共に想う

koyumi

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飲み会

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「ったく、宗一郎のくせにぜんっぜんダメダメ~!」
「なぁにが一目惚れだっつうのっ。こっちは騙し討ちじゃないかっ!ひっくっ。」
さっきからこんなことばかり繰り返す弥生子。
誰も止められない。
まだ時間は20時半で、酔っ払いタイムに突入する頃ではなかったが。
「楠本君、私、もうこれ以上付き合えないから後はよろしくね。じゃ。」
「えええ!?森坂さん、冗談きついよ。こんな酔っ払い、どうしろってんだよ~」

出だしの生ビールから、レモンハイ、焼酎、白ワインとあらゆる種のアルコールに手を出した弥生子。しかも恐ろしくハイスピード。
最初は他の2人も、いい飲みっぷりに感心して愉しんでいたけれど、段々聞いてはならない愚痴を口にし始めた弥生子に辟易していた。
1人にされた楠本はたまったもんじゃない。
《バタン》
「え?弥生子ちゃん!ちょっと、寝ちゃダメだろ?おいっ!」
おまけに机に突っ伏して眠ってしまった。

「はぁー、いくらなんでも飲みすぎだし、酔っ払い派手すぎ。ちょっと、諏訪さん!?帰れる?……なわけないか……ここはもう、仕方ないか。許してくれよ、弥生子ちゃん。」
楠本は結局、今回の飲み会のきっかけとなった常務こと諏訪宗一郎に連絡をした。もちろん自分の携帯に連絡先は登録してあるが、運悪く、電池切れ中。
「失礼」と言いながら、弥生子の携帯から連絡したのだ。

『あ、常務ですか?楠本です。』
『……はぁ?なんでお前が弥生子の電話を……な、何やってんだ?まさか!?』
『いやいや、誤解です!誤解しないでくださいよ?あの、今日はギャラリー組で飲みに来ていたんですが、弥生子さん、酔いつぶれてしまいまして……』
『飲みに?弥生子に酒飲ましたのか?お前、何するつもりで!』
『やややや、やめてくださいよっ。いくら可愛くてもさすがに常務の奥さんには手は出しませんからっ。とにかく、潰れてるんで、迎えに来てください。お願いしますよっ!30分あれば来れますよね?来ないと俺が連れて行きますからねっ!』
『あ、なんだと!?』

「ひゃー、怖えな……はぁ、弥生子ちゃんには手は出せねえよ。ったく。そんなに、心配するんならしっかり捕まえときゃいいのに。」
楠本は宗一郎の剣幕ぶりにあきれつつ、ちょっとだけなら……と、弥生子の寝顔を眺めた。

この楠本、実は社内でも有数のプレイボーイで、隠れファンもいるほど女性の扱いが上手い。
宗一郎は勿論そのことを知っていて、更に楠本にはある弱みを握られていた。
だから余計、楠本が今弥生子の隣にいることが許せなかった。

「あいつ、手ぇ出したらただじゃおかねぇからなっ!」
宗一郎は、弥生子の携帯のGPSを頼りに車を走らせていた。楠本はGPSを機能させていることを前提に、店の場所をわざと教えていない。
「っちっくしょう!なんだってあいつが!」
何度も悪態をつきながら、15分かけてようやく店に着いた。
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