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 どうやら俺以外の召喚者はこの国の為に働くことになりそうだ。少し考えれば本当に魔族が悪いやつなのか、人以外にもいいやつらがいるのではないかとか、疑問に思ってもおかしくないと思うんだが。元の世界に返してくれとかいうやつがいなかったのが不思議だ。

 俺はこの国の為に働くのはまっぴらなので只今脱出の方法を考えているのだが一向に浮かばない。だって周りには武器を持った兵士が取り囲んでるんだもん。今自分が脱出する方法は無いと感じたので従ったふりをして隙を見て脱出するか。

「感謝するぞ勇者達よ。どうか力を磨き邪悪な魔族達を倒してくれ。側近よ、例のものを」

「はっ。勇者達よ、まずはお主達のステータス、スキルを調べるのだ。こちらにある鑑定石に手をかざせば分かるようになっておる」

 げっ。鑑定石だって?! 神様にスキルをいくつか貰ってるけどこれは隠した方がいいって言ってたんだよな。どうにかしてステータスを隠す方法は無いのか?!

『回答。まずはステータスと口に出して唱えるか頭の中で唱えてください』

 うわっ! 今のは?

『回答。私はスキル《図書館ライブラリー》のサポートナビです。スキル《図書館ライブラリー》はこの世界の情報、知識をある程度引き出せます。』

 おお。これがお役立ちスキルか。ありがとう神様、ありがとう《図書館》。ではさっそくステータスを確認してみよう! 俺は頭の中でステータスと念じてみる。

進藤彼方しんどうかなた
種族 人
職業 なし
レベル 1
HP 300
MP 300
攻撃 100
防御 100
敏捷 100
魔力 100

スキル 《鑑定》《アイテムボックス》《図書館》《ステータス偽装》《解体》《作成》

ユニークスキル 《螺旋の理》《言語理解》《文字翻訳》


 ステータスを確認完了。次はこれを隠さないと。《図書館》さん、《ステータス偽装》を使いたいんだけど。

『回答。口で唱えるか頭の中で《ステータス偽装》と念じてください。』

 その通りに実行するとなるほど、《ステータス偽装》の使い方が頭に流れ込んできた。取り敢えずスキルは全部隠しとこう。ステータスはどうなんだろ?

『回答。マスターのステータスはレベル1の中では上位の力です。ですが今回召喚された勇者の中では最も低いステータスとなります。』

 そうなのか。じゃあ一応ステータスも半分位にしとくか。役立たずってことで野にほっぽり出されるかもしれん。

 そんなこんな脳内で作業をしていると周りにいた兵士たちから小さくないどよめきが起こる。何だ? 俺の偽装工作がバレたか?!

「おおっ! 輝殿のステータスは凄まじい! 輝殿なら必ずや魔王を滅ぼし平和を勝ち取ることでしょう!」

 なに?どうやらリーダー格の輝のステータスがヤバイらしい。どれどれ……。

一ノ瀬輝いちのせあきら
種族 人
職業 勇者
レベル 1
HP 1200
MP 700
攻撃 300
防御 300
敏捷 300
魔力 300

スキル 《剣術レベル5》《全魔法適性レベル5》《全魔法耐性レベル5》

ユニークスキル 《魔法剣》《聖魔法》《言語理解》《文字翻訳》


 うん、俺より明らかに強いね。周りの兵士達の話ではこの世界の何もしていない成人男性のステータス平均はHP100、MP100、残りは10らしい。じゃあ一般男性の30倍の攻撃力や防御力があるってこと? 怖っ。てゆーことは僕もまあまあ強いのか?

『回答。マスターの力はレベル1の中では上位ですがこの世界ではレベル以外にも鍛錬や訓練によりレベルほど上昇率は高くありませんがステータスを伸ばすことが可能です。また、レベルが存在するスキルはレベルが上がるごとにその性能が著しく上昇します。他にも装備によるステータス補正、職業によるステータス補正など様々なステータス補正があります』

 つまりレベル1の中では強いけどまだまだこの世界の中では弱いってことか。ちなみにここから無理やり脱出って出来る?

『回答。周りの兵士達は平均レベル67、ステータス平均420です。脱出を試みた場合、97パーセントの確率で失敗します。残り3パーセントはマスターが絶命します』

 うん、やめとこう。取り敢えず大人しくしとこう、うん。

「何を呆けておる。次はお主の番じゃぞ」

 おっといつの間にか俺以外はステータス鑑定が終わってたらしい。慌てて前に出て鑑定石に触れる。そこに出たステータスは……。

進藤彼方しんどうかなた
種族 人
職業 なし
レベル 1
HP 150
MP 150
攻撃 15
防御 15
敏捷 15
魔力 15

スキル なし

ユニークスキル 《言語理解》《文字翻訳》


 思い切って一般人の1.5倍にしてみました。《言語理解》と《文字翻訳》は無いと逆におかしいと思ったので残しといた。

「なんと、ステータスが異様に低いだけでなくユニークスキルどころかスキルもないだと?! しかも職業なし?! 側近、これはどういうことだ?!」

「は、はっ。あくまで私の考えですが、こやつは召喚陣に巻き込まれた何の力も持たぬ只人だと推測されます。そもそも今回の勇者召喚の儀は異界より五人の勇者を召喚するもの。六人目のこやつは言わば偶々呼び出されただけのハズレです」

 ハズレとかひでーな。お前らが呼び出したのにあんまりじゃね?

「ふん、ハズレか。お前が魔族と戦ってもすぐに死ぬのがオチであろう。訓練に費やす時間や人員ももったいないな。おい、こやつに当面生きる為の装備、物資を渡してこの城から出せ」

 そういって俺は兵士に連行され、城の外にほっぽり出された。渡されたのは短剣一本と銅貨10枚。おい、これでどうやって生きろと?計画通りなのになんだか嫌な気分だ。他の召喚された勇者達は逆らうとどうなるか分からないからか、傍観していた。まあ異世界で俺みたいに放り出されたくはないだろうしな。

 何はともあれ俺ーー進藤彼方しんどうかなたは晴れて未知の世界へ飛び出したのだった。
 
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