私と離婚してください。

koyumi

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第3章

依子

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「うーん、どこもピンとこない。」

 同じく。

 翌日行った不動産屋で紹介された部屋は、どこもイマイチだった。
 新築にこだわってはいないが、できるだけ生活環境が良く、セキュリティのいい場所となれば、結構限られてくる。 
 
「依子ちゃん、北見さんに聞いてみようか?」

「北見さん?ああ、不動産屋さんだったよね。確か。」

「うん。今は現場から離れているけれど、あの人なら掘り出し物件を知っていそうだし。」


 純君はそう言うと、電話を操作し、北見さんに繋いだ。

「お久しぶりです。高原です……あぁ、はい、そうなんです。お元気で何よりです。……それが……はい……日本に戻ろうかと……ええ、そうです……ありますかね?」

 15分ほど話したのち、2時間後にまた連絡があって、翌日には物件を見に行く段取りとなった。

 さすが北見さんだ。
 場所や築年数、間取りなど、電話で聞く限りなかなか良い。

「北見さんの持ち物件らしいけどね。」

「なるほど。それで。」

 いわゆる、マージンをとらない直談判でのやりとりだ。
 逆にいろいろと手続きは面倒くさそうだが、この2人にはお手の物だろう。

 明日が楽しみな純君は、早速家具の調達に目を向け始めた。
 ざっと聞いた内容で、まだ見てもいないのに決めちゃったようだ。
「北見さんなら間違いないから。」
 あまりにも自信がある言い回しに、ひょっとして……と、思い、
「もしや、前住んでたマンション?」
と聞いたが、
「住所、全然違うよ。それに、事務所も開くから広さが足りないし。同じマンションの2階を事務所にできそうなんだ。その話もまとまってる。」
と言われた。

 純君の感覚には、未だに慣れない。
 頭が良いってのは、計算が早いってことなんだなってわかる。段取りがいいしあ、フォローもある。いかに自分が狭い世界で生きてきたかが身にしみる。
 どう生きたからこの人と繋がったのか?当人でもわからない。

「……依子ちゃん……こっちおいで。」

 時々こんな風に自虐の世界に入ってしまう私。
 だけどそれに気づいた純君は、優しい。
 声も。目も。これから触れる指先も。

「また何かみょうちくりんな考えしてたでしょ?」

「みょうちくりん?」

「うん。見えないものを無理に見出そうとしているってこと。」

「うーん……」

「まあ、何だっていいよ。とにかく今から抱きたい。」

 ドキッ……

 純君の指先が、私の頬を撫でる。
 耳を弄り、首筋をたどる。
 ウットリとしてしまう私に構わず、純君の唇が顔中に降りてくる。

「……はぁ……ぅ……ん……」

「何も、余計なことは何も、考えられないように……してあげるよ……」

「ぁ……ぁん……はぁ、ん……」

 優しい声に似合わず、執拗な攻めをしてくる純君の愛撫に、私はキューッと下腹部を疼かせ、股を開いた。


 正面から愛しい人の肌を感じるというのは、こんなにも幸せだったのかと思う。キスをしながら繋がることが、こんなにも切ないとは。

「依子ちゃん……今日は、避妊しない……いい?」

「う……ん……いいよ。」

 多分、おそらく、この先もずっと今日からずっと、避妊しないつもりの発言だと思った。

 でも、私も、そうしてほしい。
 どんな日常が始まるのかわからないけれど、純君となら、大丈夫。
 大丈夫だから。
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