あ”っ!や”っ!無”理ッ!レ”ナードッ!や”めれ”ェッ!!!」

 ごちゅごちゅごちゅごちゅ。



 あれから数ヶ月。夫と私は一層仲睦まじく、幸せに過ごしていた、はずだった。

 私の身体の龍化が進み、彼との交合がよりスムーズに行えるようになったことは、喜ばしいことだ。龍気の循環が活発になり、彼の進化は止まることを知らない。

 ただし、しばしばおかしな方向へ。

「ああ、美しい。ローレンス、ずっとこうして目合まぐわいたかった」

 私は今、彼にがっちりと抱えられ、背後から貫かれていた。腰を掴まれ、膝裏で身体を支えられ、足首も掴まれ…肩を羽交締めのように固定されながら、手首を後ろに引かれ、陰部や乳首はひっきりなしに弄ばれ。

 知らなかった。彼が多腕の神の遺伝子を持っていただなんて。

 背中から生やした多くの腕に為す術もなく、私はあの巨大な鱗の陽根でひたすら啼かされる。それはいいのだ。ちゃんと気持ちを通わせ合い、龍気を巡らせ合えば、私の身体はそれを歓んで受け入れられると知っている。

 しかし今は白昼だ。

 しかも彼は、あろうことか姿見の前で、私の痴態を激しく堪能している。当然、日中なので灯りは焚かない。採光のために大きく作られた窓は全開で、視力の良い竜種や他種族からは丸見えだ。

「い”や”ぁッ!!い”や”ら”あぁぁッ!!」

「大丈夫だ、ローレンス。ちゃんと結界は張ってある」

 いやそれは分かっているんだ。だがいかにレナードが龍神とはいえ、皇宮にはレナードよりも上位の龍神や、魔術に長けた他種族もいる。お前の結界とて万能ではない。おい聞いているのか、と問い詰めたいところだが、夫から流れ込む激しい龍気と、身体中を一度に愛される快感とで、まともに言葉が紡げない。

「はぁぁ…尊い。______の眷属、そして使徒よ。感謝致します…」

 レナードは、尊い、尊いと呪文のように繰り返し、また抽送が加速する。ただでさえ受け入れるのがギリギリの鱗ペニスが膨張し、爆ぜ、

「ひぎぃぃいぃッ!!!」

 私も強制的に絶頂を迎え、果てる。

 ______の眷属といえば、キース殿絡みか。こちらに帰って来た当初は、彼に教わった房中術で夫婦仲が修復されたというのに、余計なことまで教えてくれた。一時は感謝したが、こんな常軌を逸したプレイは、ジャスパーとだけ楽しんで欲しい。

 だがしかし、過ぎた快感で頭が朦朧とする中、残念ながら夫はまだ私を解放する気配がない。間もなく力を取り戻したレナードは、また元気良く私を揺さぶり始めた。



 しばらく彼の好きにさせていたのがいけなかった。私はこれで我慢の限界を迎え、翌朝再び王都のリドゲート家の門を叩いた。そして腹に子を抱えていないことを除いては、前回とほぼ同じ経過を辿った。

 その後レナードとは、相変わらず。私と結ばれた時から継続的に魅了チャームを掛けていたのが発覚したり(周りは私も了承していると思っていたらしい)、私との夜の生活を明け透けに吹聴していたり(周りは私も了承していると思っていたらしい)、怪しい知識を仕入れては私に試そうとしたり(周りは以下略)、その度に頻繁に実家に身を寄せることになったのだが、それはまた別の話。

 幸い、実家でも後宮でも温かく受け入れられ、何だかんだレナードにも熱烈に愛されてはいるものの———時折、いっそこのままを連れて出戻り、実家リドゲートの守護龍になってもいいかも知れない、などと憂鬱な気持ちになる、私なのだった。



✳︎✳︎✳︎

これにてローレンス君のその後、スピンオフは完結です。
この後はキースとジャスパーの後日談を投稿いたします。
どうぞお楽しみください。
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