嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第27話

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 冷たい眼差しの夫。
 やけに冷静なお義母様。
 夫を睨みつける藪坂さん。

 私はこのいたたまれない空気に我慢できず、

「とりあえず、私は帰ります……」

と、逃げ足踏もうとした。

 明らかに元カレ元カノの2人の修羅場に、嫁がいるとなれば格好の見せ物だ。
 ほら、現に何事かと人だかりが……

 ん?
 よーく見ると、知ってる顔ばかり。
 本館に行った時にいたような、庭を回った時にすれ違ったような……。

 ぐるりと私たちを囲むのは、遠藤家の従者達や警備の人だった。

「待ちなさいよ、名波さんにはきちんとお話ししておくべきだと思うの。」
「やめないか、美奈子!」
「ふん、やっといつものように名前で呼んでくれたのね。」

 やっぱり……。
 
「勘違いするな。親しみを込めて呼んではいないことくらいわからないのか?とにかく詩豆には触れさせない。関係のない人間を巻き込むのはやめろ。それに、何度も言うが、詩豆は名波じゃない。遠藤詩豆だっ」

「なっ、関係ないですって?キーマンみたいなもんじゃない。名波さんさえいなければ、私が今頃あなたの隣にいたというのに。」

 やだ、もう聞いてられない。
 私は別に夫に情があるわけじゃないし、夫も同じはず……。
 謂わば、うちの借金さえなければ、藪坂さんと夫は別れなくて済んだということ。借金さえ返せていたら、借金さえ……。

「……藪坂さん、大丈夫ですよ。」

「何が大丈夫なのよ!?何にも良くないわっ!」

「大丈夫ですから……いつか、いえ、そんなに遠くない日に私はいなくなりますから、だから、慶大さんを諦めないで下さい。」

「詩豆っ!!」
「詩豆ちゃんっ!?なんてことっ!?」

 ずっと心の奥底で思っていたことだ。
 やっと言えた。
 だって、やっぱりおかしいもの。お金の為に、祖父同士が勝手に決めた許婚の約束の為に結婚するなんて。

「だから、おかしいってこと、わかってるんで。私が若奥様とか呼ばれていることも、遠藤家にどれだけ不釣合いかわかってるんで。だから……お義母様」

「詩、豆ちゃん?」

「私に仕事をさせて下さい!どんなことでもやり遂げますから!お金、稼ぎたいんです!」

 それしかないんじゃない?
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