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スライムはねらわれた!

ローレンスは観察した! ※

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今回はローレンス視点です

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 とにかくそのスライムは異質だった。これまで代々魔法大臣を預かるリドゲート一門として、魔術や魔獣、従魔については、幼少期より造詣ぞうけいが深いものだと自負していた。しかし、手のひらサイズで、人懐っこくふるふる震えるスライムは、色や質感こそスライムのようだったが------スライムと言えば、ダンジョンや魔素の濃い森で、水たまりのように擬態して這いずり回り、触れるものを全て酸で溶かして消化吸収する、知性の欠片もない魔物のはずだ。仮に教師が推測した通り、それが幼生だったとしても、幼生のまま繁殖分裂するなど聞いたことがない。到底、看過出来るものではなかった。

 前々から私の興味を惹いてやまない、ジャスパー・ジュールの従魔スライム。二体に分裂した際にはキース・ケラハーに先を越されたが、三体に分裂することがあれば一体貰い受けようと、ずっと狙っていた。ついでにその主人、ジャスパーもだ。彼は同期の中でも突出した成績を誇り、向学心も旺盛で、非常に研究職に向いている。ジュール家の後継でもなく、王都での就職を希望しているらしい。ならばスライムと共に魔法省にスカウトすれば、すぐに首を縦に振るだろうと考えていた。

 しかし、それを阻んだのが、またしてもキース・ケラハー。彼は言うに事欠いて、何と三体目も貰い受ける約束をしていたと。

「ローレンス。僕はジャスパーにロームを譲り受けて、分かったことがある。従魔と主人との間には、絶対的な信頼関係が必要だ」

「僕はいずれ、自分の従魔を持とうと思っている。しかし二体以上の従魔を持つに当たり、相性や感情、序列や愛着などの関係性を慎重に観察し、バランス調整が必要なのではないかと考える」

「二体以上の従魔を円滑にテイムするため、僕はロームをもう一体譲り受けたいのです」

 なるほど、騎士連中の言いそうなことだ。従魔を持つ騎士にとって、従魔の戦力を当てにできるかどうかは、すなわち命に関わる。従魔との間の信頼関係、連携、そういったものを重要視する考えは、理解できないこともない。しかし、ならば尚更、我々にスライムを委ね、研究を深めるべきだ。絆、忠誠、思いやりなど、そんなあやふやで不確実な概念に頼るのではなく、彼らがどのように主人の命令を理解し、受け入れ、従うか、そういった論理的で、再現性の高い考察を積み重ねるべきだ。それが、ひいては従魔を持つ者や騎士団全体の戦力向上にも繋がると、何故理解しない。

 ところが、キース殿は最後にこう提案した。

「そこでだ。ローレンス、君もスライムに興味があるようなので、試しに週末、飼育してみるのはどうだろう」

 彼はスライムを私に譲るのではなく、自身が貰い受けたいはずだ。ならば何故、そのような案を提示してくるのか。まるで「スライムを飼育できるものならしてみろ」とでも言いたげな彼は、スライムとの間に、一体どのような関係性を持つというのだろう。とにかく、一時いっときでも例のスライムを観察できるならば、私としてもやぶさかではない。彼らの言う通り、ただ単に手のひらの上で震えるだけの脆弱な魔物なのか、あるいはまだ見ぬ可能性を秘めた神秘への扉なのか。スライムを貰い受ける交渉を続けるのは、その後でもいいだろう。



 金曜日の夜。寮の私室に、キース殿が訪ねて来た。

「ロームは何でも食べるが、魔力で飼育が可能だ。就寝前に手のひらから魔力を注ぐことで、問題なく生命活動は維持できる」

「承知した」

「あと念のため、ロームは時折跳ねることがある。基本、この寮室からは出さないようにしてくれ」

 彼は、日曜日の午後また迎えに来ると告げ、去って行った。



 キース殿からスライムを受け取った私は、早速彼を机に乗せ、まじまじと観察する。

「名はロームと言ったか」

 ふるふる、ふるふる。

「ケネス殿下は、まるで人語を解しているようだとお考えのようだったが…」

 ふるふる、ふるふる。

 埒が開かない。

「レナード。このスライム、どう思う」

 私は、従魔のレナードに意見を求める。レナードは、代々リドゲート一族に従う、翼を持つ蛇だ。言い伝えによれば、彼らは龍神の末裔で、一度ひとたび荒ぶればいかずちを用いて敵をちゅうす、とされているが、実際は時々治癒の能力を発揮するだけの、小ぶりで大人しい魔物だ。レナードは「キュウ」と鳴き、つぶらな瞳で私とスライムを交互に見ている。

 確かに、従魔に愛嬌があるのは分かるのだ。私とて、幼い頃から共に育ったレナードには、それなりの愛着はある。そして、キース殿が言う「相性や感情、序列や愛着などの関係性」というのも、分からなくもない。レナードやこのスライムなど大人しい個体ならばともかく、ケネス殿下の獅子やクリスティン嬢の鳳雛ほうすうなどは、賢くも気高い神獣。キース殿がもし今後、同様の従魔を得た場合、スライムのような脆弱な魔物と共存させることはできるのか、従順にテイムすることはできるのか、懸念するのも理解できないことではない。

 だからと言って、後から強力な従魔を得たからと、元から従えていた従魔を放逐するのも違うしな。

 ぐるぐると考察を巡らせる私とは裏腹に、ふるふる、ぷよぷよと体を揺するだけの、小さな水色の塊。色々難しく考えているのが、馬鹿らしくなってしまう。なるほどこれは、手放すのが惜しくなるのも分かる。そして、研究対象として差し出すことに躊躇ためらうのも。リドゲートの一門として、一流の研究者たれと常に学業に邁進まいしんしてきたが、こうして何も考えずにぼんやりと過ごす時間など、実に久しぶりだ。そこはかとなく癒される。私はスライムを調べ上げるために、デスクには紙とペンを用意して待ち構えていたが、彼からはもっと大事なことを教わったかもしれない。

 すっかり毒気を抜かれて、早々に休むことにする。彼は日曜日に返すことになっているから、明日一日はじっくり向き合うことができる。私はレナードと共に、ベッドに入った。



 枕元に置いたスライムは、相変わらずぷるぷると震えている。私はそれを手のひらに乗せ、魔力を流した。スライムはぼんやりと光っている。興味深い。レナードも、物珍しそうに見ている。そういえば、レナードとこうして触れ合いながらベッドに入るのは、久しぶりだな。俺の胸の上にちんまりと陣取り、「キュウ」と鳴きながら観戦しているレナードを、空いた手でよしよしと撫でてやる。悔しいが、確かに従魔との間の愛着や愛情、絆などは大事かもしれない。キース殿の言う通りだ。

 やがてスライムは、身体の一部を伸ばして来た。おお、やはり野生のスライムのように、水平方向にも自在に変形するようだ。一旦起き上がって記録すべきかと迷ったが、このまま観察を続けることとする。

 スライムは、手のひらから腕の方向に向けて、じわじわと身体を伸ばしている。推測だが、どうも私の皮膚との接地面積を増やし、より魔力を効率的に吸収しようとしているらしい。これは知性のものなのか、それとも本能的な行動なのだろうか。考察している間にも、スライムはどんどん伸びる。しかも薄く伸びているというよりは、全体的な質量も体積も増しているようだ。実に興味深い。レナードも、舌をチロチロと出しながら、じっと観察している。

 突如、スライムが急速に伸長した。

 これまでのゆっくりとした動きから一転、機敏に身体をくねらせて、一方向のみならず四方八方に身体を伸展させている。より野生のスライムの動きに近い。かといって、私の手や皮膚を酸で溶解する様子は見られない。スライムとは、思ったよりも高等な生物なようだ。感心しているうちに、彼は「ずぞぞぞっ」とパジャマの袖口から中に侵入してきた。

「は…?」

 あっという間に胸部まで辿り着き、そこで身体を拡げたスライムは、あろうことか両乳首を覆ってもぞもぞと振動を始めた。

「ちょ…待てっ…!」

 私は慌てて半身を起こし、パジャマをくつろげる。上に乗っていたレナードも、スライムの突飛な行動に「シャーッ」と警戒音を立てている。

「駄目だレナード。このスライムは預かり物だ。傷付けては…」

 レナードをなだめながら、スライムの観察はおこたらない。何とスライムは、手のひらで魔力を与えている時より、少し強く光っている。これはまさか…手のひらよりも、乳首の方が魔力の放出量が多いということだろうか。だとすると、スライムは寄生先の生物の魔力の多寡たかを感知する能力があるということか。

 しかし、乳首とは。ジャスパーがスライムの譲渡に難色を示したのは、まさかこれが原因で?彼はいかにも性体験が乏しそうな外見と物腰だが、ひょっとして毎晩こんなことを?いやいや。キース殿は「手から」魔力を与えると言っていた。ならばこの食餌行動は、私だけ?それとも今回だけなのだろうか。

 まあいい。私はそれなりに女もたしなんでいるし、乳首で特別な感覚を得たりもしない。ただ少しくすぐったいだけだ。しかし、人体の構造上、手のひらよりも乳首の方が魔力を放出するのに適しているとなると、これは魔術の在り方が根本から変わるな。将来宮廷魔術師団は、手からではなく乳首を露出して魔術を放つ日が来るかもしれない。視覚的にはおぞましいことこの上ないが、それで威力が変わるとなれば、背に腹は…

「?!」

 などと考えているうちに、スライムの動きが少しずつ変化を見せる。彼は粘液を分泌したらしい。乳首からは「くちっ、くちっ」と微かな水音とともに、嬲られ、吸われ、捏ねくり回され、時々歯を立てるような刺激を感じる。何だこれは。女の乳首のように、俺のそれを開発しようとしているのか。待て待て、相手はスライムだ。まさかそんな。

「くっ…」

 粘液が触れたところが、じわじわと熱を帯びてくる。毒ではなさそうだが、何らかの生理反応を引き起こす作用があることは間違いなさそうだ。いや、はっきり言おう。性感を高められている。そして乳首からえもいわれぬ刺激を感じ取れば感じ取るほど、スライムの発光は強くなる。

 その間にもレナードは、常に警戒音を発している。小さな身体で、私を勇敢に護ろうとしているのだ。何と健気な。私は彼の心配を取り除く為にも、この給餌を止めさせるべきか迷う。だが、スライムが発光しながら乳首から魔力を吸収するなど、こんな興味深い現象を、見過ごす訳には行かない。この後どうなるのだ?どうするつもりなのだ?この世紀の発見を前にしては、多少乳首がじんじんするくらい、どうということはない。

 私の期待に応えてか否か、スライムは活発に乳首を吸い上げながら、より多くの魔力を吸収するために、尚もその版図はんとを拡げていた。今や彼は私の上半身のほとんどを覆い尽くし、もぞもぞとうごめいている。彼が反応を示したところは、首筋、脇、へそ辺りだろうか。血流の多く集まる場所でもある。なるほど、魔力の循環は血流と関係すると言われているが、ならば彼の動きも理にかなっていると言えるだろう。しかし、それらの場所に粘液を塗りつけ、ぬるぬると這い回られると、まるで舌で舐めまわされているような、妙な感覚に。

 そして、ああ、予想はしていた。血液の集まる場所といえば。

「やっ、馬っ、そこっ…!」

 スライムはとうとう陰茎まで到達した。水色の軟体がぬちゃりとまとわり付き、しばらく反応を確かめた後、一気に全体を包み込まれ、粘液と共に揉みくちゃにされる。

「あっ…はっ…」

 最初はうぞうぞと無秩序にうごめいているだけだった。だが乳首同様、彼は様々なパターンの試行を繰り返し、私のペニスに適切な刺激を与えて来る。率直に言えば、気持ちがいい。これは、本能的な行動なのか?それとも思考でもって判断している?もしこれが思考の上での産物ならば、このスライムの知能と学習能力は、恐ろしいほど高いということになる。

 いずれにせよ、危険だ。魔力を効率的に摂取するために、このスライムは短時間で私の身体を調べ上げ、間もなく射精まで追い詰めようとしている。だが吐精後、彼がどういう行動を取るのか、大変興味がある。そして私も男だ。ここまで来て、止まれる訳がない。そばで心配気に見守るレナードには申し訳ないが、ああ駄目だ。もう、るッ…!

「はぁッ…!!」

 どくん、どくんと白濁を吐き出す動きに合わせ、スライムは卑猥に明滅を繰り返す。彼の中に摂り込まれた精液が、しゅわしゅわと泡を立てながら消化されて行くのが見える。ああそうだ。淫魔は人間から精を搾り取ることで力を得るが、結局あれは魔力なんじゃないだろうか。精液に魔力が含まれるということであれば、この行動も頷ける。ならば、ジャスパーとキース殿、あの二人は…

 射精後の気怠さの中、回らない頭で、ぼんやりとそんなことを考える。ああ、これで魔力の譲渡は終わったか。それにしても、スライムの生態は分からないことだらけだ。これは一度試しに飼育してみるどころか、本格的に譲渡を受ける方向で働き掛けねばなるまい。だが、キース殿がやけにあっさりスライムを貸し出したのが気に掛かる。もし彼らが、このような破廉恥な給餌行動を行っているようであれば、敢えて私にこうしてスライムを差し向けたりしないだろう。いや、逆にこういった性的な給餌を経験させることで、私がスライムから手を引くことを狙っていた…?

 思考の海を彷徨さまよっている私の上で、スライムは静かに沈黙していた。考えていても仕方ない。明日もあるのだ。今夜は身体を清めて、一旦休もう。そういえば、この大きく拡がったスライムは、どうやって元の姿に戻るのだろうか。

 うぞり。

 そんな私の考えを察してか否か、スライムは再び、身体を小さく震わせた。



「なッ…お前ッ!!」

 流石に、今度という今度は、私ものんびり観察などしていられなかった。スライムはぬるりと身体を伸ばして、あろうことか後ろの穴まで到達した。私は慌ててスライムを身体から引き剥がそうとするが、掴んだところがにゅるりと伸びるだけで、上手く行かない。それを見ていたレナードも、スライムを咥えて加勢しようとするが、何とレナードは触手のように伸びたスライムの一部によって捕らえられてしまった。

「レナード!!」

 レナードだけでも助けなければ。しかし気が付けばスライムはもはや全身を覆い、身動きが取れない。レナードの心配どころか、全身は既に粘液まみれ、身体中をくまなくスライムに探られている。もちろん、後孔も。指のように細い触手が、粘液を伴って、ぬるりと滑り込んで来るのを感じる。気持ち悪い。気持ち悪いのに、全身に刷り込まれた粘液がじわじわと快楽で身を焦がし、乳首や陰茎は再び淫らにこすり上げられる。ああ、レナードが警戒音を発しながら身体をよじっている。助けてやらねば。スライムに捕らわれて、悦楽に侵されている場合では…

 その時。

「ヒああ…っ!!」

 身体の内側で激しくうごめいていた触手が、何かを掠めた。その瞬間、私の腰は大きく跳ね上がる。何だこれは…!

「あっ…あっ…あっ…」

 スライムは、我が意を得たとばかりに、そこを狙ってゴリゴリと責める。ちゅぷちゅぷ、ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てながら、私のアナルは少しずつ拓かれて行く。まさかそんな、これではまるでスライムに。恐ろしい推論にゾクリとして、私は必死で脱出を試みるが、吸われて転がされて赤く色付いた乳首、絶妙にしごかれ締め付けられるペニス、深く触手が食い込んだ後孔、全てが信じられないくらい気持ちいい。ああ、さっき達したばかりなのに、もうイきそうだ。駄目だ、レナード、お前だけでも…!

「あっ!!…あ、は…」

 大した抵抗も出来ずに、私は再び呆気なく射精した。何てザマだ。スライムを貰い受けようと、多少強引に事を運んだ罰なのか。それより、レナードは無事か。私の浅慮のせいで、レナードまで危険に晒してしまった。万一レナードにもしものことがあれば、私は…



 その時、私が見たものは。

「キュイイ…」

 スライムに絡め取られたレナードは、そのまま私の下腹部まで運ばれて行った。スライムは彼を器用に包み、軽く折り曲げ、頭部は私の方に向けられたまま、尾の先端を------

「ま、待て、あ、あ」

 ------レナードが、私の中に、侵入はいって来た。
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