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肌
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荒い息遣い。
生ぬるい空気。
上下する天井。
「あ」と「ん」で通じる会話。
夫と初めて繋がる瞬間は、予想以上に緊張した。
勢いからすると、フィニッシュは早いと思われた。
だが、優しい手つきに魅了され、甘美な口内のやり取りに夢中になり、お互いの肌と肌の触れ合いが心地よくて、何度も求めあった。
ピロートークなんかもあったりして、白昼の逢瀬は暗くなった新月の夜も繰り広げられた。
「……好きになってくれた?」
ことの終わりの第一声がそれ。
「……バカ…」
「バカだろ?俺……どうやっても、上手くいかないんだ。」
「…何が?」
「…ふっ、お前のことだよ。」
「ねえ、聞いていい?」
「何を?」
「過去って、どういうこと?
私を、いつから知ってるの?」
「……お前の元彼、見たことがある。
…お前の制服姿も、知ってる。」
思わずガバッと起き上がった。
「制服?元彼?な、なんで?どうして?」
それから宗一郎が私を知った経緯を話してくれた。
一目惚れをしたこと、大卒ですぐに結婚できると思ったこと、卒業式に見た元彼とのやりとり。
肌を重ねたことで、素直な口調で話してくれる宗一郎。本当はとても穏やかな人なんだと思う。
ただ、私が結婚を延期して、いつかは白紙にしようと企んでいたことに気づき、捻くれた接し方になったのだとわかった。
全てを知れば納得できるけれど…
「絶対に私を嫌いだと思ってた。今も…信じられないんだけど…」
「…まぁ、そうだな…簡単には信じられないだろうな。
俺だって未だに信じていない。だからお前を自由に出来ない。俺の囲いの中で、じっくりと見極めていきたい。って思っていたから。」
「…怖いんだけど…」
「一度裏切られた男の思いはそんなもんだよ。」
「…裏切ってないし。」
「親に嘘ばかりついて期待させただろ?
それも裏切りになるんだよ。」
宗一郎はそう言うと、目つきが変わり、また私に覆いかぶさった。
「…あ………んん………」
そして、チェックインから8時間後、ようやく帰路についた。
ある意味この先の夜が恐ろしい。
宗一郎の肌は、私には小悪魔的だった。
宗一郎よりも、私の方が完全に溺れていた。
生ぬるい空気。
上下する天井。
「あ」と「ん」で通じる会話。
夫と初めて繋がる瞬間は、予想以上に緊張した。
勢いからすると、フィニッシュは早いと思われた。
だが、優しい手つきに魅了され、甘美な口内のやり取りに夢中になり、お互いの肌と肌の触れ合いが心地よくて、何度も求めあった。
ピロートークなんかもあったりして、白昼の逢瀬は暗くなった新月の夜も繰り広げられた。
「……好きになってくれた?」
ことの終わりの第一声がそれ。
「……バカ…」
「バカだろ?俺……どうやっても、上手くいかないんだ。」
「…何が?」
「…ふっ、お前のことだよ。」
「ねえ、聞いていい?」
「何を?」
「過去って、どういうこと?
私を、いつから知ってるの?」
「……お前の元彼、見たことがある。
…お前の制服姿も、知ってる。」
思わずガバッと起き上がった。
「制服?元彼?な、なんで?どうして?」
それから宗一郎が私を知った経緯を話してくれた。
一目惚れをしたこと、大卒ですぐに結婚できると思ったこと、卒業式に見た元彼とのやりとり。
肌を重ねたことで、素直な口調で話してくれる宗一郎。本当はとても穏やかな人なんだと思う。
ただ、私が結婚を延期して、いつかは白紙にしようと企んでいたことに気づき、捻くれた接し方になったのだとわかった。
全てを知れば納得できるけれど…
「絶対に私を嫌いだと思ってた。今も…信じられないんだけど…」
「…まぁ、そうだな…簡単には信じられないだろうな。
俺だって未だに信じていない。だからお前を自由に出来ない。俺の囲いの中で、じっくりと見極めていきたい。って思っていたから。」
「…怖いんだけど…」
「一度裏切られた男の思いはそんなもんだよ。」
「…裏切ってないし。」
「親に嘘ばかりついて期待させただろ?
それも裏切りになるんだよ。」
宗一郎はそう言うと、目つきが変わり、また私に覆いかぶさった。
「…あ………んん………」
そして、チェックインから8時間後、ようやく帰路についた。
ある意味この先の夜が恐ろしい。
宗一郎の肌は、私には小悪魔的だった。
宗一郎よりも、私の方が完全に溺れていた。
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