【完結・R18BL】手乗りスライムのロームと僕〜スライムを拾ったら、なぜか侯爵令息に溺愛されました?!【御礼SS追加】

明和来青

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スライムはねらわれた!

スライムが戻ってきた! ※

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 日曜日の午後、キース様はローレンス様の寮室に出かけ、事前の予想通り、ロームを返してもらった。僕は狐につままれたような気分だったけど、キース様は

「二体以上の従魔を従えるのは難しいと教えてくれたのは、ジャスパーだよ」

 と爽やかに微笑んだ。



 かつてキース様に、従魔についてつたないレポートをまとめ、お渡ししたことがある。将来キース様が従魔を得るにあたり、何かお力になれないかと。その時、上位貴族は従魔を従える方が少なくないのに、複数体を従える方はごく数えるほどしかいないことに気付いた。その理由は、従魔との契約内容によったり、召喚維持のための魔力量によったり、従魔の性質によったり、様々なのだけれど。

 ローレンス様が従えるのは、リドゲート一族を守護する翼蛇よくじゃだ。詳細については、リドゲート家の機密なので、門外不出とされているんだけど、彼らは家系ごと契約を交わしているようで、一人につき一体、生まれた時からずっと共に育つらしい。

 世界各地には似たような魔獣や神獣は存在するもので、かつて南の大陸に、翼を持つ蜥蜴とかげを紋章に掲げる王家があったそうだ。伝承によれば、蜥蜴は龍神の末裔であり、一族には一人につき一体の蜥蜴が付き、あるじの危機の際には聖なる炎を操り、これを護ったと言われている。

 しかしその王家が何故滅びたかというと、それは異国から従魔を従える姫をめとったからだと伝えられている。時の王は、妻と共に妻の従魔も大切に遇したのだけれど、王の蜥蜴はそれを良しとせず、ある日王家に従う全ての蜥蜴が一斉に姿を消したそうだ。加護を失った王家は日に日に傾き、やがて間もなく隣国に併合され、滅びたのだとか。

「ドラゴンは良き伴侶となると思います。ですが、愛情深い性質でもあるので、他の従魔との共存は難しそうですね…」

 確かに僕は、キース様とそんな話をしたと思う。その一言を、キース様は憶えていて下さった。そして、ローレンス様の翼蛇がドラゴンの類系と推定され、愛情深く嫉妬深いドラゴンならば、ロームを拒絶するだろう、と。僕はキース様の慧眼けいがんに心が震えた。最初にロームがえた時、キース様が声を掛けて下さって、本当に良かったと思う。



「心配要らないって言っただろ。だけど、君がこうして安心する姿が見られて、良かった」

 キース様の姿をしたロームが、大きな手のひらで僕の頬を包む。いつしかこんなやり取りも、慣れてしまった。いや、いつまで経っても心臓はばくばくとうるさいままだ。だけど、そのまま長い腕に絡め取られ、広い胸に寄り添っていると、ああ、ずっとここに居たいなぁ、なんて思ってしまう。

 間もなくふわりと身体が離れ、耳の横で軽くリップ音がする。甘い声で「おやすみ」と囁かれて、今夜の通信実験は終わりだ。胸の奥がキュッとなるのに気付かないフリをしながら、僕も「おやすみなさいませ」と返す。何とか微笑んだつもりだが、不自然じゃなかっただろうか。

 その後は、いつものが始まる。ロームの擬態はどんどん進化して、もう「魔力ちょうだい」とか「魔力おいしい」とか言わなくなった。キース様の姿で「おまんこ」とか言わせようとするのは参ってしまうけど、ただ無言で甘く抱かれるのは、もっと困る。

「は、あっ、キース、様…」

 正常位で深く繋がってゆっくりと揺すられると、身体だけじゃなく、心までドロドロに溶けてしまう。抗いようのない多幸感で、脳がどうにかなってしまいそうだ。駄目だ、ローム。お願いだから、そんな目で見ないで。愛しそうにすがめられ、熱っぽい視線を向けられると、僕はそれだけではしたなく感じて、もうイきそうになってしまう。

「ジャスパー…」

 耳元をくすぐるキース様の掠れた声に、僕はまた射精した。しかしまだ夜は終わらない。魔力切れで気を失うまで、僕のそこは何度でも回復させられて、キース様の逞しい分身に延々と狂わされる。ああ、イったばかりなのに、キース様の抽送が、どんどん速くなっていく…

「ひああッ♡!!キース様ッ♡!!ナカ…イっぐぅ…♡!!!」

 どくどくと注がれる熱い寵愛を、涙を流しながら胎内に飲み干す。気持ちいい。もうずっと、このままでいたい。



 あれから3週間。今日は学園の卒業パーティーだ。僕たち二年生は、在校生として三年生を送り出す立場で、パーティーに参加している。

 ローレンス様の身辺が、急に慌ただしく動いた。ロームと共に僕を魔法省に勧誘して下さったローレンス様は、あと一年の在学期間を残し、遠くニルヴァーナ皇国へ魔法省特使として派遣されることとなった。ただし、特使とは表向きの理由で、実際は皇族に輿入れされるのだという。

 ローレンス様も僕も、学園を卒業するのに必要な単位は、二年次で取得してしまった。僕はこれから就職活動に勤しまなければならないが、ローレンス様は、許嫁である皇子様が、彼の卒業と魔法省入省まで待てなかったそうだ。二人は、ホールの中央で仲睦まじく踊っている。僕と同じくらい小柄で、だけど精悍な若い皇子様が男性パート。黒の貴公子と呼ばれる長身のローレンス様が女性パート。いつもクールなローレンス様が、とろけるような笑みで皇子様とダンスを踊られるのを、みんなうっとりと見つめていた。

 ふと視線を上げると、壇上には在校生代表のケネス殿下、お隣には婚約者のクリスティン様。そして背後には、白い軍服をきっちりと着込んだ、眩しいほどに凛々しいお姿のキース様。その肩には、ヴェズルフェルニルと呼ばれる立派な鷲の従魔が止まっている。ローレンス様を迎えに来られた皇子様が、友好の証にと、まだ公式に従魔を持たないキース様へ贈られたものだ。

 僕は会場の隅で、制服姿。ポケットと手のひらの上には、三体のローム。キース様に預けていた二体は、僕とお留守番だ。ああ、遠いな。ステージの上は雲の上。一瞬キース様がこちらに視線を向け、微笑んだ気がしたが、気のせいだ。

 パーティーが終わったら、三学年が始まる。就職活動、頑張らないとな。それにしても、僕はちゃんとロームを三体養い切れるだろうか。一体でも持て余しているのに、二体の時はそりゃあ大変だった。三体なんて、毎晩どうやって相手をすればいいんだろう。そして出来ればもう、キース様の擬態は、やめて欲しいような…やめて欲しくないような。

 僕はため息をつきながら、文官志望の友人たちと、壁際でおとなしくジュースを飲んでいた。
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