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再会2
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『ピンポーン』
中古の戸建てといえど、使わない部屋が幾つかあるくらい堂々とした豪邸である。
“圭くん”こと、田村圭介が躊躇するのは当然である。そして、同情に値する。
もしかしたら弥生子じゃなく、旦那が出てくるかもしれない。旦那のことは、あの諏訪宗一郎だと認識しており、あゆみの旦那が先ほど電話で会社にいることを確認している。
町田あゆみは、弥生子を救うべきだと考えていた。同窓会をまとめていくことで、今までにない正義感が強まったのだ。それは、宗一郎を悪の根源だと言わんべく、旦那である大学講師に協力を求め、ある作戦を計画したのだ。
旦那に“監禁”されていると勘違いしたあゆみは、弥生子を無理にでも連れ出し、自身が住む大阪に連れてきて安全確保することを計画した。
あゆみの旦那は経済学の大学講師だし、有名な諏訪グループに談話を持ちかけるために会社に電話をすることは不自然ではないと考えた。
旦那には、宗一郎の居場所確認の為に動いてもらった。
問題は、弥生子を連れ出す人物である。
自分は子供もいるし、簡単に遠出はできない。かといって、大阪に残る弥生子と親しい友人も、既婚者だったり仕事だったりで動けそうにない。
そこで、目をつけられたのが田村圭介である。弥生子の元彼であり、弥生子を裏切った男だ。
田村圭介は、弥生子を裏切りはしたが、別れるつもりはなかった。ただ、怖かったのだ。自分を置いて結婚することを引き止めた所で、まだ自分の中では結婚するという覚悟はなかった。
経済力も当時は弥生子の方が上だったし、ようやく就職できた会社に慣れず、いつか機を見て転職するつもりだった。
そんな不安定な自分は今も変わらず、弥生子を裏切った時の相手の子にも、あっさりフラれた。
そこへ、町田あゆみから連絡があり、弥生子を救いたいから手伝って、と言われた。長年付き合った彼女に対する裏切りへの、せめてもの懺悔になる、と言われれば、動かずにはいられなかった。その証拠に、弥生子は同窓会に出席する意向を示したのだ。束縛の激しい旦那が許すとは思えない。だとすれば、逃げ出すための何かを待っていたのだろう。
そんな考えから、もしかしたら本当に弥生子は自分に助けを求めているのかもしれないと、期待してしまった。
だが、実際弥生子の住む街を歩き、暮らす家の前に立てば、本当に自分を思ってくれているとは考えられなくなってきた。自分には到底買えないであろう豪邸に住んでいる弥生子。もう、手の届かない世界にいるんじゃないか?
不安になりながらも、あゆみからの執拗な催促メールにハッパをかけられ、ようやくインターフォンに手が伸びたのである。
金曜日の昼下がり、社内が忙しない中、来客があるとすれば、宅配か勧誘か何かだろうか?
警戒しながら弥生子は、モニターフォンを覗いた。
「ーーっ?えっ?」
思わず口に手を添えた。
大声が出そうだったからだ。
「……圭君?だよ、ね?……なんで?」
弥生子の頭の中はハテナマークだらけで、とりあえず応答しなければと思った。
『……は、い……。』
微かに聞こえる女性の声は、明らかに弥生子のもので、圭介はその瞬間、思わず「はぁーーー」っと長い息を吐いた。
『……よかった……あの、た、田村、です。』
『あっ……やっぱり……ちょ、ちょっと、待ってね。』
動揺を隠せない弥生子。
圭君が何故?どうすればいいだろうか?ここに入れるわけにはいかない。
かと言って、自分が家を出れば、たちまち宗一郎がGPSを作動させて駆けつけてくるかもしれない。忙しいといっても、明日が同窓会だと知っているし、今はすごく敏感だ。
迷った挙句、弥生子は圭介に「玄関までなら」と家に入るように伝えた。
中古の戸建てといえど、使わない部屋が幾つかあるくらい堂々とした豪邸である。
“圭くん”こと、田村圭介が躊躇するのは当然である。そして、同情に値する。
もしかしたら弥生子じゃなく、旦那が出てくるかもしれない。旦那のことは、あの諏訪宗一郎だと認識しており、あゆみの旦那が先ほど電話で会社にいることを確認している。
町田あゆみは、弥生子を救うべきだと考えていた。同窓会をまとめていくことで、今までにない正義感が強まったのだ。それは、宗一郎を悪の根源だと言わんべく、旦那である大学講師に協力を求め、ある作戦を計画したのだ。
旦那に“監禁”されていると勘違いしたあゆみは、弥生子を無理にでも連れ出し、自身が住む大阪に連れてきて安全確保することを計画した。
あゆみの旦那は経済学の大学講師だし、有名な諏訪グループに談話を持ちかけるために会社に電話をすることは不自然ではないと考えた。
旦那には、宗一郎の居場所確認の為に動いてもらった。
問題は、弥生子を連れ出す人物である。
自分は子供もいるし、簡単に遠出はできない。かといって、大阪に残る弥生子と親しい友人も、既婚者だったり仕事だったりで動けそうにない。
そこで、目をつけられたのが田村圭介である。弥生子の元彼であり、弥生子を裏切った男だ。
田村圭介は、弥生子を裏切りはしたが、別れるつもりはなかった。ただ、怖かったのだ。自分を置いて結婚することを引き止めた所で、まだ自分の中では結婚するという覚悟はなかった。
経済力も当時は弥生子の方が上だったし、ようやく就職できた会社に慣れず、いつか機を見て転職するつもりだった。
そんな不安定な自分は今も変わらず、弥生子を裏切った時の相手の子にも、あっさりフラれた。
そこへ、町田あゆみから連絡があり、弥生子を救いたいから手伝って、と言われた。長年付き合った彼女に対する裏切りへの、せめてもの懺悔になる、と言われれば、動かずにはいられなかった。その証拠に、弥生子は同窓会に出席する意向を示したのだ。束縛の激しい旦那が許すとは思えない。だとすれば、逃げ出すための何かを待っていたのだろう。
そんな考えから、もしかしたら本当に弥生子は自分に助けを求めているのかもしれないと、期待してしまった。
だが、実際弥生子の住む街を歩き、暮らす家の前に立てば、本当に自分を思ってくれているとは考えられなくなってきた。自分には到底買えないであろう豪邸に住んでいる弥生子。もう、手の届かない世界にいるんじゃないか?
不安になりながらも、あゆみからの執拗な催促メールにハッパをかけられ、ようやくインターフォンに手が伸びたのである。
金曜日の昼下がり、社内が忙しない中、来客があるとすれば、宅配か勧誘か何かだろうか?
警戒しながら弥生子は、モニターフォンを覗いた。
「ーーっ?えっ?」
思わず口に手を添えた。
大声が出そうだったからだ。
「……圭君?だよ、ね?……なんで?」
弥生子の頭の中はハテナマークだらけで、とりあえず応答しなければと思った。
『……は、い……。』
微かに聞こえる女性の声は、明らかに弥生子のもので、圭介はその瞬間、思わず「はぁーーー」っと長い息を吐いた。
『……よかった……あの、た、田村、です。』
『あっ……やっぱり……ちょ、ちょっと、待ってね。』
動揺を隠せない弥生子。
圭君が何故?どうすればいいだろうか?ここに入れるわけにはいかない。
かと言って、自分が家を出れば、たちまち宗一郎がGPSを作動させて駆けつけてくるかもしれない。忙しいといっても、明日が同窓会だと知っているし、今はすごく敏感だ。
迷った挙句、弥生子は圭介に「玄関までなら」と家に入るように伝えた。
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