嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第31話

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 ふぅ~、気持ちいい……こんなにゆったりと眠れたの、いつぶり…………ん?
 なんか、お腹すいてきたぁ……母さん何用意してたんだろ?
 …………ん?
 …………あ、れ?
 …………ひぇっ!?えっ?


 やだっ!ヤバくない!?
 私……寝ちゃった……

「何時?!今、何時なのよっ!?」

「お前、うるさい。」

「は?」

 真っ暗な和室。
 こんな夜にこの部屋に入れる人物は私以外にただ1人。

「あと、お前のメシ、なんだありゃ?」

「ぐっ」

 少しずつ目が慣れてきて、恐る恐る声がする方向に顔を向ける。
(……や、やはり……)

「きょ、今日は、こちらにお戻りだったんですね……」

 不覚にも、声が裏返ってしまう。しかも敬語……あ、そっか、私、お世話係だから敬語で間違いないのか。

「お前の初仕事だからな。お手並み拝見といきたいとこだったが」

「だったが?」

「疑問形で返すな。戻ってみたらお前の姿はないし、冷蔵庫の中のタッパーに飯があったからあっためてみりゃ、全部同じ味だし。しかも、お前、あれ全部素麺みたいな味だったぞ。お前はあれが好きなのか?ってやつ。」

 ……確かに全てのメニューに使用しました!が、生姜もいれたし、片栗粉ってのも使ったし。

「いや、あれはその……い、今からまだまだ作るつもりだったんだけど、お布団の準備してたらいつの間にか……ね、寝てしまいまして……」

「へぇ?メインはまだ他にあったってわけ?」

 その時、夫の息がゾワゾワって耳にかかり、私は震えた。

「やだっ!近っ!いつの間にっ」

 電気が消えていてよかった。
 多分今顔が真っ赤だ。

「夜のマッサージも仕事にあると行ったはずだが。」

「えっ?な、なんのこと?」 

「惚けるな。最初に言ったはずだ。なんせ月150万の仕事なんだからな。疲れ果てるまで働いてもらわないと。」

 夫はそう言うと、ガシッと私の腕を捉え、自分の首筋に沿わせた。
 えぇぇっ!本気で!?

「と、とんだお戯れを……」

「この辺りがいつも重たいんだ。丁寧にやってくれ。」

「はい?……あ、なるほど、そ、そっちのマッサージね」

「なんだ?お前はどっちのマッサージを想像していたんだ?」

「どっちのって、そりゃぁマッサージときたら」

「きたら?」

 はっ、ぶんぶん、これは所謂誘導尋問系だ。
 ダメだっ流されるなっ。

「ふくらはぎとか、足裏かなぁって。ほら、一日中歩いてると疲れがたまるでしょ?」

 うん、うまい。かわせた。
 私だって、夜のセルフマッサージはふくらはぎ中心だもん。

「俺はあまり歩かない。どちらかといえばデスクワークだ。だから、首がよく痛んで頭痛になったりもする。」

「頭痛に?偏頭痛みたいな?」

「偏頭痛?あぁ、まぁ、そんな感じだろうな。」

「じゃあ、目もゴロゴロしたり?」

「あぁ、たまにあるな。奥から押されるような痛み。」
  
 なんだ、意外とじゃないの。構えて損したわ。
 偏頭痛持ちだなんて。
 やっぱり同じ人間なんだわね。

 私はそのまま夫の首筋から肩甲骨にかけてをほぐし始めた。
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