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楼蘭妃の憂鬱
夫が進化しました ※
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寝台から起き上がり、女官の手伝いを得て、身支度を済ませる。肌に激しい情交の痕が残る以外は、寝具も身体も清潔そのもの。きっと夫が生活魔法で清めて行ったのだろう。彼はとうに部屋を出て、早朝から執務に当たっている。
龍神の仕事は、世界のエネルギーバランスの調整、とりわけ気象を司る。この世界に住まう者の、雨乞いや日乞い、災難消除の祈り、それが変じて龍神となったという説と、もとより存在するこの世界の自然エネルギーが人格を得たものが龍神、という説があるのだと、知己を得たエルフの女公アネシュカは教えてくれた。私が長年抱いていた疑問、しかし故国では知りようもない答えを、アネシュカは事も無げに披露する。ああ、私にとって皇国とは何という理想郷だろう。
龍神が世界に介入するためには、長い年月を掛けて物質界に馴染み、力を付ける必要がある。最も近道は、物質界の番を得て、情を交わすことなのだそうだ。
「まだ歳若き皇子が、八面六臂の活躍。この世界にとっては喜ばしいことだが…」
アネシュカは、何とも言えない表情で言葉を止めた。私も居た堪れなくなって目を逸らす。そう。歳若き皇子が何でそんな力を得ているのかなど、皆まで語らずとも一目瞭然だ。女官は化粧で上手に隠してくれているが、身体中に残る痕跡。輿入れしてわずか半年で、二子を儲け、第三子を腹に抱え。女公との面会は、平日の午後。しかもこちらから招いておきながら、度々「事情で」キャンセルされている。アネシュカは、
「良い。龍族の嫉妬深さは良く知っておる。しかしそなたの夫は…」
やめてくれ。気の毒そうな目で見ないでくれ。
彼女の言う通り、唯一の救いは、夫のレナードが勤勉に執務に励んでいることだ。ただでさえ個体数の少ない龍神、この世界の異常気象を修正するため、一度現地に赴けば、数週間、時には数ヶ月掛けてバランスを調整するのだが、レナードは朝イチですっ飛んで行って、夕刻には帰って来る。無論番と睦み合う為だ。皇位継承権第7位でありながら、既に次代の皇帝との呼び声も立つほどの有能さを誇る、漆黒の玲那皇子。しかし当の本人には、帝位への興味はないらしい。
「さて、私はそろそろ退散するか。悋気を当てられては堪らんのでな」
アネシュカは、そう言って席を立った。そして私の肩をポンと叩き、「達者でな」と。次に彼女と会えるのは、何日後になるだろう。
その日、レナードは上機嫌で帰って来た。
「お前が陽根の棘が気に入らぬと言うのでな」
陽根ことペニスの形を変える術を会得したらしい。一年前、スライムに媒介される形で結ばれ、人化のスキルを覚えた彼だが、その後も力を得るたびに、あちこち進化を果たしている。彼の背から広がる白い翼は更に大きく力強く、元来の風属性と相俟って、地上の生物の中で最速の飛行能力を誇るそうだ。毎日顔を合わせているからなかなか気付かないが、少し大人びて、身体つきも逞しくなってきた気もする。龍神は寿命が長いので、一年やそこらで姿形が変わるほどの成長は起こらないというのが定説らしいのだが、そんな彼が急速に進化するということは、つまり…
いや、そうじゃない。今レナードは、何と言った?
「私を目の前にして、考え事か。いけない妻だ」
「あっ、ちょっ!」
思考が戻った時には、私の旗袍はスルリとはだけ落ち、目の前には夫のそれが突きつけられていた。私は目を瞠った。確かに彼の下腹部には、昨夜までとは違う、つるりとしたモノが生えていた。表面は柔らかい鱗で覆われ、独特の光沢を放つ。それが一本。彼のペニスは、いわゆるヘミペニスと呼ばれる二本の棘のあるペニスだったが、形状どころか本数まで。というか、鱗で覆われたペニスなど、寡聞にして聞いたことがない。私は自分の置かれている状況も顧みず、夫のそれをまじまじと観察した。
しかし、二本が一本になったせいか、大きさは元のものより更に立派だ。元のそれもかなりの逸物、子供の肘から先ほどもある凶悪なものだったが、これは大人の女性のそれくらいあるのではないだろうか。先は元のものとも人間族のものとも違い、つるりと丸まっている。まるで巨大な試験管のようだ。そして何と、鱗に覆われているにも関わらず、脈打っているのが分かる。既に緩く勃ち上がっているが、完全に勃起したらどうなるのだろう。鱗は?引き抜く時に逆立ったりしない?一体どんな構造に…
「ふふ、積極的だな。そんなに気に入ったか」
寝台にふわりと押し倒されて、それでもまだ興味深く観察を続ける私を、レナードは満足げに見下ろし、それを口元に押し付けた。私はおずおずと舌を這わせる。あ、先端にはちゃんと小さな穴が開いている。先走りが苦い。黒光りするそれは、一見冷たそうに見えるが、しっかり熱い。そういえば、いつもはさっさと挿入されてしまうから、滅多と口淫に及んだことはないが、このペニスは一体どこが感じるのだろう。やはり鱗にも神経が?
そんなことをしているうちに、夫のそれは完勃ちしていた。レナードは「堪能したか?」と艶っぽく声を掛けた後、私の口からそれを離し、脚を抱え上げて後孔へ当てがった。
「はうっ…!!」
夫の肌から伝わる龍気に当てられて、私の雄膣はすっかり潤っていた。愛液の滴るそこに押し付けられたそれは、あくまで滑らかで、しかしいつもの陽根よりも更に大きく…
「やっ、待ってっ!待ってッ!!」
拳を突き入れられるほどの衝撃。経産夫の私でもキツい。メリメリッ、メリメリッと拓かれて、まるで初めて彼を受け入れた時のようだ。痛くて、苦しい…しかしそれを何倍も上回る、狂おしいほどの快感。
「あっ、あっ、やっ…はぁぁんッ♡!!!」
小刻みに腰を揺らしながら、レナードは少しずつ侵入って来る。その度に、身体中がゾクゾクして止まらない。彼のペニスが前立腺を掠めればイき、奥に進めばイき。でもまだ全部入らない。彼の棘ペニスも、ナカをくまなく撫で回して、いつも私を狂うほど追い詰める。だがこの鱗ペニスは、圧倒的な質量と硬度で、理屈じゃなくて気持ちいい。凡そ人体が飲み込めるようなモノではないのに------いや、私の身体は既に人ではないものに作り変えられてはいるが------つるつるとした鱗と、とめどない愛液が、それを私の中にヌルリと招き入れる。
やがてそれは、私の一番奥まで到達した。そこから先は、卵を孕んでいるので侵入することは出来ない。だが長大な鱗ペニスは、全て収まり切っていない。私は脚を限界まで拡げ、串刺しにされたまま、背筋を反らしてはふはふと空気を求めた。巨大な異物に内臓が押し潰され、呼吸すらままならない。
「随分と快いようだな。お前に歓んでもらえて、私も嬉しい」
「はっ♡、あはっ♡、あ♡…」
もう意味のある言葉を紡ぐ余裕はなかった。挿れられただけで、私の腹には自分の吐いた白濁で水たまりが出来ている。内側から強く圧迫されているせいか、分身は萎える様子を見せない。私の身体は、夫の陰茎に全て支えられているかのよう。きつくシーツを掴んで耐えているが、ああそうだ。私はまだ夫を受け入れたばかりで、彼はまだ一度も達していない。
不吉な予感しかない。
「い”や”あ”あ”あ”あ”ッ!!ゆ”る”し”て”ッ!!ゆ”る”し”て”え”ぇぇッ!!!」
ぬちょぬちょぬちょぬちょ。
ぶっといヌルヌルペニスで、超高速ピストン。外側からでも分かるほど、腹がボコボコと押し上げられる。
「ははは。気に入ったか我が妻よ。今宵は存分に愛でてやろうぞ」
今宵は、ではない。今宵も、だ。だが今宵は特に、夫は一向に達する気配がない。やはり鱗は感覚が鈍いのか。長らく激しい抽送を受け続け、もう声が枯れそうだ。ふつっと意識が途切れては、また腹への衝撃で目覚める。この繰り返し。腹の子は大丈夫か…と思いきや、卵の中からはきゃっきゃと喜んでいる気配がする。丈夫な子が生まれそうだ。この子はきっと、夫似だろう。などと、自分と切り離された自分が、ぼんやりと考える。
ーーーもう絶対、この形の夫は受け入れまい。
胎の奥に熱い龍気の奔流を受け止めながら、私は何度目か、意識を手放した。
気が付けば翌々日の朝。ちょうど彼が執務に出立する前に目が覚めた。龍袍を纏い、剣を佩き、背中のスリットから見事な翼を覗かせるレナードは、思わず目を奪われるほど美しい。
「目覚めたのか、ローレンス」
彼は穏やかに微笑んでいる。毎晩拷問のように抱き潰されるのが、嘘のようだ。だが私はまだ、あの鱗のアレでぶっ続けでアレされたことを、許してはいない。黙って視線を逸らせば、レナードは寝台に腰掛け、私の髪を梳く。
「愛しい我が番。夕刻までには戻るゆえ」
「…」
そうなのだ。彼は他の龍神が何日も掛けて取り組む任務を、一日で終わらせて帰って来る。私と夜を過ごす為。髪を一房手に取り、目を細めて口付ける夫に、つい絆されてしまう。幼少期からほんの一年前まで共に育った、小さな翼蛇の姿を知っていれば、尚更だ。
「…無事に帰って来い」
私はそっぽを向いたまま、ぼそりと呟いた。レナードは破顔すると、
「早く帰る」
耳元にそう吹き込み、そのまま身を翻し、露台より飛び去った。
一人取り残された寝台には、夫の温もりが残る。彼の龍気は私の体力も魔力も回復するが、あちこちに残されたキスマークと噛み跡、そして疲労感や筋肉痛はそのままだ。私は気怠い身体でもぞりと身じろぎし、夫の香りに包まれながら、再び惰眠を貪る。
若く才気煥発な夫に情熱的に求められ、喜ぶべきなのだろう。世には心の通わぬ冷え切った夫婦などごまんといる。もし将来、レナードからの寵愛が失われるようなことがあれば、どれほど心が渇き、ひび割れることか。だがやはりどうしても------毎晩死ぬんじゃないかと思えるような苛烈な営み。きっと人間の身体のままなら死んでいる------特に昨晩のあれはない。どうして夫は、セックスだけは斜め上に突き抜けてしまうのか。
幸せだ、自分は幸せなはずなのだと思いつつ、しかし時々分からなくなる、私なのだった。
龍神の仕事は、世界のエネルギーバランスの調整、とりわけ気象を司る。この世界に住まう者の、雨乞いや日乞い、災難消除の祈り、それが変じて龍神となったという説と、もとより存在するこの世界の自然エネルギーが人格を得たものが龍神、という説があるのだと、知己を得たエルフの女公アネシュカは教えてくれた。私が長年抱いていた疑問、しかし故国では知りようもない答えを、アネシュカは事も無げに披露する。ああ、私にとって皇国とは何という理想郷だろう。
龍神が世界に介入するためには、長い年月を掛けて物質界に馴染み、力を付ける必要がある。最も近道は、物質界の番を得て、情を交わすことなのだそうだ。
「まだ歳若き皇子が、八面六臂の活躍。この世界にとっては喜ばしいことだが…」
アネシュカは、何とも言えない表情で言葉を止めた。私も居た堪れなくなって目を逸らす。そう。歳若き皇子が何でそんな力を得ているのかなど、皆まで語らずとも一目瞭然だ。女官は化粧で上手に隠してくれているが、身体中に残る痕跡。輿入れしてわずか半年で、二子を儲け、第三子を腹に抱え。女公との面会は、平日の午後。しかもこちらから招いておきながら、度々「事情で」キャンセルされている。アネシュカは、
「良い。龍族の嫉妬深さは良く知っておる。しかしそなたの夫は…」
やめてくれ。気の毒そうな目で見ないでくれ。
彼女の言う通り、唯一の救いは、夫のレナードが勤勉に執務に励んでいることだ。ただでさえ個体数の少ない龍神、この世界の異常気象を修正するため、一度現地に赴けば、数週間、時には数ヶ月掛けてバランスを調整するのだが、レナードは朝イチですっ飛んで行って、夕刻には帰って来る。無論番と睦み合う為だ。皇位継承権第7位でありながら、既に次代の皇帝との呼び声も立つほどの有能さを誇る、漆黒の玲那皇子。しかし当の本人には、帝位への興味はないらしい。
「さて、私はそろそろ退散するか。悋気を当てられては堪らんのでな」
アネシュカは、そう言って席を立った。そして私の肩をポンと叩き、「達者でな」と。次に彼女と会えるのは、何日後になるだろう。
その日、レナードは上機嫌で帰って来た。
「お前が陽根の棘が気に入らぬと言うのでな」
陽根ことペニスの形を変える術を会得したらしい。一年前、スライムに媒介される形で結ばれ、人化のスキルを覚えた彼だが、その後も力を得るたびに、あちこち進化を果たしている。彼の背から広がる白い翼は更に大きく力強く、元来の風属性と相俟って、地上の生物の中で最速の飛行能力を誇るそうだ。毎日顔を合わせているからなかなか気付かないが、少し大人びて、身体つきも逞しくなってきた気もする。龍神は寿命が長いので、一年やそこらで姿形が変わるほどの成長は起こらないというのが定説らしいのだが、そんな彼が急速に進化するということは、つまり…
いや、そうじゃない。今レナードは、何と言った?
「私を目の前にして、考え事か。いけない妻だ」
「あっ、ちょっ!」
思考が戻った時には、私の旗袍はスルリとはだけ落ち、目の前には夫のそれが突きつけられていた。私は目を瞠った。確かに彼の下腹部には、昨夜までとは違う、つるりとしたモノが生えていた。表面は柔らかい鱗で覆われ、独特の光沢を放つ。それが一本。彼のペニスは、いわゆるヘミペニスと呼ばれる二本の棘のあるペニスだったが、形状どころか本数まで。というか、鱗で覆われたペニスなど、寡聞にして聞いたことがない。私は自分の置かれている状況も顧みず、夫のそれをまじまじと観察した。
しかし、二本が一本になったせいか、大きさは元のものより更に立派だ。元のそれもかなりの逸物、子供の肘から先ほどもある凶悪なものだったが、これは大人の女性のそれくらいあるのではないだろうか。先は元のものとも人間族のものとも違い、つるりと丸まっている。まるで巨大な試験管のようだ。そして何と、鱗に覆われているにも関わらず、脈打っているのが分かる。既に緩く勃ち上がっているが、完全に勃起したらどうなるのだろう。鱗は?引き抜く時に逆立ったりしない?一体どんな構造に…
「ふふ、積極的だな。そんなに気に入ったか」
寝台にふわりと押し倒されて、それでもまだ興味深く観察を続ける私を、レナードは満足げに見下ろし、それを口元に押し付けた。私はおずおずと舌を這わせる。あ、先端にはちゃんと小さな穴が開いている。先走りが苦い。黒光りするそれは、一見冷たそうに見えるが、しっかり熱い。そういえば、いつもはさっさと挿入されてしまうから、滅多と口淫に及んだことはないが、このペニスは一体どこが感じるのだろう。やはり鱗にも神経が?
そんなことをしているうちに、夫のそれは完勃ちしていた。レナードは「堪能したか?」と艶っぽく声を掛けた後、私の口からそれを離し、脚を抱え上げて後孔へ当てがった。
「はうっ…!!」
夫の肌から伝わる龍気に当てられて、私の雄膣はすっかり潤っていた。愛液の滴るそこに押し付けられたそれは、あくまで滑らかで、しかしいつもの陽根よりも更に大きく…
「やっ、待ってっ!待ってッ!!」
拳を突き入れられるほどの衝撃。経産夫の私でもキツい。メリメリッ、メリメリッと拓かれて、まるで初めて彼を受け入れた時のようだ。痛くて、苦しい…しかしそれを何倍も上回る、狂おしいほどの快感。
「あっ、あっ、やっ…はぁぁんッ♡!!!」
小刻みに腰を揺らしながら、レナードは少しずつ侵入って来る。その度に、身体中がゾクゾクして止まらない。彼のペニスが前立腺を掠めればイき、奥に進めばイき。でもまだ全部入らない。彼の棘ペニスも、ナカをくまなく撫で回して、いつも私を狂うほど追い詰める。だがこの鱗ペニスは、圧倒的な質量と硬度で、理屈じゃなくて気持ちいい。凡そ人体が飲み込めるようなモノではないのに------いや、私の身体は既に人ではないものに作り変えられてはいるが------つるつるとした鱗と、とめどない愛液が、それを私の中にヌルリと招き入れる。
やがてそれは、私の一番奥まで到達した。そこから先は、卵を孕んでいるので侵入することは出来ない。だが長大な鱗ペニスは、全て収まり切っていない。私は脚を限界まで拡げ、串刺しにされたまま、背筋を反らしてはふはふと空気を求めた。巨大な異物に内臓が押し潰され、呼吸すらままならない。
「随分と快いようだな。お前に歓んでもらえて、私も嬉しい」
「はっ♡、あはっ♡、あ♡…」
もう意味のある言葉を紡ぐ余裕はなかった。挿れられただけで、私の腹には自分の吐いた白濁で水たまりが出来ている。内側から強く圧迫されているせいか、分身は萎える様子を見せない。私の身体は、夫の陰茎に全て支えられているかのよう。きつくシーツを掴んで耐えているが、ああそうだ。私はまだ夫を受け入れたばかりで、彼はまだ一度も達していない。
不吉な予感しかない。
「い”や”あ”あ”あ”あ”ッ!!ゆ”る”し”て”ッ!!ゆ”る”し”て”え”ぇぇッ!!!」
ぬちょぬちょぬちょぬちょ。
ぶっといヌルヌルペニスで、超高速ピストン。外側からでも分かるほど、腹がボコボコと押し上げられる。
「ははは。気に入ったか我が妻よ。今宵は存分に愛でてやろうぞ」
今宵は、ではない。今宵も、だ。だが今宵は特に、夫は一向に達する気配がない。やはり鱗は感覚が鈍いのか。長らく激しい抽送を受け続け、もう声が枯れそうだ。ふつっと意識が途切れては、また腹への衝撃で目覚める。この繰り返し。腹の子は大丈夫か…と思いきや、卵の中からはきゃっきゃと喜んでいる気配がする。丈夫な子が生まれそうだ。この子はきっと、夫似だろう。などと、自分と切り離された自分が、ぼんやりと考える。
ーーーもう絶対、この形の夫は受け入れまい。
胎の奥に熱い龍気の奔流を受け止めながら、私は何度目か、意識を手放した。
気が付けば翌々日の朝。ちょうど彼が執務に出立する前に目が覚めた。龍袍を纏い、剣を佩き、背中のスリットから見事な翼を覗かせるレナードは、思わず目を奪われるほど美しい。
「目覚めたのか、ローレンス」
彼は穏やかに微笑んでいる。毎晩拷問のように抱き潰されるのが、嘘のようだ。だが私はまだ、あの鱗のアレでぶっ続けでアレされたことを、許してはいない。黙って視線を逸らせば、レナードは寝台に腰掛け、私の髪を梳く。
「愛しい我が番。夕刻までには戻るゆえ」
「…」
そうなのだ。彼は他の龍神が何日も掛けて取り組む任務を、一日で終わらせて帰って来る。私と夜を過ごす為。髪を一房手に取り、目を細めて口付ける夫に、つい絆されてしまう。幼少期からほんの一年前まで共に育った、小さな翼蛇の姿を知っていれば、尚更だ。
「…無事に帰って来い」
私はそっぽを向いたまま、ぼそりと呟いた。レナードは破顔すると、
「早く帰る」
耳元にそう吹き込み、そのまま身を翻し、露台より飛び去った。
一人取り残された寝台には、夫の温もりが残る。彼の龍気は私の体力も魔力も回復するが、あちこちに残されたキスマークと噛み跡、そして疲労感や筋肉痛はそのままだ。私は気怠い身体でもぞりと身じろぎし、夫の香りに包まれながら、再び惰眠を貪る。
若く才気煥発な夫に情熱的に求められ、喜ぶべきなのだろう。世には心の通わぬ冷え切った夫婦などごまんといる。もし将来、レナードからの寵愛が失われるようなことがあれば、どれほど心が渇き、ひび割れることか。だがやはりどうしても------毎晩死ぬんじゃないかと思えるような苛烈な営み。きっと人間の身体のままなら死んでいる------特に昨晩のあれはない。どうして夫は、セックスだけは斜め上に突き抜けてしまうのか。
幸せだ、自分は幸せなはずなのだと思いつつ、しかし時々分からなくなる、私なのだった。
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